結城リトのToLOVEるな日々   作:竜宮 黍

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ここから漸く物語が動き出します。

伏線回収とかやったことないから、なんかソレっぽいもの散りばめたりしてますが、放置するかもしれないので気にしないで下さい。


ToLOVEるな日々ー1話ー

あれから、美柑と結城才培に事情を説明し、一悶着あったものの、ララは結城家に住むことになった。

海外にいる母親の結城林檎には、定期連絡の時に報告するつもりだ。

 

最初はなかなか大変だった。

そりゃあ、兄(息子)がいきなり夜中(PM.10:00)に超絶美少女を連れてきて、「この娘は宇宙人で、お姫様で、これから俺の婚約者になります」と言ってきたら、間違いなく精神の異常を疑うだろう。若しくは新手の詐欺か。

 

ララの尻尾や発明品を見せて納得してもらったが、才培の方はともかく、美柑の方は話してる間もずっと懐疑的だった。

ララと話してる内に、ある程度打ち解けてくれなかったら、許可が下りなかったかもしれない。こういう所ララは凄い。

 

なんか才培に「男になったなリト。ちゃんとララちゃんのこと守ってやれよ?」等と鼓舞されたが、残念ながら自分の身を守るので精一杯になると思う。

美柑には「随分ララさんに肩入れしてる様に見えるけど、何? 一目惚れ?」とか言われるし、何やら誤解をされてる気がする。

 

その後、疲れた体に鞭打ってシャワーだけ浴び、泥の様に眠った。

 

 

 

ー朝ー

 

ゆっくりと意識が覚醒してくる。

体が動かしづらい。まだ昨日の疲れが残っているのか、まだまだ布団の中にいたい衝動に駆られる。

……とりあえず、時間だけ確認しよう。

そう思いベッドの傍らに置かれてるはずの携帯を取ろうとするが、腕が動かない。

痛みで動けないとかそういうことではなく、何かに押さえつけられてるかの様な圧迫感を感じる。

腕に感じるのはスルリとした肌触りと、確かな弾力と、仄かな温かさだった。

もう大体予想が付いているが横を見てみると、案の定ララが全裸で寝ていた。

 

……余ってる部屋を与えたんだが、まさか原作通り潜り込んでくるとは思ってなかった。

別に私は好感度上がることしてないでしょ?? デフォルトでこれなの??

 

例え中身が女でも、体は男なのでこんなことされたら堪ったもんじゃない。心は違っても体は持て余しているのだ。

 

そっとララの腕と胸の間から腕を引き抜き、ベッドから抜け出す。

時間を確認すると、7時前だった。もうすぐ朝ごはんが出来るだろうし、別に起こしてもよかったな。

 

「起きろララ」

 

肩を掴んで、軽く揺する。軽く顔をしかめた後、間もなくララは目を覚ました。

 

「んぅ……?」

 

身を起こし、眠たそうに目を擦るララ。被っていたシーツがはだけ、その美しい裸体を惜しげもなく晒していく。

 

「おはよーリト!」

 

次の瞬間にはいつもの笑顔を浮かべ、元気に挨拶してきた。朝には強い方なのかもしれない。

 

「おはよう。なんで俺のベッドにいるんだ?」

 

「だってリトと一緒に寝たかったんだもん」

 

「……やめてくれ。若しくはせめて服を着てくれ」

 

「ずっとペケを身に着けるのは無理だよ?」

 

「ワタシも充電しなければいけないノデ」

 

シーツの中からペケが出てきた。お前もいたのか。

 

「今度服買ってやるから。地球で衣服をペケだけに頼るのは無理があるぞ」

 

「…仕方ありませんネ」

 

「リトが選んでくれるの? やったー! 楽しみ♪」

 

誰も選んでやるとは言ってないんだが、まあなんでもいいか。

 

 

ーリビングー

 

「ご馳走さま」

 

「ご馳走さま! ね、リト、早く買いに行こっ?」

 

「は?」

 

「ほら早く早く」

 

言いながら背中をぐいぐい押してくるララ。

 

「待て待て待て待て! 今日は学校あるから駄目だ!」

 

「学校?」

 

「勉強する所だ。俺も美柑も昼間はそこに通ってる。休みは週…7日に2回。今日含めて後4日経たないと休みは来ないぞ」

 

「えー! 折角リトと買い物に行けると思ったのに……」

 

「買い物?」

 

朝の会話を知らない美柑が、何の話かと訊いてきた。

 

「服だよ。ララはペケしか持ってないからな。今度買いに行こうって」

 

「へぇー? デートのお誘い? やるじゃんリト」

 

ニヤニヤと意地の悪そうな笑みを浮かべてからかってくる美柑。こういう所は小学生らしい。

 

「別に美柑も一緒に行けばいいだろ。今週末何か予定あるのか?」

 

「ないよ? ま、リトには荷が重いか。しょうがないから付き合ってあげるわよ」

 

「そんな訳でララ、土曜日まで我慢だ」

 

「ごめんね? ララさん。学校は休めないから」

 

「えぇ~……じゃあ、私も学校行きたい!」

 

マジか。早くね? ララが結城家に住むタイミングもそうだし、全体的に展開が早い気がする。

 

「それは流石に無理じゃあ……」

 

普通はそう思うだろう。しかし原作ではあっさりそれが叶うのだ。しかも信じられない方法で。

 

「あー……俺に良い考えがある」

 

「ほんとっ?」

 

「え!? 本気? リト」

 

「まあ、ララを1人にしとくのも不安だしな」

 

「ワタシもいますヨ」

 

「心配してくれてるの? ありがとーリト♪」

 

心配ではなく不安だと言ったんだが……そう言えば、ララはまだ追われてる身だったな。まだザスティンが来てないし、ララとしても1人になりたくないのか。

 

恐らく、黒服を追い返したことで、親衛隊隊長のザスティンが出ばってくる。そしてザスティンからなら、直接デビルーク王に話を通しやすい。だからこそ、いつザスティンが来ても良いように、言い訳の材料たるリトから離れたくない、と。

意外と抜け目の無い女だ。原作を読んでた時は何とも思わなかったが、案外ララの行動には意味のある物が多いのかもしれない。

 

「じゃあ、ちょっと早めに出とくか。ごめん美柑。洗い物頼んでいいか?」

 

「いいよ。別にいつものことじゃん。いってらっしゃい、リト」

 

「いつもありがとう。いってきます」

 

「いってきまーす♪」

 

予め用意しておいたカバンを持って、そのまま家を出た。今日は良い天気だ。

 

 

 

学校に向かう道すがら、ララには最低限のルールを課すことにした。

 

1、宇宙人であることは黙っておくこと(これはララも最初からそのつもりだったが)。

2、身体能力を地球人に合わせること。飛ぶのはもっての外。

3、リトと婚約者であることは言わないこと。目立ってしまうし、無駄な敵も作りかねない。

4、一緒に住んでることは言ってもいいが、リトの母の知人の娘ということにして、留学の際にホームステイ先として住んでることにすること。

 

4つ目は今考えたが、後で結城家の人間と口裏を合わせとかないといけないな。

 

「どーして、婚約者のこと隠さないといけないの?」

 

「さっきも言ったけど、目立つからな。単に実家に言い訳するための関係なら、部外者に話さなくてもいいだろ」

 

下手に話して宇宙人だってことがバレないとも限らない。

後々バレることになるが、この時点でララが宇宙人であることを、クラスメートに話すのは得策ではない。

あれはララの超人的な身体能力や突飛な行動を小出しにして、尚且つララの性格を知った上で受け入れられたに過ぎないからだ。

 

「ねえリト、それなんだけどーー」

 

「ララ」

 

ララが何か言おうとしたが、一旦それを遮り、物陰に身を隠す。

 

「あれだ。ペケ、あの娘と同じ服に変えられるか?」

 

丁度彩南高校の女子生徒が通りかかったので、指を指してペケに指示を出す。

 

「エエ、勿論デス」

 

すると、一瞬ララが光に包まれ、次の瞬間には彩南高校の制服に身を包んだララが立っていた。

 

「よし、その格好なら目立たないな。学校に行く時はいつもその格好で行けよ? 衣替えにはその都度対応すればいい」

 

「この格好してたら学校に行ってもいいの?」

 

「いや、学校の一番偉い人に許可を貰わないといけない。今からその人の所に行くつもりだ」

 

「ふーん。ねえ、さっきの話の続きなんだけど」

 

「ん?」

 

「リトは、私と結婚するの嫌?」

 

「……? なんでそんなこと訊くんだ?」

 

「私は、リトとなら結婚してもいいかなーって思ってるケド」

 

……ああ、そういうことか。

 

少し考えて、合点が行く。

今の時点でララが(リト)に惚れてるということは無いだろう。今の私達は一夜を共にしたに過ぎない関係だ。語弊があったごめん。とにかく、ララが本気でリトに惚れるには、まだ相応のイベントをこなしてない。

 

今までの婚約者候補達に碌なのがいなかったから、相対的に(リト)が好印象に映っているのだ。まあ、実際原作の結城リトはいい奴なのだが。

 

しかし、最早原作通りに動くつもりはそんなに無いし、イベントをこなすつもりも無い。

 

「んー……そうだな。ララが『俺となら結婚してもいい』って思ってる間は、するつもりは無いな」

 

「えー、何ソレ、意地悪?」

 

「いいや、今の言葉の意味が分かった時が、結婚相手を見つけた時だよ」

 

「ふーん?」

 

どうにも腑に落ちて無さそうだが、あまり長話をする訳にも行かないので、さっさと学校に向かうことにした。

 

 

 

ー校長室ー

 

「可愛いからOK!」

 

「やったー!」

 

案の定余裕のOKだった。学校の管理ガバガバではないだろうか。

 

「これでリトとずっと一緒にいられるね♪」

 

「ははは……」

 

ララの台詞に思わず苦笑いが浮かぶ。そう言えば、校長は女好きの変態だが、リア充に対する憎しみとかとは無縁なタイプだったよな。

もしリア充に寛容でないタイプの変態だったら多分駄目だったな。良かった。まあ、代わりに彼氏持ちだろうが見境なしに襲うんだろうが。

 

それから、ララは留学生枠として迎えることや、学校の資料や教材は後日発注すること、クラスは1-Aにすること等を伝えられ、校長室から出た。

 

仕事が早い。普段あれだけ変態行為に勤しんでおいて、学校自体は一応機能してるのは、なんやかんや仕事はちゃんとやってるからだろうか。若しくは変態行為に勤しむために仕事が早いだけなのか。

 

因みに、まだ教材が無いが、体験入学という形で今日から学校にいても良いらしい。

校長が優しいのか美少女に甘いのか、間違いなく後者だな。

 

 

「ふふー♪」

 

「ララ、腕を組むのは止めよう」

 

「なんで?」

 

「目立つ。いや、お前の存在そのものが目立ってるけど、こういう行為を良く思わない奴もいるんだよ」

 

「ふーん、変なのー」

 

「ほら、普通に歩く」

 

「しょうがないなー」

 

腕を離す様に促すと、ララは渋々ながらも素直に従った。それでも距離が近いが、これが彼女のパーソナルスペースなのだろう。

 

 

そうこうしている内に、1-Aの教室に着いた。

 

「リト!? なんだその可愛い女子は!?」

 

教室に入った途端、猿山が食い付いてきた。

その声に吊られてクラス中の視線がこちらに向き、何とも言えない居心地の悪さを感じる。

 

「留学生だよ。母さんの知り合いの娘さんで、今は家でホームステイしてるんだ。今日からこのクラスの一員」

 

「ホームステイ!? ど、同棲してるって言うのか!? こんな美少女と!?」

 

「まあ、部屋余ってたし」

 

『同棲』と聞いて、クラス中の男子から恨みがましい目で睨まれる。女子は女子で面白そうな物でも見る様な目になってるのが半数だ。碌な奴いねーな。

 

「ほら、折角だしもう自己紹介しとけ」

 

「はーい。私、ララ! ララ・サタリン・デビルーク。よろしくー」

 

「おお、本当に外国人だ。日本語上手いね」

 

「よろしくーララちぃ」

 

やや遠巻きに見ていた連中の中から、籾岡と沢田らしき少女が出て来てララに話しかける。

 

「ララちぃ?」

 

「可愛いかなーって思って。駄目? ララちぃ」

 

「ううん、いいよーありがと!」

 

そのまま自然と女子の輪に加わるララ。籾岡と沢田のファインプレーだな。単に面白そうだと思っただけだろうが。

 

「リト~……」

 

「うぉっ!?」

 

ララ達を見ていると、後ろからぬぅっと猿山が顔を出して、肩を組まれる。

 

「テメー、春菜ちゃんというものがありながら、どういうつもりだ?」

 

「いや、余ってる部屋貸してるだけだぞ?」

 

本人は使う気無いみたいだが。

 

「だったら俺ん家でもいーじゃねーかァ!!」

 

「お前ん家部屋余ってたっけ?」

 

「俺の部屋がある!!」

 

「頭大丈夫?」

 

猿山が本能に忠実過ぎてつい辛辣になってしまう。まあ男友達なんてこんなもんでいいだろう。

 

ここまではまだ平和だった。男子連中も羨ましそうではあるものの、折角だからと妄想に耽り、ふざけあいながらも仲睦まじく談笑していた。

 

「えー!? ララちゃん、昨日結城と一緒に寝たの!?」

 

一瞬、教室内が凍った気がした。

 

ジーザス。なんでそうピンポイントに誤解されそうなこと言うの。

 

「……どういうことだリトォ?」

 

案の定男子共が血涙を流しながら、こちらを睨みつけてくる。

 

「いや、待て。何もない。何もないから」

 

「んなもん信じられると思ってんのかァ?」

 

「バカお前っ、ララに手を出したら、母さんの知り合いの旦那さんに殺されるっての!」

 

外国的に言うなら、ショットガン・マリッジって所か。この場合手を出したら父親に拳銃で脅されて結婚を迫られるが。

 

実際ララに手を出したら、似た様なことになるのは明白だ。ついでに地球も滅ぶかもしれない。

 

「む……」

 

「ちっ……」

 

「でも羨ましい……」

 

俺の言葉にある程度納得したのか、一応矛を収める男子達。それでもまだ恨みがましい顔をしているあたり、男とはどうしようもねぇ生き物だなと思った。

 

「ララちぃ、結城になんかされたら、遠慮せず私らにいいなね?」

 

「なんかって?」

 

「結城君はそんなことしないと思うけど……」

 

しません。

西連寺の優しさが目に滲みる。惚れた色眼鏡だろうが。

 

そんなこんなしている内に、担任の骨川先生がやってきて、ララの自己紹介が既に済んでたこともあって、すぐにHRと相成った。

 

 

 

授業が始まって、漸く一息着けたので、これからのことを考える。

 

当面の問題はザスティンだ。

昨夜黒服を追い返してから、ララを連れ戻しに地球に来ているはずだから、今頃その辺で警察に捕まったり、犬に追いかけられたり、迷子になったりしているだろう。

 

そして、ララがリトをザスティンに紹介した後に、決闘を申し込まれたはずだ。問答無用で。

あれも中々にヤバい。一発でもザスティンの攻撃を食らったら、ただでは済まないだろう。ララが止めてくれるが、それまでは自分で持ちこたえないといけない。

 

どうにか丸く収められないかなあ……

 

私の危惧の1つとして、『この世界がどれだけラブコメ時空の影響を受けているか』という物がある。

 

ぶっちゃけ昨夜の爆発とか、現実的に考えて食らったらひとたまりも無い。

黒服二人はデビルーク人だからという説明が付くが、一般の地球人の結城リトがあの爆発に耐えられるとは思えない。

しかし原作では、バッテン形の湿布を貼るだけで済んでいる。

 

実際にこの世界に生きている身としては信じられない。

当然だが、私は痛みも感覚も正常に感じとれる様になっている。

だからこそ、あの場でララにしがみついたのだ。無様だとしても。

 

『この世界ではそうそう死ぬ様なことは無いだろう』という楽観と、『今はここが現実なのだから、死ぬ時は死ぬだろう』という危機意識が同時に存在する。

 

だから、ララの婚約者候補なんて厄介なことを安請け合いするクセに、いざ危険が迫ると焦ってしまうのだ。

 

閑話休題

 

ぶっちゃけ対策とか立てようが無いな、と思ったので、原作通り逃げの一手に走ろうかなと思う。

こういう時のために足腰を鍛えたかったのだが、間に合わなかったものは仕方ない。今のポテンシャルでやれることをやるしかない。筋トレはある程度続けるが。

 

 

ー昼休みー

 

「リト、一緒に食べよ!」

 

「ん」

 

ララが美柑に作ってもらった弁当を持って、リトの席にやってくる。

同時に、男子共が羨ましそうな目で見てくる。面倒臭い奴らだ。

 

「ララ、折角クラスの女子と仲良くなれたんだから、そいつらと一緒に食べたらどうだ?」

 

「あ、それもそうだね。おーい! リサミオも一緒に食べよー!」

 

「……も?」

 

あれ、おかしいな。私じゃなくて女子と一緒に食べれば? って言ったつもりだったんだけど。

 

ほら見ろ、籾岡と沢田も若干困惑ぎみじゃないか。あ、嫌らしい笑みに変わった。

 

「いいの~? ララちぃ、おアツいところお邪魔しちゃって…」

 

「いいよー。リトも一緒に食べたいって言ってるし」

 

言ってへん言ってへん。

 

思わずララを見ながら首をフルフルと振ったが、どうせララには見えてないだろう。

籾岡が更に面白そうな物を見る目になった。この(アマ)

 

「じゃ、お言葉に甘えて、お邪魔しちゃおーかしら♪」

 

「春菜も行こ」

 

沢田が西連寺も誘う。このメンバーなら自然と付いてくると思っていたので、特に文句は無い。むしろこのメンバーだといい緩衝材になってくれそうだと期待しておく。

 

「え? 私も?」

 

「いいよね? ララさん、結城も」

 

「もちろん!」

 

「ああ」

 

ガタガタと机をくっつけて、お弁当を広げる。

 

男子からの視線がより強くなった気がするが、最早どうでもいいなと思った。

 

 

「で? 二人の関係って、何なワケ?」

 

弁当をつつきながら、籾岡が身を乗り出して訊いてきた。

 

「カンケー?」

 

「ただの同居人」

 

ララが首を傾げていたので、下手なことを言う前に無難に答えておく。

 

「ララさんは結城のこと、どう思ってるの?」

 

今度は沢田が直接ララに訊いてきた。

 

「好きだよ?」

 

「それって恋愛的な意味で? …あ、流石に本人の前じゃ言いづらいか」

 

籾岡が続くが、流石に踏み込み過ぎたかと躊躇する。

 

「んー、よく分かんないけど、私、リトとなら結婚してもいいと思う」

 

すんげぇ爆弾落としてきた。

 

「ええ!?」

 

「け、結婚!?」

 

想定外の単語に沢田と籾岡が声を上げると、周囲の人間がギョッとしてこっちを見てきた。何人かは最初から聞き耳を立てていたかもしれない。

 

「結婚……」

 

弁当を食べながらずっと話を見守っていた西連寺も、箸を止めて呆然としている。若干目に生彩が無い気がするのは気のせいか。

 

「でも、リトは私と結婚したくないんだって……」

 

呆然としている周りを尻目に、ララは悲しそうにーーいや、違うなーー残念そうに、目を伏せる。

しかしその仕草は、見ようによっては涙を堪えてる様にも見えてくる。

天然でやってるのだから恐ろしい。悪魔の方がマシだと思った。

 

「リトてめェーーーー!!!」

 

案の定、猿山を筆頭にクラスの男子に掴みかかられる。

 

「こんっな可愛い女子を泣かせるたァどういう了見だァ!!」

 

「う、うるせー!! 俺の勝手だろうが!!」

 

気迫で負けたらやられると思ったので、猿山に負けじと声を張り上げ、胸ぐらを掴まれていた腕を掴み返す。

 

喧嘩をする気は無い。今は食事中だし、そんなことよりもララに言いたいことがあった。

 

「ララ! 俺は別に結婚したくないとは言ってない! でもお前はまだ分かってないんだ。いいか、『結婚してもいい』と『結婚したい』の間には、天と地程の差がある。お前は『結婚したい』と思えるまでは結婚なんてしなくていいんだ。お前は、自由なんだから」

 

「自由……?」

 

「そうだ。自由になりたかったんだろ? 手伝ってやるつってんだろ」

 

いや、「付き合ってやる」って言ったんだっけ。まあどっちでもいいや。

 

教室がやたらに静かだった。みんな呆然と私とララのやり取りを見ている。事情を知らなけりゃそりゃ意味分からんだろう。面倒臭いから意味分からんままでいてくれ。

 

「リト……」

 

……ん?

 

なんか、やたらララの目がキラキラしてる様な気がするが、なんだこれ、美少女補正? 今までそんなの無かったしどっちにしろ美少女だけど。

 

「うれしい……そこまで、私のキモチ理解してくれてたんだ……」

 

「あ? ああ……」

 

なんだろう……この既視感。知らずに、冷や汗が流れてくる。

 

「リトの言う通り私は……自分の好きなように自由に生きたい。まだまだやりたいことたくさんあるし、結婚相手だって自分で決めたい……そう思ってた」

 

待って。これ確か原作ではザスティンと一緒の時に言ってた台詞じゃないか? え、待って待って。それじゃあ、この流れはもしかしなくても

 

「私……今ならリトが言ってた言葉の意味が分かる。これが『好き』ってキモチ……私、リトと結婚したい!」

 

「うっそだろお前!?」

 

そんな即堕ち2コマある? いや、原作も大概そんな感じだったけど、現実で直面すると思うわ。この女、チョロすぎる。

 

「リトー♪」

 

「ちょ、やめろ! 抱きつくな!」

 

周りの男子共を押し退けて抱きついて来るララ。

 

漸く周囲の時間が動き出し、ザワザワと騒ぎ始めるクラスメート。

猿山達が「どういうことだリト!?」「ちゃんと説明しろ!!」と騒ぎ立て、籾岡と沢田は面白そうに西連寺と何やら話していたが、当の西連寺はやはり困惑した様子で、ジッとララのことを見ていた。

 

なんとか嘘も織り混ぜつつ、ララの事情を説明した頃には、もう昼休みは終わっていた。

弁当は半分程食べ損なった。

 

 

 

「はあ……」

 

あれから、授業中も休み時間も、クラス中の視線が痛くてしょうがなかった。

私は基本的に他人の視線を気にしないタイプだが、あそこまでいくと気にしない訳にもいかない。

 

放課後、また囲まれて質問攻めにあったら堪ったもんじゃないと、ララをつれてさっさと教室から出ていった。

そして今、原作で度々出てきた、あの河川敷に来ている。

ここで残った弁当を食べるつもりだ。

 

「こーいう所で食べるのもいいねー♪」

 

ララも隣に腰を下ろし、一緒に残った弁当を食べるつもりらしい。

 

「ララ様、本気でコノ地球人と結婚するつもりデスカ?」

 

「もちろん♪」

 

周りに人がいなくなったからか、今までずっと黙り込んでたペケが困惑ぎみにララに問いかけた。

それに対して、ララは当然の様に頷いた。

 

だろうな、と思う。

ララはこの手の嘘を吐かないだろう。

 

ララを本気にさせてしまった、という事実に、気が滅入る。

ララが今の結城リトに惚れたということは、私自身がそれに向き合わなければいけないのだ。

仮にリトに身体を返す目処が付いたとして、それまでにララの気持ちに対して決着を付けなくてはいけない。

 

今のララの気持ちを本来の結城リトに押し付ける訳にはいかないのだ。

 

「ごちそうさま」

 

「ごちそうさまー♪」

 

弁当を片付け、カバンにしまい込む。

 

ふと、ララを見てみる。

ララもこちらを見てきたので、そのままお互い見つめ合うことになった。

 

夕焼けでほんのり赤くなった頬、桜色の唇に、小さく整った鼻、長い睫毛が大きな瞳に影を落として、ストロベリーブロンドの髪は夕日で紅く輝いていた。

 

綺麗だな、と思った。

 

見た目もそうだが、ララは心が綺麗なのだ。純粋で、素直で、飾らない心が原作を読んでた時から好きだった。

 

きっと、それはここにいても同じだろう。

いずれ私はララを好きになる。ララがリトに向けてる感情と同じかはさておき、それは確信を持って言える。

 

……もし、結城リトに身体を返す希望が潰えたら。若しくは、私が結城リトとしての人生を受け入れたら。

考えたくもないが、その時には、腹を括ることにしよう。元に戻れない理由は無いが、戻れる保証も無いのだから。

 

「……帰るか」

 

ポツリとそう呟き、カバンを持って立ち上がる。

ララも立ち上がったのを確認して、家の方向に足を向けたところで、怪しげな格好をした男が現れた。

 

「ララ様!」

 

「ザスティン!」

 

そこには、髪を乱し、脚を犬に噛まれ(現在進行形)、満身創痍と言った様相のザスティンが立っていた。

 

……初登場から締まらない男だ。本当は強いのに。

 

多分戦闘力なら、作中でも5本の指に入ると思うんだけど、どうなんだろうね。

ザスティンより強そうなのはせいぜい、ギド、ララ、クロ、ダークネス状態のヤミくらいじゃないかな。知らんけど。

 

「フフ……苦労しましたよ。警官に捕まるわ、犬に追いかけられるわ、道に迷うわ……これだから発展途上惑星は……しかし!」

 

その辺は発展途上惑星関係無いと思うが、喋ってる最中もずっと犬が足の脛の所ガジガジしてんのシュールだな。

 

「それもここまで! さァ、私と共に、デビルーク星へ帰りましょう。ララ様!」

 

「…………」

 

そこで、何故か考え込むララ。

 

え? ここ考え込む所? 原作と心境がやや違うとは言え、ここは強引にザスティンを説得する所じゃないの?

 

「……いいよ。帰っても」

 

「は!?」

 

「エ!?」

 

「……そうですか。漸くララ様もデビルーク王の後継者としての自覚を持たれた様ですね。では、私の宇宙船に乗って帰りましょう」

 

ザスティンが指を鳴らすと、どこからともなく宇宙船が現れ、河川敷に降り立った。

 

「お、おい……いいのか? ララ……」

 

おかしい……ララがデビルークに帰りたがるなんて……いや、家族のことが嫌いな訳では無いから、別におかしくはないんだが、一体何故ーー

 

「その代わり、リトも連れて行っていい?」

 

ーー把握した。こいつ、デビルーク王に私を紹介するつもりだ。若しくは家族全員に。

外堀から埋めるつもりか。違うな。ララは頭は回るがそういうことを考えるタイプじゃない。単に自分が初めて好きになった人を家族に紹介したいだけなのだろう。

天然でテクニカル引き当てるの本当に止めてほしい。

 

「失礼、リトというのは……?」

 

「この人だよ。私、リトのこと好きになったの。だから、パパに紹介させて?」

 

言いながら、腕を組んでくるララ。

 

ザスティンは一瞬顔をしかめ、しかし呆れた様に顔を振った。

 

「ララ様……またお戯れを……」

 

「違うよ。私、本気でリトのこと好きになったの」

 

「本気ですか……?」

 

次は訝しむ様な目になり、そして私の方を品定めする様に見てきた。

 

「……いいだろう。地球人、誇りに思いたまえ。本来、貴様の様な人間が相見える様なお方ではないのだからな」

 

なんもうれしくねぇ。

 

ザスティンが決闘を仕掛けてこないのは、多分どっちみち私がこれからデビルーク王に謁見することで、品定めされると踏んでるからだろう。

この男がララ様に相応しくなければ、デビルーク王が消し去るだろう、と。

 

しゃれんなんねぇ。

 

「行こっ! リト♪」

 

そのまま宇宙船に連れ込まれ、せめてこれだけはと、美柑に「今日は遅くなるか、もしかしたら帰れない。ララの件で色々。帰ったら説明する」とだけメールを打って、宇宙船が地球の大気圏を出るのを、黙って見ていた。

 

 

せめて、遺書を書く時間が欲しかった。

 




原作とはかけ離れた展開となってきました。
彼女はこれからドンドン泥沼にハマっていきます。見守ってあげてください。

ちょいちょいペケの存在を忘れそうになるんですよね。
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