灰よ、燃え尽きた世界に火を灯せ   作:熊0803

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どうも、作者です。

早めに出来上がったので、夜の10時ではなく朝の10時に投稿させていただきます。

楽しんでいただけると嬉しいです。


オルレアンの戦乱 3

「──ハ。そういえば貴方もいたわね」

 

 ファヴニールの上で、黒いジャンヌが謎の大騎士を見下ろして笑った。

 

 圧倒されていた俺は、その声でハッと我に返ると震える手を握りしめる。

 

『藤丸くん、マシュ、そこに何か、ファヴニールクラスの魔力反応がある。一体何が起こっているのかな?』

 

 通信機から、ダ・ヴィンチちゃんの強張った声が聞こえてくる。

 

 それに応える余裕すらなく、全身を包み込むような冷気を発する大騎士に目を釘付けにされていた。

 

 それは俺だけではない。マシュも、ルーソフィアさんも、他のサーヴァントの三人も同じように大騎士を見ている。

 

「この騎士は、一体……」

「〝冷たい谷のボルド〟。かつて灰の方が打ち倒せし、獣へ堕ちたイルシールの尖兵です」

 

 どうやらルーソフィアさんは、この大騎士について知っているらしい。

 

 つまりこの大騎士は、火の時代に関係しているものってことだ。

 

 改めて、こんな人が到底太刀打ちできないようなものが沢山いたという火の時代に、内心戦慄する。

 

 でもそんな暇は長くは与えてくれないようで、黒いジャンヌがファヴニールの上から〝ボルド〟に宣告する。

 

「いいでしょう、魂に飢えた冷たい番犬よ。我が邪竜と共に、こいつらを踏み潰してしまえ!」

「ガァアア────────ッッッ!!!」

「■■■■■■■■■■!!!」

 

 くっ、やっぱり黒いジャンヌの仲間なのか!

 

 ファヴニールとボルトが叫んだ瞬間、どこからか大量のワイバーンたちが現れて、ここに集まり始める。

 

 瞬く間に百匹以上に増えたワイバーンたちは、まるで大きな黒い雲のように頭上を覆い尽くした。

 

「これは……!」

『なんという数だ!』

『おやロマニ、起きて平気なのかい?』

『こんな状況で僕だけ休んでられるわけがないだろう!?』

 

 あちらでは作戦開始から休んでいたドクターが復帰したらしいが、こっちはそれどころじゃない!

 

 もう俺の魔力は枯渇寸前、なのに目の前には黒いジャンヌにファヴニール、それと同等のボルドにワイバーンの群れ。

 

 はっきり言って、どうやっても俺たちだけでどうにかなるとは思えない。戦力差がありすぎる。

 

「マスター、どうしますか!?」

「とりあえず、ジャンヌとジークフリートはファヴニールとボルドを押さえて!マシュと清姫はワイバーンの撃退!ルーソフィアさんも援護お願いします!」

「「「「了解!」」」」

「承知いたしました」

 

 話している間に少しだけ戻ってきた魔力を振り絞り、頭痛で割れそうな頭を働かせて迎撃に備える。

 

 今更退けるはずがない。各地の砦に避難している人たちのためにも、ここで食い止めなくては!

 

「さあ、蹂躙の時よ!」

「みんな、頼んだ!」

 

 旗が振り下ろされ、まずワイバーンの群れが殺到してくる。

 

 竦む足を叱咤して、サーヴァントたちを信じて迎え撃とうとして──次の瞬間、予想外の事態が起こった。

 

 ドン、というお腹に響くような音と共に、ヒュウと何かが空気を切る音。かと思えばワイバーンの一部が爆発した。

 

 悲鳴を上げた火達磨のワイバーンは地面に落ち、俺たちもあちらもピタリと動きを止める。

 

『ワイバーンの魔力反応、一部が消失!藤丸くん気を付けろ、まだまだ来るぞ!』

「い、いや、俺たちじゃなくて……」

 

 本当にいきなりだった。一体誰があんなことを……

 

 

 

 

 

 ワアアァアアア!!!

 

 

 

 

 

 その時、後ろから声が聞こえた。

 

 反射的に最高速度で振り返って……唖然とする。

 

 なぜなら、俺たちの後ろには──いつの間にか、何千もの軍勢がついていたのだから。

 

「あれは……フランス軍!?」

「何……!?」

 

 驚く二人のジャンヌ。

 

 確かによく見てみれば、あれはみんな砦やこれまでの道中で何度も見たフランスの兵士たちだった。

 

 さっきのは多分、大砲か何かを撃ったんだろう。現にいくつも黒い鉄の塊が並んでいる。

 

 そういえば、ユリアさんがジル・ド・レェって人がオルレアンへの進軍を考えてると言っていた。

 

 何にせよ──今俺たちが一番欲しいもの、援軍がやってきたのだ。

 

「お待たせ致しました!」

「ゲオルギウス殿!」

 

 馬に乗ってやってきたのは、数日前に最後に会ったライダーのサーヴァント、ゲオルギウス。

 

「ゲオルギウス、遅れて参上致しました」

「彼らは……やはり、来てしまったのですね」

「ええ。砦を守るために割かれた者たちを除いた、このフランスに残った残存兵力。その全てがここに集っています」

『すごい……!これならワイバーンを気にせず、ファヴニールともう一つの大きい魔力反応を相手できるぞ!』

 

 確かにドクターの言う通り、これなら両方を相手にする必要はない。

 

 でも、ジャンヌの表情は優れなかった。フランス軍を見て、どこか悲しそうな目をしている。

 

「ジャンヌ?」

「……確かに、この状況において彼らがいることはとても心強いです。けれどこれはサーヴァント(我々)の戦い。それに仲間が犠牲になるのは……心苦しい」

『あ……そ、そうだよね……』

 

 一気にドクターの声のトーンが落ちる。でも、ジャンヌの言うこともよくわかった。

 

「ハッ!雑兵がいくら増えたところで意味はありません!ボルドよ!ことごとく轢き潰してしまいなさい!」

「■■■■■■■■■■!!!」

 

 雄叫びを上げ、ボルドが冷気と共に歩み始める。

 

 一歩進むたびに起こる地響きは、ボルドがどれだけの重量を持っているのかがすぐにわかった。

 

 あんなものが突撃してきたら、人間じゃひとたまりもない。それにフランス軍はワイバーンへの砲撃で足が止まってる!

 

「させません!」

「ああ、ここで食い止める!」

「ふふ、怪物退治と参りましょう」

「お力添えを」

「みなさん……」

「ジャンヌ、行ける?」

「……はい!」

 

 各々の武器を掲げ、ボルドと黒いジャンヌを迎え撃つ態勢に入る。

 

 

 

「■■■■■■■■■■■■■!!!」

 

 

 

 まるでそれを待っていたかのように、ボルドが勢いよく突進してきた。

 

 腕と足の形こそ人間であるものの、その姿はまさしく獣。俺たち(獲物)めがけ、一直線に突き進んでくる。

 

 先ほどよりもずっと激しい地鳴りを足に肉体強化の魔術を施すことで耐え、まっすぐにボルドを見据える。

 

 接触まで残り三メートル、二メートル、一メートル……そしてついに、マシュの構えた盾にボルドの頭がぶつかる。

 

「ぐぅうううう!!???」

 

 激しい衝突。聖女マルタの操っていたタラスクに匹敵する轟音と、肌がすくみあがるほどの圧力。

 

 

 

 ギャオオオオオオ!!!

 

 

 

 守り手がいなくなるのを待っていたのだろう、砲撃の範囲外にいるワイバーンたちが俺を狙って滑空してくる。

 

「ゼェアッ!!!」

「あら、私たちもいることをお忘れでは?」

 

 数匹のワイバーンは、エーテルと呼ばれるエネルギーを纏ったジークフリートの剣撃と清姫の炎で落ちた。

 

 後に続こうとしていたワイバーンたちは動きを止め、そこをフランス軍に狙い撃ちされて撃墜される。

 

「邪竜よ!」

「ガァアアアア────!!!」

 

 ホッとする暇もなく、黒いジャンヌの大きな声が響いた。

 

 ハッと視線を向ければ、ファヴニールの口元に最初に現れた時と同等の黒い炎が集まっている。

 

『まずい、自分の体内の魔力(オド)だけじゃなく、大気中の魔力(マナ)まで吸っている!こんなの藤丸くんたちどころか、オルレアン一帯が吹き飛ぶぞ!今すぐ逃げろ!』

「──大丈夫です」

 

 切羽詰まったドクターの声に、俺は努めて平静を装って返す。

 

「ハアアアァァア!!!!」

 

 叫びとともに、空を飛ぶ純白の旗。

 

 魔力を収束させていくファヴニールに向けて跳躍したのは──他でもない、ジャンヌその人だった。

 

 ありえない跳躍力で飛んだジャンヌは、その手に握る旗を、ファヴニールの下顎に向けて思い切りぶち当てる。

 

「まさか──射線をズラす気か!?」

『無茶な!?いくらサーヴァントとはいえ、あれを一人でどうにかするなんて無理に決まってる!』 

 

 驚きを含んだジークフリートの声、悲鳴に近いドクターの予測。

 

 あいつが出そうとしているのは、もし放たれれば骨も残らないだろう絶死の一撃。

 

 それをジャンヌは、カチあげることでずらそうとしているのだ。普通なら無理に決まってる。

 

「……彼女なら、できる」

 

 でも俺は、ただ信じていた。

 

 それが足手まといな俺にできる、たった一つのことだから。

 

「ガァア────ー!」

「ァアアアアアアアアッッッ!!!!!」

 

 そして──ジャンヌは、ファヴニールの頭をかちあげた。

 

 誰もが息を呑み、目を見開く。

 

 俺も、マシュも、ジークフリートも、清姫も、フランス軍も、あのルーソフィアさんまでもが。

 

 何より、ファヴニールに跨る黒いジャンヌが。ありえないと、できるはずがないと驚愕する。

 

「この国を、終わらせはしない!」

 

 ただ、そう雄々しく叫んだジャンヌに誰もが思っただろう。

 

 この人こそが──〝救国の聖女〟なのだと。

 

「小賢しい……!ボルド、いつまで遊んでいるのです!」

「■■■■■!!!」

 

 でも、優勢を感じたのはほんの一瞬だった。

 

 激昂に近い黒いジャンヌの命令にボルドが圧を増し、マシュが少しずつ押され始める。

 

 ここまでの戦闘でマシュも相当消耗しているのだ。もう盾を持っているのも辛いはず。

 

 だからこそ、大きくマシュの体勢が崩れた次の瞬間、俺はまずい!と叫ぶ自分の直感に従った。

 

「令呪をもって命ずる!マシュ、避けろ!」

「っ、はい!」

 

 右手から赤い印が一画失われ、一時的にその魔力で強化されたマシュは大きく飛び退く。

 

 当然障害物のなくなったボルドは解放され、圧倒的質量を持つその体が迫ってきた。

 

 サーヴァントは回避し、俺とルーソフィアさんも近くにいたジークフリートに抱きかかえられてなんとか避けた。

 

 だが、それだけでは終わらない。ボルドは、ファヴニールのブレスで燃え盛る大地を抜けその先へ向かう。

 

 ジークフリートの腕の中でしまったと思った時にはもう遅く、そのまま真っ直ぐにフランス軍に突き進んだ。

 

「まずい、フランス軍が!」

「心苦しいですが、我々にはどうしようも──っ」

 

 その時だった。隣でルーソフィアさんが弾かれたように空を見上げたのは。

 

 だがそれに気付かずに、俺は自分の判断ミスを悔やんで蹂躙されるフランス軍を幻視する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「させぬよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空から、雷が落ちた。

 

 フランス軍とボルドの間に割り込むように、大きな、それでいて目を奪われるような美しい光が舞い降りた。

 

 

 

「■■■■■■■■■■■■■!!???」

 

 

 

 その雷鳴(らいめい)は焦土になった地面を抉り、ボルドを大きく弾き飛ばす。

 

 揺れる大地を破壊しながらボルドは転がり、しかし途中で手に持ったハンマーで体勢を立て直した。

 

 ちょうど同じくらいに、ジークフリートが雷のある程度近くに着地して俺とルーソフィアさんは解放される。

 

「マスター!ご無事ですか!?」

「マシュ!ジャンヌ、清姫も!」

 

 走り寄ってきたマシュたちは軽傷こそ追っているものの、これといった大怪我はしていなかった。

 

 そのことにホッとしつつ、未だに大地を暴れまわる雷の方へと目線を移す。

 

「あれは一体……」

「ドクター、何か解析結果は出ていますか?」

『──驚いた。は、はははっ、本当にすごいぞ、これは!』

 

 ドクターは、何やら興奮しているようだった。

 

 それはどうやら、あの雷の発生源に向けてのものらしい。

 

『藤丸くん、マシュ!もう安心だ!援軍が来た、それもとびきりの大戦力だ!』

「それって……」

 

 どくん、と心臓が動く音が聞こえた気がした。

 

 それは期待なのか、喜びなのか、それとも今まで長い間いなかったことへ対する、不安と不満なのか。

 

 俺自身もわからないとても大きな感情のうねりが、ドクターの言葉によって胸の中に沸き起こる。

 

 ドクターが太鼓判を押すほどの戦力、そしてあの凄まじい攻撃。

 

 間違いない、あれは──

 

 

 

 

 

 ヴォンッ!!!!!

 

 

 

 

 

 目を見開く俺の前で、雷の中から何かが投げられた。

 

 それは大きな音を立てて回転し、雷を見て唸っていたボルドへ飛んでいく。

 

 

 

「■■■■■■■■■■■■■!!!!!」

 

 

 

 ボルドはその何かを、ハンマーを使って弾き返した。

 

 反転した何かは、雷の中へと戻っていき──そして〝彼〟が掴んだ瞬間、雷は消え失せる。

 

「──凄まじい力だ。貴公のその剛力、まさに番兵に相応しい」

 

 ああ、という声をこぼしたのは、果たして俺だったろうか。

 

 それとも、隣にいるマシュだろうか。

 

「それ以上に、獣性に侵されてなお消えぬ忠義心、感服に値する。例え、悪しき魔女の下であってもな」

 

 変わらない冷静な声音、片手では扱えるはずがないほどの大斧を振り上げた腕、堂々とした佇まい。

 

 握りしめた大斧を肩に担ぎ、古ぼけた鎧と今にも千切れてしまいそうな外套を纏った〝彼〟はボルドを見やる。

 

「であれば、私も名乗ろう。幾星霜を経て再び相見えた忠義の騎士よ」

 

 そして、戦場全てに響き渡る声で言うのだ。

 

 何より俺の心を奮い立たせてくれる、その声で。

 

 

 

 

 

 

 

「サーヴァントバーサーカー、戦場に遅れ馳せ参じた。我がソウル、マスターの勝利のために」

 

 

 

 

 

 

 

 今ここに、俺の最初のサーヴァントが戻ってきた。

 




バーサーカー、遂に帰還!

待ち望んでいた読者様はいましたでしょうか?自分はこれをずっとやりたかったです!

ついでにある映画のパロも少し入れましたが、気づきましたかね?w

思ったこと、感じたことを書いていただけると嬉しいです。
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