しかし、彼は音楽ではなく違う選択を選び、その道を歩んでいた。
それに対して、友希那と両親は否定と追及をして――家族と双子の絆が綻んだ。
・ヒロインとその家族に対して嫌いという感情を抱いている。
そんなオリジナル主人公と設定を思いつき、作った小説がこれです。
お見苦しい点もあると思いますが、お付き合い願えればと思います。
夢を見ていた。
『音楽なんて嫌いだ。 父さんも母さんも、友希那もみんな!』
目の前にいる少年が叫ぶ。
自分のやっていることを認められず、否定されることに我慢の限界を迎えたのだ。
『何で、俺のは認められないんだよっ!? 大会に出たり、ゲーム実況を動画サイトを投稿したことで何か迷惑がかかったかっ!? それだったら父さんたちの方が迷惑だったね!』
『家族と過ごすのもセッション! 母さんも友希那も父さんの味方っ、俺の好きなところは全部父さんのバンドの所為で行ったこともないっ! 一緒に過ごしているからっ、バンドの子供だからって音楽が好きなわけじゃない!』
今まで向き合ってもくれなかった家族に対しての不満を、支離滅裂になりながら自分が抱えていた思いを叫び続ける。
『一緒に過ごしてくれようとしてくれなかったあんたたちに、俺のやっていることを否定されたくもない! そんなに否定するんだったら――俺はこの家を出て行ってやる!』
そして、中学卒業後。勢いままに彼に理解ある祖父母の自宅に引っ越した。
それから彼は大会に参加したり、実況動画を投稿し続け、高校生でありながら一躍人気を集めている存在となった。
そして、とある事が切っ掛けでテレビに映ることがあるも、それを駆けつけることのできない彼女には苦しいものがあった。
遠く離れてしまった彼に手を伸ばすこともできず、彼女——湊 友希那は目を覚ます。
* * * *
今日も新しい一週間が始まる。
鳴り響く目覚まし時計を止めた友希那はベッドから起き上がり、制服に着替える。
そして一階の洗面所に移動して歯を磨いて顔を洗い、乱れた髪を梳かす。
身だしなみを整えた友希那は今度は洗面所からリビングへと移動する。
そこにはソファに腰掛けて新聞を読む父と、台所で朝食を作っている母の姿があった。
「おはよう父さん、母さん」
「おはよう、友希那」
「おはよう。朝ご飯もうちょっとでできるから」
「ありがとう、母さん」
朝の挨拶を聞いた友希那は椅子に座る――空席となった椅子の違和感を敢えて気にせずに。
だけど、そんな違和感を嘲笑うようにタイミング悪く、テレビのキャスターがテンション高く読み上げた。
『今日はミコミコ動画超会議! 様々なイベントが盛りだくさんのなか、注目されているのがゲームイベント! 企画の中には有名実況者さんたちの参加してのゲーム実況が開催されます! その中でも、最年少で参加されるのはミッチ社員さんです!』
キャスターの言葉と共に現れたのは、顎に指を添えた銀髪の仮面をつけた少年の写真。
『ミッチ社員さんは、昔懐かしのゲームは勿論、最新作のゲームを実況投稿し続けており、今では25万人の登録者さんが応援している、いま人気の一人です』
『ここ最近では――』
キャスターが言葉を紡がれる前に、そのチャンネルは変わった。ほかならぬ友希那の手によって。
友希那の表情は悲しみに満ちており、チャンネルを変えたリモコンの手が震えていた。
両親の表情も同様で『悲しみ』に満ちていた。
母は顔を俯いてしまい、父は新聞をゆっくりと降ろして、見えてきたその表情は思い詰めていた。
今、ニュースに出ていた少年は一家がよく知っている人物だ。何せ彼は湊家の一員だったからだ。
ミッチ社員こと本名、湊 友斗(ゆうと)は双子の兄妹で、二年前まで一緒に暮らしていた。
父はかつてはそこそこ有名なアマチュアバンドのボーカルだった。実力も大きなライブに出場できるくらいあった。そのためライブの参加が決まる度に嬉しそうに話してきた。
友希那はそれが自分のことのように嬉しかった。父の歌が皆に広められる。そのことが純粋に嬉しかった。
しかし、父のバンドが解散し同時にゲーム界隈では友斗が少しばかり人気者になっていることが発覚したのだ。
友希那は父を否定した音楽の道を一緒に歩んでほしく、今すぐにでもやめるように促した。
両親は今更ながらに息子がそれで有名になり、そして関係に溝が生まれてしまったことが分かった。動画配信サイトでゲーム実況や大会に参加することが分かると、それの追求と否定をしてしまった。
その行いが、友斗との関係は悪化してしまった。
自らが選んだ道を否定された友斗は今まで溜まっていた不満や憎しみが爆発し、家を出ていくきっかけとなった。
そして、彼が紡いだ言葉がいまだに家族の心に棘のように刺さっている――『音楽なんて嫌いだ』と。
(友斗……)
同じ気持ちだと友希那は思っていた。
音楽と父に対する思いは一緒だと、自分を支えてくれるのだと――だがそれは友希那の思いよがりだった。
今思えば、友希那が音楽のことで喜んでいても彼は全く喜ばなかった。
家族で何処かに出かけることになってもついてこようとせず、父と幼馴染みのリサと一緒に『セッションをしよう』と誘おうとしても、気がつけば姿を消していた。
友斗が出て行ってから、その間には溝が出来ていることにようやく気がついた。
だが、時すでに遅し。友斗は出て行き、今では手が届かない程に彼は遠くなってしまったのだから……。
(もし、あの時に戻れたら……友斗はここにいたかしら)
実現するはずのない思いを願いながら、友希那は箸を手に取って、ようやく朝食に手を伸ばす――。
* * * * *
ミコミコ動画超会議の会場——そこは1~8までのホールが設置されており、とあるホールではゲームイベントが開催されていた。
其処は今大盛り上がりをしており、多くの観客がホールに設置されているモニターで映し出されたゲーム映像とそれを操作している実況者らに夢中になっていた。
映し出された映像はアクションゲーム。
女性忍者を主役としたそのアクションゲームは発売された当初からゲキムズと称され、今までクリアされていないソフト……しかも一世代どころか二,三世代前のゲーム機なので、中断セーブなど全くなし。
更に言えば、やられてしまえば、例えラスボスに到着しても最初のステージという鬼の難易度。
「あーっ!? なんでそこで回復アイテムを使わないんだよぉ!? ミッチ社員さん!?」
「いやっ、たっちさんがここはまだ使いどころじゃないって言ったんでしょぉぅ!? 意見を聞いた結果がゲームオーバーじゃないですかっ! やいじじいっ、あっ聞こえないふりしやがってっ!? ってかもう……またこのステージからだぁ」
ゲームオーバー画面から転換したのは、ラスボス手前のステージに立ち尽くす女性忍者。
絶望的なオーラを醸し出す、コントローラーを持つ灰色がかかった銀髪の仮面をつけた少年——ミッチ社員こと湊 友斗。
そして隣にいる若干肥えた身体をしている男性がたっちさんで、申し訳なさそうに顔をそむける。
そんなたっちさんに対してブーイングと「ミッチ社員、頑張ってぇ!」と慰めの言葉がかけられる。
「ぁはい! 頑張りますっ、リプレイみたいなゲームになりますけどお暇にならないようにトークでつないでいきます! ほら、たっちさんいつまでへこんでいるんですかっ!」
「いいんだ、いいんだ……おれなんてどうせどうせ」
「あぁもう!? あんたいい歳の、嫁さんがいるんでしょっ!? いいところを見せて、ヒエラルキーを少しでも上げてくださいよっ。今下降気味なんでしょ!?」
「失礼なっ!? これでも中の下あたりだよっ!?」
「もっと悪いわっ!?」
コントのようなトークと共に、ミッチ社員はコントローラーを動かして女性忍者を操作する。
「さてさて、たっちさんの立場は一旦置いといて――十回目のリトライっ! 再びラスボスまで全力疾走しますよぉ!」
ミッチ社員こと湊 友斗はコントローラーを両手にして戦いに赴く――。
※実は上記の設定で、仮面ライダーネタを考えたことがあります。