藤丸は原作通り弱いです。真正面から戦ったら骸骨にすら負けます。
サバイバルスキルを与えたのは、全く別の時代でサーヴァントたちがいるとはいえ、普通の人間が平気で野宿できるわけないから。
そして逃げるのが上手いのは、戦ってるサーヴァントたちの近くで指示を出せるようにです。
あ、お気に入り、評価などありがとうございます。低評価を挽回できる…できるかな…よう頑張ります。
では、今回も楽しんでいただけると嬉しいです。
「キャアーーーーー!」
安心したのもつかの間、聞き覚えのある悲鳴が聞こえてきた。
「今の声はまさか……!」
急いで振り返ってーー俺は再び絶望を覚えることとなった。
少し前までいた高台には、さらに二人のサーヴァントと思しき人間がいたのだ。髑髏仮面の女の方が、所長を捉えている。
二人ともあのサーヴァントと同じ黒いオーラを纏っており、確かめなくても強いことは一目瞭然だった。
「そんな、先ほどのサーヴァントと同等量の魔力……!」
そんな俺に追い打ちをかけるように、マシュが焦燥の滲んだ声でそう言う。さっきと同じのが、二体も……?
そんなの、どうしようもない。一体でさえギリギリだったのに、複数を相手に戦うなんてとても無理だ。
「……先輩、私が行きます」
「マシュ!?」
「できる限り長く引きつけるので、バーサーカーさんを呼んできてください」
「ま……」
俺が何か言う前に、決意を固めた表情のマシュはサーヴァントたちにむけて走り出した。
届かないとわかっていながら、俺はマシュにむけて手を伸ばしてーー
ボウッ!!!!!
「「っ!?」」
突如、サーヴァントの一体が火柱に包まれた。なんの前触れもなく発火したことに息を呑む。
鼓膜が破けそうな絶叫をあげるサーヴァント。しかしそれは少しずつ小さくなっていき、炎の中の黒い影が消えていく。
呆然と火柱を見上げていると、涙目だった所長が何やら気づいたような顔をして、髑髏仮面のサーヴァントの手の中から無理やり抜け出した。
「あっ、貴様!」
慌てて捕まえようとする髑髏仮面のサーヴァントだが、ときすでに遅し。所長はさっきの俺みたいに手すりから空中へ踊り出る。
「くっ!」
ちょうど落下するコースの直線上にいたので、未だ震える足腰に鞭を打って走った。
そして落ちていた所長を受け止め、これまた焼き直しのようにもんどりうって倒れる。背中を打って肺から空気が抜けた。
「げほっ、ごほっ……」
「ちょっと、あんた大丈夫!?」
「な、なんとか……それより、所長も怪我はありませんか……」
珍しく心配そうな表情の所長はこくりと頷く。よかった、体を痛めた甲斐があった。
「へっ、いい根性してんじゃねえか坊主。そういう奴は嫌いじゃないぜ」
「へっ!?」
知らない声が隣から聞こえた。
ばっと所長とシンクロした動きでそちらを見ると、スゥッと光の粒を伴って一人の男が現れる。
片手に大きい杖と、祭祀のような格好。目深にかぶったフードを取り払うと、中から鋭い目つきの男前が出てきた。
「嬢ちゃん、よく勇気を振り絞った。大した奴だぜあんたは」
「え、ええ」
「〝キャスター〟、貴様!漂流者の味方をするのか!」
「そりゃ、てめえらよりこいつらのほうがマシそうだからな」
髑髏仮面のサーヴァントが、謎の青髪イケメンに叫ぶ。だが青髪イケメンはどこ吹く風といった様子だ。
そうしているうちにマシュが戻ってきて、こちらはサーヴァント二人……キャスターって呼んでたから多分……になる。
「そんなことより、後ろを気にした方がいいんじゃねえか?」
「何を言ってーー!?」
次の瞬間、髑髏仮面のサーヴァントの体が浮いた。いや、正確には胸の中心から突き出た槍に持ち上げられたというべきか。
「ガァ……!?」
「背後には気をつけたまえ」
聞き覚えのある声とともに、槍から激しい雷光が解き放たれる。それは髑髏仮面のサーヴァントの全身を容赦なく痛めつけた。
しばらくして、放電が収まる。ぴんと張っていた髑髏仮面のサーヴァントの四肢が垂れて、光の粒子となって消えていった。
「ふむ、先ほどの髑髏仮面よりはソウルが手に入るのか。とはいえ、今更使い道がないのだがな」
「バーサーカー!」
名前を呼ぶとバーサーカーはこちらを向いて跳躍、俺の前に着地する。
「マスター、今帰還した。すまなかったな、危険な時に守れなくて」
「いや、マシュのお陰でなんとかなったからいいよ。それにほら、バーサーカーも手伝ってくれたでしょ?」
あのサーヴァントの倒れていた場所を見る。そこには所在なさげにバーサーカーの撃った大きな矢が落ちていた。
あれがなかったら、俺たちはあの鎌で斬り殺されていたかもしれない。まったくバーサーカーにはお世話になりっぱなしだ。
「それなら良いが……マスターもあまりああいう無茶はいけないぞ。貴公は我らと違い、ただの人間なのだから」
「あれ、もしかして見てた?」
うむ、と頷くバーサーカー。やっぱり、あれは無謀な行動だったか。
「今回はたまたまうまくいっただけだ。私の
そう……だよな。
サーヴァントは、マスターがいなくては力を発揮できない。俺が死んだら、マシュを危険な目に合わせてしまう。
それは望むところじゃない。俺はサーヴァントではないし、ましてやバーサーカーみたいに不死人でもないんだから。
「あの、バーサーカーさん。おかげで私は助かったので、先輩のことを責めないでいただけると……」
「ああ、だがこれだけは言っておかなくてはいけないからね
「「「え?」」」
俺、所長、マシュの三人の声が重なった。そしてバーサーカーの兜に包まれた顔をまじまじと見る。
バーサーカーは首を傾げているが、俺は計り知れない衝撃を受けていた。今、バーサーカーはなんて言った?
「バーサーカー、マシュのことを名前で……」
「何、あれほどの奮闘を見せたのにずっとあのような呼び方はどうかと思ったのだ。だから貴公のことはマシュ殿と呼ばせてもらうよ」
「はぁ……」
つまりマシュのことを認めたってことでいいのだろうか。
なんでだろう、我が事のように嬉しい。まさか人理を作った英雄に認められるなんて、マシュはすごい。
「いいかな、マシュ殿」
「それは、構いませんが」
「よく頑張った。君は、度胸においては一人前の騎士だ」
「は、はい!ありがとうございます!」
マシュもちょっと頬を赤くして、照れながら答える。うん、そんな顔もいいとか思った俺は多分おかしい。
「……マシュ…………」
「所長?どうされまし……」
「あなた、なんて羨ましいことを!」
「「ええ!?」」
「バーサーカー様に名前で呼ばれるなんて、名誉中の名誉よ!?私が最初に呼ばれたかったのにっ!」
「そ、そんなこと言われましても……」
所長のテンションが壊れていらっしゃる。
所長、相変わらずバーサーカーのことになるとテンションすごいなぁ。
「くくっ、見た目の割につわものな嬢ちゃんにサーヴァントに特攻かけるマスター、んでもってメチャクチャ強えバーサーカーに魔術師か。随分と賑やかなこって」
そんな風にギャアギャア騒いでいると、それまで黙っていた青髪イケメンがそう言った。自然と全員がそちらを向く。
「貴公には礼を言わねばならないな。助太刀、感謝する」
「助けてくれて、ありがとうございました」
「いんや、礼には及ばねえ。それよかお前さんの気配消し、なかなかのもんだったよ。見たとこバーサーカーなのに狂ってねえが、そういうもんなのかい?」
「まあ、そのようなものさ」
ほぉ、とバーサーカーの全身を見回す青髪イケメン。まるで値踏みでもするようなそれは、力を図っているのか。
「……まあ、一流の戦士なのは間違いねえか」
「貴公こそ、見事な術だ。確かキャスター、だったか」
「おう、つっても本来の霊基じゃねえけどな。ランサーでの召喚ならもっと楽なんだがねえ」
ププー
と、そこでブレスレットが鳴った。タッチしてホログラムを移すと、ドクターは俺たちを見てホッとする。
『いやぁ、無事でよかった。サーヴァントが出てきたときは終わりかと思ったけど、なんとか生き延びたみたいだね』
「ギリギリですけどね」
『まったく無茶はいけないぞ……と、それはともかく。はじめましてキャスター、御身がどこの英霊かは存じませんが、我々は尊敬と畏怖をもって』
「あー、そういう堅苦しいのはいい。聞き飽きてっからな」
やっぱり、英霊ともなるとかしこまった反応は慣れたものらしい。バーサーカーを見ると、肩をすくめられる。
「だから軟弱男、用件だけを言え。そういうの得意なんだろ?」
『な、軟弱……いや確かに英霊に比べたら貧弱もいいとこだけど……まあいいか。ともかく、あなたは正常なサーヴァントということでいいのですよね?』
「さっきのやつらよりかはな。で、俺からこの街の状況を聞きたいって?ならそっちの事情も少しは話せよ。それが筋ってもんだろ?」
『心得ています。実は……』
そしてドクターは、俺たちの現状を手短にキャスターに説明する。
カルデアのこと、特異点のこと、俺がマスターとして探索を行っていること……必要な情報を渡していった。
『……というわけなのです』
「……なるほどな。それなら都合がいい」
「都合がいい?」
鸚鵡返しに聞くとおう、とキャスターは頷いた。
「実は、俺もお前さんたちを助けたのは何も善意ばかりじゃねえ。丁度手を組もうと思ってたんだ」
「……というと?」
「知っての通り、この街にもう生存者はいねえ。あえていうなら、聖杯戦争で負けてないって意味で俺が唯一だ」
それからのキャスターの説明によると、こうらしい。
なんでもいつの間にかこの街の聖杯戦争は別物になっていて、いきなり一夜にして街一つが丸ごと炎に包まれた。
残ったのはサーヴァントのみ、まず最初にセイバーが聖杯戦争を再開し、とてつもない勢いでキャスター以外のサーヴァントを倒した。
倒されたサーヴァントは聖杯の泥?に侵されて、先ほどの黒いオーラを纏いあの骸骨とか髑髏仮面を連れて街を徘徊するように。
「やつら、何か探しているみたいでな。そのうちの一つがどうやら俺みたいなんだわ」
「……なるほど。確かにあなたがいる限り、聖杯戦争は終わらないものね」
「白髪の嬢ちゃんの言う通りだ。ったく、ランサーなら全部まとめて心臓もらって終わりだってのによ」
「心臓……」
心底残念そうにため息を吐くキャスター。どうやら、よほどランサーとしての自分に拘り……というか誇りがあるみたいだ。
そういえば所長が、複数のクラス適性を持つサーヴァントほど高レベルって言ってたけど、キャスターもそれになる。
高レベルってことはつまり高名な英雄なわけで、そこがランサーじゃないのにまだ生き延びてる所以なんだろう。
サーヴァントってすごいな、と思った。あれ、でもバーサーカーすごい数の武器使ってるけどどれくらいのクラス適性あるんだろ……
「話は読めたわ。あなたは聖杯戦争を終わらせたい、私たちはこの事態を解決したい。目的は一致しているから協力すると?」
「そういうこった。どうだ?この俺じゃあそこのとんでもねえ霊格のバーサーカーよりは劣るだろうが、そこそこ使えるぜ?」
どうする?と問いかけるキャスターに、俺たちは一度顔を突き合わせて相談する。
「で、あなたたちはどうしたいわけ?どうせ契約するのは私じゃなくてフジマルなんだから、意見があるなら言いなさい」
「俺としては、サーヴァントはいればいるほど助かりますけど……」
「先輩の意見に賛成です。それに下手な善意より、よほど信頼できるかと」
『うん、こっちでも目を光らせとくよ』
「私は問題ない。マスターの安全性が増すのは良いことだし……それに、何かしようとしても対処する」
いざとなれば、という雰囲気のバーサーカー。こういうところまで頼りになる。
「決まりね……キャスター。あなたの提案をのみます」
「じゃ、決まりだな。じゃあ仮契約……そこの白髪の嬢ちゃんはマスター適性がねえみたいだから、よろしくな坊主」
「よろしく、キャスター」
差し出されたキャスターの手をとると、新たに自分とキャスターの間に〝繋がり〟が生まれた気がした。
バーサーカーやマシュほどじゃないが、これで俺のサーヴァントってことらしい。感覚が薄いのは仮契約だからかな。
「改めてサーヴァントキャスター、この街限定だがよろしく頼む。んで、早速目的確認といこうか。あんたらが探してんのは、おそらく〝大聖杯〟だろう」
『大聖杯……?聞いたことがないけど、それは?』
「いわば、この土地の本当の〝心臓〟だ。特異点があるとしたら、そこ以外ありえねえ」
続くキャスターの言葉によると、そこに件のセイバー、そして残りの汚染されたサーヴァントたちが待機しているらしい。
『では、そこを目指しましょう。Mr.キャスター、案内を頼めますか?』
「ミスターはいらねえ。それに今はこいつが仮のマスターだ、行くかどうかは坊主が決めろ」
「もちろん、行くよ。放ってなんておけないから」
即答する。キャスターはわずかに目を見開いた後、ニヤリと不敵な笑みを浮かべて頷いた。
新たにキャスターを仲間に加え、俺たちは特異点の修正のために〝大聖杯〟へ向かうことにした。
読んでいただき、ありがとうございます。
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