結城リトのToLOVEるな日々   作:竜宮 黍

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今回は更新早め。
早く出したいなーと思っていたキャラが出せて嬉しいです。

その代わり文字数はやや控え目。
前回までちょっとシリアス入ってましたが、今後はストーリー展開とかあまり気にせずに1話完結でやっていきたいです。

買い物回は良いネタが浮かばなかったのでカットです。原作知っててあんなわちゃわちゃすること無いでしょうし。


ToLOVEるな日々ー4話ー

「む~~、何で朝からこんなに暑いの~? リト」

 

「そりゃ夏だからな。これからどんどん暑くなる」

 

「デビルークにはナツなんて無いもん……」

 

6月下旬、月日が経つのは早いもので、ララが彩南町に来てから1ヶ月が経っていた。

 

「もう今日はずっとハダカのままですごそーかな~」

 

「絶対にやめろ」

 

そんなことをしたら、どこぞのハレンチ先輩が飛んで来かねない。

 

 

ー教室ー

 

「あちぃ……」

 

教室に入っても暑さは変わらない。

日差しからは逃れられるが、人が密集する分、教室の方が息苦しさを感じる。

窓を開けてても風が吹かなければ意味が無い。吹いても教科書が捲れて鬱陶しいと言うジレンマ。

 

昼休みになり、教室の花瓶を持って廊下の水道に向かう。

水を張り替え、ついでに手も洗う。

冷たい水で多少は気分が和らぐ。いっそ頭から被りたい衝動に駆られるが、流石にそういう訳にもいかない。

 

「リト~暑いよ~」

 

ハンカチで手を拭いてると、力無く項垂れたララが寄って来た。

心なしか尻尾にも元気が無い。こいつ夏バテしそうだな。

 

「…………えい」

 

暫し思案し、ハンカチをポケットに戻して、ララの頬を両手で包み込む。てち。

 

「あ~冷たくてキモチいい~」

 

水で冷やした手に、じっとりとララの熱が伝わってくる。

気持ち良さそうに頬をすりすりしてくるララを見て、暑さ対策なら首を冷やすべきだったなと思い直すが、今さら手を離しづらい。

 

「ハ、ハレンチだわっ!」

 

「えっ」

 

物凄く聞き覚えのある台詞が聞こえて来て振り向くと、黒髪ストレートのきつめの美少女、古手川唯とおぼしき少女がこちらを指差して立っていた。

 

「ろ、廊下で何やっているの! あなた達!」

 

「…………」

 

別に何をやっている、という訳でもないのだが、この行為は古手川のハレンチレーダーに触れるらしい。思っていたよりジャッジが厳しい。

 

まあ、そろそろ手を離そうと思っていたし、とりあえずララの頬から手を離すことにした。

 

「え~、もう止めちゃうの?」

 

「ぬるくなってきた」

 

「もう一回やって?」

 

「自分で手を冷やしてやると良い」

 

「えーリトにやって欲しいな~……あ、じゃあ、私がリトのこと冷やしてあげるから、リトは私を冷やしてよ♪」

 

「ちょっと! 無視しないでくれる!?」

 

名案、と言わんばかりに提案してくるララの肩を掴んで、強引に振り向かせる古手川。

こてん、とララは首を傾げる。

 

「誰?」

 

「わ、私は1年B組のクラス委員の、古手川唯よ」

 

「ふーん。私、ララ! こっちがリトね」

 

「結城リトです」

 

古手川が所属まで言ったのに対し、こちらは随分簡素な自己紹介だった。

 

「それで、何か用? 唯」

 

「気安く呼ばないで! ララさん、結城君、そういう行為は学校の風紀を乱します。謹んで下さい」

 

「了解」

 

「どういう意味?」

 

「スキンシップは程々にってこと。だと思う」

 

「スキンシップ……」

 

「触れ合い、肉体的接触、肌と肌を触れ合わせるコミュニケーション」

 

「それって駄目なの?」

 

「駄目です! だ、男女でそんな、は、肌と肌を触れ合わせるなんて……ハレンチだわ!」

 

「分かった分かった。お見苦しい物を見せて申し訳無い。以後気を付けます。それじゃ」

 

顔を真っ赤にして怒る古手川に、ペコペコと頭を下げて退散する。

ヒートアップしてる人間にまともに対処したってしょうがない。

 

「あの人なんであんなに怒ってるの?」

 

「うーん……暑さで気が立ってるんだよ。きっと」

 

古手川が怒ってる理由はララには説明しにくい。いや、私自身、何故彼女があそこまで怒るのかよく分かってない部分がある。

 

「やっぱりみんな暑いんだね。さっきのもいいけど、もっと涼しくなる方法無いの?」

 

「この学校にはクーラーなんて上等なもん無いしなぁ」

 

「クーラー?」

 

「冷たい風を送って、室内を涼しくする機械だ。家にはあるから、今日は帰ったら付けてもいいぞ」

 

今日は今年に入って一番の真夏日。クーラーを解禁してもいい頃合いだ。

 

「そんなのあるんだ! 学校にも置いたらいいのに」

 

「それはまあ……諸事情あるんだろ」

 

クーラーは設置にも維持にもそれなりに金がかかる。今でもパソコンのある部屋にはクーラーが設置されているが、これ以上は一介の公立高校には難しいだろう。

 

「よーし、それなら!」

 

ふんすっ、とララが万能ツールを取り出し、何やら作業をし始める。

 

これは碌な事にならない流れ。

 

そーっとララの手元を覗き込むが、いつ見ても何をやっているのかよく分からない。

以前、どうやってメカを作ってるのか気になって、作ってる所を観察させてもらったけど、気付いたら外観が完成して、気付いたらよく分からない機能が内蔵されて、気付いたらメカが完成しているのだ。

「これを、こうして、こうじゃ」くらいのノリと早さでメカが完成する。意味が分からない。

 

「できたー! びゅーびゅークーラーくん!」

 

そして今回も物の数分でメカが完成した。ペンギン型の、置物タイプのメカみたいだ。

 

「ペンギン……」

 

「えへへー♪ 可愛いでしょ! この間水族館に行った時可愛かったから、メカの外観に使いたかったの!」

 

この間とは、ララがやって来て最初の週末、買い物に行った時の話だ。

あの時は、ペケの充電が切れた時用のララの服、下着、部屋着や寝巻きを一通り揃えてから、町を見て回り、最終的には買い物の時に貰ったチケットで水族館に向かった。

 

その時に見たペンギンが印象に残っていたらしい。因みに、ララが「動きが鈍いから」とあげようとした変な薬は取り上げておいた。ペンギンは地上では動きが鈍くて良いのだ。

 

「ここに置いて~」

 

教室に戻り、早速ララが後ろの棚の上にびゅーびゅークーラーくんを設置する。

 

念のため花瓶を持ったまま教室の外に待機する。

すると、びゅーびゅークーラーくんの口が開き、手がパタパタと動き出す。

恐らく、口から冷気を出して、手の動きで室内に循環させているのだろう。

 

「あれ?」

 

「なんか涼しくない?」

 

「気持ちいい~」

 

すぐに冷たい風が教室中に行き渡り、クラスの連中が暑さにしかめていた顔を弛緩させる。

しかしそれも束の間。

 

「……ん?」

 

「なんか、寒……」

 

「ぶえっくしょい!」

 

びゅーびゅークーラーくんの威力はドンドン増し、最終的には教室を凍り漬けにした。

 

息が白い。教室の外にいたから私と花瓶の花の被害は最小限で済んだが、半袖のカッターシャツから出た腕にぶつぶつと鳥肌が立っていた。

 

「ララ……」

 

「えへへ~……ちょっと威力が強すぎたみたい……クチュッ!」

 

まあ、予想通りのオチだった。

 

 

 

放課後、今日は夕方から特撮番組『マジカルキョーコ』があるため、ララは先に飛んで帰っていった。

 

学校で一人になれるのは、こんな風にララに別の用事がある時に限る。

ララには悪いが、そういう時は少し気分が良い。ララのことは嫌いじゃないが、元々私は一人が好きな性分だ。

ララに関しては、学校だけでなく家でも常にベッタリのため、中々心休まるタイミングが無い。

 

はー……良い。今日はゆっくり帰ろう。寄り道でもしようかな。

 

「でも暑いしなぁ……ん?」

 

校舎の影で涼みながら、この後どうしようかと思案していると、校門に向かう見覚えのある姿を発見する。

 

古手川だ。今日は妙に縁があるな。

まあ、もしかしたら、今までもそれと気付かずにすれ違っていた可能性はあるのだが。

 

やはり代名詞たる「ハレンチだわ!」という台詞を聞かない限りは、中々古手川とは断定出来ないものだ。

 

あ。

 

「おい!」

 

なんかフラフラしてるな? と思っていたら、古手川が倒れた。おいおい。嘘だろ?

 

ダッシュで近付いて、膝を突いた所で何とか体を支える。良かった、完全に倒れる前に間に合って。頭でも打ったら大変だ。

 

ドサリと古手川のカバンが落ちる。ぐったりして目が虚ろだ。これはちょっとヤバいかもしれない。

 

「古手川? ーーちょっと失礼」

 

額に手を当て、手首で脈を取る。

……ちょっと熱いな。脈も速い気がする。汗が凄いし、熱中症かもしれない。

一先ず涼しい所で横になって、水分を補給した方が良いだろう。

 

古手川のカバンを腕に引っかけ、古手川の肩と膝の下に腕を通す。

所謂『お姫様抱っこ』だ。多分この体勢で運ぶのが一番負担が少ないだろう。

 

お姫様抱っこにはコツがある。重心を体の上の方に持ってきて、上半身で支える様に抱えると良い。

とは言っても、ある程度の筋力が無ければそもそも持ち上げるのが困難であるため、筋トレしていて良かったという物だ。

 

 

ー保健室ー

 

とりあえず保健室まで運んでベッドに寝かせたが、どうしたものか。

 

出来るだけ楽な格好で横になる方が良いので、ブラウスのボタンを2つくらい開けたり、スカートでも脱がした方が良いのだが、当然リトの姿でそんなことをしたら変態の称号は免れないので、そうする訳にもいかない。

いや、女でもスカートを脱がせるのはギリギリのラインだな。

 

仕方がないので、窓を開け放して風通しを良くし、水道でハンカチを濡らして古手川の額に乗せておく。

 

御門先生いないし、勝手に保健室を漁るのも気が引ける。今この場で出来るのはこの程度だろう。

 

てか、前もそうだったけど、御門先生全然保健室にいねーな。異星人対象の闇医者も兼任しているから忙しいのかもしれないが、担当教諭がそれでいいのだろうか。

 

一旦保健室を出る。ぶっちゃけ出来ることそんなに無いし、男子に寝顔を見られるのも気分が良いものじゃないだろう。

後はアレだけ買って置いておけばいい。

帰り際に御門先生を探して報告しておけば、どうとでもしてくれるだろう。私がやることはそれで十分だ。

 

 

自販機でスポーツドリンクを買い、保健室に戻る。熱中症や汗をかいた時にはやはりこれだ。水分と塩分と糖分を同時に摂取できて効率が良い。

 

保健室のドアに手をかけて、ふと思い留まる。

『ToLOVEる』+『保健室』+『女の子』

ここから導き出される答えは分かりきっている。

試しにノックしてみる。

 

「だ、誰!?」

 

古手川の声だ。慌ててる様子から、予感はだいたい当たってそうだ。

 

「結城リトだ。入ってもいいか?」

 

「ち、ちょっと待って!」

 

少し待つと、「いいわよ」とお声がかかったので、ガラリとドアを開けて入る。

 

「ーー御門先生、いらしてたんですか」

 

古手川だけかと思いきや、御門先生も保健室にいた。入れ違いになったのだろう。

 

「ええ、貴方がこの娘を運んでくれたの?」

 

「ええ、まあ」

 

この娘、と指差された古手川は、氷嚢(ひょうのう)を首に当てていた。御門先生が出してくれたのだろう。

 

「じゃあ、これもあなたが?」

 

そう言って古手川はハンカチを差し出した。氷嚢があるならもう必要無いだろう。受け取ると、ハンカチはぐったりとして、ぬるくなっていた。

 

「ああ……そうだ。これ」

 

ハンカチを受け取った代わりにスポーツドリンクを渡す。折角買って来たのに忘れる所だった。

 

「これ?」

 

「スポーツドリンク。熱中症だろ? 飲むといい」

 

「……ありがとう。いくら?」

 

「別にそれくらい良いよ。大した出費じゃない」

 

「嫌よ。こういうのはしっかりしなきゃ。確か150円でしょ?」

 

古手川らしい言い分だ。男子に借りを作りたくないのだろう。

 

「あっ……」

 

カバンから財布を取り出そうと立ち上がると、フラついたので肩を支える。

 

「無茶するな。お金は後でいいから」

 

「……ありがとう」

 

眉を顰め、顔を赤くしながらもお礼を言ってくるが、怒ってるのか、照れてるのか、単に熱中症のせいで顔が赤いのか分からないのが古手川だな。

 

「ふふ……罪な男ね」

 

そしてこの先生は生徒をからかいたいだけだな。

 

「そ、そんなんじゃありませんから!」

 

古手川もスルーすれば良い所を、過剰に反応するからこの先生も面白がるのだ。

 

「今日暑いですよね……古手川が熱中症になるのも分かるよ」

 

言いながら、カバンから下敷きを取り出して、顔を扇ぐ。あまりやり過ぎると逆に疲れるから、加減が大事だ。

 

「そうね……これからの季節、どんどん増えるのかしら。貴方も気を付けるのよ?」

 

「そうですね」

 

「わ、私だって……気を付けます……」

 

古手川の台詞がどんどん尻すぼみになっていく。

当て付けに聞こえたのかもしれない。しかし倒れた手前強くは出れないと。

 

キャップを開けて、グビグビと古手川がスポーツドリンクを飲む。

良い飲みっぷりだなと見ていると、ブラウスの第二ボタンまで開いてることに気付き、そっと目を逸らす。

 

逸らした所で御門先生と目が合い、ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべられた。

 

……帰りたい。

 

今日は一人でのんびり過ごせると思ったのに、これではいつもとそう大差無い。

 

だが、最早保健室から退室するタイミングは逃してるし、お金を返すまで古手川は帰してはくれないだろう。

 

私はそっと溜め息を吐いた。

 

 

 

御門先生の「送ってあげたら?」の一言により、古手川を家まで送ることとなった夕暮れ時。

 

「……私は別に1人でも大丈夫よ」

 

そうは言うけれど、顔色はいまいち優れない。

 

「あー……まあ、今日だけってことで」

 

お金も返してもらったし、別にもう古手川とは別れても良かったのだが、どうせ乗り掛かった船だ。

 

「……あなた、私が気絶してる間に、変なとこ触ってないでしょうね?」

 

「してねーよ……」

 

特に喋ることも無く歩いていると、不意に古手川が不審な目で見てきた。

 

「信用するかどうかは古手川次第だけどな」

 

「……男の子って、下品なんだもの」

 

ついと目を逸らし、古手川がそう溢す。

すると、その目がチベットスナギツネの様に険しくなり、汚物を見る目に変わった。

 

「おほほ~♪ お宝発見~♪ これは私の部屋で検分せねばなりませんな!」

 

視線を追うと、校長がエロ本を掲げながら校舎に戻って行くのを見つける。

 

……いつも通りの校長だな。

あの人はストレートに変態過ぎて逆に好感持てる気がする。

 

「本当……どうしてあんな人が校長をやっているのかしら……」

 

どんよりと肩を落とし、古手川はそう独りごつ。

 

これは……ただの熱中症ではなく、日頃のストレスが原因の体調不良でもあったのかもしれないな。

 

「ははは……まあ、古手川にはああいう人間はキツイかもな」

 

「当たり前よ! だいたい、この学校ちょっと風紀がおかしいわ!」

 

そう言って、日頃の不満や鬱憤を散々に愚痴る古手川。

7割校長のことだが、この学校に一定数いる不良のことや、校則のユルさも古手川には許しがたいことらしい。

 

「あなたもよ! 女子とあんな風にベタベタするなんて、ハレンチだわ!」

 

「ぅえ?」

 

突然、矛先をこちらに向けられて戸惑う。

 

「いや、あれは別に疚しい意味は……」

 

「そうだとしても! 人前であんなに顔を近付けるなんて、非常識だわ!……キ、キスするのかと思ったじゃない

 

「そんなに近かったか? まあ、気を付けるよ」

 

後半部分が何やらボソボソと言ってて聞き取れなかったが、とりあえず反論は止めることにした。

あのスキンシップでここまで反応されるなら、原作のラッキースケベが起こった時どうなるのか……殴られるのは嫌だなぁ。

 

「なんて言うか、来る学校間違えてるよな。完全に」

 

「私だってそう思うわよ……あんな校長だって知っていれば、もうちょっと他の高校も考えたのに……」

 

「完全に選択肢から消える訳では無いんだな」

 

「だって家から近いし、偏差値も丁度良いんだもの」

 

「あー、なるほど」

 

まあ高校選ぶ基準なんてそんなもんだよな。

 

会話が途切れた所で、このまま古手川を送っていくだけでいいのだろうかと考える。

ぶっちゃけ古手川のストレスの原因は、彩南高校に通ってる限りは取り除きようの無い物だ。校長が捕まって解任されれば或いは……って所だが、不思議と捕まらないから期待は出来ない。

 

とすれば、ストレスをどこかで発散するしかない。

また倒れたりしたら面倒だし、何か良い方法ないかなぁ。

 

「……なあ古手川、ちょっとコンビニ寄ってもいいか?」

 

あることを思い出して、古手川にそう提案する。

 

「それぐらい別にいいけど……」

 

 

「ありゃっしたー」

 

「それ、好きなの?」

 

「いや、そういうんじゃないけど」

 

コンビニから出て、目的の場所へ向かう。以前探索した時に見つけた場所だ。そう遠くなかったはず。

 

「ちょっと、あんまり寄り道する気はないわよ?」

 

「いいからいいから、ちょっとだけ」

 

不満そうにする古手川を宥めつつ、目的の場所に着く。

 

私がコンビニの袋から煮干しのお菓子を取り出すと、建物の影や茂みに隠れていた野良猫がワラワラと出てきた。

 

「!……ねこ」

 

古手川の目が微かに輝く。よし。

古手川は可愛い動物、中でも猫が好きなのだ。

今後はここでアニマルセラピーを感じて、ストレスを発散するといいだろう。

 

「おいでー」

 

煮干しを掌に乗せ、屈んで猫が食べやすい様に掌を差し出す。

大半は警戒したまま近付いて来ないが、その中から白猫とブチ猫の2匹が寄って来て、カリカリと煮干しを食べていく。

 

すると、徐々に他の猫も警戒を解いて寄って来る。すぐに掌の煮干しが無くなったが、まだ残骸を探しているのかずっと掌をペロペロしてくる。くすぐったいな。

 

一度立ち上がると、「もっと寄越せ」と言わんばかりに猫達がにゃ~にゃ~と鳴きすり寄ってくる。まあちょっと待てよ。

 

「古手川もやるか?」

 

端で見ていた古手川に煮干しの袋を差し出す。

 

「えっ、私?」

 

「そ、嫌か?」

 

「う、ううん……やってみる」

 

古手川が袋を受け取り、位置を交代する。後はそのねーちゃんから貰いな。

 

古手川が煮干しを差し出すと、今度は一斉に猫達が群がっていった。

 

「きゃっ……あははっ、くすぐったいってば!」

 

古手川は緊張してる面持ちだったが、それもすぐに解れ、普段からは想像出来ない様なふにゃりとした笑顔を浮かべていた。

 

初めて見る古手川の笑顔だ。今日は私の見てる限りでは、ほとんど眉間に皺を寄せていた。

学校にいる間ずっとそんな表情をしていれば、そりゃあストレスが溜まる。

ストレス発散には笑うのが一番だ。

 

「きゃっ! ちょ、ちょっと!」

 

古手川から少し目を離して時間を確認してると、古手川の掌に群がっていた猫達が先程よりも増えていた。いつの間に。

 

増えた猫は古手川自身にも乗りかかり、対処出来なくなってくる。

 

「あっ!?」

 

猫達から一旦離れようと立ち上がるが、乗っかってる猫の重みでバランスを崩したのか、尻餅を突いてしまう古手川。

その際に、手に持った煮干しのお菓子をぶちまけてしまい、古手川の全身に降りかかる。

 

こ、これは……

 

即座に嫌な予感がし、古手川の下に駆け寄るが、もう遅い。

 

「きゃっ! やだ、ちょっと、変なとこ舐めないで!!」

 

猫達はぶちまけた煮干しを食べようと、古手川に群がってペロペロ、カリカリと咀嚼していく。

 

アカン。

 

とりあえず、古手川のスカートの中に顔を埋めてる猫を真っ先にどうにかした方がいいのだろうが、それをすれば間違いなくスカートの中が見えてしまう。今でもかなりギリギリだ。

 

とりあえずスカートの中が見えない様に逆側に回り、ひょいひょいと猫を古手川から引き剥がす。

 

猫を持ち上げるコツは首の後ろ側を掴むことだ。猫は幼少期に親猫に首の後ろを噛み掴まれて運ばれるので、首の後ろを掴まれると脱力する習性があるのだ。

 

ある程度引き剥がしたら、古手川の肩を掴んで上体を起こす。

まだ猫は群がって来るし、スカートの中に顔を埋めてる猫は健在だが、そこは一旦スルーだ。いちいち全部退かすより、古手川に立ってもらった方が早い。

 

「古手川、立てるか?」

 

「んっ……ちょ、ちょっと待って……あっ……」

 

変な声を出すな。

最早一人で立ち上がるのは困難だろうと判断し、肩を担いで古手川を立ち上がらせる。

 

「えっ、ちょっと……あっ!」

 

抗議を無視して立ち上がると、また古手川が悲鳴を上げた。今度はなんだ。

 

「や、やだっ……!」

 

スカートの中にいた猫が引っかけたのか、古手川のパンツが膝下までずり落ちていた。

 

薄桃色の可愛らしいショーツだった。湿ってる様に見えるのは汗か猫の唾液だろう。そうに違いない。

 

「ハ……ハ……」

 

ワナワナと震え、耳まで真っ赤に染めて、涙目になってこちらを睨み付けてくる古手川。

ああ、これは……

 

衝撃に備え、そっと目を閉じる。

 

「ハレンチだわっ!!!」

 

強烈な破裂音が、住宅街に響き渡った。

 

 




古手川が好きなのでリト達が2年生になるまで待てませんでした。

と言っても、さっさと2年生になってくれないと出しにくいキャラも多いので、割とすぐに1年経つと思います。

主人公ちゃんはいつになったら元に戻れるんでしょうねぇ(決めてない)。
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