灰よ、燃え尽きた世界に火を灯せ   作:熊0803

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今回からいよいよローマ。

楽しんでいただけると嬉しいです。


【第二特異点】永続狂気帝国 セプテム《定礎復元》
次はローマへ


 

 

 

 

 

ーーなぜ、私は王となったのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

少なくとも、私を王と仕立てた者たちのためではない。

 

 

 

 

 

 

 

元来我らの地位は低く、学もないが、彼らは愚かだった。

 

 

 

 

 

 

 

では、何の為に盾を振りかざし、誰が為に鉈を振るったのか。

 

 

 

 

 

 

 

ーーああ、やはりあの男のためだろう。

 

 

 

 

 

 

 

唯一心許せる、陽気なる騎士。かの者のため、私は王になった。

 

 

 

 

 

 

 

咎人たちは、我らの義理堅さに付け入り、我が友を利用したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

だから私は、愚かなる民たちにしたのと同じように、君にそれを託した。

 

 

 

 

 

 

 

ああ、友よ。

 

 

 

 

 

 

 

どうかこの呪いを、再び断ち切ってくれ。

 

 

 

 

 

 

 

●◯●

 

 

 

 

 

「よし、きつくなってないな」

 

 

 

 

 

 レイシフト用のスーツを着込んだ自分の体を見下ろし、少しホッとする。

 

 第一特異点の時からそんなに時間が経っているわけじゃないけど、久しぶりに着る服はサイズが合うかどうか不安になる。

 

 むしろ、少し痩せたかもしれない。ここに来てから、前にも増していろんなトレーニングしてるからなぁ。

 

「気合入れていこう……!」

「フォーウ!」

 

 今朝から部屋にいたフォウと一緒に自分を鼓舞して、もう一度気合を入れ直した。

 

 

 今日からついに、新たに特定された特異点の修復が始まる。

 

 

 体調は万全、睡眠はバッチリ。心構えも必要以上……というには、少し足りないかもしれない。

 

 こんな状況だ、いくら覚悟したってしたりないなんてことはない。二度目だからこそより一層気持ちが入る。

 

「先輩、マシュです。よろしいでしょうか」

「あ、マシュ。今いくよ」

 

 扉の向こうから聞こえてきた声にそう返して、軽く自分の頬を張る。

 

 よし、と小さく呟いて部屋を出ると、スライドしたドアの向こうには準備済みのマシュが立っていた。

 

「おはようマシュ。今日は頑張ろう」

「おはようございます、先輩。どうやら私が何かを言うまでもなく、やる気十分のようですね」

「気持ちだけはね。今回も頼りにしてるよ」

「はい! 頑張りましょう、先輩!」

 

 互いに勇気付けあって、どちらからともなく笑いがこぼれた。

 

 オルレアンに行く前も、こんなやり取りをしていた気がする。その時よりもマシュの表情には、感情がこもっているような気がした。

 

 そんなことを思いながら、俺たちは朝食をとるために食堂へと向かった。

 

 レイシフトの時間が決まっているためか、自然と足が速くなって着いた食堂は、人影はまばらだった。

 

 職員の人たちはすでに、管制室に集まっているんだろう。サーヴァントがちらほらといるだけだ。

 

 俺たちの格好を見て、励ましてくれるサーヴァントたちに答えつつ、素早く注文をして食事を済ませる。

 

「お粗末様でした」

「ごちそうさまでした」

 

 手を合わせ、食器を手に立ち上がる。

 

『……待て』

 

 カウンターにトレイごと返したところで、ぬっと奥から無名の王が顔を出した。

 

 何度見てもインパクトのある顔に若干驚きながらも、無名の王が差し出してきた包みを反射的に受け取る。

 

「これって……もしかして、またお弁当?」

『ああ………今回は……ちゃんと食え………』

 

 無名の王の言葉に、そういえばオルレアンでは食べる前にバーサーカーと離れたことを思い出す。

 

 結局、カルデアに帰ってきてから食べたことに不満そうにしていた無名の王に謝り倒したんだっけ。

 

「うん、今度はあっちで食べてくるよ」

「ありがとうございます、無名の王さん」

『……頑張ってこい』

 

 そのまま引っ込んだ巨体にマシュと顔を見合わせ、また笑い合う。

 

 そうして新しい弁当を手に食堂を出ていこうとした時……トン、と肩がぶつかるような感覚がした。

 

 思わず右を見るが、そこには誰もいない。後ろを振り返っても、誰の姿も捉えることはできなかった。

 

「……行ってきます」

 

 そこにいるはずの、けれど目には見えないその人にそう呟く。もちろん、答えは返ってこなかった。

 

「先輩?どうかしましたか?」

「ううん、なんでもない。さあ、いこう」

 

 首を傾げているマシュに適当にごまかして、今度こそ食堂を出る。

 

 集合の時間までにかなり余裕を持って食べ終えることができたので、管制室についたのは定時の五分前だった。

 

「マシュ・キリエライト、入室します」

「藤丸立香、入室します」

 

 扉が開き、少しだけ見慣れてきた管制室と、そして依然として真っ赤なカルデアスと対面する。

 

 発令所にもなっている管制室には、すでに俺たち以外の全員が集まっていた。バーサーカーとルーソフィアさんもいる。

 

「やあ、おはよう諸君。気分はどうだい?」

「私も先輩も万全です」

「それは良かった。ぜひそこであくびをしている天才様にも見習って欲しいところだね」

「ふわーあ……ん、何か言ったかい?」

 

 モニターの前で椅子に座り、目をこすっているダ・ヴィンチちゃんに苦笑いが漏れる。

 

「もう少しシャキッとはできないのかい?」

「おいおいロマニ、こちとら聖杯の解析で連日徹夜だぜ?サーヴァントといっても疲れるものさ」

 

 言いながらまたあくびをするダ・ヴィンチちゃんに、そういえばこの人はとんでもない量の仕事をしていたのを思い出す。

 

 俺の魔術礼装の調整なんて小さなもので、今言ったみたいに回収した聖杯の解析や、カルデアのリソースのやりくりまで。

 

 とてもじゃあないけど、頭が上がらない。ドクターもなんとも怒りづらいような顔をした。

 

「まあ、それなら仕方ないか……んんっ! すでにレイシフトの準備は整っているよ。今回向かう先は、一世紀ヨーロッパだ」

 

 喉を鳴らし、ドクターが空気を入れ替えた。

 

 フランスの次はヨーロッパか……レイシフトは時間旅行のようなものだというけど、相変わらず驚かされる。

 

 恐ろしく責任の大きな任務に緊張する反面、きっと普通に生きていたら体験できなかった経験にどこか興奮する自分がいる。

 

「より具体的に言うと、古代ローマだね。イタリア半島から始まり、地中海を制した大帝国だ。藤丸くんも知っているだろう?」

「まあ、学校の授業で習ったくらいのことは」

 

 ていっても、学校の定期試験が終わると大体忘れちゃうんだよな……勉強し直した方がいいだろうか。

 

「ん、古代ローマ?なにそれ楽しそう、私も行ってみたいなー」

「こらこら、君は作業があるだろう」

「ちぇー。誰か一人くらいローマ皇帝と話してみたかったのに」

 

 ぶーたれるダ・ヴィンチちゃん。本気で悔しがっているように見えるあたり、本当に行きたそうだ。

 

「転移地点は帝国首都のローマに設定してある。地理的には前回とそう変わらないと思われる」

 

 ただし、とドクターは言葉を切った。

 

「どこかに存在しているはずの聖杯の所在は不明、どういった歴史の変化が起こっているのかも謎だ。すまないね、観測精度が安定していないようだ」

「問題ありません。どちらも私たちで突き止めます」

「ああ。前回は早々に別れることとなってしまったが……此度の探索では、私もマスターの力となろう」

 

 マシュの言葉に、一歩踏み出したバーサーカーが同調する。

 

 バーサーカーは時折、オルレアンでのことを悔いているように言う。俺からすれば最高のタイミングで駆けつけてくれたのに。

 

 けれど、最初に出会ったときの、『手遅れになることの多い』という言葉。

 

 彼にとってその場にいないということは、もしかしたら俺が思う以上に重い意味を孕んでいるのかもしれない。

 

「私も、軍医としてお力添え致します」

「はい、バーサーカーさんもルーソフィアさんも頼りにしています!」

「うむ、実に良い意気込みだ。頼もしいね。作戦の趣旨は前回と同じく、特異点の調査及び修正。そして聖杯の調査、その上での入手あるいは破壊だ」

 

 二度目の聖杯探索。

 

 自然と両手に力が入り、自分を奮い立たせるような緊張と興奮が血管の中から身体中に駆け巡る。

 

 前回と同じように、俺たちの手に人理の存続がかかっている。この肩には重すぎるほどの責任が。

 

 けれど、不思議と初めてレイシフトした時ほどの、押しつぶされるような重圧は感じない。

 

 きっとマシュや、バーサーカーたちがいれば乗り越えられると思うから。

 

「必ず成功させてくれ。君達の方に人類の未来がかかっている……それと、くれぐれも無事で帰ってくるように」

「「はい!」」

「全力でマスターを助けよう」

「できうる限りのことを」

 

 元気よく答えた俺たちにうんうんと満足そうに頷いて、それからドクターはあっと声を上げた。

 

「ごめん、あと一つだけ言い忘れてた。一世紀のローマにも、きっと召喚されたサーヴァントたちがいるだろう。可能ならば彼らの力も借りるんだ。無論、敵対する者に対しては叶わないがね」

「そうか、オルレアンの時みたいにカウンターで召喚されてるかもってことですね?」

「そういうこと」

 

 今もこのカルデアにいる、ジャンヌやマリーさんたちの顔が頭に浮かんでくる。

 

 きっと、敵ばかりじゃない。ジャンヌたちのように力を合わせて戦える人だっているはずだ。

 

「一つ質問です、ドクター」

「なんだいマシュ?」

「前回の特異点において、火の時代の英霊と推測されるサーヴァントがあちらにいましたが……今回もそれはいるのでしょうか?」

「それはーー」

「ああ、いるさ」

 

 マシュに答えたのは、ドクターではなくてしわがれた老人のような声だった。

 

 驚いてそちらを振り返ると……カルデアスのある下の部屋につながる扉が開いており、そこに一人の人物が立っていた。

 

 とんがり帽子のような頭巾をかぶった人。バーサーカーのように、このカルデアに来た火の時代の人。

 

「グレイラットさん!」

「よう、坊主。それに灰の英雄様も。お前さんら、これから大任なんだろう?頑張っておくれ」

「はい、全力を尽くします」

「グレイラット。貴公は今、敵がいると答えたな。その理由があるということだな?」

 

 バーサーカーの問いかけに、グレイラットさんは頷く。

 

「ワシはオルレアンで、あの冷たい谷の連中に対するカウンターとして召喚された。あんたの存在を触媒にね」

「私を?」

「ああ。だから感じるのさ……どの特異点にも、必ずあんたの敵がいる。そして味方もいることだろう」

 

 あのボルドや踊り子のような強い相手が、また立ちはだかる。

 

 それだけで体が、先ほどとは別の意味で震える。オルレアンでボルドと対峙した時の圧倒的な存在感を思い返す。

 

 そんな自分を心の中で叱咤して、もう一度仲間たちを信じる気持ちを強く意識した。こんなとこで折れちゃダメだ。

 

「……ありがたい助言、感謝しよう」

「いや、ワシも今となっては盗みもできん。これくらいは役立たせてくれないと、あんたの友達として不甲斐ないってもんさ」 

「僕からも、情報提供感謝します。他に何か……」

「生憎と、それ以上はワシには分からんよ。何せ単なる盗人だからね」

「そう、ですか……いいや、あまり他に頼ってはいけないな。僕たちの役目は藤丸くんたちのバックアップとサポートなんだから」

「そうだぞロマン、他力本願するにはまだ時期尚早だぞ〜?」

 

 からかうダ・ヴィンチちゃんに、思わず笑いが起こった。

 

 そうして立ち塞がる脅威への恐怖を紛らわして、俺たちは特異点へ旅立つための箱舟に乗り込む。

 

「やっぱり狭い……」

『はは、まあ我慢してくれたまえ』

 

 数週間ぶりのコフィンの中は、相変わらず狭かった。

 

 

 

 

 

《アンサモンプログラム スタート。 霊子変換を開始 します》

 

 

 

 

 

 やがて、始まりを告げるアナウンスが流れ出す。

 

 俺はコフィンの中で力を抜き、深く息を吐いた。そうすることで心を落ち着ける。

 

 

 

 

 

《第1工程(シークエンス) を開始。 4名のパラメータ を確認》

 

 

 

《全コフィンのパラメータ 確認完了。 続いて術式起動 〝チャンバー〟 の形成を開始 します》

 

 

 

《〝チャンバー〟形成。 生命活動「不明(アンノウン)」へと移行》

 

 

 

《第1工程(シークエンス) 完了。 第2工程(シークエンス) 霊子変換を開始》

 

 

 

《全コフィンの準備……終了。 補正式 安定状態へ移行。第3工程(シークエンス) カルデアスの情報 を確認》

 

 

 

 

 

《ーー完了。全工程(シークエンス)オールクリア》

 

 

 

 

 

《〝グランド・オーダー〟 実証 を開始 します。》

 

 

 

 

 

 そして、二度目の過去への旅が始まった。




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第二特異点 人理定礎値 B +

A.D.0060 永続狂気帝国 セプテム

薔薇の皇帝
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セプテムでカルデアから召喚する英霊を募集します。

思ったこと、感じたことを書いていただけると嬉しいです。

召喚するサーヴァントは?

  • エミヤ
  • 黒ジャンヌ
  • 清姫
  • その他
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