灰よ、燃え尽きた世界に火を灯せ   作:熊0803

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金曜だぜいぇい。 

今回は我らがキャプテンの登場。

楽しんでいただけると嬉しいです。


海賊女王 前編

 

 藤丸 SIDE

 

「見えました。あれが……」

「海賊島……」

 

 前方に見える、一つの島。

 

 

 それがユリアさんの操船によって向かっている、俺達の最初の目的地。

 

 彼女いわく、この海で聖杯を見つけるならばうってつけの人物がいるということらしい。

 

 

 でも海賊島っていうくらいだから、多分その人海賊だよな……

 

 俺のイメージは子供の頃見た、某夢の国の経営会社がやってた海賊映画。

 

 四作目も面白かったのを覚えてる。友達付き合いしてるうちに、映画を見ることのが好きになってた。

 

 

 それはともかく。

 

 またマシュやバーサーカーに頼りそうな予感を感じているうちに、島に到着した。

 

 ボートがゆっくりと岸辺に定着し、俺達は島に上陸する。

 

「到着だ。ここからは徒歩で向かう」

「この島に、本当に聖杯を見つけられる人物が……」

「さて。まずは会ってもらわぬことには」

 

 ユリアさんの言葉に、島を見渡してみる。

 

 後ろには青い海、目の前には白い砂浜とどこまで続いてるのかわからない鬱蒼とした森。

 

 

 これのどこに、と思った瞬間、森の中から数人の男達が出てきた。

 

 これまでの経験から身構え、マシュとバーサーカーが俺達の前に立つ。

 

 

 いかにもな格好をした彼らは、俺達の前にわらわらと近付いてくると……

 

 

「「「おかえりなさいませ! ユリアの姐御!」」」

 

 

 一斉に頭を下げた。

 

「へ?」

「ど、どういうことでしょう?」

 

 俺達が困惑しているうちに、ボートを止めたユリアさんがやってきて、海賊らの前に立つ。

 

「客人をお連れした。船長は何処に?」

「へえ、隠れ家で宴をやってますわ。案内いたしやす」

 

 赤いバンダナを頭に巻いた厳ついおじさんが進み出て、俺達にニカッと笑った。

 

 本当にアイパッチつけてる海賊っているんだ……などと思うのは、少し気が緩みすぎだろうか。

 

 とにかく、どうやらユリアさんのおかげで戦うことは避けられたようで、森のなかに進んだ。

 

 

 

「そういえばユリアさん、先ほど船長と言っていましたが。例の人物は船をお持ちなのでしょうか?」

 

 その人物の隠れ家とやらに向かう道中、マシュが問いかける。

 

 烏のような仮面で全く顔の見えない彼女は、視線がこちらに向いているかもわからないが答えた。

 

「〝フランシス・ドレイク〟。後の時代の貴公らならば、この名も知っておいでだろう?」

「フランシス・ドレイクというと……世界を開拓した偉大な英雄の一人ですね」

 

 あ、この流れは……

 

「1543年頃に生まれ、大航海時代においてイギリスの私掠船として数々の海を踏破した大海賊。スペインの無敵艦隊を破ったことから、海の悪魔(エル・ドラゴ)と恐れられた人物です」

 

 俺の予感通り、ルーソフィアさんが解説をしてくれた。

 

 世界史の授業で大航海時代のことはやったなぁ。ここだけ戦国時代と同じくらい夢中になって聞いてた。

 

 それにしても私掠船、か。確か国から許可を受けて、別の国の船を襲ってもいい海賊のことだっけ? 

 

「スペインなんざ楽勝で勝っちまうぜ、姉御はよ!」

「あなたはフランシス・ドレイクの船の船員なのですか?」

「おうよ! 姉御はすげぇぜ、会ってタマ落っことすなよ!」

 

 いや、それ女の子のマシュに言っても……

 

「彼女は人類史において最も早く、生きたままに世界を一周した航海者。王の契約者よ、貴公らの目的を果たすのにこれ以上の人物はいるまい?」

「確かに……」

「ユリア。貴公はこれを見越して彼女に接触していたのか」

「我が使命は、人を導くことにありますれば」

 

 やっぱりユリアさんはすごかった。

 

 第一特異点ではフランス軍の指揮官、第二特異点ではローマ軍の参謀……なんでもできるな。

 

「この時代ですと、彼女は生前でしょう」

「マスター、彼女の助力を求める方が効率的かと」

「そうだね。とはいえ一応は海賊だし、もしもの時は……」

「我々に任せたまえ」

 

 バーサーカーの頼もしい言葉に頷き、俺はこれから会う人物に想いを馳せた。

 

 どんな人物だろう。やっぱ国の艦隊を破っちゃうくらいだから、筋肉ムキムキの大男だろうか? 

 

 友達に貸してもらった海賊漫画の白◯みたいな。あの人、なんで頭削れたのに生きてたの……

 

 

「姉御! 姉御ー! 客人を連れてきやしたぜ!」

 

 勝手に妄想を膨らませているうちについたみたいで、案内役の人が大声をあげた。

 

 前を見ると、パッと開けた場所でさっき以上の数の海賊達が集まっている。

 

 テーブルの上にはご馳走の数々、強い酒の匂い……これぞ海賊! という感じの宴の様相だ。

 

「姉御と話がしたいって言ってますぜ?」

「──ああん? ったく、人がせっかく楽しく酔っ払ってる時に」

 

 その、最奥。

 

 何かの動物の皮で作られた派手めな椅子に、大きな帽子で顔の隠れた人物がいた。

 

 片手にはジョッキ、他の海賊達よりもいくらか綺麗な服装……多分あの人が、フランシス・ドレイク。

 

「キャプテン。重要な人物をお連れした」

「その声は……ユリアかい? するってぇとなんだ、あんたの言ってた奴らが来たってことか」

 

 お酒を飲んだせいか、やや洗い声音で言われた言葉に驚く。

 

 椅子の上からフランシス・ドレイク(多分)が立ち上がり、財宝っぽい山から降りてきた。

 

 

 そしてカツカツと、俺たちの前にやってきて──

 

「で? あんたらがアタシを経験もしたことがないような大航海に連れて行ってくれるっていう、ガキどもかい?」

「「っ!?」」

 

 俺と、多分マシュが息を呑んだ。

 

 だって、だって。

 

「綺麗な、お姉さん……?」

「は、はい。とてもスペイン海軍を壊滅させた人物には見えないほどの美しい人物です」

『ネロ公の時もそうだけど、歴史とはままならないものだなぁ』

 

 帽子の下から覗いたのは、ものすごい美人の顔だった。

 

 傷こそついているものの、先ほど渡ってきた海のような目は力強く、間近で見ていると引き込まれそうになる。

 

 それと、その……ものすごく前が開いた()()()()()()胸元からは、全精神力を使って目を逸らした。

 

 ありがとう爺ちゃん、昔婆ちゃんに女の人の胸元見てて、関節技くらった時の話してくれて。

 

「はぁ? スペイン海軍? あたしゃそこまでの悪事を働いた覚えはないよ」

「……どうやらスペイン艦隊と戦う以前のようです(ボソボソ)」

「みたいだね(小声)」

 

 とりあえず、イメージとだいぶ違ったことだけは心の中にしまっておこう。

 

 ガラガラと崩れた◯ヒゲの妄想を取っ払い、腰に手を当ててこちらを見ているドレイクさんを見る。

 

「で? ユリアの話じゃあ面白い話があるそうじゃないか」

「初めまして、私はマシュ・キリエライトと言います。我々はカルデア、星の未来を観測し、それを保証する者」

「フランシス・ドレイク船長、貴女に俺達の航海を手伝ってほしいんです」

「ふーん、未来を観測するカルデア(星見)ねぇ。星図でも売りつけようって?」

『お、この人案外博識だぞ。酔っ払ってるはずなのに』

「……なーんか薄っぺらい声がするねぇ。弱気で悲観主義で根性なしで、そのくせ根っからの善人っていう、アタシの嫌いな奴の匂いだ」

『ひどい!』

 

 まあドクターがロクデナシ認定されるのはいつものことだから、別にいいとして。

 

「私達はこの時代の異常を元に戻すため、さる場所から送られてきました」

「狂った世界、貴女の知るものとは異なる海。心当たりがおありでは?」

 

 マシュとルーソフィアさんが言えば、ピクリと彼女は眉をあげる。

 

「時代だなんだというのはどうでもいいが、海の話をされちゃ聞き捨てられないね」

「それは良かったです。それで、この海域には看過できない現象が起きていて──」

「わかったわかった。要するにアンタら、足が欲しいってことだろ? ユリアもそう言ってた」

「あの、それはそうなのですが。根本的な目的が他に……」

「けどねぇ、別にアタシらがここを動く必要はないわけさ」

「はい?」

 

 何を言ってるんだこの人は? 

 

 マシュと一緒に首をかしげると、ドレイクさんはジョッキを高く掲げて声高に叫んだ。

 

「だってここには、いくらでも酒と飯がある! そうだろ海賊ども!」

「「「いぇええええい! 無限に湧き出るラム酒サイコー!」」」

「「えええええ…………」」

 

 もしかしなくても、この人達めっちゃ酔ってる? 

 

 思わずユリアさんを見ると、彼女は無言で小さく肩を揺らした。どうにかしなきゃいけないらしい。 

 

 

 とりあえず話をつけようと思い──目を剥いた。

 

 ドレイクさんが手に持っているあのジョッキ……いや、あの杯は!? 

 

「ま、マシュ、あれ!」

「はい? なんでしょうか先輩」

「ドレイクさんが持ってるあれって!」

「? ……っ!?」

 

 指差す俺にマシュは見て、数秒止まった後に顔を盛大に驚かせた。

 

 後ろからバーサーカーやルーソフィアさんの「ほう」という声が聞こえる。きっと見たんだろう。

 

「あ、あの、ドレイク船長。つかぬ事をお伺いしますが」

「ん? なんだい突然」

「その、手に持っているものは……」

「ああ、これのことか」

 

 ドレイクさんが胸元まで下ろしたのは──黄金に輝く、立派な杯。

 

 

 すなわち、聖杯。俺達が探し求めてきたそれが、目の前にあったのだ! 

 

 

 ドレイクさんが女だったという驚きにぶっ飛んでいたが、あれは間違いなく聖杯だ。

 

「そ、それをどこで?」

「ああ、ちょっと前に拾ってね。こいつがあれば酒は尽きないし、テーブルに乗せりゃ勝手に肉や魚が出てくる。こんな便利なもんはない!」

「何言ってんですか姉御、ありゃあすごい大航海じゃなかったっすか!」

「そうですよ、いつまでも明けない七つの夜、海という海に現れた破滅の大渦!」

「そしてメイルシュトロームの中から現れた、幻の都市アトランティス!」

「〝時は来た。オリュンポス十二神の名の下に、今一度大洪水を起こし文明を一掃する……! 〟とかなんとか言ってたデカブツをぶっ倒して、そのお宝を奪い取ったんじゃないすか!」

「なんかの間違いか知らねえっすけど、ありゃ世界を救ったんじゃないですかね?」

 

 海賊達の口から次々に出るわ出るわ、とんでもない情報の嵐。

 

 とてもじゃないが聖杯を前にして無視できない話の内容に、彼女の顔と杯を何度も見る。

 

 アトランティスとかオリュンポスとか、なんかとんでもない神話の名前が出てきたんですけど!? 

 

「そんな大層な話だったかぁ? つーか、ポセイドンを名乗りやがったあのデカブツに、船乗りとしてムカついたからぶちのめしただけさね」

「で、ついでに都市ももう一回海の底に沈めて、お宝もぶんどって?」

「あーっはっはっは! ありゃいい船旅だったねぇ!」

「「ガッハッハ!」」」

「な、な、な……!」

「こ、これは、なんと言ったらいいのでしょうか……」

「思った以上に事態は進展しているようでございますね」

「……なるほど。道理であそこまで強い輝きを放つソウルというわけだ」

 

 もう、頭がパンクしそうだった。

 

 フランシス・ドレイクは女で、聖杯がもう彼女の手にあって、なんかポセイドンとかいうのを相手してて……

 

 だめだ、全く理解できない。

 

 

 これまでの特異点も壮絶だったけど、もっと意味がわからなさすぎる! 

 

 

「つーわけだ。アタシらを動かしたいってんなら、勝って言うことを聞かせるくらいはしてみせな!」

「か、勝って、ですか?」

「そうさ! アタシらは海賊! 悪徳悪行、非道卑劣なんでもござれの力が全て! 勝者が全部ぶんどって、敗者は野垂れ死ぬ! それがこの海さ!」

 

 だから、とドレイクさんは聖杯を手放して。

 

 これまで見た聖杯のように、光になって吸い込まれたそれの代わりに銃を二つ取り出した。

 

 

 

 

 

 

 

「あんたらとアタシの大勝負、勝ったらちゃあんと話を聞いてやる! せいぜいこの酔いを覚ましてみせな!」

 

 

 

 

 

 

 

 なんだか、今回も無事には終わりそうになかった。

 

 




読んでいただき、ありがとうございます。

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