水着式部さん最高ッ!!!!!!!
サクサク進めて行きますよ〜。
楽しんでいただけると嬉しいです。
藤丸 SIDE
ガリア奪還から数日が経った。
敵のサーヴァント……昔のローマの支配者の英霊が倒れたことで、連合軍は全員が降伏した。
そして、ローマへ帰る道の中で俺たちは一つの噂を聞いた。
曰く、地中海のとある島に古い神が現れた、と。
一度聞いただけならただの噂で終わったが、ガリアが地中海に面しているためか、四回も各地で同じことを聞いた。
新たな英霊、もしくはこの時代にいる神様そのもの……あるいは、例の連合の魔術師に関する何かなのか。
何れにしても、聖杯にも関係があるかもしれないということで、会議した結果調査に向かうことに。
そして船を使い、島を調査するついでに海路で首都へ帰るのだが……
「うっぷ……」
「せ、先輩、大丈夫ですか?」
「なんとか……あの、ルーソフィアさん。酔い止めの薬とか持ってないですか」
「流石にありませんが、回復の魔術をかけておきましょう」
俺は絶賛、海の上でグロッキー状態だった。
平気そうなマシュに背中をさすってもらい、ルーソフィアさんに魔術をかけてもらう。
今日この日ほど、自分の三半規管を恨んだことはない。
爺ちゃんと無人島に行くときは安全運転だったから、こんなに激しい運転は初体験だ。
「はっはっは! 良い風だ! これならば後数時間で島に上陸できるぞ!」
笑顔で船を操る皇帝陛下は、それはそれは楽しそうである。
俺の他にも、一緒に乗った精鋭部隊の兵士たちも大多数がそこらじゅうに転がって呻いていた。
「ありがとう二人とも、ちょっと楽になった」
「あまり無理をしないでください。デミ・サーヴァントになって強化されている私でも、かなりきついので……」
「ルーソフィアさんは平気そうですね……?」
「ええ。常に肉体強化の魔術をかけているので」
普通に対策してた。
確かによく見ると、体に魔術回路が浮かんでいる。どうやら彼女もこの揺れにはタダでは済まないらしい。
『いやはや、君たちのバイタルを見れば一目瞭然だが、凄まじいね。彼女が堂々と自分が舵を取る、と宣言するから、てっきり操船技術があるものかと』
そうなのだ。
島へと船を出す際に誰が船を操るかを協議した時、真っ先に余こそが、と名乗り出たのが陛下だった。
自信満々だったので頼もしく感じていたのだが、いざ乗ってみると安全のあの字もない絶叫系アトラクション。
ちょっとだけ自分のすぐ人を信じる性格に疑問を持った。今度からはちゃんと確認しよう。
『いやしかし、めちゃくちゃではあるが最短距離で確実に島が近づいている。あと一時間もすれば到着できてしまうぞ』
「それは嬉しいのですが、もう少し肉体的には一般人寄りの先輩を気遣って欲しかったです」
「マシュのその心遣いだけで嬉しいよ……それにしても、本当に神様がいるのかな?」
「定かではありませんが、西暦以降のこの時代に神格が現世に降臨する、というのは可能性が低いでしょう」
もう一度、数日前にドクターに聞いた話を思い出してみる。
英霊の他に、この世界には神霊と呼ばれる存在がいるらしい。
精霊の一種である英霊よりも上位の存在であり、世界中の伝説に語られる神々そのものであるとか。
しかし、彼らはすでに地上から姿を消した。自然の具象や、権能の象徴として顕現することはできない。
すでに世界は、そこに存在する文明は人間のもの。そこに神々が介入することは、もはやない。
あるいは最初から存在しないかも、と言われるほどにその存在は魔術世界では曖昧で、高次の次元にいる、というのが通説のようだ。
『だが、今となってはそれもわからないぞ。何せ人理の創造者……ある意味神とも呼べるサーヴァントが藤丸くんの味方についているんだから』
「神様、ですか」
バーサーカーは、自分は決して英雄などではないと言った。
私は単なる薪なのだ、と。それなら神様だなんて言われた時には、それ以上に否定するかもしれない。
「そういえば、バーサーカーは?」
「あちらにおられます」
ルーソフィアさんの指が指し示す方向を、マシュと一緒に見る。
そこは甲板の後ろの方で、先ほどから陛下の他に唯一笑い声が聞こえてくる場所だ。
まだ到着するまで時間はあるようだし、三人でそちらに行って、一段高いその場所を階段の途中から覗き込む。
「ワッハッハ! こうして数日経ったが、未だに嬉しいぞ! またこうして貴公と会えるとは夢にも思わなかったからな!」
「私もだよ、ジークバルト殿」
そこではタマネギ……みたいな鎧の人と、バーサーカーが床に座って話している。
ガリアで彼を助けてくれたらしいあの人は火の時代の人で、バーサーカーの友人……らしい。
二人とも全身くまなく鎧で包んでいるので顔はわからないが、陽気なジークバルトさんにバーサーカーも楽しそうだ。
「仲、良さそうですね」
「みたいだね」
「かつて火の時代であった頃も、灰の方は彼のことを時折楽しそうに口にしておりました」
火の時代については悲観的なことを言うことが多いバーサーカーがそう言うなんて、よっぽど親しいんだろう。
ここ数日見ている間も、物静かなバーサーカーは不思議とジークバルトさんと一緒にいて居心地が良さそうだった。
陛下の許しをもらってこうして船に乗っている今も、いつも和やかな雰囲気だ。
「ここ数日は歩きっぱなしで、話もできなかったからな。うむ、こうしてゆっくりと会話できるのは喜ばしいことだ」
「ああ。ジークバルト殿はいつからこの時代に?」
「時代、というのは私にはよくわからん。そもそも、我が古き友との戦いの後、眠ってからの記憶がないのだ」
「……それは」
「だが、再び目覚めたこの世界が、かつての我らの時代のように危機に面していることだけはわかった。騎士として悲しむ民がいることは見過ごせん。貴公らに協力しよう」
「助かるよ。私だけではマスターの力になりきれるかわからないからな」
「何を言う! あれほどの旅をくぐり抜け、今もなお世界のために戦う貴公は立派だ!」
「……さてね」
ワッハッハ! と笑ってバーサーカーの肩を叩くジークバルトさん。
いつも通り謙遜するバーサーカーは、どこか照れ臭そうだった。
そこで覗き見は一旦やめて、マシュと顔を突き合わせる。
「陽気な人だね」
「バーサーカーさんも心なしか楽しそうです」
「彼は灰の方と同じように、使命を持って蘇った不死人であったそうです」
語り出したルーソフィアさんを見て、その話に耳を傾ける。
「その気質は陽気にして豪放、時に手助けをし、灰の方が助けられ、グレイラット様を助けたこともございました」
「あのグレイラットさんが?」
「はい。そして彼は……灰の方と共に《薪の王》の一人を倒し、その命を終えたそうです」
え、という声が自分の口から漏れたのがわかった。
そういえばさっき、古き友との戦いって……じゃあそのジークバルトさんの古い友達が、《薪の王》?
「〝巨人の王ヨーム〟。罪の都の王にして、《薪の王》の一人。ジークバルト様はかの王にまつわる不死人であり……その役目を終え、灰の方がその最後を看取ったと」
「……ジークバルトさんを」
「……私には、友人の最後を見送る、という体験をした記憶はありませんが。家族を失った時に匹敵するほど辛いことだと聞いたことがあります」
「はい。ロスリックの城に辿り着き、祭祀場に帰還した灰の方は気落ちしていらっしゃいました。そのソウルに陰りが見えるほどに」
……ジークバルトさんは、バーサーカーにとって大事な友達だったんだな。
そう考えると、こそこそと覗き見してることになんだか居心地が悪くなってきて、そそくさと退散する。
それからしばらくして船も目的地に到着し、俺たちは女神がいるという島に降り立った。
「うむ、実に痛快な船旅だった! 面白かったぞ!」
「兵士の方々、誰も降りてきませんね……」
「うん、多分……」
「そっとしておきましょう」
誰一人として、屈強なローマ兵達が残らないなんて……ルーソフィアさんに感謝だ
「さて、ここに古き神とやらがいるのか」
「あれ、ジークバルトさんは?」
「彼は船に残るそうだ。我々が調査をする間監視をするらしい」
『なるほど、では早速件の相手を……と、サーヴァント反応か。言う前に向こうから来たようだ』
ドクターの言葉に即座に、俺たちの間に緊張が走る。
おそらくあっちで観測したんだろう。まさか、探すまでもなく相手からやってくるなんて。
「またもや敵襲か? まったく、休まる時がないな」
「バーサーカー、マシュ、警戒を……」
『いや、待ってくれ』
指示を出そうとしたところを、ドクターにすかさず止められた。
「ドクター?」
『これは……なんだ。サーヴァントの反応とは少し違う?』
「──ええそう。
何やら狼狽ているドクターにこちらも困惑していると、声が聞こえた。
通信機から目を移し──そこに立っていた人物に、思わず息を呑む。
「ごきげんよう、勇者様方。当代の我が仮住まい、
「あれが……」
「古き神、だというのか?」
現れたのは、一人の女の子に見える人物。
白と黒のフリフリとしたドレス、ツインテールに結ばれた紫色の髪。美しい顔立ちと──背中に背負った光輪。
あまりの美しさに、一瞬我を忘れた。隣にいたマシュに「マスター?」と肩を揺さぶられ、ハッと我に帰る。
「え、ええと。貴方が例の?」
「あら、あら。てっきり勇者かと思ったけど、あどけない少年に、こんなに沢山サーヴァントがいるなんて。残念だわ」
「ドクター、彼女の気配は……」
『ああ、マシュ。計器で計測できるほどの神性……こいつは驚いた! 彼女は神──いや、
なんだって!? と大声を上げそうになって、あの女の子がまだ味方かどうかわかってないことを思い出す。
馬鹿みたいに叫ぶのをどうにか飲み込んで、一応警戒しながらサーヴァント……いや、女神を見る。
「ええ、そう。私は女神。名は──ステンノ」
「女神ステンノ。ギリシャ神話におけるゴルゴン三姉妹が一柱。形のない島に住まう女神。姉妹にエウリュアレとメドゥーサを持ちます」
「あら、博識なのね。その通りよ、古き神と呼ばれるのは些か不満だけれど……まあ、あなた達からすればそうなのでしょう。それで私の美しさが劣るわけでもなし、構わないわ」
なんだか余裕のある様子だ。
神様といえばすごい力を持つ、というイメージだし、それも当然なのかもしれない。
「ドクター、話と違いますが」
『いやあ、何事にも例外はあるものだね! 神霊サーヴァントとは、僕もびっくりだ』
「しかし、こうして目の前にいるのです。灰の方もいるのですから、不可能ではありません」
『そうだねルーソフィアさん。だが、そうだとしても〝神そのまま〟であるはずがない』
「〝神そのまま〟?」
『英霊はその存在が大きすぎるから各クラスにその一側面に限定して召喚する、という話を覚えているだろう? 同じように、もしも神霊がサーヴァントとして現界したのならば、その力はダウンサイジングされているはずなんだ』
「あら、そちらの魔術師さんも物知りなのね。私の目でも見えない場所にいるのが残念だわ、もしそうならば一眼でどうにかして差し上げたのに」
あ、なんか今ものすごくゾクッとした。
「して、ステンノなる神よ。貴方は我らの前に立ちはだかるおつもりか」
微笑んでいる女神様に何故か悪寒を感じていると、俺たちの前にバーサーカーが立つ。
その口調は……どことなく、いつもの冷静さの中に敵意のような鋭いものが覗いているように思えた。
「あら、強い敵意。貴方は
「嫌い、ということではない。ただ私の知る神々は少々お節介の過ぎる連中だ。故に──
殺気。
俺にもわかるほどのそれがバーサーカーから溢れ出す。これまでにないほどの過激な反応に、俺は困惑した。
「ご心配なさらずとも、私に貴方を打ち倒すほどの力はないわ」
『……つまり戦闘能力は低く、貴方に戦う意思はないと?』
「そういうのはアレスとか、そのあたりに任せるわ。戦うことを求められていない女神というのもいるのよ。そこの守るための盾を持つ貴女のように」
マシュを見てふふっと笑う女神様。あ、またゾクってした。
「そちらの貴方も、昂った敵意を収めて頂戴?」
「……そうだな。失礼した」
バーサーカーの殺気も収まり、ほっと胸を撫で下ろす。
そんな俺たちを見てまた笑い、それから女神ステンノは柔らかい声音で。
「さて、それでは。この島に見事辿り着いた貴方たちに──女神の褒美を授けましょう」
そう、言った。
読んでいただき、ありがとうございます。
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