そして吉鷹蜂熊も悩んでいた。
そう、大量に渡された、不幸の手紙に……。
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またろう氏著、「キミ得」の43話の後のお話を小説化した二次創作です。
キミ得の主人公2人はこの小説には出てきません。脇役の2人が主人公です。
またろうtwitter:@matarou1996
キミ得:http://seiga.nicovideo.jp/comic/28882?track=verticalwatch_cminfo3
※このお話の元ネタは40~43話です。
※本作はキミ得1周年記念で作者がまたろう氏にプレゼントした二次創作です。またろう氏は作成に関わっておりません。
※掲載にあたり、またろう氏ご本人から許可をいただいております。ありがとうございます。
「おい」
少女は、隣の少年を肘で小突く。
「なんだよ?」
小太りの少年が、少女を見上げる。
「吉鷹、お前…肩、濡れまくってんじゃねぇか」
少女──軽寺華美は、少年を見下ろしながら、口悪く吉鷹を気遣う。
軽寺と吉鷹は、2人で一つの傘を差して歩いていた。
「あ? なんでもねぇよこれくらい」
吉鷹はニヤリと笑って、濡れた肩をポンポンと叩いた。
吉鷹は軽寺よりも身長が低いのだが、その彼が傘を差している。どう見ても効率が悪いのだが、それが吉鷹の主義らしい。
「……言ったな? じゃあ……」
軽寺は吉鷹の持っていた傘を急に奪い取って独占した。
「これで、どうだ! アハハハハ!」
「おい! バカ! 何考えてんだお前!」
軽寺に傘を独占された吉鷹は、瞬く間にずぶ濡れになった。
「くっそぉ……傘に入れてよなんて言ったくせに、こんな事しやがって……」
「ごめんごめん! ほら、ハンカチ。使えよ」
軽寺は吉鷹を傘に入れ、ポケットから取り出したハンカチを、吉鷹に差し出した。
「へぇ……」
吉鷹は神妙な顔で軽寺を見上げた。
「な、なんだよ…」
軽寺はうっすら赤くなった頬を見せないように、顔を少し引きながら、吉鷹に怪訝な顔を向けた。
「女の子らしいとこあるじゃん、お前」
吉鷹は一瞬ニヤリと笑った後、「そりゃ、女子だもんなぁ……」とつぶやいた。
「はぁ!?」
軽寺の顔は、隠しようもないほど真っ赤になった。
しかし、吉鷹はそんな軽寺の気持ちに気づいてもいないような素振りで、からかったのがうまくいったと言いたげな、誇らしげな顔をしていた。軽寺は心の中で舌打ちして、燃えるほど熱くなった顔を気合で冷ました。
──コイツ、アタシをなんだと思ってるんだろう……。
いくら考えても悩んでも、答えは出ない。他人に相談して分かったのは自分の気持ちだけで、軽寺には吉鷹の気持ちなど、分かるはずもなかった。
「ははは。サンキュー。洗って返すわ」
吉鷹は肩をハンカチで拭いて自分のポケットにいれた。
「おい、それ、てめぇ! あの、その……いや、返せよ」
軽寺は自分のハンカチをポケットに入れた吉鷹の行動に少しにやけながら、なんとかごまかした。
「ん?当たり前だろ」
吉鷹は眉をひそめる。
「いや…うん、そうだな。返せよ!」
軽寺は一人でバタバタしても仕方ないと割り切り、パッと笑顔になった。
思い切りの良さには自信がある。それを恋愛でも活かせたらいいのに。そんなことを思う。
──これは、恋愛なんだろうか。アタシには……まだ、分からない。
人を好きになったことなんて、今まで一度も、無かったから──
「……しかしよ。不幸の手紙だよ。6枚ももらっちまった。本当に、半分肩代わりしてくれるんだろうな!」
今日、吉鷹は学校中から不幸の手紙をもらってしまっていた。カラッとした性格の割りにオカルトを信じる吉鷹は、受け取った不幸の手紙、1枚につき十人に不幸の手紙を書くつもりらしい。吉鷹はカバンから不幸の手紙を取り出し、神妙な表情をしている。
「だぁーいじょうぶだって! アタシに任せな!」
そして軽寺は吉鷹から不幸の手紙を3枚受け取り、ビリビリに破いて通りがかりのコンビニのゴミ箱に捨てた。
「お、お前ェ! なな、なんて事を!! あれ、どうすんだよ!?」
吉鷹は慌てふためいている。軽寺はその姿を見て、このアタシを動揺させたお返しだよ、と心の中で舌を出して見せた。
吉鷹はあわててコンビニのゴミ箱に腕を突っ込んだ。
「あのさ、吉鷹……これでもし、不幸が起きたらさ。アタシら2人に同時に同じ不幸が来る、って事になるんだろ?」
「そ、そうかもな?」
吉鷹は破かれた不幸の手紙を必死に集めようとしている。
「じゃ、いいじゃん!」
軽寺は吉鷹がかき集めた紙片をふたたび、ゴミ箱の中に突っ込んだ。
「お、おい! 何がだよ! 何も良くねえよ!」
吉鷹は2回目はさすがに面倒になって、ゴミ箱から不幸の手紙を回収することをあきらめた。
「へへへ…」
軽寺は吉鷹に見られない様に嬉しそうにはにかむと、真顔で吉鷹に向き直った。
「同時に、トラックに轢かれたりしてな」
吉鷹は一気に青ざめた。
「や、やべぇよ…」
「そんなわけねーだろ吉鷹! 頑張って、30枚不幸の手紙書けよ! バーカ!」
「いや、お前も書けよ!?」
気づくと、雨は止んでいた。
「おっ。やんだな。じゃ、俺はこっちだから」
吉鷹は片手をあげてあいさつした。
「……ああ。また明日」
軽寺も、軽く片手をあげた。
「ちっ。本当に不幸の手紙かよ……」
吉鷹の背中を見ながら、軽寺は小さく毒づいた。
「アタシの家に着くまで、雨、降ってりゃ良かったのに……」