現在ダクソ3で二週目のためにレベル上げ中。
楽しんでいただけると嬉しいです。
「き、気持ち悪い……」
「だ、大丈夫ですか先輩?」
ラ・シャリテから程遠い、とある森の前。
そこで地上に戻って、降りて早々に空飛ぶ馬に乗るなんて初体験のおかげで俺は現在グロッキー状態だった。
こう、内臓が何回かシェイクされたような感覚が絶え間なくする。あれだ、爺ちゃんに滝で蹴り落とされた時みたいな……
「ふう。ここまで逃げれば大丈夫かしら?」
情けなくもマシュに背中をさすってもらっていると、馬から降りた赤いドレスの女の子が振り返ってそういう。
見上げると、近くに止まっていた馬車からも人が出てきていた。豪華な衣装の男の人と、竜みたいな角とか尻尾の生えた女の子。
それに、着物姿の小さい女の子も。流石にうずくまったまま話をするのは失礼なので、立ち上がろうとして──
「あ、れ?」
「先輩!」
足に力が入らなくて倒れそうになったところを、マシュに支えられる。
「あ、ありがとう」
「いえ……あの、ルーソフィアさん」
「危機的な状況から脱したことによって、極度の緊張が解けたのでしょう。疲労も溜まっているようですし、一度休むことをお勧めいたします」
「あら、それは大変だわ!自己紹介をしたかったけど、少し移動しましょうか」
ププー
『それなら、森の中に霊脈の反応があるからそこにするといい』
「ありがとうございます、ドクター。皆さんもそれでよろしいでしょうか?」
「ええ、もちろん」
「感謝します。先輩、歩けますか?」
「うん……」
一人ろくに動けなくなったことを恥じながら、マシュに肩を貸してもらって皆で森の中に入っていく。
結構奥の方まで入っていき、ドクターの案内で霊脈を発見。そしてマシュの大楯を触媒にサークルを開いた。
さらにルーソフィアさんが結界を作って、ひとまず安全を確保することができた。
「ごめんね、迷惑かけて」
「いえ、先輩が無事で何よりです」
手頃な岩に背を預け、マシュが少し離れた場所に座ったところで、自分を助けてくれた人たちを見る。
皆、それぞれ違う個性的な特徴を持つ彼らは、同じように俺たちを見ている。これ、何か話し出すのを待ってるよね。
「それで、あなたたちは……」
「サーヴァント、ですよね?」
「ええ、そうです」
話しかけられたことが嬉しいのか、ドレスの少女はパッと笑顔の花を咲かせた。
「では、改めまして。私の名は〝マリー・アントワネット〟。クラスはライダーです」
「マリー・アントワネット!?」
確か、フランスの王妃だったよな。一番印象に残ってるのは、民衆にパンがないならケーキを食べればいいじゃないだっけ。
ダ・ヴィンチちゃんの世界史復習講座で習った中では、最後は革命の中で死刑にされてしまった悲劇の女性っていう話だけど……
「え、えっと、初めましてアントワネット王妃様?」
「あら、今の私はただの一人のサーヴァント。そんなにかしこまらなくてもいいのよ?」
「では、なんとお呼びすれば?」
マシュがそう聞けば、うーんと王妃様は首をひねる。そして「好きな風に呼んでくださって構わないわ」と言った。
「じゃあ……マリーさん、とか?」
「まあ、マリーさんですって!」
「ご、ごめんなさい!?」
「なぜ謝るの? 私は今、とっても嬉しいのに!」
「ええ……?」
キャーキャーと飛び跳ねてはしゃぐ、王妃様改め、マリーさん。その様子はまるで、普通の女の子のようだ。
「ねえ、異国のお方。よろしければこれからもそう呼んでくださらない?ああ、できればあなたにも!」
「せ、先輩、どうしましょう」
「本人が言ってるんだし、いい、のかな……?」
もう一度マリーさんを見れば、ぜひ!とでも言いたげに目をキラキラと輝かせている。これじゃあむしろ、呼ばないと拗ねそうだ。
そうして二人でマリーさんと呼ぶと、案の定また歓喜の声をあげた。なんだか、いつもテンションの高い友達と話してるときみたいだ。
「おっと、ついはしゃいでしまったわ。それでは、私の紹介はこの辺りで。どのような人間かは、どうか皆さんの目と耳でじっくり吟味していただければ幸いです」
綺麗に一礼をして、マリーさんは一歩下がる。そうすると男の人の背中を押して前に出させた。
「さあアマデウス、あなたも自己紹介よ」
「はいはい……〝ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト〟。クラスはキャスター、彼女と同じくサーヴァントだ」
「今度はモーツァルト……」
学校であった音楽の授業で……いや、多分少しでも音楽を知っている人なら、絶対にわかる有名な音楽家の一人だ。
マリーさんと同じくフランスの人で、若くして亡くなった天才だったという。英雄と言われると、ちょっと想像湧かないけど。
「あ、その顔。僕がなぜ英霊かわからないって思っているようだね?」
「ず、すみません」
「いやいや、何も悪いことはない。僕自身も、なぜ喚ばれたのか見当がつかない。確かに僕は偉大な音楽家だが、それでも一芸術者に過ぎないのだから」
実感がわかない、か……そういえば、バーサーカーもカルデアで話しているときに同じようなことを言ってたっけ。
私はサーヴァントであるが、それは現界する為の称号であり、決して英雄などというものには当てはまらない、と。
バーサーカーは、今どうなっているのだろう。あの最初に俺を助けてくれた人は、また俺たちを守るために……
「なんだ、不思議そうな顔をしたり沈んだ表情をしたり、忙しい少年だね」
「あ……ごめん、なさい」
「ま、別にいいけどね。それよりそこのお二人さん、そろそろいいかい?」
「あら、やっと私の出番ね!」
モーツァルトさんが呼ぶと、退屈そうにしていた二人の少女のうち、ドラゴンのような子が勢い良く立ち上がった。
座っていた岩からジャンプして目の前に着地すると、ピシッとキメポーズをとる。まるでテレビで見る、アイドルのように。
「アタシの名は〝エリザベート・バートリー〟!クラスはランサーよ!」
「エリザベート・バートリー……!」
「それってさっきの……」
「おそらく、ジャンヌ様と同じ現象でしょう。同じ座から呼び出されたサーヴァントと推測します」
なるほど……つまり、見た目は全然違うけどあのカーミラと呼ばれたサーヴァントと同一人物ってことだな。
そう納得していると、エリザベートさんは不機嫌そうに鼻を鳴らした。まるでそう言われるのを嫌がってるみたいだ。
「アタシとアイツを同じにしないでちょうだい。確かに同じ人間だけど、アタシはアイドルだから!」
「「え」」
い、今、アイドルって言った?
この子、本当にあの物騒なこと言ってたサーヴァントと同じ英霊なんだよね?
「戯言もほどほどにしてください、自称アイドルトカゲ娘」
「あっちょ、なにすんのよこのアオダイショウ!」
突拍子もない発言に呆然としていると、エリザベートさんを押しのけて着物の女の子が出てきた。
「では、最後に私が……〝清姫〟クラスはバーサーカー、以後お見知り置きを」
綺麗にお辞儀をする清姫さん。おお、なんだか日本人って感じがする。
「彼女は日本の清姫伝説の人物でしょう。愛を誓いながらも逃げた男に怒り狂い、龍に変貌して鐘の中に逃げ込んだ男を焼き殺したと言われています」
……え、怖くない?
「博識ですのね。ええ、私はそういう英霊ですわ。ですので同じ日の本のお方、どうか嘘だけはつきませぬよう」
「つ、ついたら?」
「うふふふふふ」
怖い!笑顔なのに怖いよこの子!?バーサーカーが理性的だから実感湧かなかったけど、バーサーカーってこういう感じなのか!
そうは思いつつ、さっき聞いた話を思い出して激しく頷く。にこり、と笑って清姫さんは後ろに下がった。
「これで私たちは全員自己紹介しましたね。次はあなたたちのことを教えてくださる?」
「藤丸立香です。一応、マシュたちのマスターをやってます」
「私はマシュ・キリエライト。デミ・サーヴァントです。真名は分かっていませんが、先輩のサーヴァントです」
「エミリア・ルーソフィア。ルーソフィアとお呼びください」
それぞれ自己紹介して、最後に三人でジャンヌさんの方を見る。
「それから、こちらが──」
「ジャンヌ。ジャンヌ・ダルクね」
紹介する前に、マリーさんがジャンヌさんの名前を言った。
俺たちが驚く中で彼女はジャンヌさんに近づいて、言葉を投げかける。
「フランスを救うべく立ち上がった、救国の聖女。生前からお会いしたかったお方の一人です」
「……私は、聖女などではありません」
俯いて、マリーさんの言葉を否定するジャンヌさん。その横顔は暗く、脳裏にあの黒いジャンヌのことがよぎった。
実際にもう一人の自分と会って、その憎しみを聞いて……きっと彼女は、とても辛いだろう。俺ではわからないくらいに。
「……ええ、貴女自身がそう思っていることは皆分かっていたと思いますよ」
「…………」
「でも、少なくともその生き方は真実でした。その結果を、私たちは知っています」
「……それは」
「だから皆が貴女を讃え、憧れ、忘れないのです。ジャンヌ・ダルク、オルレアンの奇跡の名を」
「マリーさん……」
ジャンヌさんは顔を上げて、微笑むマリーさんに何かを言おうとして……けれど、最終的にまた俯いてしまう。
「ま、その結果が火刑であり、あの竜の魔女なわけだが。良いところしか見ないのはマリアの悪い癖だ」
「もう!またアマデウスはそんなこと言って!」
「だってそうだろう?完璧な聖人なんて言われて傷つくのは彼女で……」
「それでも──」
なんだか言い合いを始めてしまうマリーさんとモーツァルトさん。
背の高いモーツァルトさんに小柄なマリーさんが怒る様は、まるで気の知れた友人のようで、見ていて頬が緩んでしまう。
しばらくの間言い争いは続き、なぜか途中モーツァルトさんを罵倒しながらもなんとか喧嘩?は収束した。
「とにかく!私は彼女にはとても興味があるんです!」
「分かった分かった、君がジャンヌ・ダルク好きなのはね」
「好き?いいえ、どちらかというと信仰よ。あとちょっとの後ろめたさと……小さじ一杯分くらいの、ごめんなさい」
もう一度ジャンヌさんを見て、マリーさんは少しだけくらい声音で言う。
「これは愚かな王族が抱く、聖女への罪悪感です」
「……マリー・アントワネット。貴女の言葉は嬉しい。でも、だからこそ私は告白します」
ジャンヌさんが立ち上がる。ゆっくりとマリーさんに歩み寄って、胸に手を置く。
「生前の私は、聖女なんてものではなかった。私はただ、自分が信じたことのために旗を振って、その結果己の手を血で汚しました」
「……ジャンヌ・ダルク」
「もちろん、そこに後悔はありません。結果として異端審問で弾劾されたことも──私の死も」
ですが、とそこで自分の言葉を否定して、ジャンヌさんは閉じていた目を開く。
「流した血が、多すぎた。田舎娘は自分の夢を信じすぎたんです。けれど──その夢にきつく先がどれほどの犠牲を生むのか、その時まで想像すらしなかった」
後悔はなけれども、反面畏れを抱くこともしなかった。それが自分の、最も深い何よりの罪である。
ジャンヌさんは、そう言った。そしてまた、聖女と呼ばれたのは結果であり、なのに自分をそう呼ぶのは違うとも。
「だから、ご期待に答えず申し訳ありませんが」
「だから、ご期待に応えず申し訳ありませんが」
「……はい」
重々しく頷く。
そんな彼女に──顔を上げたマリーさんは、笑っていた。
「それなら、私は貴女をジャンヌと呼んでもいい?」
「え?……え、ええ。勿論です。そう呼んでいただけると、なんだか懐かしい気がします」
「よかった。それなら貴女も私をマリーと呼んで?」
「で、ですが……」
「貴女がただのジャンヌなら、私もただのマリーになりたいわ。ね、お願い?いいでしょ?」
「は、はい。では……マリー?」
「ああ、嬉しいわ!貴女にマリーと呼んでもらえるなんて!」
ジャンヌさんにマリーさんが抱きついて、ジャンヌさんが顔を赤くする。するとマリーさんはさらに嬉しそうに抱きしめた。
やれやれ、と皆が呆れるように笑う。モーツァルトさんたちも、マシュも……少しだけ暗い、ルーソフィアさんも。
俺もさっきまで死地にいたというのに、気が抜けてはは、と笑いがこぼれたのだった。
読んでいただき、ありがとうございます。
ありふれた職業で世界最強と仮面ライダービルドのクロスオーバー、星狩りと魔王という作品をやっています。そちらも読んでいただけると嬉しいです。
思ったこと、感じたことを書いていただけると嬉しいです。