咲夜から休みをもらった美鈴は、ぶらぶらと紅魔館を歩いていた。ワインの買い付けに行くと言い、朝早くから咲夜は外出している。
美鈴は昼食を作る者が居ないことに気付く。仕方なく昼食を作ることにした美鈴はパチュリーにアドバイスを貰いに行こうとするのだが…

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美鈴と動かない大図書館

私は紅 美鈴。紅魔館の門番だ。今は11時半、もう少しでお昼時だ。

今日は番をしなくても良いと言われたので、私は特にする事も無く、私はブラブラと紅魔館の中を歩いていた。咲夜さんは外界にワインの買い付けに行くと言って朝早くから出かけて行った。もしかしてあの服装で…?違う事を祈ろう。チャイナドレス貸してさしあげた方が良かったかな?いや、もっとマズイか。そういや、お昼には帰ると言っていたけれど、昼食に間に合うのだろうか。私が作った方が良いのかしら…いや、私の料理の腕でお嬢様やフラン様が満足する筈が無い。

中華料理ならまだなんとかなるんだけどなぁ…でも昨日の晩御飯は咲夜さんの中華料理フルコースだった(私の方が美味しく作れる)しなぁ…うーん…

いつの間にか図書館の前まで来ていた。ずいぶん深く考えていたらしい。気がつくと手をあごに持ってきて、首を傾げていた。慌てて手を元に戻す。あれ、何か良い匂いが…紅魔館の外で誰か野外調理でもしているんだろうか?あ、そうだパチュリー様だ。パチュリー様なら料理の事についても何か知識を持っているいるかもしれない。でも、私パチュリー様苦手だしなぁ…でもお嬢様達の昼食がっ…よし!聞こう。もう勢いだ!私は勢いよく図書館の扉を開けた。

「あの!、すいませんパチュリーさ…ま!?」おそらくそこに居たのが私じゃなくても驚愕するだろう。あの動かない大図書館のパチュリー様が魔法を使って料理などしていたら。

空中に火の玉を作り出し、フライパンを浮游させて料理をしているパチュリー様を見て、私はしばらく絶句していた。「…美鈴?」パチュリー様がどうかしたのかという目でこちらを見ている。あ、今の失礼でしたか?あわわ…

「あ、あのパチュリー様?」

「何?」

「何をされているんですか?」

「何って、料理だけど。」

そうですよねー!そりゃそうですよねー!私はなんて馬鹿な質問をしてるんだああもう死んじゃいたい死んじゃいたい死んじゃいたい

「あの、美鈴大丈夫?」

パチュリー様が鍋にチャッツネを入れながら心配そうにこちらを見ている

ハッと気がつくと私は頭を抱えてうずくまっていた。何やっているのよ紅 美鈴!ああもう門番クビだあああぁ…

「あ、もしかしてびっくりした?ごめんなさい。まぁいつも動かない図書館なんて言われてる私が急に料理なんかしてたら驚いて当然ね。」

「ふぇ!?あ、いえ。大丈夫です…」

思っていた事をそのまま言われて驚くと言うより少し気味が悪かったけれど、どうやらクビにはならずに済むみたいだ。

 

 

 

「___________ねぇ、美鈴?」ぼーっとパチュリー様が料理するのを眺めていると不意に声をかけてられた。

「なんですか?」

「やっぱり、私が料理してるのっておかしいかしら?」

超答えにくい質問来ちゃいましたよ…

「えっとその…おかしいかはわからないですけど、意外と言うか…」

「まぁそうよね。ふふふ」パチュリー様はおかしそうに笑った。

えっ?私は驚いた。パチュリー様が笑っている所など見た事がなかったから。

てっきり暗い人だと思っていたのに…すると、パチュリー様は鍋をヘラが勝手にかき混ぜるのを眺めながら静かに話しだした。

「_____ねぇ美鈴?私ね、静かに本を読んで過ごせる事が最高の喜びと思っているわ。だけど時々、そうやって手に入れた知識はよんでるだけじゃずっと何の役に立たないままなんだって思うとやるせない気持ちになるの。だからたまに、読んだ知識と挿絵の見よう見まねで実験したりするんだけど、ほとんど失敗ばかり。やっぱり読んでるだけじゃ駄目ね。私は世界を知らなさすぎるんだわ。」

ヘラを通り越してどこか遠くを見つめながらそう言うパチュリー様は諦めにも似た笑みを浮かべていた。

今まで私はパチュリー様の事を本さえあればずっと生きていける引き篭もりがちの根が暗い人だと思っていた。だけど、そうじゃなかった。多分、表に出ないだけでパチュリー様はパチュリー様なりにいろんな事を考え、生きているんだ。顔に出さなくても、嬉しい日もあったかもしれないし悶々の悩みぬく日も恐らくあったのだろう。

私はいつも無表情のパチュリー様がどこか感情の無い冷たい人の様に思えて少し苦手だった。でもそれは大きな間違いだった。この人の力になりたい。私は思った。

「_____あ、あのっ!!パチュリー様!」

「何?」

「また今度何かやる時はっ!私を呼んでください!すぐ寝ちゃうかもしれませんし非力かもしれませんけどっ!でも、全力で手伝いますから!…ひゃあ!?」

ズテンッ!!よほど熱くなっていたらしい。言い終わると同時に頭がクラクラして、私は盛大にこけた。

「ふふ、ふふふふふふふふ…あははははは!」

「いててて…ってパチュリー様、何がおかしいんですか?」

「だっておかしいじゃないの。いつも咲夜に叱られてかわいそうな顔してる美鈴が急に熱く話しだしたかと思うと次の瞬間ずっこけるんだもの。あは、あは、あはははは!」

「かわいそうな顔って酷くないですか?パチュリー様だっておかしいですよいつもはあんな無表情なのに笑えるならいつも笑ってくださいよ!いつもパチュリー様ったらブスッと…ふふ、ふふふふふ。ははははははははは!」

気付いたらつられ笑いしていた。その後しばらくおかしくてパチュリー様と私は笑い転げていた。

「はぁ、はぁ。ゴホッゴホッ。あぁ美鈴おかしいわ。」

パチュリー様、笑いすぎて苦しそうだ。喘息が出やしないだろうかとヒヤヒヤしながら見ていると、パチュリー様はいたずらっぽい笑みを浮かべて

「ふふ、これで苦手は治ったかしら?」

そんな事を言ってきた。意地悪だ。パチュリー様は意地悪だ。

すっと手が伸びてくる。私達はぎゅっと握手した。

…そして優しい。

 

 

「それで何を作ってるんですか?」

気になるので聞いてみた。驚くべき事にヘラやフライパン達は私達が笑い転げている間にもちゃんと仕事をしていた。

パチュリー様は呪文を唱えていたのでしばらく答えてくれなかったが唱え終わると、

「カレーよ。」

え?…カレー?

「ふふ、私とカレーって確かにイメージに合わないわよね。スパイスのブレンドの仕方って魔法薬の調合に似てるの。本の実践、今まで何回も失敗してきたけど唯一成功するのがカレーなのよ。ブドウみたいな色の魔女の得意料理がカレーって言うのも変な話よね。美鈴あなたキョトンとしてるけど、そんなに不思議だったかしら?」

なるほど。確かにすり鉢で擦ったり、混ぜたり。ちょっと似てるかも…でも、パチュリー様がカレーって…

「いや、なんか奥地の極限料理みたいなのを作るのかなって思ってたら、大衆的な料理だったのでちょっと意外だな、と。」

「でも、咲夜のとは一緒にしたら駄目よ。私のは一味も二味も違うのだから。」

パチュリー様はそう言ってほんの少しだけ笑った。

確かに今図書館には今までに嗅いだ事のない香りが漂っている。

「すごくいい匂いです」

「でしょう?材料は咲夜の食料庫から失敬したわ」

何してるんですかパチュリー様。それ怒られるの私なんですけど…

「あは、はははははは…」

苦笑いするしかない。

しかしいい匂いだ。作り方見ておこう。

「あ、ここから先は企業秘密よ。作っておくから、レミリアと、あとフランを呼んできてちょうだい。」

「え、あの子連れてくるんですかぁ…?」

「姉妹の事情にあまり口出ししたくはないけれど、そもそもあそこに彼女を軟禁してる事自体が私は反対なのよ。あんなところにいたら気が触れてない者でもおかしくなるわ。」

「わかりましたよぉ。」

これはどうやら行かないといけないみたい…

 

 

「フラン様〜。パチュリー様がお昼ご飯を作ってくださいましt…ひっ!?」

バラバラの人形、布の破片が付いた腕、血走った瞳。これは私が来る直前に人形を壊しちゃった感じかな…?

「……プリンとどっちが美味しい?」

ものすごくブスッとした顔で聞き返してくる。いや、比較対象おかs…

「ねぇ、どっち?」

「えっと、ちょっとわかりませ____」

「じゃあ食べない。」

「いやぁ、きっとプリンと同じくらい美味しいと思いますよははは」

パッとフラン様の目が輝いた。

「ほんとう?」

まずい、ハードルあげちゃった!

「行こう行こう美鈴!」

信じられない程強い力で私を引っ張ってZUNZUNすすんでいく。

「あ、痛い痛い手を離して下さいフラン様ぁ!」

 

 

「痛いですフラン様!?私まだ死にたくないです離して下さい離して下さい」

ブンッ。フラン様が手を離してくだsガガガガガ!!

「ぎゃーー!」次の瞬間私は普通滑れないはずの床を火花を立てながらスリップしていた。熱い痛いもういやですよぉ。フラン様勢いありすぎでしょう…

そんなこんなでやっとお嬢様の部屋の前に着いた。あ、まずい早く鍵を開けないと…

「キュッとしてドカーン!」

手遅れでしたお嬢様…。

「きゃあ!!フラン!?なんでこんなところにいるの?!」

「パチュリーがお昼ご飯作ってくれたんだって!お姉しゃまも一緒に食べよう?」

「え、でもちょっとフラン?!手を離しt…」

お嬢様は私と同じようにZUNZUN引っ張られた。ただそれだけの事だ。

大惨事だった。

 

 

「うわーおいしそう!」

「死ぬかと思いました…」

「不自然死には私まだ早いわ…」

「何があったの…」

私達はテーブルについていた。テーブルにはインド式のカレー5膳(咲夜さんの分も含めて)と、ラッシーが並べられていた。咲夜さんがいつも作るのは庶民的なカレーライスだ。確かに一味も二味も違っていた。ちなみに内緒だが、お嬢様とフラン様の物は甘口だ。

「さぁ、食べましょうか。」

「いただきまーす!」

「い、頂きます…」

「パチェ、頂くわ…」

ぱくっ。ん?

「パチュリー様!これすごく美味しいですよ!こんなに美味しいカレー初めて食べました!」痺れるような辛さにブワッと香るスパイス。それでいてチャッツネの甘みも効いている。ナンともよく合っている。絶品だった。そしてラッシーはカレーの辛さをリフレッシュしてくれる。何もかもが完璧だった。

「おいしーい!」

「パチェすごいわね!こんなカレー初めてだわ!」

「よかったわ。おかわりm…」

ガチャッ。咲夜さんが帰ってきた。目をキラキラさせて、一気にまくしたてる。

「ただいま帰りました!あ、心配しないで下さいすぐ昼食の準備に…へ?」

「あ、咲夜さんお先に昼食いただいてまーす」

「咲夜!あなたも早く食べなさいよ!パチュリーのカレーすごいわよ!」

「パチュリーが作ってくれたの!すごく美味しいよ!咲夜のカレーよりおいしい!」

「ふぇ?え?ふぇ?」

咲夜さん涙目になってる。まずい…

ダダッと咲夜さんテーブルまでかけてきてカレーを一口。

「わ…わ…私のより美味しいじゃないですかぁ!パチュリー様の馬鹿!うわぁあああん!」

「ちょ、ちょっと咲夜!?」

あーあ。泣いちゃったよ多分拗ねるよ咲夜さん。

鉄のような人なのになんで変なところで脆いんだろ。困ったメイド長さんだ。

私は咲夜さんをなだめに行くために立ち上がった。

 

終わり…?

その頃門では咲夜にそそのかされたチルノが最強を証明する為に門番をしていた。

「誰も来ないわよ…やっぱりあたいってば最強ね!…あー、暇。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




初めまして。初投稿のタタンアラモードです。二次創作と言うモノを今まで書いた事が無かったので、温かく見守っていただけると幸いです。
また思いついたら投稿します。では!


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