灰よ、燃え尽きた世界に火を灯せ   作:熊0803

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C.C.C.コラボ復刻しましtメルトリリス当たったヒャッホオォォォォォオゥウウウ!

ふぅ……さて、みなさん投票ありがとうございました。

前回からガクッとUAが下がりましたね……説明回はややこしかったか?

では今回は、エトナ火山に行く話です。いつもより文字数が千文字ほど多め。

楽しんでいただけると嬉しいです。


頼もしい助っ人

「くぁ……」

「先輩、お疲れのご様子ですね」

「フォーウ?」

「ああうん、ごめん……ついあくびが出た」

 

 隣と、右肩から覗き込んでくる一人と一匹にそう答えて、自分の疲れの原因を思い返してみる。

 

 悩むまでもなく、昨日のことだろう。皇帝陛下と協力関係を結んで間もなく、首都が攻撃された。

 

 幸いサーヴァントはいなかったけど、日が落ちるまで走り回って、指示して、戦って……休みなどなかった。

 

 一瞬で終わってしまった物思いにちょっと苦笑いしながら、マシュと一緒に昨日の部屋に入る。

 

「藤丸立香、入ります」

「マシュ・キリエライト、入室します」

「うむ!よく来た!昨日はよく眠れたか?」

「はい、泥のように眠りました」

 

 部屋に入ってすぐ、もうそこにいた皇帝陛下が元気な声でそう言ってくる。

 

 あれだけ不利な戦いをしていたのに、俺と違ってこれっぽっちも疲れているようには見えない。

 

 これがまだ戦いがあった時代の人間との差なのか……俺ももっと気張っていかないと。

 

「おはようマスター。少しは疲れが取れたかな?」

「おはようございます、藤丸様」

「バーサーカー、ルーソフィアさんも。おはようございます」

「フォウ!」

「お二人も快調そうですね」

 

 俺たちとは別の場所で休息を取っていた……この館の中庭に篝火があったらしい……二人も元気そうだ。

 

「うむ。皆のもの、昨日は大儀であった。それで……」

「あの、皇帝陛下。実はひとつお願いがございます」

「む?なんだ、言ってみるが良い。余は寛大だぞ?」

 

 俺とマシュは顔を見合わせ、互いに頷くと腕の通信機を起動させる。

 

 すると、ププーというお馴染みの音の後、ホログラムの画面にドクターが現れた。おお、と皇帝陛下が驚く。

 

『改めまして、皇帝陛下においてはご機嫌麗しくあることを願います。僕が魔術で声を飛ばしていたものです』

「おお、貴公が例の魔術師か。して、この余を前にして何の用向きだ?」

『はい。我々のこの時代での活動を安定させるために、エトナ火山へと参りたいのです』

「ほう?」

 

 興味がありそうな声を、皇帝陛下が発する。

 

 エトナ火山。ヨーロッパ最大の活火山であり、このローマ帝国の時代においても変わらずある山。

 

 昨日、寝る直前のブリーフィングで俺たちは今日ここに行くことをドクターから指示されていた。

 

 何故なら……

 

「ふむ、宮廷魔術師もエトナ火山にはよく行っていたな。理由を言ってみよ」

『我々にとって重要な霊脈が、あの火山には存在しているんです』

「その霊脈を用いれば、戦力の確保ができます。私たちが活動するための資源も」

「俺たちには、ここにいるバーサーカーとマシュ、二人と同じくらいの力を持った味方を呼ぶ手段があるんです」

 

 そう。俺たちが狙っているのは、カルデアからの支援物資の受け取り、そしてサーヴァントの召喚だった。

 

 オルレアンでは、最後の戦いで一時的にセイバー・オルタ……アーサー・ペンドラゴンを喚んだ。

 

 あの時は沢山のサーヴァントと契約していたから短い時間しか現界させられなかったが、ここではマシュたちだけだ。

 

 だから、俺のショボいキャパシティでも後一人なら、その霊脈を使えば英霊を召喚できる。

 

「……つまり、こういうことか。貴公たちをエトナ火山に向かわせれば、余のため、ひいては余のローマのためになるのだな?」

「「はい」」

『それは保証しましょう』

 

 俺とマシュが声を揃え、それを助けるようにドクターが答える。

 

 皇帝陛下はしばらく難しい顔をして、俺たちの申し出について考え込んでいるようだった。

 

 やがて、「うむ」と大きく頷く。そして椅子から立ち上がり、俺たちの方を見た。

 

「あいわかった!余は連合帝国の調査があるゆえ、同行できぬが──好きにするが良い」

「ありがとうございます!」

「必ず陛下に貢献します」

「うむ、うむ!そちらの二人も行くのであろう?道中、連合の兵にはくれぐれも気をつけるが良い」

「無論だ。我が力、マスターを守るために全力で行使しよう」

「務めを果たします」

 

 よし、許してもらえた。これで少しは特異点の探索が楽になるといいけど……

 

 そうして安心しかけたところで、『ところで』というドクターの声に意識を引っ張られた。

 

『恐れながら、もう一つだけ皇帝陛下にお尋ねします』

「なんだ、今度は余に何を聞きたい?」

『──レフ・ライノールという男を、知りませんか』

 

 その瞬間、自分の体が強張ったことを自覚した。

 

 それは隣にいるマシュも同じで、きっと俺も彼女と同じように険しい表情をしているのだろう。

 

 普段は温厚なバーサーカーでさえ、少し離れていても分かるくらいに、兜の下から怒気を放っている。

 

「ふむ、そのような名は知らぬが。因縁ある者か?」

『ええ、少し』

 

 本当は少しなんてものじゃない。

 

 レフ・ライノール。カルデアの裏切り者。この事態を招いた誰かの手先であり……所長を殺した男。

 

 今でこそ、彼女がまだこの世にいることを知っている。

 

 けれど、あの時の絶望も、怒りも……決して、忘れてはいない。

 

『魔術師なのですが、あるいは連合帝国にそのような者がいるという情報は?』

「ないな。レフという名は全く耳に覚えがない。すまぬな」

『……いえ。こちらこそ、余計なことを聞きました』

 

 そう締めくくったドクターの言葉に、少し場の雰囲気が冷たくなった。

 

 

 

 そうして、ローマを一度離れることを許された俺たちはエトナ火山へと向かうことにした。

 

 出発する際に、皇帝陛下は俺たちに馬を貸してくれた。この状況で馬は貴重なはずなのに寛大だ。

 

 でも、俺は車と電車、一番近い乗り物で自転車に慣れきった現代っ子。

 

 生きた馬を操る技術なんてあるはずがない。流石に爺ちゃんもそれは教えてくれなかった。

 

 なので、知識は持っていたマシュにレクチャーをしてもらいながら、なんとか馬の扱い方を覚えた。

 

 どうにか走らせる時のコツを掴んだところで、今度こそ無名の王の弁当で腹ごしらえをして出立する。  

 

 

 

 道のりは楽だった。

 

 こちらを観測しているドクターの指示に従い、最短ルートでエトナ火山まで行くことができた。

 

 連合の部隊と思しき反応も教えてくれるし、またバーサーカーが近付くと察知してくれるので、戦うこともなかった。

 

 そうして体内時計が昼を過ぎ、2時間ほど馬を走らせたところで……ついにエトナ火山に到着した。

 

「せ、先輩、平気ですか……?」

「し、尻が痛い……」

 

 馬ってあんなに激しく動くものなのか……マシュの腕ががっちり、お腹を押さえてなかったら振り落とされてた。

 

 ジンジンと痛む尻をさすりながら、同じように馬から降りて、ルーソフィアさんに手を差し出しているバーサーカーの方を見る。

 

「バーサーカーは、やっぱり馬に乗るのも上手いね」

「さて、自分ではそれほど自覚がないが……おそらく、かつては馬に乗ったこともあるのだろうな」

 

 その答えに、きっと彼が不死人として失ってしまった記憶の中のことなのだろうと察する。

 

 記憶はなくても、そのソウルに経験は刻まれているらしい。彼の凄まじい弓の腕もその一つだという。

 

 不思議なその概念に興味を引かれながらも、任務を遂行するために指定されたポイントへ移動を始めた。

 

「召喚サークルは、霊脈の力が最も多く流れている場所で行う予定です」

「うん。それにしても熱いな……」

「エトナ火山は名の通り、この時代においても健在の活火山。気温も高いでしょう」

「燻りの湖を思い出すな」

 

 額の汗を拭いながら、通信機に転送されているマップを見て山を登る。

 

 幸い、馬と違って登山については、足の疲れない道の選び方から体力配分まで知識があった。

 

 爺ちゃんとのキャンプが懐かしい……山菜を探す片手間に必死に学校の宿題を片付けてたっけ。

 

「止まってください先輩」

「っ、わかった」

 

 おっと、昔を思い返す暇もなさそうだ。

 

 盾を構えているマシュの後ろで体を屈めて、こっそりと彼女が見ている方向に目線を移す。

 

 

 グルルルル……

 

 

「あれは……魔獣でしょうか。犬に酷似した生物の群れと判断します」

「おそらく、霊脈から溢れるエネルギーを本能的に嗅ぎ取ったのでしょう」

「沢山いるね……」

 

 少なくとも20匹はいるように見える。みんな殺気立っていて、牙の間からうなり声が漏れていた。

 

 そしてここが丁度、目的の場所だ。どうにも追い払えそうな雰囲気じゃない。

 

「なるほど……つまり奴らを殲滅すればいいんだな」

「え?」

 

 今なんて、と聞こうと振り返ろうとして。

 

 既にその手に揺らめく炎を握りしめ、それを地面に向けて叩き付けようとしているバーサーカーに言葉が詰まった。

 

「〝混沌の嵐〟」

 

 バーサーカーの手が地面に接触した瞬間、地面が震える。

 

 一体何をしたのかと身構えた瞬間──突如、周囲から無数の火柱が地面から吹き出し、空に向けて放たれた。

 

「あっつ!?」

「こ、これは一体……!?」

「お二人とも、こちらへ」

 

 手招きをするルーソフィアさんに、俺とマシュは慌てて逃げ出す。

 

 元から隠れていた岩陰の、さらに奥の方でバーサーカーの力が収まるのをじっと耐えた。

 

 それは三分くらいか、それとも五分だっただろうか。もしかしたらたった数秒のことかもしれない。

 

 だが、向こうから聞こえてくる爆音と犬の悲鳴のような声に、俺は頭を抱えて目を瞑った。

 

「終わったぞ、マスター」

 

 しばらくして、近くでバーサーカーの声が聞こえる。

 

 恐る恐る目を開けると、兜の奥から赤い目が俺のことを覗き込んでいた。

 

「バーサーカー、今のは……?」

「少し大規模な呪術を使った。手っ取り早く殲滅できる最善策を取ったのだが、驚かせたな」

「い、いえ、助かりましたバーサーカーさん。それよりも、魔獣は……」

 

 マシュと一緒に岩陰から顔を出して……そこに広がる焼け野原にあんぐりと口を開けた。

 

「す、すごい……」

「なんという威力……やはり火の時代の力は凄まじいですね」

「フォーウ!」

「なに、奴らはこれくらい念入りにした方が良い……そう、犬はな」

 

 なにをやっても凄いバーサーカーにびっくりしつつも、当初の予定通りサークルを作る。

 

 マシュの盾を触媒に、俺とルーソフィアさんの魔力を使ってカルデアへの大規模な魔術的交信を行なった。

 

「ドクター、聞こえますか?サークルを設置しました」

『聞こえてるよ。それじゃあ、早速──召喚をしようか』

 

 はい、と答えて俺は袖をまくった。

 

 魔術回路を起動する。手に水色の模様が浮かんで、そこに魔力が流れていることがわかった。

 

 ルーソフィアさんに手伝ってもらい、目の前にあるサークルと俺の魔力を繋げると詠唱を始める。

 

「ふぅ……よし」

 

 もう召喚する英霊は、先にブリーフィングで決まっている。

 

 あとは、俺の集中力だけだ。

 

 

 

「──素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。祖には我が大師アニムスフィア」

 

 

 

 ──曰く。本来英霊の召喚には触媒となる、その英雄に連なるものが必要だ。

 

 

 

「降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

 

 

 でも、〝彼女〟にそれはない。なぜなら彼女は本来存在せず、故に遺物がないからだ。

 

 

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

 

 

 

 なぜ〝彼女〟が、俺の召喚に応えてくれたのかはわからない。あるいは報復のためかもしれない。

 

 

 

「──告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。人理の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

 

 

 〝彼女〟と俺を繋ぐものは、あの人生で一度も体験したことのない、激しい戦いの記憶だけ。

 

 

 

「誓いを此処に。我は常世総ての善となる者。我は常世総ての悪を敷く者」

 

 

 

 ああ、たとえそうだとしても。〝彼女〟は俺に力を貸してくれた。その旗を預けてくれた。

 

 

 

「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ────!」

 

 

 

 だから俺は──〝彼女〟を信じて言葉を紡いだ。

 

『召喚術式の起動に成功、そちらに現界するぞ!』

 

 ドクターの言葉通りに、サークルが眩い光を放つ。

 

 思わず気が緩んだ、その一瞬。視界の隅っこで怒りを目に宿した犬のような怪物が草陰から躍り出た。

 

「っ!? しまっ──」

「フォウッ!?」

「先輩!」

「マスター!」

 

 まずい、避けるのが間に合わな──

 

 

 

 

 

 

 

「──あら。こんな犬畜生に噛み殺されるなんて、私のマスターにしては無様すぎるわね?」

 

 

 

 

 

 

 

 豪、と。

 

 炎が生まれた。目と鼻の先で、今にも俺の喉を食いちぎり、その牙で肉を引き裂こうとしていた獣の体から。

 

 物理法則など知らないと言わんばかりに、尻餅をついた俺を嘲笑うように──その〝黒い炎〟は、獣を焼き焦がした。

 

「ハン。一瞬も保たないだなんて、所詮は獣ですか。まあいいでしょう、マスターに我が炎を見せられたのですから」

 

 尊大な言い回し。この世全てを嘲笑うような口調。

 

 その声に、後ろを振り返れば──彼女は、俺のことさえも可笑しそうにクスクスと笑って見下ろしていた。

 

「滑稽な姿ですね?お出迎えもできないのかしら、この愚鈍なマスターは」

「……ごめんね。つい見惚れちゃってさ」

 

 そう言うと、彼女は少し驚いたようだった。

 

 言った事は本当だ。振り向いて、彼女を改めて見た瞬間──思わず、目を奪われた。

 

 その銀色の髪も、黒く輝く鎧も、とても白い肌も……煩わしげに細められた金色の瞳も。全てが綺麗だった。

 

「……フン。まあ世辞としてはそこそこでしょう。さあ、マシュとそこの古臭い聖女、似非バーサーカーもいる事ですし。さっさと立ちなさい」

 

 差し出された手をとって、俺は立ち上がる。

 

 そうすると、改めて彼女と向き直って笑いかけた。

 

「来てくれてありがとう。頼りにしてるよ──ジャンヌ・オルタ」

「ええ。せいぜい我が復讐の炎を使いこなしてみなさい、マスター?」

 

 

 

 そうして喚び出した彼女──竜の魔女ジャンヌ・ダルクオルタは、不敵に笑った。

 




はい、という事で邪ンヌちゃん登場でした!

他の鯖を選んでくださった皆様は申し訳ありません。こうやって各特異点で一人ずつカルデアから喚ぶので、次回にご期待ください。

思った事、感じたことを書いていただけると嬉しいです。
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