灰よ、燃え尽きた世界に火を灯せ   作:熊0803

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やべえ、投稿方法ミスった!?
どうも、Huluでターミネーター見て興奮してます作者です。あんまり評判よくないけどジェニシス好き。特にT -800が本当の父親みたいなところが。
さて、今回は〝彼〟が出ます。
楽しんでいただけると嬉しいです。


〝義賊〟

 

 

 

 

 また、この夢だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 闇の中を、傷だらけの誰かが歩いている。

 

 

 

 

 

 

 

 折れた右手は垂れ下がり、潰れた片足を無理やり動かし、もう一方の手では血に濡れたとても長い剣を引く。

 

 

 

 

 

 

 

 ひどく疲れ果てたその後ろ姿は、先の見えない闇を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 浮かぶのはやはり、一つの疑問。

 

 

 

 

 

 

 

 多くを見た。

 

 

 

 

 

 

 

 多くを知った。

 

 

 

 

 

 

 

 多くを裏切った。

 

 

 

 

 

 

 

 多くを斬った。

 

 

 

 

 

 

 

 そして、多くを失った。

 

 

 

 

 

 

 

 数えきれないほど、この手から取りこぼした。

 

 

 

 

 

 

 

 長かった。自分の齢すら忘れるほど旅をした。

 

 

 

 

 

 

 

 ……………………だが、私は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その果てに、何かを手にできたのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……まだ、答えるものはいない。

 

 

 

 

 

 

 

 彼の周りにはもう、誰も……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〝あんた、火の無い灰ってやつかい?〟

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな時だった。目の前に、青い光が現れたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 それは、広がる闇に対してあまりに矮小な光だった。

 

 

 

 

 

 

 

 けれど、その人が片方が捻れた足を止めるには十分で。

 

 

 

 

 

 

 

 その人は、しばらく光の前で止まって。

 

 

 

 

 

 

 

 やがて、共に歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 疑問は尽きない、後悔が消えたわけでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 何も、変わらない。

 

 

 

 

 

 

 

 ああ、でも……少しだけ、温かい。

 

 

 

 

 

 

 

 そう思ったからだろうか。光が人の姿になる。

 

 

 

 

 

 

 

 その人よりは、頭二つほど低い背丈。顔は青い被り物でよく見えない。

 

 

 

 

 

 

 

 でも、彼はその人を蝕む闇ではない。

 

 

 

 

 

 

 

 だから、知りたいんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 あなたは、誰だ?

 

 

 

 

 

 

 

 ●◯●

 

 

 

 ゴツン!

 

 

 

「ふごっ!?」

 

 鼻先を何か硬いものにぶつけて、目が覚める。あまりの痛みに鼻を押さえて、勢いよく顔を上げた。

 

「ってー……」

「おはようございます先輩、大丈夫ですか?」

「うん、平気……」

 

 無意識的に左を向くと、ほっとした様子のマシュがいる。そのさらに一つ向こうでは、ジャンヌが苦笑していた。

 

 周囲を見渡すと、どこともしれぬ平原。尻の下には少し見慣れた硝子の馬と、同じものに乗った仲間たち。

 

 そうか。移動中に寝ちゃったのか。そう思いつつ、またいつものように頬に手を当てると……やはり、涙が。

 

「また、あの夢でしょうか?」

「うん、まあね」

「夢、ですか?」

「はい。どうやら先輩は、昔から同じ夢を見るようなのです」

「なるほど……」

 

 頷くジャンヌから目線を手元に移す。そして握った右手を開くと、そこにもやっぱり狼の指輪が握られてた。

 

 何度目かわからない夢。先などない暗闇を、終わりなどない永劫の暗黒の中をひたすらに歩き続ける。

 

「でも、どうしてだろう」

「?」

「なんだか、今回はいつもより……少し、いい気がしたんだ」

 

 だからだろうか。なぜだか、いつもは冷たいばかりの一筋の涙が、ほんの少しだけ暖かく感じたのは。

 

「夢もいいけどね、馬から落ちないでくれたまえよ。マスターの君に大怪我でもされたら呆れかえって物も言えないよ」

「あ、す、すいませんモーツァルトさん」

「もうっ、アマデウスったらまたそんな言い方して。良いではないですか、あんなに奮闘したのだから」

「まあ、そこは認めるけどね。何せ敵のサーヴァントを一体倒したのだから」

 

 ……そう。

 

 俺たちは聖女マルタを打倒して出発し、今は件の竜殺しのいる街──リヨンの町へと向かっていた。

 

 途中で寄った街での情報収集によると、少し前にリヨンは滅び、生き残った住民は他の町へと逃げたようだ。

 

 だが、怪物に加えサーヴァントと思しき人間がやってくるまでは〝守り神〟と呼ばれる、大きな剣を持った男が街を守っていたらしい。

 

 おそらくは、それが〝竜殺し〟の英雄。あの見るからにおっかない黒竜を倒せるかもしれないサーヴァント。

 

 それに……

 

「例の人も、リヨンに行ったっていうしね」

「バーサーカーさんのお知り合いらしき方ですね。両方とも無事だと良いのですが……」

 

 街の兵士から聞いた話。それによると、例のソウルの術を操る人は、その英霊(推定)の話を聞いてリヨンに行ったらしい。

 

 それきり、帰って来ないのだそうだ。各街の伝令によると、時折他の街に現れることから生きてはいるようだが……

 

「皆さん、感謝していましたね」

「僕からしたら不気味だけどね、そんな義賊じみた行為。滅んだ街に残った物資を運んでくるというし、敵の内通者かもしれないよ」

「アマデウス!」

「いえ、警戒することは悪いことではありません。ここは特異点ですので、まずは疑念を抱くことも重要でしょう」

 

 その言葉に、同じ硝子の馬で後ろに乗ったルーソフィアさんを見る。横向きに座った彼女は、静かに黙していた。

 

 聖女マルタとの戦いの後、重複契約でぶっ倒れたことでしこたま怒られた時とは大違いだ。あの時はものすごく怖かった……

 

「ですが、今回に限っては心配をせずともよろしいでしょう」

「へえ……その根拠は?」

 

 そうモーツァルトさんが聞くと、ルーソフィアさんは少し考えてから答える。

 

「もしも、私の予想している人物ならば……」

 

 曰く、その人は力あるものによって虐げられる人々の為にこそ、その力を振るうもの。凄まじき高壁をよじ登った不屈の盗人。

 

 名うての盗賊として名を馳せ、〝義賊〟の誇りを持つ彼は、その腕によりバーサーカーの旅路を最後まで支え続けた一人らしい。

 

「へえ、すごい人なんだね」

「ええ……それに、もう一人のジャンヌ・ダルクの目的は徹底的な破壊。情報収集よりも、直接殲滅する方が手っ取り早いと考えるでしょう」

「それもそう、か……まあ、とにかく会ってみないとわからないかな。僕は僕の聞いた音しか信じない」

「それが賢明です」

 

 

 

 そんなこんなで話をしながら、硝子の馬に乗って移動すること二時間くらい。前方に砦が見えてきた。

 

 

 

「見えました、あれがリヨンです」

「ええ、ですが……」

 

 遠目から見ても、リヨンは完全に壊滅していた。もはやその街を守る壁さえも瓦礫の山と化している。

 

 近づいてみると、よりその無残さがわかった。積み上がる瓦礫が、どれだけの攻撃を受けたのかを物語っている。

 

 これでも、その剣を持ったサーヴァントが襲来したサーヴァントを抑えたお陰で死傷者はほとんどいなかったという。

 

「何度見ても、酷いですわね……」

「ふん、綺麗じゃないステージって嫌いよ」

「…………」

「ジャンヌ? お顔が暗いけれど大丈夫?」

「……ええ、なんとか」

「ドクター、生体反応はあるでしょうか?」

 

 マシュが問いかけるも、ドクターは答えなかった。あれ、とブレスレットを軽く小突くが反応しない。

 

 何回かタップしてホログラムを呼び出そうとしたけど、一向に繋がる気配はなかった。どうやら通信できないようだ。

 

「おや、不調かい?」

「そのようです……では、二手に分かれて龍殺しと、ついでにバーサーカーさんのお知り合いを探しましょう」

「まあ、いいアイデアね。それではちょうど八人いることですし、綺麗に分けましょう」

 

 話し合いの結果、東側から俺とマシュ、ジャンヌ、ルーソフィアさん。西側をマリーさんたち残りの四人が探すことになった。

 

 どちらかが見つけるか、あるいはどちらも成果がない場合でも二時間後にここで合流する約束をして別れる。

 

 そうして、市街の探索を始めたわけだが……どこもかしこも、戦いの爪痕が残っていた。

 

「全部、壊れてるね」

「どこもかしこも、徹底的に破壊されているようですね」

「おそらくは竜殺しのサーヴァントと、もう一人のジャンヌ様の放ったサーヴァントとの戦闘の余波でしょう」

 

 そう言うと、ジャンヌが暗い顔をした。あっ、この話題はまずかったか。

 

「ご、ごめんジャンヌ」

「……いえ。でも、どうしてもう一人の〝私〟は、あんなに美しかった街をこんなに……」

 

 思い悩む様子のジャンヌ。何度見ても、この光景をもう一人の自分がやったとは思いたくないのだろう。

 

 ごく普通の俺だってそうなんだから、ジャンヌの性格ならもっと悩む。それこそ、自分自身を疑うほどに。

 

「……俺は」

「……マスター?」

「俺は、違うと思う。あの黒いジャンヌと、今俺の前にいるジャンヌは」

 

 だから。そんな彼女のマスターになったなら、励ますくらいはしたっていいはずだ。たとえそれが、気休めでも。

 

「だって、本当に少しでも恨んでるならあんなことは言えない。きっとジャンヌは、本当に心の底から人を信じてる。そうだろ?」

「ありがとうございますマスター。でも……」

 

 

 

 

 

 ギャォオオオオオオ!

 

 

 

 

 

 ジャンヌが答えようとしたときだった。聞き覚えのある耳障りな咆哮に空を見上げれば、いつのまにかワイバーンが集まってきていた。

 

 それだけじゃない、廃墟の影やそこら辺の物陰から、たくさんのゾンビが出てきた。いわゆる生ける屍(リビングデッド)ってやつだ。

 

「くっ、やっぱ来たか!」

「敵性反応、多数!囲まれています!」

「あれは、元はこの街の人間たち……!なんて外道な……!」

「ジャンヌ様、迎撃できますか?」

「……はい!」

 

 マシュとジャンヌ背中合わせになって、間に俺とルーソフィアさんを挟むと迫りくるワイバーンとゾンビたちの軍団に迎撃を始めた。

 

 流石にこいつらの相手はもう慣れたので、冬木、カルデアの演習、そしてこの世界に来てからの実戦で鍛えた指揮で敵を処理していく。

 

 マシュと本来の力を取り戻したジャンヌは、いつものようにルーソフィアさんの支援も込みで次々と敵を蹴散らした。

 

「〜〜♪」

「はぁああっ!」

「セァッ!マスター、また後方から新手です!」

「流石に数が多くないか!?」

 

 街の中のモンスター全てが集まってきているのか、いくら倒せどキリがない。いくらなんでも無限には戦えないぞ!

 

 それでも、一瞬でも気を抜けば崩れる。必死に声を張り上げ、二人に指示を出しながら撤退を視野に入れ始めたとき。

 

 

 

 グルァアアア!

 

 

「きゃっ!」

「マシュ!?」

 

 少し奥まっていた場所まで行っていたマシュが、倒したはずが上半身だけで動き出したゾンビに足を掴まれた。

 

 結果、大楯を持つ腕から全身への体重移動に失敗してたたらを踏む。そこにワイバーンが空から殺到した。

 

「マシュ、危ないっ!」

「間に合ってください……!」

 

 手を伸ばし、ジャンヌが全力で走る。しかし追いつく直前に、ワイバーンの鋭い牙がマシュに襲いかかって──

 

 

 

 

 

 ヒュッ──バヂヂヂヂヂヂヂッ!!!

 

 

 

 

 

「……え?」

 

 

 

 ギャァアアアアァアアアアァアアアアッ!?

 

 

 

 気がついたら、ワイバーンが全身に放電を纏って悲鳴を上げていた。突然の光景に、呆然としてしまう。

 

 そうしている間に放電は収まり、痙攣していたワイバーンは白目を向いて地に落ちた。そこでマシュがハッとして体制を整える。

 

「やぁっ!」

「ガッ!?」

 

 走り寄っていたゾンビを大楯で蹴散らして、ちょうど正気に戻ったジャンヌと一緒に戻ってきた。

 

 当然、後をゾンビとワイバーンが追いかけてくるが……また何かが投擲され、ワイバーンを放電が襲い、ゾンビを爆煙が蹴散らす。

 

「マシュ、平気!?」

「は、はい、何とか。それで、この援護はどこから……」

 

 謎の援護を恐れてか、魔物たちが近づいてこないのをいいことに辺りを見渡す。

 

 しかし、人影ひとつ見当たらない。一体何がどうなって……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《こっちだよ》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え?」

 

 不意に、声が聞こえた。それは外からじゃなくて、まるで頭の中に直接語りかけているかのような感じで。

 

 それにどこか、既知を感じた。あれは確か、そうだ……冬木で、バーサーカーがソウルを通じて語りかけてきたとき。

 

「っ!」

 

 そこまで考えて、もう一度周りを見渡す。マシュたちが武器を構えつつ、俺を不思議そうに見た。

 

 

 

《坊主、こっちだ》

 

 

 

 また、聞こえた。今度は何となくどこから聞こえてくるのかわかって、そちらの方向を向く。

 

 マシュたちの方に目線を戻すと、ふとルーソフィアさんが頷くのがわかった。この人も聞いたということは、やっぱり──

 

「マシュ、ジャンヌ、あっちだ!今のうちに突っ切っていこう!」

「藤丸様の意見に賛成です」

「え、ええ!?」

「マスター、ルーソフィアさん、どういうことですか!?」

「後で説明するから、早く!」

 

 困惑する二人だが、このまま戦ってもジリ貧なのは変わらないと思ったのだろう。武器を構え直し、言った方向に向かってくれる。

 

 謎の攻撃に怯んでいる魔物をたちを二人が蹴散らして、俺とルーソフィアさんはその後ろについて包囲を突破した。

 

 それから、脇目も振らずに走り続ける。後ろから聞こえる怪物たちの声に、背中にどっと冷や汗が噴き出た。

 

 〝そこ〟までの道筋は、心配せずとも時折脳裏に聞こえる声が示してくれた。しばらく離れた所の路地裏で止まり、崩れ落ちる。

 

「はぁっ、はぁっ……」

「ここまで、来れば、もう大丈夫、でしょうか」

「ふぅ、ふぅ、多分、ね」

「…………」

 

 俺たち三人が息を切らす中、そんなに呼吸の乱れていないルーソフィアさんは周囲を見る。さ、さすがは魔術の総本山の卒業者だ。

 

 

 

 

 

 ギィ…………

 

 

 

 

 

 少しして、息も整ったところで近くの扉が軋んだ音を立てて一人でに開いた。思わずビクッとしてしまう。

 

 少し待つが、何かが現れる様子はない。マシュたちとアイコンタクトを取り、頷き合うと扉に近づいた。

 

 ジャンヌが縁に手をかけ、一気に開いて旗を構える。だがやはり何も現れず、地下に続いていると思しき階段があるだけだった。

 

「私が先頭に。マスターとルーソフィアさん、しんがりにマシュの順でいきましょう」

「うん、よろしく頼む」

「了解しました」

「わかりました、しっかりと背後を守らせていただきます」

 

 隊列を組んで、階段を降りていく。

 

 中はかなり薄暗く、入口の扉を閉めるとより一層暗くなった。そんな中を慎重に、一段一段下へと降りていく。

 

 降れば降るほど、周りの雰囲気は薄気味悪くなっていった。どこからか聞こえる水の滴る音と、カサカサと虫が這う音が嫌に大きく響く。

 

 しばらくして、階段は終わった。代わりにひと回り横幅が大きくなった通路になり、道を知っているらしいジャンヌに先導してもらう。

 

「ジャンヌさん、この通路は……」

「この街の端に少し大きな砦があり、これはそこへの秘密の地下通路です。主に砦の関係者の避難用ですが……まさか残ってるなんて」

「やっぱりそういうのがあるんだ」

 

 こんな状況だというのに、少しだけワクワクしている自分がいる。仕方ないだろう、秘密のトンネルとか男なら好きなんだから。

 

「ええ、それに……直後に通ったものがいるようです」

 

 ルーソフィアさんが、道の端から何か光るものを拾った。そうして俺たちに見せてくる。

 

 それは、一見して普通の石。ただ見る角度によって七色に見える、少し不思議なものだった。

 

「この〝七色石〟はロスリックのものです。つまり……」

「バーサーカーさんの、知り合い……?」

 

 こくり、と頷くルーソフィアさん。俺たちは顔を見合わせ、今一度頷くと砦に向かって地下での移動を続けた。

 

 暗闇と緊張が体内時計を狂わせる中、かなりの時間を歩き続ける。それはまるで無限のように感じた。

 

 やがて、ジャンヌがピタリと足を止める。少し体をずらしてみると、道中いくつかあった七色石が梯子を照らしていた。

 

「ここです」

 

 最初に、ジャンヌが梯子を登る。次に俺が極力真正面を見て登り、ルーソフィアさん、マシュと続いた。

 

「よい、しょっと」

 

 一番上まで登り切って、ジャンヌは出口を塞いでいた板を開ける。急に光が差し込み、長時間暗闇になれた目を細めた。

 

 少しして光に目が慣れたところで、順番に穴から外に出る。すると、そこはどこかの建物の中だった。

 

「ここは、やはりリヨンの砦ですね」

「所々傷ついてるけど、崩れないかな」

「大丈夫です、いざと慣れば皆さんは私が守ります」

「ありがとね、マシュ」

 

 そんなことを話しながら、詳しく辺りの探索を行おうとしたところで。

 

 

 

 

 

 

 

「クヒヒッ、待ってたよ」

 

 

 

 

 

 

 

 背後から、声が聞こえた。もはや反射的にマシュとジャンヌが戦闘態勢になり、バックステップでその後ろに回る。

 

 見ると、数メートル先の崩れた壁の瓦礫の上に、誰かがいた。差し込む日の光で影法師になっており、姿はよく見えない。

 

「貴方は一体何者ですか。私たちを呼んだ理由は?」

「返答次第によっては、峰打ちせざるを得ません」

「ハハハ、怖いね。だがこんな状況じゃあ仕方がないってもんだ」

 

 笑いながら、その人は軽やかな動きで瓦礫から飛び降りた。

 

「よっ、と……ふぅ。まだまだワシも捨てたもんじゃあないな」

 

 その人は、みすぼらしい格好をしていた。くさび帷子とボロい布を合わせたような衣服を身につけている。

 

 だが、何より印象的なのは──その頭部全体を覆う、()()()()()()()()()()()()()()()()()だろう。

 

「この人、どこかで……?」

「先輩?どうかしましたか?」

 

 その人の姿に、どこか既視感を覚える。こんな姿の人は一度だって見たことないはずなのに、どうして見覚えが……?

 

「さて。まずは警戒を解くために、自己紹介をしよう」

 

 俺がその疑問の答えを出す前に、その人はこう名乗った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「〝不死街のグレイラット〟、それがワシの名前さ。何の冗談か、英霊なんてのになってる。で、あんたら……あの()()()()()の仲間かい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【グレイラットの短剣】
伝説の大義賊、グレイラットの用いた短剣。
火の時代が終わって以降、彼は新たに生まれた人々のためにいかなる場所へも赴き、その腕前を発揮したという。
くだらない義賊の矜持は高じて人を救い、やがて矮小な彼を英雄の座に当て嵌めた。
彼はいつも、その最後の大仕事を英雄と共に行ったことを誇り高く語ったというが……






ダレないために巻きでいきましょう。とはいえ、無理やりすぎたか……?
思ったこと、感じたことを書いていただけると嬉しいです。
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