どうも、熊です。
正直に告白します。エルデンにハマりまくってました!!!(プレイ時間100時間オーバー)
いやもうね、圧倒的な楽しさにのめり込んでのめり込んで……本当に更新サボって申し訳ありません。
でもほら、褪せ人の皆様なら分かるでしょう?ね?(誤魔化すな)
そんな言い訳にもならない話はともかく、最新話です。楽しんでいただけると嬉しいです。
「おっ。いい感じに進んでるねぇ」
男が、呟く。
彼の目線の先にあるのは、木箱の上に乗せられた水晶玉。
不思議な光を放つそれの中に、海上を進む一隻の船が。
ゴールデンハインド号。
島から遠く離れ、順調に航路を進むその姿が鮮明に映し出されている。
「貴方の持ってきたそれ。便利ですわね」
「だね。おかげで随分と索敵がやりやすい。〝バーサーカー〟も失わずに済んでいるしね」
男の上方から、二つ女の声。
気の抜けた笑いを顔に浮かべて、男は後頭部に手をやる。
「いやはや、
聞く相手の気を削ぐような声音。そこには積み重ねたものから生じる落ち着きがある。
歴戦の戦士。
他者が鍛え上げられたその細身を見れば、そう思わずにはいられない。
男は、上の梁に腰掛ける二人組から目線を移す。
そして──部屋の最奥に座する〝その男〟に声をかけた。
「で、〝船長〟。どうします? あと少しで近くまでやってきますよ」
問いに、返事はなく。
だが、ゆっくりと立ち上がったその巨躯が答えを示していた。
「抜 錨」
野太く、腹の底まで震え上がるような宣言。
船の隅々まで届く威厳のある言葉により、魔力で作られた疑似的な船員達が動き出す。
錨を上げろ。帆を張れ。船長のご命令だ!
繰り返し雄々しく叫び、男達が仕事をする。
その声を聞きながら、歩き出す〝船長〟に伴うように男と二人組が続いた。
時を置かず、どこからともなく現れた半裸の偉丈夫がその列に加わる。
やがて、彼らが甲板に出た頃。
マストに高々と掲げられるは──黒布に髑髏の海賊旗。
「これより、海賊を始める」
それは、宣告であり、命令。
目に映る、欲するもの全てを奪い。それを妨げる全てを消してゆく。
この海で、唯一絶対のルールである。
「やっと本気を出してくれましたねぇ。それじゃ、お手並み拝見といきましょうか」
ニヤリと、その男は笑う。
獰猛な、一目でどのような人間か分かってしまう、海賊の笑い方。
ギラリと右手に取り付けた鉤爪を輝かせ、高く足音を鳴らし、甲板の中心で胸を張り。
その目はただ、前だけを見つめていた。
「世界で最も有名な大海賊。その真名──〝エドワード・ティーチ〟船長?」
海賊は──黒髭は、その異名に違わぬ髭面に、これから始まる〝狩り〟への期待を乗せていた。
昂る思いのまま、言葉にするために口を開き、そして放たれたのは──
「ドゥ────フフフフフフ!! 待っててねエウリュアレたん! すーぐ拙者が迎えに行くからネっ⭐︎」
聞くに堪えない戯言だった。
「…………ねえ、やっぱり今のうちに首を切り落としておかないかい?」
「おやめなさいな。アレでも船長ですのよ、アレでも。それに、鼠だって虫だって懸命に生きているでしょう? 疫病を運ばないだけ、臭くて気持ち悪くて不快なだけでマシじゃありませんの」
「なんか持ってそうではあるけどね」
「やれやれ。こんなんで大丈夫かねぇ」
今、藤丸達に恐ろしい試練(?)が襲い掛かろうとしていた。
●◯●
「天気朗々、波低し。いい日だねぇ。こんな日は飲みたくなるねぇ」
「ガッハッハ、姉御、そりゃいつものことじゃないっすか!」
「うるさいよ。だが、その通りだ!」
あっはっは、と機嫌良さげに大笑いするドレイク。
それを見て、藤丸とマシュは顔を見合わせ苦笑する。
「船長、今日も楽しそうです」
「エウリュアレとアステリオスが来てから、一層船も賑やかになったからね」
「その分、清姫さんの負担が大きいのが懸念事項ですが……」
「悪いことしちゃったかな……」
大食いの船乗り達は勿論、あの巨体に相応しくアステリオスもよく食べる。
本来サーヴァントは食事が必要ない為、原因は親交を深めようと誘った藤丸にもあった。
「後で、少し話をしてみるよ」
「良いと思います。清姫さんは……その、先輩とお話をすると、とても元気になりますから……」
「ははは……」
別の意味での苦笑が出た。なまじバーサーカーな分だけ、扱いが難しい。
「お二人とも」
「あ、ルーソフィアさん」
「どうかしました?」
振り返る二人へ、火防女は頷いた。
「少し、相談しておきたいことがございます。今後のことでございます」
「なるほど。それならバーサーカーさんや、船長もお呼びした方がよろしいでしょうか?」
「船長の方には、後ほど私から。灰の方は……
「「?」」
必要がないとは、どういうことだろうか。
含みのある言い方が気がかりなものの、火防女はそれ以上は何も言わずに語り出す。
「先ほど、ユリア様と話をしていました。そこで、ある可能性についてお二人にも警告しておいた方が良い、という結論に至りまして」
「ある可能性、ですか?」
「それって、特異点修正に関係するってことですか?」
「遠からず、でございます」
一度言葉を切り、いよいよ本題と言わんばかりに厳かな口調で次の言葉を告げる。
「藤丸様、マシュ様。第二特異点でのことを覚えておいでですか?」
「勿論です」
「大変なことは沢山あったけど、ちゃんと全部記憶してるよ」
皇帝ネロとの出会い。共に連合帝国と戦った日々。
立ちはだかった神祖ロムルス、現れるレフ・ライノール、顕現した大英霊アルテラ。
そして……灰の時代の騎士、カタリナのジークバルト。
「ですが、それを今どうして?」
「最後の戦いのことです。灰の方がジークバルト様と共に打倒した、巨人の王の存在について」
「ヨーム……」
その名前に、藤丸は少し眉を落とす。
特異点が修復された後、記録と報告書を作成する為に灰は当時の説明を求められた。
そして知った。
英霊ジークバルトとヨームに運命づけられた因縁……その、最期を。
あの時、「かつても同じだった」と平坦な声で語る灰は、藤丸にはどこか悲しそうに見えた。
「……ご友人との別れは、バーサーカーさんにとってお辛い経験だったはずです」
「そうだね……」
「心を砕いていただき、従者として感謝いたします。……ですが、あの一度で終わりではないことも、お二人ならば分かっておられると考えております」
火防女の言葉に、悲しみを目に浮かべていた二人は顔を引き締め、頷く。
レフ・ライノール、ひいては人理焼却の黒幕の手に落ちた《薪の王》達。
そして、カルデアに現れた玉座の数は五つ。
一つは賢王ルドレスが座し、ヨームを打ち倒したことにより、残る王は三人。
それだけの強大な存在が、この旅の先には待ち構えているのだ。
「っ! もしや、この特異点にも《薪の王》が潜んでいるかもしれないと?」
「……!」
「ご明察でございます。ユリア様もまた、その兆候を感じ取っているようなのです」
こちらへ、と手で示す火防女に従い、二人はついていく。
船尾の方へと階段で上がった三人は、海図を前に佇む黒い人物へと近づいた。
彼女──ユリアは、ゆるりと振り返る。
「来たか。王の契約者と盾の乙女よ」
「ユリアさん。《薪の王》の存在が確認されたというのは本当ですか?」
「もしかして、この特異点に来てから戦ったことが?」
「ふむ。彼女に少し聞いたようだ」
納得したように呟いて、彼女は眼前のテーブルに顔を向けた。
烏面の奥にある目線が向かう先を、藤丸達も覗き込む。
揺れる船の上で、吹き飛ばされないよう固定された海図。そこには航路が示されている。
「この特異点にて顕現した私が、各地を周り情報を集めたという話はしたな」
「はい。そして、万全の体制で我々が到着するのに備えていたと……」
「その通り」
伸ばされる黒指。
いつくかの島を示していき、やがて最初にドレイクと出会った島の近くで止まる。
「情報収集の最中、私はいくつかのとある痕跡を発見した。火の力の残滓だ」
「火の力、ですか?」
「知っての通り、我ら火の時代の人間はその類の力をソウルで感じ取れる。故に、これは確かな事実だよ」
「なるほど……ジークバルトさんみたいな火の時代の英霊ってことは?」
「それはないだろう。我が王を除き、あれほどまでの影響を残す火の力を持つ存在は、《薪の王》以外に存在しない」
これでも目と耳は多かったものでね、という言葉の裏には、教主という立場に相応しい威厳がある。
計り知れない彼女の過去に少し戦慄しながらも、藤丸達は《薪の王》の存在に思いを馳せた。
(もし、またジークバルトさんの時のようなことが起こるなら。その時、俺達は彼に何を────)
「左舷に船だぁ──! 海賊旗を上げてるぞぉ──!」
●◯●
その時だった。
見張り台から甲板上に届いた大声に、弾かれたように全員がそちらを見る。
水平線。
果てなき境界を滑るように進む、一隻の船。
徐々にこちらへ近づいてくる、その船のマストに掲げられたのは、黒い海賊旗だった。
「敵船か!」
「これまでにも何度か接敵しましたが、あれもその類でしょうか」
「なんにせよ、落ち着いて話をできる状況ではなくなったな」
にわかに船上が騒がしくなり、武器を用意する声が上がり始める。
マシュが鎧と盾を顕現し、臨戦態勢を取る。
藤丸も意識を切り替えつつ、魔力のパスを通じて灰へと通信を行った。
《バーサーカー、見えてる?》
《無論だとも。だがマスター、気をつけろ。どうやらこれまでとは異なっているようだ》
《わかった》
己のサーヴァントの忠告を心のとどめつつ、マシュへアイコンタクト。
彼女は即座に気がつき、頷いた二人はドレイクの元へと駆けていった。
「船長!」
「敵襲のようです!」
「わかってるよ。あんだけはっきりくっきりと旗が見えてんだ、見間違えようがない」
選手で遠眼鏡を覗き込んでいたドレイクは、やってきた二人にぶっきらぼうに返答。
そして振り返り、ニヤリと不敵に笑ってみせる。
「それも、どうやら
「え?」
「それは、どういう──」
首をかしげる間にも、事態は進んでいく。
いよいよ、輪郭がはっきりと目視できるまでに海賊船が接近してきた。
窓が開けられ、敵船に向けて横向きに舵を切った船の側面から大砲が次々と伸びる。
デッキにも、サーベルと銃を携えた海賊達が揃い始め。
二人も、今はいちいち気にしている場合ではないと諦めて海賊船を見据える。
「あら。アステリオスが唸っているから、何事かと来てみれば」
「うぅう……!」
「エウリュアレさん、アステリオスさんも!」
「二人とも、来てくれたの?」
「まあ、一応ね」
暇潰しよ、と涼しげに答えるエウリュアレ。
だが、サーヴァントがいるかいないかという点は非常に大きい。
「ありがとうございます、お二人とも。心強いです」
「俺からもありがとう」
「すけだち、する」
「ふん。……それで、あのサーヴァントはどうしたの?」
「バーサーカーなら、上だよ」
藤丸は見張り台の方を示し、彼女は興味なさげに「そう」とだけ返した。
こうして二人が加わり、いよいよ迎撃の準備が整ってきた頃。
ついに、船が声が届く程の範囲にまでやってきた。
その船は、異様だった。
ゴールデンハインドにも引けを取らない大きさもさることながら、その雰囲気の異常な不気味さ。
何か、この世のものではないかのような雰囲気すら醸し出す巨大な船に、大きく唾を飲む。
「なんでしょう、この悪寒は……とても嫌な予感がします」
「……俺もだ」
「あんたら、いい勘してるじゃないか」
ドレイクが、手すりに片足をのせる。
その両手にはマスケット銃を携え、彼女は……獰猛な炎を瞳に宿していた。
「まさか、ここで会うとはね。悪縁ってのはよく回ってくるもんさ」
「あの旗は、もしや……」
「ルーソフィアさん、何か心当たりが……?」
藤丸達の隣にやってきた火防女が、風に揺れる旗を見据えて頷く。
いつも微笑みをたたえたその口元には、緊張が現れていた。
「藤丸様。大航海時代において、海賊というのは数多く存在します。しかし、後世にまでその名を轟かせる者は数多くはいません」
「……それは、つまり?」
「あの海賊船は、中でも特別に……いいえ。
息を呑む藤丸とマシュに、そして、とルーソフィアは続け。
「この時代に、その海賊は未だ存在していないのです」
「っ、サーヴァント……!」
「じゃあ、あれが……!」
先ほど、ドレイクが呟いた言葉を二人は思い出す。
彼女は、まるでこの船を知っているかのような口ぶりだった。
そして、以前戦ったという海賊のサーヴァント。何度も襲撃を仕掛けてきたヴァイキング。
全てが一本の線で繋がるような体感。
そして……
「……嘘でしょ。よりによってこいつなわけ?」
「エウリュアレさん?」
「ああ、マシュ。藤丸。気をつけなさい。これから出てくるのは……この世で最低の類のものよ」
非常に嫌そうな顔で、エウリュアレは警告のようなものを口にする。
彼女を肩に乗せたアステリオスも全身を力ませ、いよいよ二人は緊張を最高潮に高めて。
「此処で会ったが百年目。この前の借り、存分に返させてもらおうじゃないか……!」
最後のひと押しをするが如く、ガチャリとロックを上げる音が響いた。
その時だ。
船上に、人影が姿を現す。
ざわりとゴールデンハインドの船員達がざわめき、ドレイクが手を上げて制した。
油断なく睨み据える彼女達の前で、ついに人影がその姿を現した。
「……………………」
その男は、巨大だった。
筋骨隆々、二メートルに届こうかという体を豪奢な衣服に包み、組んだ腕の片方には鉤爪が。
鋭く、淀んだ瞳には強い欲望が垣間見え、引き結んだ口は豊かな黒い髭に覆われている。
その体から立ち上る気迫は──圧倒的に、人間を超越していた。
「鉤爪のサーヴァント! あれが……!」
「史上最大の知名度を誇る、海賊……」
藤丸は、ふと自分の記憶を反芻する。
鉤爪。巨大な船。
そして、
これだけの明白なピース。
大して海賊に詳しいわけでもない藤丸でも、すぐに思い至る。
その海賊の、正体を。
『ああ、やっと安定した!』
「ドクター!」
『すまない、あの島から脱出した後、通信魔術を調整していてね。それよりも、今君達の前に大きな魔力反応がある! サーヴァントだ!』
「ドクター、既に会敵しています」
『しまった、一歩遅かったか! だが気をつけろ! こちらの解析によると、そこにいるのは史上最大の知名度を誇る大海賊!』
今一度、藤丸達はそのサーヴァントを見て。
そして、次にドクターロマンが口にした名を、心の中で共に呟いた。
『黒髭──〝エドワード・ティーチ〟だ!』
黒髭。
最も海賊という存在を印象付けた、最強にして最悪の海賊。
現代にまでその悪名を轟かせ続けた男が、今サーヴァントとして立ちはだかっていた。
「よう、また会ったねクソ野郎。今日こそたっぷり仕返しさせてもらうよ」
「……………………」
「おいおい、ダンマリ決め込むつもりかい? このアタシを無視しようなんざ、いい度胸じゃあないか! おら、聞こえてんだろこのヒゲ野郎!」
ビリビリと空気を震わせる咆哮に、ゆっくりと黒髭がこちらを見る。
その視界にドレイクを捉え、ようやく固く閉ざされたその口を開いた。
告げた、最初の言葉は──
「はぁ? BBAの声なんぞ、一切聞こえませぬが?」
「──────────は?」
「「…………………………え?」」
なんともバカにし腐った、そんなセリフであった。
読んでいただき、ありがとうございます。
感想などいただけると嬉しいです。