ヒトミがミミッキュを仲間にして、一夜が明けた今日。
「ふんふふーん、ふふーん……フフッ、えへへ!」
ヒトミはこれでもかというほど上機嫌だった。
昔から好きだったミミッキュを仲間にしたとあって、その喜びようは、まるでポケモントレーナーがチャンピオンになった時みたいだ。
今もポケモンセンターの朝食を食べながら、膝の上にのせたミミッキュの頭を撫でている。いや、むしろ撫でるついでに朝食を食べてるって感じだ。
「はいミミッキュ、あーん!」
「ミッキュ」
「……えへへ」
ミミッキュは被り物の中から黒い手を伸ばして、ヒトミが渡したポケモンフーズを食べた。
なんだろう……普通なら微笑ましい光景なのだろうけど、ヒトミの場合、彼女独特のニヤリとした笑みのせいで、ちょっと危ないものを見ているような感じがある。
ミミッキュは警戒気味にヒトミを見ながらご飯を食べているけど、満更でもなさそうだ。
「デレデレだなぁ」
「ラールー」
目の前のヒトミ達を見ながら、俺はパンを噛り、ラルトスはポケモンフーズのひとつをパクリと食べる。
そして、そんなヒトミとミミッキュに、不満そうな顔をするポケモンが一匹。
「……モシぃ」
「そう落ち込むなってヒトモシ」
「ラルラルぅ」
項垂れるように頭を低くしたヒトモシを、俺とラルトスは励ました。まるで弟ができてお母さんにかまってもらえなくなったお兄ちゃんみたいだ。
ヒトミはミミッキュに夢中で、ヒトモシの様子に気がついていない。
『はぁ……』
『元気出して。はい、私のモモンの実あげるから』
『……あぁうん』
ラルトスな自身の皿に盛ってある朝食の山の中からモモンの実を取り、ヒトモシに差し出した。口元まで運ばれたそれを、ヒトモシは力の無い咀嚼でハムハムする。
俺も頭を撫でて励ましてみたけど、ヒトモシの様子に変化はない。
「…………もしぃ」
むしろ、さらに落ち込んだ。
「やっぱりヒトミじゃなきゃダメか……」
ズーンと落ち込んだヒトモシの姿は、まるで真っ白にに燃え尽きた蝋燭のようだった。
***
朝食を終え、俺達はトウカシティのポケモンセンターにある中庭で過ごすことにした。
予定では、今日はトウカジムに挑戦するつもりだったけど、ヒトモシの元気がないこともあって、急遽ジム戦は明日にすることにした。俺とラルトスも、このままだとバトルに集中できそうにない。
ヒトミは「どうして?」と不思議がっていたけど、そこは適当に誤魔化した。
こういった問題は当人が気づいてどうにかしなければならないし、下手にヒトミにヒトモシが落ち込んでるのを伝えて関係が悪化したらマズい。
優しいヒトミのことだから、ヒトモシが焼きもちを焼いてるなんて知ったら、すぐにでもヒトモシを気にかけるに違いないけど、そうすればヒトモシが強がって拗ねるか、最悪、ミミッキュがまた人間不信になる……かもしれない。
それに、こういうジェラシーの問題はデリケートだから慎重にって、前に母さんのサーナイトが言ってた。
「どうしたものかなぁ」
中庭で走り回って楽しげに遊んでいるヒトミとミミッキュを、俺とラルトスは落ち込んでいるヒトモシと一緒に、隅にあるベンチに座って眺めていた。
「ラルラー」
「ん?」
ふと、横いたラルトスが俺を呼ぶ。
『カズヤも新しい仲間ができたら、もう私にかまってくれなくなるの?』
「……うーん、どうだろうね」
俺もトレーナーだ。これからラルトス以外の仲間だってできるだろう。そうなればラルトスも、今のヒトモシを他人事のようには見れないのだろう。言うなれば、明日は我が身だ。
そんな不安からか、ラルトスは少し怯えたような様子で俺を見上げていた。
「今までみたいにはいかないだろうね。どんなトレーナーでも、ポケモンと接する時間や手数には限界があるから。仲間が増えれば、それだけラルトスと一緒に遊んだりバトルしたりする時間も減って寂しい思いをさせちゃうと思う」
「…………ラルぅ」
俺の答えを聞いて、ラルトスは消え入りそうな声で鳴いてうつむいた。
そんなラルトスを、俺はゆっくり膝の上にのせて優しく抱きしめる。
「でも俺は、絶対にラルトスを手放したりしない。ずっと一緒にいるから。それだけは忘れないでほしい」
そういって、俺はラルトスの頭を撫でる。
これは俺の本心だ。きもちポケモンのラルトスも、きっと分かってくれるだろう。
「だからラルトスも、いずれ会えるかもしれない新しい仲間と、俺と一緒に仲良くしてくれたら嬉しいな」
「…………ラル」
俺の言葉を聞いて、ラルトスはゆっくりと頷いてくれた。
理解はしてくれたけど、まだ納得できないって感じかな?
けど今は、それで良い。
「そしてこれは、きっとヒトミも同じだと思うぞヒトモシ」
「…………モシぃ」
俺がヒトモシに言葉を投げかけると、ヒトモシは俺の顔を見上げた後、何か考え込むようにゆっくりとうつむいた。
「モシッ!」
やがてヒトモシは『ヨシッ!』と何かを決心したように大きく頷いた。
そしてヒトモシ独特の上下に揺れる歩行方法で、ヒトミたちの元へと走っていく。
「ヒトモシ?」
「モシ!」
「あっ、そういえば紹介してなかったわね」
そばに寄って来たヒトモシを見て、ヒトミは彼をミミッキュの前へやる。
「この子はヒトモシ。貴方と同じ、私のパートナーポケモンよ」
「モシモシ」
「……ミッキュ」
ミミッキュは警戒してヒトモシの様子を窺う。ミミッキュが被っている化けの皮の腹部に皴が寄り、まるで睨んでいるみたいだ。
やがてヒトモシに敵意や悪意が無いと悟ったのか、ミミッキュはゆっくりと歩み寄る。
『よろしくな』
『……よろ、シク』
ヒトモシの白くて短い手とミミッキュの黒く長い手が交差し、二匹は握手した。
「えへへ!」
手をつないだヒトモシとミミッキュをヒトミは抱きかかえる。
ヒトモシとミミッキュを両手で抱えて幸せそうに笑うヒトミを、俺とラルトスは微笑ましく見守った。
ーーつづく。
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