長くなったため、気分次第で深夜にもう1話投稿します。
楽しんでいただけると嬉しいです。
バーサーカーを探す中で見つけた、空の黒い穴。
その穴はまるで燃えるように赤い光をこぼしていていて、あまりに不気味で見ているだけで背筋に悪寒が走る。
おまけに岩山の両端から黒い霧が流れてきていて、あちらで何かが起きているのは一目瞭然だった。
「あれは、一体……?」
「固有結界に匹敵する魔力濃度……あれは宝具です!」
「それはわかるわよ!一体どっちの宝具なの!?バーサーカー様!?それともあの神霊クラスのサーヴァント!?」
「い、いえ、流石にそこまでは……」
マシュに詰め寄る所長を見ていると、不意に凄まじい喪失感とともに体から力が抜けて膝をついた。
あ、あれ?おかしいな。ほんの少し前まで平気だったのに、まるで令呪を使ったときみたいに何かが無くなって……
「先輩!平気ですか!?」
「これは……急激な魔力の減少による脱力ね。ということは、あの宝具はバーサーカー様のもので間違い無いわ」
良かった、じゃあバーサーカーが宝具を受けたわけじゃあないのか。
だとしても、岩山の向こう側でバーサーカーが戦っていることには変わりない。もし負けてしまったら……
「バーサーカー……!」
『ダメだ藤丸君、行くな!』
走り出そうとした途端、ドクターに制止をかけられた。
「ドクター、今度はなんですか!」
『あの黒い霧は宝具の一部……概念的な〝死〟そのものだ!サーヴァントでも一瞬で絶命するほどの呪いの塊に、一般人の君がそんな状態で入れば一秒ともたずに死ぬぞ!?』
「……呪い?あの黒い霧が?」
ホログラムのドクターは神妙な顔つきで頷き、絶対に行っては行けないともう一度念を押してくる。
詳しそうな所長に目線を送ると、冷や汗を流しながら首肯した。じゃああれは、本当に呪いの霧なのか。
流石に、入れば死ぬと言われた場所に突っ込んでいくほど無謀じゃない。震える拳を握りしめ、黒い霧を見つめた。
オォオ…………
それから二、三分ほど経った頃だろうか。
黒い穴から赤い光が消える。そうすると瞬く間に小さくなっていき、最後には完全に消えてしまった。
それに連動するように、黒い霧も消える。そこでちょうど動けるくらいには回復できた。
「マシュ、所長!」
「はい、行きましょう先輩」
「ったく、しょうがないんだから!」
俺は二人と顔を見合わせ、うなずきあうと岩山の向こう側に向かった。
岩山を迂回し、裏側に行くと……バーサーカーの胸に、あのサーヴァントの大きな槍が突き刺さっていた。
「バーサーカーッ!」
まさか、やられたのか!?
「いえ先輩、よく見てください!」
「バーサーカー様はやられてないわ!」
「え……?」
二人の言葉に、立ち止まってもう一度よく見てみる。
すると、確かに胸の鎧に触れるか触れないかのところで切っ先が止まっていた。ほっと胸をなでおろす。
サーヴァントは、先ほど見た時とは比べ物にならないほど全身傷だらけだった。中には致命傷と思しきものもある。
ガシャン……
槍が地面に落ちた。両腕を垂らしたサーヴァントは片膝をつき、限界がきたのか全身から光の粒子が立ち上る。
「………………」
サーヴァントは、バーサーカーの兜に包まれた顔を見上げた。
一言も言葉を発しているわけではないのに、それはまるで、何かを語りかけているように見えて。
呆然とそれを見つめているうちに、サーヴァントはうなだれて消滅した。後に残った輝くような光の玉が、バーサーカーの前に残る。
バーサーカーは壊れ物を触るような手つきで光の玉に手を伸ばし、掴み取って……
「ぐっ…………」
その場で崩れ落ちた。
「バーサーカー!」
「バーサーカーさん!」
「バーサーカー様っ!」
大斧でなんとか踏みとどまったバーサーカーに、慌てて走り寄る。
「はぁっ……はぁっ……くっ……使い勝手の悪い宝具だ……」
「バーサーカー、平気!?あの、まだ少しなら魔力が残ってるから!」
「落ち着いてください先輩!ま、まずは深呼吸をしてですね……」
「治癒のスクロールはどこ!?ああもう、ごちゃごちゃと紛らわしい!」
バーサーカーに近寄るや否や、大騒ぎする俺たち。こんなの初めての経験だから何やっていいのか全然わかんない!
「……一度落ち着きたまえ、貴公ら。ただ魔力と精神力と生命力が不足しているだけだ。そう深刻な問題ではない」
てんやわんやで騒ぎ立ててるうちに、バーサーカーがそう言った。
全員同時にピタリと動きを止めると、バーサーカーは少し可笑しそうに肩を揺らしてオレンジ色の液体が入った瓶を取り出した。
中身を呷り、さらに青い液体の入った瓶や緑色の草を食べる……また兜を外さないで……バーサーカー。
固唾を飲んで見守っていると、しばらくしてバーサーカーは軽い動きで立ち上がった。
「もう平気だ、マスター。心配をかけた」
『うん、こっちでも確認した。彼のステータスに問題はないよ』
「「よ、良かった……」」
「バーサーカーさん、ご無事で何よりです」
「ありがとうマシュ殿」
どっと心の奥から安堵が溢れ出て崩れ落ちる俺と所長、柔和に微笑むマシュ。バーサーカーに何事もなくてよかった……
それからちょっとして、空気を切り替えた後。
「とりあえず、お疲れ様。神様のサーヴァントに勝つなんて、やっぱりすごいね」
「いや、前回以上にギリギリだ。この宝具を使わなければ刺し違えていたかもしれん」
「僭越ながら、呪いの類とお見受けしますが……」
恐る恐る所長が聞く。
あのドクターが全力で止めに入るほどの強力な宝具だったみたいだけど、一体なんだったのだろう。
宝具はそのサーヴァントの逸話や象徴となるものが昇華されたものというけれど、ならばあれがバーサーカーの象徴ということになる。
「それならマスター、私のステータスを確認してみたまえ」
「えっ、いいの?」
「ああ。この目で実際に見ることはできなかったが、マスターがマシュ殿とともに戦っていたのは
「そ、それならありがたく……って所長、どうやってやればいいんですか?」
「はぁ……手のかかる部下だこと」
呆れる所長になんだかんだで教えてもらい、バーサーカーのステータスを見る。
そしてその宝具の正体を知って……あんぐりと口を開けた。
えっ、何?人類に対する絶対呪殺権?火継ぎまでに繰り返した死を再現して相手にぶつける?
いやいや、えっ!?
「何これ怖い…………あっ、別にバーサーカーが怖いってわけじゃなくて」
「その反応が正しいよマスター。つまるところ、私とはそういう存在なのだから」
宝具が自身の写し身なせいか、やや自嘲気味な口調で言うバーサーカー。そこには一種の諦めが感じられた。
ふと無意識に口が動き始める。
「いや、本当にバーサーカーのことは怖くないよ。確かにこの宝具はその、アレだけど」
そう言えば、バーサーカーが驚いたように振り返った。その際の速さが尋常なものではなく、ビクってしまう。
そしてじっと俺の顔を見つめてきた。フルフェイスの兜で隠されている両目は、この胸の内まで暴かれそうだ。
「えっと、バーサーカー……?」
「……ソウルに揺らぎはない、か…………ふっ、君はお人好しだなマスター」
「えっ、いきなりどうして!?」
「はい、先輩は超がつくお人好しです」
「マシュまで!」
「まあ何?その物怖じしない図太いとこは評価してもいいんじゃないの?」
「所長まで!」
みんなして一体なんなんだ!あっなんかプロフィールが一個見れるようになった!もう訳がわかんない!
「初めてのマスターが君でよかったよ…………本当に」
テンパってた俺は、そんなバーサーカーのつぶやきを聞き逃した。
「さて、いつまでも話しているわけにもいくまい。聖杯とやらを回収しなくてはいけないのではないのかな?」
「そうね、それじゃああの結晶体を回収しに──」
「──いや、まさかここまでやるとはね。想定外にして計算外、私の寛大な許容の範囲外だ」
不意に、声が聞こえた。
全員同時に振り返ると、一瞬のうちに前に出たバーサーカーが弓に矢をつがえ、マシュが盾を構える。
そうしてそこを見ると……そこには先ほどあちら側にあったはずの、黄金の結晶体が空中に浮かんでいた。
「48人目のマスター候補。全く見込みのない数合わせと見逃した私の失態だな、これは」
結晶は不気味な渦へと変わり、そして……そこから緑色の礼服に身を包んだ男が現れた。
特徴的な髪型に棘のついたネクタイ、柔和な微笑みを浮かべるその男は……
「レフ教授!?」
『レフ!?レフだって!?今そこに、彼がいるのかい!?』
「うん?その声はロマニか。君も生き残ってしまったんだね」
驚く俺たちにレフ教授は変わらず微笑む。なせだろうか、あの笑みが……とてつもなく恐ろしいものに見えるのは。
「すぐに管制室に来て欲しいと言ったのに────どいつもこいつも統率の取れないクズばかりで、吐き気がするな」
「レフ教授……?」
「人間というものはどうしてこう、定められた運命からずれたがるんだい?大人しく滅びの定めに従えばいいものを」
そう言ってレフ教授は──今度こそ、心の底から恐怖が滲み出てくるような、いびつな笑みを浮かべた。
これまで知っているものとは根本的に違うそれに、一歩後ずさる。それにかわるように、バーサーカーとマシュが前に出た。
「先輩、下がってください!アレは、私たちの知っているレフ教授ではありません!」
「マシュ殿と同感だ。あれは見たとおりの人間ではない……異形のソウルの持ち主だぞ」
「おや、貴様は〝火のない灰〟か? やれやれ、呼び起こされた王は
心底面倒臭そうにため息をつくレフ教授の言っていることが、俺にはまったくわからなかった。
でも、これだけはわかる。あれは……あのレフ教授のような〝何か〟は、決して安易に近づいてはいけないものだと。
「レフ──ああ、レフ、レフ!生きていたのね!」
しかし──予想外の人物が、レフ教授に近づいていった。
「所長!?何やってるんですか、早くこっちに!」
「ダメです所長!」
「オルガマリー嬢!」
三者三様に手を伸ばすが、時すでに遅し。俺たちの手の届く範囲の外まで所長は離れ、レフ教授に近づいてしまった。
「よかった、あなたがいなくなったら私、これからどうやってカルデアを守ればいいのかわからなかった!」
「やあ、大変だったようだねオルガ。元気そうで何よりだ」
レフ教授はニコニコと微笑むけど、俺にだってわかる。あれは一片たりとも、喜んでなんかいない。
「ええ、そうなのレフ!管制室は爆発するし、この街は廃墟になってるし、カルデアには帰れないし!予想外のことばかりで頭がどうにかなりそうだった!……でも、もういいの。あなたがいればなんとかなるわよね?だって今までずっと助けてくれたもの。今回も助けてくれる、そうでしょ?」
絞り出すような声と懇願するような瞳で、所長は叫ぶ。
その悲痛な声に、胸を締め付けられる気がした。ああ、少しは気苦労が減ったなんて思ってた自分を殴りたい。
所長は必死に耐えてただけで、ここにいる間もずっと爆発寸前だったんだ。それなのに俺は気づかなかった。
でも、それは今はいい。そんなことより、今はレフ教授のことだ。
「所長! 一回こっちに来てください!」
前なら頼りにしてるんだななんて思っとけど……ダメだ、あれ以上所長をあいつの近くにいさせちゃいけない!
「ああ、もちろんだとも。まったく想定外のことばかりで頭にくるよ」
でも、そんな俺の声はレフ教授の言葉に遮られて届くことはなく。
「その中でも一番の予想外が君だよ──
「……え?」
「爆弾は君の足元にセットしたのに、まさか生きているなんて」
ばく、だん?レフ教授は今、爆弾って、そう言ったのか?
「いや、生きているというのは違うな──とっくに
呆然とする俺たちに──レフ教授は、そんなことを言った。
さて、これ書くの辛えな…
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