結城リトのToLOVEるな日々   作:竜宮 黍

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不定期更新と言いながら定期的に更新していくスタイル。

でもこれで本当にストックが尽きたので、明日更新出来る保証はありません。


ToLOVEるな日々ー2話ー

デビルーク星まで、光速で飛ばしても片道3時間はかかるらしい。

遠いと捉えていいのか、近いと捉えていいのか分からん。

 

とりあえず、今の内に色々確認しておこう。

ザスティンに聞こえない様にララに話しかける。

 

「なあララ、1つ確認なんだが」

 

「なに?」

 

「お前は俺と結婚したいみたいだけど、俺がそれに了承してないのは分かってるよな?」

 

「ナァ!?」

 

「え? 結婚してくれないの?」

 

ペケが驚愕の声を上げ、ララはキョトンと首を傾げた。

分かってへんのかい。

 

「『結婚してもいいけど、したい訳じゃない』この意味、分かるだろ?」

 

「ーーそっか! じゃあ私、リトに好きになってもらえる様、がんばるねっ!」

 

「う、うん……」

 

おおよそララらしい返事だったが、「がんばれ」と言うのも何か違う気がして、何とも歯切れの悪い返事になってしまった。

 

「ラ、ララ様……本当によろしいノデスカ? こんな男と……」

 

こ ん な 男

……まあいいけど。

 

「うん! だって私、リトのこと好きになっちゃったから……」

 

胸に手を当て、頬を染めて目を附せるその仕草は完全に恋する乙女のそれだった。並の男ならこの時点で惚れてる。

 

「そうデスカ……ナラバ!! 私は全力でララ様を支援するまでデス!!」

 

まだ疑念は残るものの、そこはララに対する忠誠心全振りのロボット。ともすれば、ララの願いを叶えんとするのは当然の流れだった。

 

その後は、デビルーク星に着くまで、ララの家族のことやデビルーク星のことをララと話していた。

 

 

ーデビルーク星ー

 

宮殿の様な建物の前に、宇宙船は着陸した。

多分庭なのだろう。綺麗に整備された花や木々が至る所に自生している。

 

……デカい。

どこの世界でも、位の高い人物が広い土地と豪華な建物を持つのは、共通なんだろうか。

 

「デビルーク星へようこそー♪行こ! リト」

 

宇宙船から降り立った所でララがそう言って振り返り、そのまま私の腕を掴んでグイグイ引っ張ってきた。

実家に帰るということもあって、既にドレスフォームに着替えている。

 

「そんなに急がなくても、誰も逃げやしないだろ」

 

デビルーク人の力に敵う訳もなく、引きずられながら一応抗議する。

 

「だって、早くみんなにリトを紹介したいし」

 

「むぅ……そう言えば、デビルークの重力は地球とそんなに変わらないんだな」

 

まあいいか、と納得しかけて、ふと、気になったことを呟く。

 

体が極端に重い訳でも、軽い訳でも無い。動きやすくていいが、あまり他の惑星に来たという実感は湧かなかった。

そう言えば、空気中の分子の配合はどうなってるんだろう。問題なく呼吸出来てるから、酸素濃度はそう変わらないはずだが。

 

「あ、この辺はね。デビルークは磁力の差があるから、向こうの山の方はここよりずっと重力が強いよ。逆にあっち側は弱い。それぞれ修行や空を飛ぶ練習に使われたりするんだよ」

 

「へぇ」

 

面白い。こういう原作に無いことを知れるのは、この世界に来てからの一つの楽しみだったりする。

 

「ただいまーー♪」

 

そうこうしている内に、入り口らしき所まで辿り着き、ララが豪快に扉を開け放った。

 

宮殿の中は、大方予想通りで、真っ赤なカーペットにシャンデリア、無駄な装飾品は少なく、シンプルで質の良さを感じる見た目だった。

 

確かな気品から、内装を拘ったのはきっとララの母親の方だろう。

 

「お帰りなさいませ、ララ様」

 

そしてこのメイドさんである。

完璧だ。完璧なメイドだ。シワ1つ無い白のブラウスに、フワリと広がった黒のロングスカート、汚れの一切無いドレスエプロン、そしてピコピコと動く猫耳カチューシャ。

……なんで猫耳カチューシャ?? 首から下は完璧なメイドなのに、首から上が唐突に俗っぽい。誰だよデザイン考えたの。

 

一瞬本物の猫耳説も考えたが、普通にララと同じ耳が左右に付いてるので、その説は即座に否定された。て言うか、髪と同色で分かりづらいけど、やっぱりカチューシャだコレ。誤魔化せないわ。

 

「デビルーク王が玉座にてお待ちです」

 

「はいはーい♪」

 

恭しく傅くメイドさんに対して、手を振りながら返事をして素通りしていくララ。

案外雑な対応だが、ララらしいとも思った。主人からしてみれば、侍女とはこういうものなのかもしれない。

 

素通りするのも悪い気がして、ペコリとお辞儀だけして、ララの後についていく。

 

すると、宮殿の奥の方からドタドタと騒がしい音が聞こえてくる。

 

「姉上! 帰って来たのか!?」

 

バーン! と扉を開けて、伊藤かな恵ボイスのツインテール少女が飛び出してきた。

そして後ろから、あの甘ったるい、あいなまボイスのツーサイドテール少女も出てきた。

 

「もう、ナナ、そんなに騒いで、はしたないですわよ?」

 

「なんだとモモ! お前は姉上が帰って来て嬉しくないのか!?」

 

「誰もそんなこと言ってないじゃない……まったくお子様なんだから」

 

「なんだとー!」

 

「久しぶりー。相変わらずだね。二人とも」

 

「お久しぶりデス。ナナ様、モモ様」

 

おお……新井里美に、伊藤かな恵に、豊崎愛生。

 

「揃ったな……」

 

佐藤利奈がいないのが悔やまれる。

 

「ん?」

 

「ああいや、その娘達が妹?」

 

ララに聞き返されてしまったので、適当に誤魔化しておく。声優ネタも程々にしよう。

 

「そーだよ! こっちがナナで、こっちがモモ。双子なの」

 

「……なあ姉上、そいつ一体誰なんだ?」

 

「お姉様の知り合いの方に、そいつなんて失礼よ?」

 

「うるさいなーもう」

 

私のことを訝しげに見るナナをモモが諫め、それにまたナナが突っかかる。

これでもこの二人は別に仲が悪い訳じゃない。これがこの二人の関係なのだ。姉妹故の遠慮の無さだろう。

 

「この人はねー、リト! 私の好きな人だよ!」

 

「「……へ?」」

 

おお、完璧にシンクロしている。さすが双子。

 

「はあ!? 本気か姉上!? こ、こんな冴えない地球人……なんで!?」

 

「これは流石に驚きですわ……」

 

ナナは信じられない物を見る目で、モモは興味深そうにこちらを見てくる。

 

「……はじめまして、正確には、結城リトって言います。好きに呼んでくれ」

 

居心地が悪い。とりあえず自己紹介で間を持たせる。

 

「ああ、これは失礼しましたわ。私の名前はモモ・ベリア・デビルーク。どうぞ、モモと呼んで下さい。ほら、ナナもちゃんと名乗ったら?」

 

「……私はナナ・アスタ・デビルークだ。どこのどいつだか知らないけど、姉上を騙すつもりなら、容赦しないからな!」

 

「もう、ナナったら……」

 

「リトはそんなことしないよー?」

 

「…………」

 

まあ、ナナの反応は当然だろう。

お見合いが嫌で家出してた姉が突然帰って来たと思ったら、「好きな人が出来た」とか言い出したら、騙されてるか、何かの気の間違いと思ってもしょうがない。

 

「ごめんなさいリトさん。ナナが失礼な態度を……」

 

「いいや、気にしてない。俺が怪しいと感じるのは当たり前だ」

 

「まあ……聡明で優しい方で良かったわね。ナナ」

 

「…………」

 

余計にナナの目付きが鋭くなった。返答にミスったな。まあ今の段階では何を言っても大差ないか。

 

「…で、ソイツ家に入れてどうすんだよ、姉上」

 

「パパに紹介するよ?」

 

「マジで?」

「マジですか?」

 

またハモった。そこまで?

 

ナナの目が若干哀れみに変わった。そこまでか。

 

「……もしもの時は骨だけは拾ってやるよ。骨が残れば」

 

物騒にも程がある。

 

「それじゃあ、レッツゴー♪」

 

ララに腕を掴まれ、引きずられる。

 

「帰りたくなってきた……」

 

軽いノリで宇宙の帝王に会いに来るんじゃなかった。

 

「ねえナナ、折角だし、私達も玉座の間に行かない? リトさんがどんな人が気になるし」

 

「そうだな。面白そーだし、行くか」

 

聞こえてるぞ。おい。

 

 

ー玉座の間ー

 

「てめえが報告にあった『リト』か」

 

「あ、はい、結城リトと言います」

 

目の前には宇宙の覇者、ギド・ルシオン・デビルークがいた。

先の大戦で力を使い過ぎて、今では子供の姿だが。

 

オーラが凄い。肌で感じる。威圧感がヤバい。多分わざとなのだろう。原作では子供のフリをする時もあったし、常にオーラが駄々漏れということもあるまい。

 

じぃっと品定めする様に全身を眺められる。なんだなんだ?

 

「……ふん」

 

すっとオーラが収まる。助かった。

冷や汗が凄い。リトは額と背中に冷や汗をかくタイプらしく、背中の方がじっとりとしている。

 

「つまり、テメーがララの婚約者第一候補ってことでいいんだな?」

 

「……そうなるのか?」

 

思わず、ララに訊き返す。

情けないが、ぶっちゃけこの場で私に発言権があると思えないのだ。

 

「もちろん! だから、私はもうお見合いする気無いよ? リトに振り向いてもらわないといけないんだから!」

 

「……ん? 待て。テメー、ララのこと好きじゃねーのか」

 

「嫌いじゃないですけど、そこまでは。会って2日ですし」

 

「えっ……」

「2日……?」

 

玉座の端で事を見守っていたナナとモモが、愕然とこちらを見つめる。

分かるぜその気持ち。

 

「……おいララ、こいつのどこが良いんだ? 冴えねえし、弱っちそうだし、お前のこと好きじゃねぇつってるぞ」

 

「だってリトは……初めて私のことを理解してくれた人だから……」

 

「……どういうことだ?」

 

「姉上……」

「お姉様……」

 

ギドは今までに見たことのない娘の姿に、戸惑っている。

ナナとモモは、思う所があるのか、ただ見守っていた。

 

初めて……か。

ララの環境を思えば、仕方ないのかもしれない。

王族であるのだから、背負うべき責任が多く、自由が少ない。

周りは父親の言いなりになる様に強要してくる。

全く味方がいなかった訳では無いだろうが、窮屈で仕方なかったろう。

 

「リト……どういうことか説明しろ」

 

ララより私に訊いた方が効率が良いと思ったのか、こちらに矛を向けてくる。

 

「特別なことは何もしてません。…ただ、ララは自由に選んでいいと思いました」

 

目線で「続けろ」と言われたので、一度唇を湿らせる。

 

「結婚相手も、住む場所も、デビルークの後継者になるのも、自分で決めて良い。そこに必要なのはララの意志だけ。それは自分の意志で決めないと意味が無いんです。強要したってどうせガタが来る。だから言ったんです『自由に選べ』って。俺はララの自由意志を尊重したいんです」

 

「そんな我が儘が通じると思ってるのか……?」

 

また、ギドの威圧感が増す。さっきよりも強く、濃い。

 

「我が儘なんかじゃない! 誰もが持ってて当たり前のものを、ララだけが持ってはいけない理由なんて無い! そんなことは許されないっ……」

 

更にギドの威圧感が増す。

 

「許されない? 誰が許さないんだ。この俺様を」

 

ヒュッと喉が詰まり、息が吸い込めなくなる。足が震え、今にも倒れそうだった。倒れたかった。

 

「あっ……はっ……」

 

でも、これだけは譲りたくない。譲らないんだ。絶対に。

 

思いっきり口の中を噛んで、辛うじて動いた右手で太股をぶっ叩く。

震えは止まらなかったが、とにかく息は吸い込めた。ついでに血で口の中が湿って都合が良い。

 

「っ……俺が! 俺が、許さない!! 絶対に!! ララの自由はララのものだ!! 俺は俺の意志でそれを守る!! 文句あるか!!?」

 

私は、他人の自由意志を無視する人間が、世界で一番嫌いなんだ。

 

 

はァ、はァ、と息切れする。

随分と無様に喚き散らしたもんだ。血でカーペット汚しちゃったし、殺されるかもしれん。

少しでもララの意志が尊重される様になればいいんだが。

 

「……合格だ」

 

「あ……?」

 

ふと見上げると、ギドは不敵に笑っていた。今の子供の姿には似合わない顔だ。

 

「うわっ!?」

 

いきなりギドが私の肩に乗って来た。何今の瞬間移動?

 

気付けば威圧感も消えていた。

 

「中々根性ある奴じゃねーか。ララ」

 

「あ……」

 

そう言えば、ララの話でこんなに熱くなってたんだった。必死過ぎて存在を忘れていた。

 

「……………」

 

……か、完全に雌の顔になってる……

いや、昼休みの時も大概だったが、その比じゃない。信じられないくらい顔が真っ赤だし、涙が溢れそうなくらい目が潤んでる。非常に破壊力の高い表情だ。

 

思わず、ララから半歩後ずさってしまう。

 

「コイツは俺の力を一番引き継いでるが、セフィともよく似ている。きっと執念深いぜェ。ケケケ、諦めてさっさとララに惚れろよ、リト」

 

……なんか、手の平の上で踊らされた気分だ。実際そうなのかもしれないが、でもまあ、そう選択肢を間違えた訳でもない……のか? どうだろう。やっちまった感も相当にでかい。

 

「むしろ惚れてねェのか? あれだけ啖呵切っといて、ララに惚れてねェってことは……他の奴に対してもそうなのか?」

 

「え……まあ、同じ状況なら多分同じ様にやっちゃいますね」

 

出来れば二度と御免だが。

 

「……罪な男だな」

 

実は女なんだよなあ。

 

 

あの後、ナナとモモに連れられ、口の中を医者に診てもらった。

今はもう止血が済んで、頬に湿布を貼っている。

 

「その……悪かったな。さっきは」

 

「ん?」

 

「嫌な態度、取っちまって……」

 

「ああ、それは本当に気にしてない。あの反応は普通だよ」

 

「お前が姉上のこと、本気で想ってるのは分かったからな。もう疑わない」

 

「それは……どうも」

 

疑いが晴れたのは喜ばしいかもしれないが、さっきのことを思い出すとどうも居たたまれない。感情的になりすぎた。

 

「私も……貴方なら、お姉様に相応しい相手だと思えますわ」

 

モモも、どこかほっとした様に言い、そっと私の湿布が貼られた頬を撫でた。

 

「でも……ちょっとお姉様が羨ましいかも。こんなに真剣に想ってくれる殿方に会うなんて、一生に一度あるかないか……」

 

「……そんな御大層なもんじゃないよ」

 

そっとモモの手を取り、軽く握る。

 

「いつかモモのことを真剣に考えてくれる人が現れる。その時に、一生に一度の覚悟でぶつかればいいんだ」

 

「……そうですね」

 

するりと、手を離す。現れるといいね、という想いを残して。

 

「そう言えば、リトは夕飯食べてくだろ? 姉上もそのつもりだろうし」

 

「そうですね。と言うか、もうこんな時間ですし、今日は泊まっていかれてはどうですか?」

 

「え? ……てか、今何時だろ?」

 

ふと気になって、ポケットから携帯を取り出す。時差と関係なく時計が進んでるはずだから、そのまま向こうの時間が出てるはずだ。

 

携帯が表示する時間はPM.7:56。今から帰っても11時を回る。しかも飯抜きだ。

 

「うーん……」

 

明日も学校あるし、美柑が心配だし、どうしたもんか……

 

「ソイツ、かわいーな。地球の生物か?」

 

「ん? ああ……」

 

ナナが待ち受け画面の猫に興味を持ったらしい。

 

「こいつは『猫』だ。地球には白とか黒とか、色んな色や柄の猫がいるぞ」

 

待ち受け画面を変えてて良かった。西連寺だったら目も当てられないことになっていたかもしれない。

 

「リトは動物が好きなのか?」

 

「そうだな。凶暴なやつは苦手だけど……」

 

「私と同じだな! 今度、電脳サファリに連れてってやるよ。私の友達いっぱいいるから」

 

「友達……」

 

「あ、私、動物と心を通わせられるんだ。だから宇宙中に友達いっぱいいるぞ」

 

「へぇ。そりゃすごい」

 

「因みに、私は植物と心を通わせることが出来ます」

 

「マジか。すごいな」

 

原作で読んでた時も思っていたが、植物と心を通わせるとはこれ如何に。

宇宙には意思を持ってそうな植物がわんさかいたが、地球にいる様な一見意思の無さそうな植物とも心を通わせられるのか。

 

まあ、私らが勝手に植物に意思が無いと思ってるだけかもしれないんだが。

 

「む、なんか私のより反応が良くないか?」

 

「や、動物の考えてることはまだ何となく分かりそうだけど、植物は分からないなーと思って」

 

「ふふふ、今度、私の電脳ガーデンにも招待してあげますね?」

 

「おい! 私が先に誘ったんだからな!」

 

「モモ、ナナ、また喧嘩をしているの?」

 

ナナとモモと談笑していると、ふと背後から、聞いたことの無い程の存在感を放つ声が届いた。

 

「母上!?」

「お母様!」

 

振り向くと、セフィ・ミカエラ・デビルークがそこにいた。

例のごとく顔はヴェールで覆われている。

 

「帰って来てたのか! おかえり」

 

「おかえりなさいませ。もう公務は終了したのですか?」

 

「ただいま。今日の分はね。……そちらの方は?」

 

セフィの視線がこちらに向き、ギクリと体が強ばる。オーラが凄い。

ギドとはまた方向性が違うが、この人も逆らえないと思わせる威圧感があった。

 

「こいつは、リト。姉上の婚約者だ」

 

「正確には、まだ婚約者第一候補よ?」

 

「そうだっけ?」

 

「あら……じゃあ、ララも帰って来たの?」

 

「そうだよ。割とついさっき」

 

「久しぶりに、家族全員で食事が出来そうで嬉しいですわ」

 

「そうね。私もよ」

 

セフィが喋る度に脳が蕩けそうだった。これは凄まじい。CV誰だっけ。声優ネタは程々にしろとあれ程。

 

「は、はじめまして、結城リトです」

 

とにかく、自己紹介をしないことには始まらない。この短期間で私は何度自分を『結城リト』だと名乗っただろう。名乗る度に後戻り出来なくなってたりしないだろうか。

 

「はじめまして、私はセフィ・ミカエラ・デビルークです。……その怪我はどうなさったのですか?」

 

「い、いやぁ……」

 

「コイツ、自分で口の中切ったんだぞ?」

 

「お父様の殺気に耐えるために、ですよ? ものすごい気迫でしたわ」

 

適当に誤魔化したかったが、ナナとモモがそれを許してはくれなかった。

 

「ギドの殺気に耐えたのですか? それは……」

 

何やら思案している様だが、ヴェールで顔を隠してるせいで何を考えてるのかはよく分からない。

 

「なあ……なんで顔を隠してるんだ?」

 

こそっとナナに訊いておく。

知っているが、やはり訊かないのは変だろう。

 

「ああ、あれは、母上の能力を抑えるためだ。絶対に素顔は見るなよ? 見たら最後、大変なことになるからな……」

 

日本ではそういうの、フリって言うんだが、まあ見ない方が良いだろう。万が一があると怖い。

 

「……そうですか。分かりました。詳しい話は後でギドから聞きましょう」

 

 

結局その後、セフィにも食事に誘われ、腹も減っていたしご相伴に預かることとなった。

 

 

 

「はい、リト。あーん♪」

 

「いや、自分で食べるから」

 

食事の席で、当然の様にララは私の隣に座り、ナナとモモはその正面に座った。

ギドとセフィは奥の席に並んで座っている。この星にも上座の概念があるんだろうか。

 

「私、この調味料好きなんだー。ダークマターって言うんだけど、リトのにもかけてあげるね♪」

 

「いや、今刺激物はちょっと……」

 

そしてさっきからララがめっちゃ構ってくる。鬱陶しい。

 

「ーーそう、リトさんがそんなことを……」

 

ふと、ギドとセフィの席の方に視線を向ける。どうやら、おおよそ話は聞き終わったらしい。

 

「元々私は、今すぐララを結婚させて、後継者にすることには反対だったの。でも、リトさんならララの意志を尊重してくれる」

 

セフィとヴェール越しに目が合う。

 

「リトさん、ララをお願いね」

 

「……別に俺は特別なことはしませんよ」

 

「でも、今じゃ貴方がララの一番の理解者よ」

 

せやろか。

随分御大層なもんになったと思う。

 

「ララも、自由にしてみればいいわ。でも、たまには帰って来なさいね?」

 

「うん! ありがとーママ♪」

 

セフィの視線が私からララに移り、ララは心底嬉しそうに返事をした。

 

「けっ……漸く後継者が見つかったと思ったのによォ……」

 

ギドは、私がララと結婚する気が特に無いのが、気に食わないらしい。

 

「どうせ貴方は、ララに全部押し付けて遊びたいだけでしょ? 今だって政務を全部私に押し付けてるクセに……」

 

「そうだよー! 私はいい迷惑なんだから!」

 

「ちぇっ……俺も自由が欲しいぜ……おいリト、お前も俺を可哀想だと思わねェか? 俺だって不自由だ」

 

「俺から見れば、あんたは十分に自由だ。自分でどうにかして下さい」

 

『後継者に地位を譲る』『ララを結婚させる』という選択肢を取れてる時点で、ギドは十分に自由だと言える。

選択肢の多さは自由の大きさだ。

ララには『家出』以外の選択肢が残されてなかった。

 

「ふん……そうだ、リト。お前のことは既に銀河中に触れ回った。他の婚約者候補共が黙ってねェだろうから、油断するんじゃねーぞ」

 

「マジすか」

 

ここに来てまさかの原作展開。でもこれはしょうがないのか。

 

「ちょっとパパ!」

 

「しょーがねェだろ。俺が言った所で、どうせ搦め手で攻めてくるだけだ。だったらもう好きにさせて、こっちで迎え撃つしかねェだろ」

 

「でも、リトは普通の地球人だよ?」

 

「……はァ。じゃあ、ザスティンを護衛に就けてやるよ。元々、ララのボディーガードとして送るつもりだったからな。ついでだ」

 

「え、ありがとうございます」

 

マジか。ギドさん優しい。

でもザスティンを頼りにしていいか割と微妙な所ではある。強いのに間抜けだからな、あの男。

 

「もしザスティンがダメだったら、私が守ってあげるね♪ リト」

 

「お、おう……」

 

そりゃあそうなるだろうけど、男としてはどうなんだろう。私に男としてのプライドなんて物は微塵も存在しないが。

 

「男のプライドは無いのかお前……」

 

やっぱそう思う?

 

 

 

「別にララは家でゆっくりしてもいいんだぞ?」

 

食事の後、泊まっていく様に薦められたが、明日のことを考えると、やはり今日の内に帰っておいた方が良い。日を跨ぐかもしれないが、明日の朝に帰ったら流石にバタバタし過ぎる。

 

「ううん、私もリトと一緒に帰る」

 

「そうか……」

 

もう『帰る』って言葉が出るくらい、結城家に馴染んでるんだな、こいつ。

 

「もう帰っちゃうのか? 姉上……」

 

「また来て下さいね。二人とも」

 

ナナとモモも、寂しそうだが、見送りに来てくれた。

その横にギドとセフィも立っている。ギドはセフィに抱っこされているんだが、男のプライドとは一体。

 

「またねー♪」

 

「あー……また来ます」

 

正直もうあんまり来ようとは思えなかったが、どうせ強引に呼ばれるか連れて来られるだろうと今の内に諦めておく。

 

「では、お二人とも、どうぞこちらに」

 

ザスティンに促され、宇宙船に乗り込もうとした時に、それは起こった。

 

「きゃっ!?」

 

一陣の風が吹き、セフィのヴェールを剥ぎ取ったのだ。

 

「「「あ」」」

 

気付いた時には手遅れ。みんな一斉に私を見てきたが、私はと言うと

 

「……うん、似ている」

 

ララとセフィを見比べていた。

 

セフィはチャーム人の末裔。どんな男でも虜にするフェロモンの様な物を発しているのだが、どうやら中身が女の私には効かないらしい。

ギドや原作リトの様な意志の強い男は例外だが。

 

「お、お前……母上を見ても平気なのか!?」

 

「……うん」

 

「まあ!」

 

「さすがリト♪」

 

ナナとモモが驚きを顕にし、ララは喜んで抱き着いて来た。別に流石でも何でもない。

 

ふと、何か不穏な空気を背後から感じ、振り返ると、ザスティンがわなわなと震えていた。

 

「「「あ」」」

 

みんなも一斉にそれに気付き、再びハモる。

 

「WRYYYYYYYYYYY!!!!」

 

うわ……

 

目が血走り、鼻の穴をかっ広げ、涎を垂らして迫ってくる様は、非常に生理的嫌悪感を刺激するものがあった。

 

即座にララを離し、セフィを背に隠す。いや、意味は無いだろうがつい反射で。

 

ザスティンはもうすぐそこまで迫っている。流石、デビルーク親衛隊隊長だけあって素早いが、動きが単調だ。

邪魔だと言わんばかりに腕を突き出される。デビルーク人の力で押されたらひとたまりも無い。避けて、突き出された腕を絡めとる。そのまま肩を捻りながら倒れ、体重をかけて関節をキメる。

 

ゴキゴキゴキゴキッ!!

 

えげつない音がしたが、そのままザスティンの上に乗り、肩を固定する。

通常の状態なら力任せに振り払うだろうが、今は冷静じゃない。ザスティンは声にならない悲鳴を上げながら、ジダバタともがいていた。

 

「……で、これ、どうします?」

 

一息吐いて顔を上げると、その場にいる全員、ポカンとしていた。

 

「すごーい! リト、強いんだね!」

 

「……テメー、弱くねェじゃねーか」

 

「まさか。非力ですよ。マジで」

 

「ち、地球人ってこんなに強かったのか……?」

 

「動きが単調だったから、簡単に絡め取れただけだ。今のはちゃんと見てれば誰でも出来る」

 

「誰でも出来るのですか……とにかく、助かりました。ありがとうございます」

 

見ると、セフィがヴェールを着け直していた。

 

「リ、リト殿……退いてはもらえませんか……」

 

「あ、ごめん」

 

パッとザスティンの上から退く。

正気に戻って良かった。

 

「も、申し訳ありません、王妃。この様な失態……どんな処罰でも受ける所存です」

 

体を起こし、まだ痛むだろう肩をそのままに、セフィに地面に着きそうなほど頭を下げるザスティン。

代わりに擦ってあげよう。よしよし。

 

ごめんな、ザスティン。私はちゃんとした格闘技の心得がある訳ではないから、手加減は出来ないのだ。恐らく投げていれば頭から落としていただろう。殺意が高すぎる。

 

「いいえ、ザスティン、今のは私の失態よ。頭を上げなさい」

 

「しかし……!」

 

「まァ今回は何事もなかったから、大目に見てやるよ。ケケケ、リトに感謝しろよ。ザスティン」

 

「ハ、ハッ……!」

 

もう一度深く頭を下げ、立ち上がると、ザスティンは私にも頭を下げてきた。

 

「手間を取らせて申し訳ない……! リト殿」

 

「いや、大した手間じゃない。俺こそ悪かったな。ちゃんと肩冷やせよ?」

 

「この借りはいずれ」

 

「あー……護衛がんばってくれればそれでいいから」

 

「てか、護衛いるのか? テメー」

 

いるいるめっちゃいる。

 

「ちゃんとした戦闘経験のある奴には敵いません。その点、ザスティンのことは頼りにしてますよ」

 

「リト殿……」

 

「じゃあ、戦闘経験を積みゃいい話だ。俺様が鍛えてやろうか?」

 

やめてください死んでしまいます。

 

「え、遠慮します……」

 

 

その後も、称賛や質問が続いて、帰りが日を跨ぐのは確実になってしまった。

 




回を増す毎に文字数が増えてる……

弾丸デビルークツアーはこれにて終わりです。ぶっちゃけナナとモモを早く出したくてこの展開にしたのですが、私が思ってたより主人公ちゃんが男前でびっくりしてます。

ずっと主人公ちゃんの一人称視点なので、いずれ別の人の視点も書いてみたいですね。
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