灰よ、燃え尽きた世界に火を灯せ   作:熊0803

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うおぉおお!(絶叫)
朝からJKの続き読んだんですが、うるっときました。これまで頑張ってきたJKが、初めて声に出して弱音を…
皆さんも是非読んでみるべきだと思います。
楽しんでいただけると嬉しいです。


幕間
キングズインカルデア その1


 目が覚める。

 

「……マシュ・キリエライト」

 

 自分の名を呟く。そうすることで、()()()無事に覚醒できたことを確認する。

 

 危うく失われかけたその確認にどこか懐かしさを覚えながら、ベッド起き上がる。目に映るのは白い部屋。

 

 しばらくぼんやりと壁を見つめていると、ふとなにかがベッドの上によじ登ってくるのが視界の端に映った。

 

「ン〜、フォウッ!」

「フォウさん。おはようございます」

 

 登りきった!とでもいうように耳を立てたのは、フォウさんだった。口元を緩め、フォウさんの頭を撫でる。

 

「フォウ、フォフォウ」

「はい、そろそろ起きないとですね」

 

 フォウさんを両手でそっと床に下ろすと、ベッドから降りる。そしてクローゼットからカルデアの制服を取り出して着替えた。

 

 お気に入りの寝間着を脱ぎ、代わりに着慣れた服とパーカーに袖を通す。そうすると洗面所に向かった。

 

 ガラス張りの扉をあけて鏡台の前に立つと、寝癖のついた髪を直し、歯を磨き、洗顔して身だしなみを整えていく。

 

 ある人に「女の子ならそういうのは気にしなくちゃダメよ?」と言われたのを思い出していると、ふと鏡に映る自分の顔を眺めた。

 

「……私が、デミ・サーヴァントに」

 

 カルデアに帰還してから1日経過したのに、まだ信じられない。自分が曲がりなりにも英霊の力を手にするなんて。

 

 この身に余る強大な力。人理に刻まれた英雄の盾。自分の受け継いだものはとても重くて、でももう目を背けないと誓った。

 

「藤丸、立香先輩……」

 

 私を助けてくれた人の名前を呼ぶ。そうすると先輩の微笑む顔が脳裏に浮かんだ。

 

 藤丸立香先輩。元はごく普通の一般人で、数合わせのためにこのカルデアに強制連行されてきた人。

 

 最初は無害そうな人だな、と思った。サーヴァントでもなければ魔術師でもない、何の変哲も無いただの人間。

 

 でもその胸の中には驚くほどの頑固さと我慢強さがあって、恐怖を振り切って炎に包まれた管制室にやってきた。

 

「先輩の手、大きかったな……」

 

 あの時。この手は煤と自分の血で汚れていた。

 

 なのに、先輩は迷いなく握ってくれた。ぎこちない笑顔と震えた手で、それでも私を不安にさせないように、とても強く。

 

 ドクターの検診以外に初めて触れた男の人の手は、とても安心できた。いいえ、あるいは先輩だからこそそう思うのでしょうか。

 

 ああ、私は一人ではないのだと。あの炎の中、一人で無意味に死んでいくのではないと、そう思ったのは確かで。

 

 思えばあの時から、私は先輩に助けられていたのだろう。

 

「今度は私が、ちゃんと先輩を守らないと」

 

 特異点Fでも、先輩には何度も助けられた。初めてサーヴァントと戦った時も、アーサー王と対峙した時も。

 

 どちらの時も、私は迷っていた。自分ではダメだと決めつけていて、キャスターさんやバーサーカーさんがいて初めて生き残ることができた。

 

 でも、今度からはそうはいかない。バーサーカーさんを除けば、これからの旅で先輩を守れるのは、私だけなのだから。

 

「フォウ?」

 

 そう決意を固めていると、眺めていた手にフォウさんの手が置かれた。それに思わず苦笑して、もう一度鏡を見る。

 

「マシュ・キリエライト、頑張ります。えいっえいっおー!」

「フォーウ!」

 

 フォウさんと一緒に軽く自分を鼓舞して、私は部屋を後にした。まずは、朝食をとりにいきましょう。

 

 そう思って食堂の方に進路を向け、角を曲がると──そこにはとても見慣れた男性が、何かに困った様子で立っていた。

 

「先輩」

 

 声をかけると、その男性……今しがた考えていた藤丸先輩は、こちらに気づいて振り返った。

 

「あっ、マシュ。おはよう。それとフォウも」

「フォウ!」

「はい、おはようございます。こんなところでいったいどうしたんですか?」

 

 歩み寄って問いかける。すると先輩はバツが悪ように後頭部に手を回して、いやーと声をあげた。

 

 なんでも、また道がわからなくて迷ってしまったらしい。そこに私が偶然通りかかった、というところなのでしょう。

 

「食堂があるって聞いたんだけど、どこにあるのかわからなくて」

「なるほど、それは大変ですね。では私がご案内します」

「本当? ありがとう」

「いえいえ、お気になさらず。ちょうど私も行くところでしたので」

 

 それに、先輩には支えてもらった恩がある。案内をするくらいなら、いくらでも承りますとも。

 

 早速、移動を開始する。隣に並んで歩いて、時折道を曲がる時に声をかけていると話に聞く案内人(ガイド)の気分になります。

 

「マシュがいてくれて助かったよ」

「そう言っていただけると嬉しいです。それより先輩、またということはすでに一度迷ったことがあるのでしょうか?」

「うっ、面目ない。流石に来て二日じゃ覚えきれなくて……」

「い、いえっ、責めてるわけではありません!ただ、その時はどうやって目的の場所へ来たのかと気になったのです」

「あ、そういう意味ね。その時は職員の人に案内してもらったんだ」

「職員の方、ですか?」

 

 鸚鵡返しに聞き返すと、うんと頷く先輩。そしてその職員の人の特徴を教えてくれる。

 

「ああ、多分その方はエミリアさんではないでしょうか」

 

 エミリア・フィー・ルーソフィア。イギリス出身の方で、医療部門に所属するスタッフの方だったと記憶している。

 

 ドクターロマンの助手でもあり、時々検診の時にお会いしたことがあった。私の印象では神秘的な人、が最も良い表現でしょうか。

 

 皆エミリアさんのことを知っているけれど、出身以外はどのような人物なのかは誰も知らない。そんな、不思議な人。

 

 それを説明すると、先輩はふむふむと頷く。それに合わせてフォウさんが尻尾を振るのが少し可愛かった。

 

「エミリアさんっていうのか、あの人。今度会ったら改めてお礼を言わなくちゃな」

「はい、それがいいと思います……と、着きましたね」

 

 世間話をしている間に、食堂についていた。案内ミッション、コンプリートです。

 

「あ、でも……」

「?」

「今、料理をできる人がいるのでしょうか……」

「あっ」

 

 そう。先のレフ・ライノール・フラウロスの爆破により、カルデア職員の約七割が死亡してしまっている。

 

 その中にはコックの方もいたはずで、料理と呼べるものを作ることができるスタッフが残っているのかわからなかった。

 

 それに現在、特異点の明確な時代を特定するために残った職員の方々は寝食を忘れ解析をしていると聞いている。

 

「どうしましょう、もし何もなかったら……」

「あれ、でも厨房っぽいとこに明かりがついてるよ?」

「え?……あ、本当ですね」

 

 先輩の指差す方を見ると、たしかに厨房のカウンター部分のライトは点灯していた。あれなら平気だろう。

 

 杞憂も無くなったので、早速二人で厨房に入る。そうするといつものようにカウンターで注文をした。

 

「すみません、今日のメニューは……」

 

 スッと無言でカウンターの奥からメニュー表が差し出される。お礼を言ってそれを受け取った。

 

「えっとですね、先輩。今日のオススメは」

「…………」

「先輩?」

 

 メニュー表を見せようとしたら、先輩が絶句しています。はて、何故こんな顔をしているのでしょう。

 

「先輩?どうかしたんですか?」

「ま、まままままマシュ」

 

 一回も聞いたことのないような震えた声で、先輩が私の背後を指差す。

 

「厨房がどうかして──」

 

 そして、振り返って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこにいた私を()()()()()()()()に、あんぐりと口を開けた。

 

 その人は、とても大きかった。目視ではおおよそ二メートル、厨房の天井に日本で言うところの怒髪天の髪が触れている。

 

 その人は、まるで以前見たエジプトのミイラのように体が干からびていた。それでもなお逞しく、歴戦の戦士なのが伺える。

 

 その人は、エプロンとコック帽をしていた。すさまじい巨躯にはち切れんばかりのエプロンは、より一層恐怖を煽る。

 

 虚ろな眼窩で私を見下ろしているのは──特異点Fでバーサーカーさんが打倒したはずの、神霊サーヴァントだった。

 

「なっ、なんでここに……」

「お、落ち着いてくだひゃい先輩、まずはお話を聞いてみましょう」

 

 ああっ、噛んでしまった。先輩を守ると誓ったばかりなのに、何を弱気になってるのですか!

 

「………………?」

 

 こてん、と神霊サーヴァントは首をかしげる。まるで、注文しないのか?とでも聞いているようです。

 

 その姿に、敵意はなかった。本当に注文を待っているコックさんのようで、私は意を決して話しかける。

 

「その……なぜ、あなたはここに?召喚を行なったという報告はありませんが……」

 

 とはいえ、カルデアに帰ってきたのは昨日の今日だ。もしかしたら私の知らないうちに召喚されたのかもしれない。

 

「…………」

 

 そう聞くと、神霊サーヴァントはふるふると首を横に振った。えっ、召喚されてないのなら、なぜここに……

 

 まさか、レフ・ライノール・フラウロスの仕業!?この神霊サーヴァントも回収された王の一人で、カルデアに奇襲をかけに……!

 

「……!」

 

 サーヴァント化しようと身構えると、神霊サーヴァントは何かを思いついたようにぽん、と手のひらを叩いた。

 

 そうするとぐいっとこちらに身を乗り出してくる。そして……その大きな手で先輩の頭を鷲掴みにした。

 

「ぬわっ!?」

「せ、先輩!?」

 

 いきなりの行動にアワアワとしている間に、神霊サーヴァントは先輩の頭から手を離す。

 

『……この言語であっているか』

「「っ!?」」

 

 突如、脳裏に響く声。深みのあるその声は、まるで直接頭に語りかけているかのような……

 

「もしかして、貴方が……?」

 

 また頷く神霊サーヴァント。続けて先輩の記憶を介して言語を知り、ソウル……つまり魂に語りかけていると言う。

 

 思わずぽかんとしてしまった。視界の端に移る先輩も同じ顔をしている。まさか、そんなことができるなんて。

 

『肉体が…………朽ちかけでな…………これで……話させてもらう…………』

「あ、はい……」

 

 かろうじて返事を返せば神霊サーヴァントは首肯して、話を始める。

 

『ここへは…………助力しに……来た…………』

「「えっ!?」」

 

 思わず声を上げて先輩と顔を見合わせた。信じがたい言葉を聞いた気がするのだ。

 

 この神霊サーヴァントが、私たちに協力してくれる?バーサーカーさんが宝具を使うほどの強力な英霊が?

 

 神霊サーヴァントの顔を見る限り、嘘を言っているようにも見えません。いや、干からびてるから表情は理解不能なんですけど……

 

「ほ、本当なの?」

 

 今度は先輩が恐る恐る聞いた。神霊サーヴァントは数度目かになる首肯をする。

 

『俺は……嘘は…………言わない……』

「それじゃあ!」

 

 もし本当に協力してくれるのなら、強力な戦力に……!

 

『だが……戦うのは疲れた…………』

「えっ?」

「でも今、協力してくれるって……」

『ああ…………だから俺は……料理を作る』

「「へっ?」」

 

 ここが俺の戦場、と言わんばかりに包丁とおたまを構える神霊サーヴァント。それを見てなんともいえない気持ちになった。

 

『腹が減っては…………戦はできぬ……ならば……腕によりをかけて…………作ろうではないか…………』

「は、はぁ……」

「えっと、お世話になります……?」

『うむ……それでは……さっさと注文しろ…………でなければ雷を食らわせる…………』

 

 あまりに物騒な選択問題に、私たちは慌てて注文をするのでした。




だめだ、ネタが全然思いつかない。
みなさま、良ければこんな話を見たい的なのを……(懇願)
思ったこと、感じたことを書いていただけると嬉しいです。
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