結城リトのToLOVEるな日々   作:竜宮 黍

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正直、前編だけだったら一週間前に書き終わってましたが、元々臨海学校は1話で終わらせるつもりでいたから仕方ないのです。


ToLOVEるな日々ー5話ー後編

臨海学校二日目。

今日は海水浴だ。しかも一日中。

臨海学校のスケジュールが雑過ぎる。雨降ったらどうすんだこんなもん。

 

まあいい。今日やることは決まっている。態々事が起こるまで待つことも無いだろう。

 

くっくっと準備運動をする。それなりに泳ぐ必要があるだろうから、入念にやっておかないとな。

 

「リトー、何やってるの?」

 

「準備運動。これをやっておかないと、海の中で足がつったり、体が上手く動かせなくて溺れたりしたら大変だからな」

 

「へぇー。あ、そう言えばプールの時もやったかも」

 

「だろーな」

 

さて、準備運動も終わったし、アレを探そう。まずはそれらしき岩場がありそうな所をーー

 

「ねぇねぇ」

 

「ん?」

 

「溺れるって、あんな感じ?」

 

「は? 何をーー」

 

ララが指差す方を見ると、バシャバシャと、水しぶきを上げてもがいている女子生徒がいた。

 

嘘だろマジか。

 

すぐさま駆け出し、海に飛び込む。

女子生徒まで後少しという所で、水しぶきが鳴りを潜め、その体が沈み始めた。

 

ヤバい。

 

沈みかけの腕を掴み、強引に引き上げる。

ここで気付く。この女、水着の上部分が無い。

 

まさか、最初の犠牲者ーー?

 

そう頭を過るが、今はその事よりも、この娘を早く陸に上げることが先決だ。

 

女子生徒を抱え、出来るだけ体が見えない様に隠しながら、陸に上がる。

女子生徒を仰向けに寝かせ、上半身に私が着ていた薄手のパーカーを被せる。上半身裸なのが落ち着かなくて着ていた物だ。

 

次に、呼吸の確認ーーん? 待て。

 

「古手川?」

 

一般生徒(モブ)だと思っていたら、古手川だった。

 

マジかよ。さっきからずっと思ってたけど、原作にこんな展開無かったでしょ? あれぇ?

 

いや、だから今はそんなことはいいんだ。呼吸、心肺の確認だ。

 

古手川の口に手をかざし、胸に耳を当てる。舌打ちが漏れた。

 

「誰か! 保険医の先生を呼んでくれ! 溺れた生徒がいる! 心肺、呼吸停止! 早く!!」

 

叫びながら、心臓マッサージの体勢に入る。クソ、実践じゃ初めてだぞ。

 

「リト!」

 

ララが走り寄って来た。

こいつ、工学に関しては知識が深いが、医療はどうなんだろうか。一度習っていれば期待は持てるが。

 

「ララ、人工呼吸のやり方は分かるか?」

 

頭の中でアン◯ンマンのマーチを流しながら、ララに訊ねる。

クソ、頭の中が緊張感ねーな。しかしリズムを取るのに丁度良いから仕方ない。

 

「ジンコーコキュー?」

 

「いや、分からないならいい。誰か! 人工呼吸できる奴はいないのか!? てか御門先生まだ!?」

 

こういう時のためについて来てる訳だし、近くにいると思うんだけど。

ワラワラと人が寄って来たが、一定以上近付いてくる奴は一人もいない。

 

「ふむ……仕方ありませんな……ここは私が一肌脱ぎましょーー」

 

「人工呼吸つってんだろ! 気持ち悪い顔してんじゃねぇ!」

 

古手川の顔に吸い付こうとした校長を蹴り飛ばす。空気読め。

 

クソ、他に出来る奴がいないなら、私がやるしかないのか? 心臓マッサージも大事だが、酸素を送らないと脳に障害が出かねない。ここいらで切り替えるか。

 

「ふーーっ、ふーーっ」

 

顎を持ち上げ気道を確保し、鼻を塞いで古手川の口を覆う様に唇を合わせる。

息を吹き込む度に古手川の胸が上下する。何度かやった所で、古手川の喉の奥から水がせり上がってきた。

 

!ーーこれは

 

一度古手川の顔を横に倒し、口の中に溢れた水を逃がす。

今ので肺の中に入った水が全て吐き出せていればいいんだが。

 

「ーーっげっほ、ごほっ!」

 

古手川が苦しそうに咳き込んで、目を覚ました。

 

ーー勝った。おめでとう。それが生きる喜びだ。例え胸の傷が痛んでも。

 

緊張感抜けた途端にふざけるの止めるべきだな。

 

「結城……君……?」

 

「古手川、無理に動かなくていい。もうすぐ御門先生が来るから」

 

「…………」

 

ハア、ハア、と息を切らせて視線をさ迷わせる古手川。状況が理解できてないのだろう。

 

「古手川ーー」

 

「その子が溺れた生徒?」

 

古手川にある程度状況を説明しようとしたら、背後から声がかかった。

 

「御門先生。漸く来てくれましたか」

 

「あら? これでも急いだのよ? この子が物凄い剣幕で息を切らせてやって来るから」

 

この子、と言って御門先生が振り返った所に、西連寺がいた。

 

「西連寺が知らせてくれたのか。ありがとう」

 

「う、うん……その人、大丈夫なの?」

 

「ああ、とりあえずは危険な状態からは脱した。と言っても、海水を大量に飲んだだろうし、まだ処置は必要だけどな。御門先生」

 

「ええ、結城君、運ぶの手伝ってくれる? 簡易医務室が向こうにあるから」

 

「了解です」

 

古手川を抱え、立ち上がる。またお姫様抱っこだ。

 

「あら。その子、水着は?」

 

「ああ、なんか流されちゃったみたいで、多分それで動揺して溺れたんだと思います」

 

「そう……足の届かない所までは行かない様に言われてるはずなんだけど……」

 

「恐らく、流された水着を追いかけて、気付かない内に足の届かない所まで行ってしまったんでしょう」

 

実際には、水着を剥ぎ取ったイルカを追いかけようとして、沖まで出てしまったのだろうが。

 

 

ー海の家ー

 

「ーーそこで、心臓マッサージから人工呼吸に切り替え、何度か繰り返した後に古手川は息を吹き返しました」

 

「驚いた。ほとんど完璧じゃない。将来は医療か看護の道に進むつもりだったりする?」

 

簡易医務室にて、救助後の心肺蘇生法について訊かれたので、私がやったことを順を追って説明していた。

 

「いえ、以前にマンガでそういう場面を読んだことがあって、それを実践してみただけですよ」

 

嘘です講習受けました。

 

「へぇ……地球にはそんなマンガがあるのね。なんてタイトル?」

 

「覚えてません。コンビニで立ち読みしたキリなんで。……てか、地球?」

 

「ああ、私宇宙人なの。貴方の近くにもいるでしょう?」

 

言いながら、チラリと髪で隠れていた尖った耳を見せてくる。

 

「……随分あっさり言うんですね」

 

「宇宙人自体はそんなに珍しくないわ。ただ、地球人が異星人に対して免疫が無いから、みんな黙ってるだけよ」

 

「へぇ。ーーじゃ、俺はこの辺でお暇しますね」

 

「あら、もう行っちゃうの?」

 

「俺がここにいたって、やること無いですよ」

 

古手川は、今はぐっすり眠ってしまっている。

着替える気力がまだ戻ってないから、私のパーカーを被せたままだ。

 

「まあ、そうかもね。それじゃ、お疲れ様」

 

「ええ、それじゃ」

 

 

「キャーーー! 水着ドロボーよーーー!!」

 

「ああ……」

 

海の家から出て、ララ達の所に向かった所で、原作の騒動が起こってしまった。

 

ええいめんどくさい!

 

走り出す。向かうはララと西連寺がいる場所。

まだ西連寺の水着は盗まれてない。原作通りなら、どこかのタイミングで来るはずだ。

 

来た!

 

ララに近付く黒い影。よくよく見ると魚の様なシルエットに見えなくもない。

 

「危ないララさん!」

 

西連寺が黒い影に気付き、ララを庇って水着が盗まれる。

 

間に合わなかったかーーだが捕らえた!

 

「そいっ!」

 

西連寺の水着を盗んだ直後を狙って、捕まえる。

 

バシャバシャと暴れるのを抑え込んで、抱き上げる。

 

「あ、それ知ってる! イルカだよね。図鑑で見たよ!」

 

「こいつが犯人か……ララ、水着を西連寺に返してやってくれ」

 

イルカが咥えたままの西連寺の水着をララに差し出す。他にもいくらか引っかけてるな。持ち主を探すのはララと西連寺に任せよう。

 

「うん。春菜~、はい、水着!」

 

「あ、ありがとう……」

 

腕で胸を隠し、首まで水面に浸けて体を隠していた西連寺が、ララから水着を受け取るのを見届けて、イルカにコソッと耳打ちした。

いや、イルカのどこが耳に当たるのか知らんけど。そもそも超音波で意志疎通する生物だしな。

 

「お前の親の所まで俺を連れて行け」

 

マンガやアニメでは不思議と動物との意志疎通が取れがちだ。伝われ私の思い。

まあ、これで通じたらナナの能力の価値が下がりそうだが。

 

「うおっ!?」

 

突然、さっきまで割と大人しくしていたイルカが暴れ出して、力任せに泳ぎ始めた。

ここで離れる訳にはいかない。私は必死にしがみついた。

 

「リト!?」

 

遠くからララの呼ぶ声が聞こえたが、当然それに返事を返す余裕は存在しなかった。

 

 

海水が目と口に入らない様に必死に閉じて、イルカの体にしがみついていたら、徐々に感じてた抵抗感が弱まってきたので、水面から顔を出した。

 

「……どうやら上手くいったみたいだな」

 

イルカの体から離れ、砂浜に上がる。

人間の倍程の大きさの親イルカがそこに横たわっていた。

 

一旦砂浜に腰を下ろす。疲れた。

ふぅ……と溜め息を漏らし、首を回す。

そうしていると、キュ~……と弱々しい鳴き声が耳に届いた。

 

……早く海に戻してやった方が良いな。

 

立ち上がり、背伸びをする。

さて、かなりの重量がありそうだが、これ、一人で大丈夫か? 思いっきり押せば、少しずつなら動かせるかもしれないが、ララもやっぱり連れてくるべきだったな。

 

と、そこで、見覚えのあるストロベリーブロンドが目に映る。

よっしゃ、ナイスタイミングだララ。愛してる。これ実際には軽率に言ったら絶対ダメなやつだな。

 

「おーい! ララーー! こっちだー!」

 

「リト!」

 

ララもこちらに気付いて、砂浜に上がってきた。

 

「これ……」

 

「親イルカだな。砂浜に乗り上げたみたいだ」

 

「そうなんだ……よし! 海に戻してあげよっ!」

 

「ああ、せーのでいくぞ」

 

「うん!」

 

 

イルカの親子を海に帰し、ララと二人で手を振って見送る。

イルカの親子はこちらを見て、キューキューと鳴いていた。

 

「あの親子、何だかお礼を言ってるみたいデスね」

 

せやろか。まあ、どうでもいいことだ。

 

「親子……か」

 

「どうかした? リト」

 

「いや、なんでもない」

 

懐かしい顔を思い出しただけだ。

 

 

 

自販機の置かれたロビーにて、私はボーッとしていた。

 

ドタバタとした海水浴も終わり、臨海学校も後は寝て起きたら帰るだけだ。

 

原作ではこの後、猿山達に誘われて女子部屋に突撃し、何故かリトだけ取り残されて西連寺と二人きりになって、なんやかんやToLOVEるがあったりするのだ。

 

そんなことをする気は毛頭無いので、風呂から上がった後は予め部屋を退室し、こうやって無駄に時間を潰しているのである。

 

私はこういう何の意味も無い時間が好きだったりする。

紙パックに差したストローを加えて、欠伸を噛み殺す。

んー……無為な時間だ。学生とはかくあるべき。

 

「あ……」

 

「ん?」

 

静寂の中、不意に声が聞こえ、振り向くと古手川がいた。

この旅館の浴衣を着て、髪をアップにしている。

 

「「…………」」

 

無言は止めよう。

 

「……なんで古手川が男子のフロアにいるんだ?」

 

「ちがっ、女子のフロアに自販機が無いだけよ!」

 

「へぇ、そうなのか」

 

知らんかった。知る機会も無いしな。

こういう行事の場合、男子が女子フロアに行くのはご法度だけど、逆は割と許される感じあるよな。不思議だ。

 

「あ、あなたこそ、こんな所で何やってるのよ」

 

「いやー、別に。もう臨海学校も終わりだなーと思って」

 

「何よそれ?」

 

買わないのか? と自販機を顎でしゃくると、古手川は思い出した様に自販機に向かった。

ガコンガコンと重たい音が数回。パシリか。単に古手川が自分の買うついでに申し出ただけだろうが。

 

「ねぇ」

 

「ん?」

 

「今日の、ことなんだけど……」

 

「ああ」

 

人工呼吸のことか。古手川なら医療行為としてゴリ押しすれば、流せるかな。

 

「み、見た?」

 

「あ? 何が?」

 

「だ、だから……私の……その……む、む、胸……」

 

そっちか。

少し予想外の質問に、目が点になる。

 

「……まあ、見えたな。ごめん」

 

状況的に誤魔化しようが無いので、素直に謝るしかない。

 

「うっ……そ、即刻忘れなさい! いいわね!」

 

「ああ」

 

なんなら今の今まで忘れてたんだが、知らぬが仏とはこのこと。

 

「それと……アレは……その……ノーカンだから!」

 

「分かってるよ。お互い気にしないことにしよう」

 

「そ、そうよ……それでお願い……私覚えてないし……」

 

「ん」

 

了解の意味で手を振りながら、時間を確認する。

9時半。そろそろ猿山達が女子部屋に向かってる頃か。

 

「で、でもその、御門先生から、結城君が適切な処置をしたから助かったって聞いたから……その、ありがとう」

 

「出来ることをやっただけだよ」

 

「こ、この借りはいずれ返すから! じゃあね!」

 

そう言って古手川は小走りで女子フロアに戻っていった。

私ももう10分もしたら戻ることにしよう。その頃には猿山達も出てるか、いっそ戻って来てる頃合いだろうし。

 

 

「あ、リトー♪」

 

「あ」

 

ララと籾岡と沢田だ。そうだった。この三人自販機にジュース買いに行ってたんだっけ。それでリトと西連寺が二人きりになるんだ。

 

それ自体は覚えてたけど、女子フロアに別に自販機があると思ってたから、油断していた。さっきの古手川との会話で気付くべきだった。

 

「リトもジュース買いに来たの?」

 

「ああ、今飲み終わって帰るとこ」

 

グシャリ、と空の紙パックを手の中で潰す。とっくに飲み終わっていたが、時間を稼ぐためにずっと飲むフリをしていた。

 

「えー? もう戻っちゃうの?」

 

「もう消灯時間だ。お前達もさっさと戻らないと、生活指導の先生にどやされるぜ」

 

「カタいこと言うねー結城ィ」

 

「そんなんじゃララちぃに愛想尽かされるよォ?」

 

望む所だ。

 

「そんなことしないよ?」

 

「……じゃ、おやすみ」

 

紙パックをポイッとゴミ箱に捨て、そそくさとその場を後にしようとした所で、籾岡と沢田に両サイドから腕を掴まれる。何故。

 

「逃がさないよ~結城ィ」

 

「アンタには前からイロイロ聞きたいと思っていたのよ。ララちぃとのことでね」

 

「おい」

 

「あ、じゃあリトを私達の部屋に招待しちゃおっか!」

 

「待て」

 

「いいねいいね~」

 

「今夜は寝かさないぞ~?」

 

「ふざけんな」

 

籾岡と沢田の腕を振りほどく。冗談じゃない。原作より酷い流れになってどうする。

 

「……聞いたよ結城~。アンタ、ララちぃと一緒にお風呂入ったらしいじゃん」

 

三人から距離を取ろうとしたが、籾岡がボソッと呟いた一言で体が固まってしまった。

 

「! ど、どこでそれを!?…… ララ!」

 

「え? 話しちゃダメだった?」

 

駄目に決まってんだろ。だが、ララに釘を刺しておかなかった私の落ち度だ。ちくしょう。

 

「お風呂の時にちょい~っとね」

 

「……その話を聞いたのは?」

 

「あたしと未央と春菜だけ。他は多分聞いてないよん♪ ……で、どうする?」

 

「……お供させて頂きます」

 

「そうこなくっちゃ♪」

 

「一名様ごあんな~い♪」

 

ああ、もう。

 

 

 

「ただいま春菜ー!」

 

「あ、おかえりなさい」

 

「じゃじゃーん! リトのこと連れて来ちゃったー!」

 

「え!? ゆ、結城君!?」

 

「ごめん西連寺。長居するつもりは無いから」

 

「う、ううん……ご、ごゆっくり……」

 

長居するつもりは無いつってんだろ。まあいいや。

 

「で、聞きたい話ってのは?」

 

「まあまあ、そんな焦らなくてもいいじゃん? とりま座りましょ」

 

部屋の真ん中に敷かれた4組の布団の上に、入り口から見て左奥に籾岡、その手前に沢田、右奥に西連寺、その手前にララが座ったので、西連寺とララの間の少し後ろらへんに座る。

 

なんとなく籾岡と沢田から心理的に距離を取りたかっただけで、ポジショニングに他意は無い。

 

「聞きたい話?」

 

「俺に聞きたいことがあるんだと。ロビーでジュース飲んでたら捕まってこのザマだ」

 

西連寺がどういうこと? と首を傾げていたので、事の経緯を軽く説明する。

なるほど、と頷くと、西連寺は躊躇いがちに顔を寄せて来た。なに? 内緒話?

 

「……ねぇ、昼間のことなんだけど……結城君、見た?」

 

「んん?」

 

なんのこっちゃ、と思わず顔をしかめる。古手川といい、何故主語を抜かすのか。

 

「わ、分からないなら、いいの。うん……やっぱり、見てないよね

 

そう言いながら西連寺は慌てて離れ、顔を赤くして俯いてしまった。うーん。

 

……多分、胸のことだろうな。水着を盗られた時の。

そんなに気になるかね。まあ、気になるか。

正直に言うなら、視界には入っていたと思うが、意識してなかったから覚えてない。イルカの動きを追うので手一杯だったし。

 

 

その後は、ララとどこまで進んでるだの、何故一緒にお風呂に入ったのかだの、普段どんな風に二人で過ごしているかだのと訊かれたので、だいたいは正直に話しておいた。

 

お風呂の件に関しては説明しにくかったので、弁明は諦めて三人には何も聞かずに黙っておいてもらうことにした。

駅前のスイーツでとりあえずは手を打ってくれるらしい。

 

「つーかさァ、ララちぃも結城なんかのどこがいいワケ?」

 

「言っちゃ悪いけど、ララちぃならもっと上の男狙えると思うんだよねー」

 

「それを本人の前で言うか?」

 

容赦なさすぎだろ。原作ならリトがいないと思っていたから分かるけど、目の前にいて言うか。

 

「いやー、だってねぇ……別に悪いワケじゃないけど、結城ってちょっと枯れてない?」

 

「ララちぃみたいな美少女前にして、反応薄すぎるよねぇ」

 

「むぅ……」

 

それを言われると弱い。私自身、反応しすぎない様にしているが、リトの様な反応を求められても困る。元々女体は見慣れた身だ。

 

「んー……でもね、私、リトは宇宙で一番頼りになる人だと思うなぁ」

 

ハッとしてララを見る。自然と目が合い、エメラルドの瞳に呆けた面をした私が映っていた。

 

「私はそう信じてる」

 

瞳の中の私が焦った様に目を泳がせる。分かっていたことだが、こうやってハッキリ言われると、酷く居心地の悪さを感じる。この感情を、私が向けられていいのか。

 

「私にはリト以上の人なんて、考えられない……」

 

そう言って、ララはそっと目を閉じる。自然と、私の視線もララから外れる。

今私は、どんな表情(かお)をしているんだろう。

 

「うひょー! ララちぃカッコいーー!」

 

「宇宙で一番だってぇーー!」

 

うるせぇ。

 

「ちょっと結城ィ! アンタはどうなのよ!?」

 

「ララちぃがここまで言ったんだから、アンタも何か言いなさいよ!」

 

ほらほら、と籾岡と沢田がせっついて来る。

 

「俺は……」

 

駄目だ。今言えることなんて何も無い。

私は、ララの気持ちに応えられない。

本当ならこの場には結城リトがいて、リトは西連寺が好きで、ララと西連寺はリトが好きで、それが本来の形。

ララの気持ちが私の行動で成り立った物でも、私にどうこうする権利なんて無い。

 

私は、結城リトになる気は無い。

 

「リト?」

 

ララが、黙りこくった私の顔を覗き込んで来る。その瞳に映る私はーー

 

ジリリリリリリッ

 

「非常ベル!?」

 

「なになにどうしたの火事!?」

 

非常ベルが鳴り、ドタドタと籾岡と沢田が廊下に出る。忙しない奴らだ。

 

後に続こうとしたララの腕を掴む。

流石に何も言わずに去るのは憚られた。だから、一つだけ。今言えることだけ言わせてほしい。

 

「ごめん、ララ。俺はララの気持ちに応えられない。少なくとも今は」

 

「……うん、分かってる。私、がんばるから」

 

「……これからも、応えられる保証は無い。それでも?」

 

「うん! だって、決めたから!」

 

ララは笑って、拳を握りしめた。

 

そうかい。いいね、そういうの。カッコいいよ。

 

「そっか。俺も、がんばるよ」

 

「? リトは何をがんばるの?」

 

「ごめん、内緒」

 

「もしかして、大事なこと?」

 

「ああ……じゃあ、俺はもう部屋に戻るから。おやすみ」

 

「うん、おやすみ。リト♪」

 

退室しようとして、西連寺の存在に気付く。

 

い、いたのか……そらいるわな……

 

「お、おやすみ。西連寺」

 

「うん……おやすみなさい」

 

どういう表情なんだ。それは。

分からないが、西連寺のためにも、私は急がないといけない。

 

部屋を出て、喧騒と逆方向に走り出す。

 

ずっと考えていた可能性がある。この臨海学校で、偶然にもその下準備をすることが出来た。

 

後は……やっぱり、あの娘を探しておこうかな。ヒントになるかもしれないし、仮説に信憑性を持たせやすくなる。

 

のんびりしてられない。残された時間は、刻一刻と減ってるかもしれないのだ。

 

私は、結城リトにこの身体を返す。

 

そう決意を新たに、私は走り続けた。

 




主人公、決意を新たに。

主人公ちゃん、気が短い方だからすぐに問題解決したがる癖がありますね。ネタも挟みたいんで程々にしてほしいです。

次回は新キャラ出したいですね。あ、レンではないんですけど。
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