緋弾のアリア ~千里眼の矢《second sight》~ 作:リバポから世界へ
緋弾のアリア単体での投稿は初めてになりますが、何卒宜しくお願い致しますm(__)m
それではどうぞ!!
「はぁ……はぁっ……! クソッ、チクショウ!!」
暗闇を一人の男が走っていく。センスの悪い柄のタトゥーに獣のような鋭い眼。そして右手には黒い拳銃。口から出る言葉は悪態だけだ。
チクショウ……どうしてこうなった? 今回は信頼出来る相手との取引だったはずだ。情報が洩れるなんてことは万に一つも無いはずなのに……!
いつも通りだった。”ブツ”を受け取り金を渡す。挨拶は要らない。ただ、それだけのことだったはず……。
しかし取引が無事に済み、自分も相手も完全に油断してしまった時だった。仲間の一人が突然、狙撃されたのだ。
―――――ビシッ!
「……ま、またかよ! 一体どうなってんだ!?」
仲間も取引相手も全員撃たれた。ただ一人逃げ延びたはずの男の頬を銃弾が掠める。これで何度目だろう?
取引は窓も無く、鍵も掛かった密室で行われた。換気扇の通風孔すら無いような場所を何処から、どのように狙撃したのか? 男には皆目見当がつかなかったのだが、今頃になってようやく自分たちを狙った弾丸は"壁を通り抜けている”という、恐ろしい事実に気づいてしまった。
何か特殊な弾丸を使っているのだろうか? いや……それにしては惜しげもなく何発も撃ってくる。
今だってそうだ。弾丸は自分の顔を掠めたが、ミスショットというよりも外してやったといったような感じである。
つまり、何処かで自分を狙っているクソ野郎はスコープ越しにニヤニヤ笑いながらこう思っているわけだ。
『
ギリッ……!
唇を強く噛む。肉が裂けて鉄の味が口内に広まった。クソったれが……舐めやがって……!!
男のイライラは頂点に達していた。既に物事を冷静に判断することが不可能になっている。
相手が何処にいるかも分からない。今、発砲すれば自身の居場所を更に教えるだけだ。……だがどうでもいい。一発喰らわせてやらないと気が済まない!
彼が銃を振り上げた。
「ふざけ―――――」
悪態と同時に引き金を引こうとしたその時―――――
「は……? え?」
右腕が軽くなった気がした。いや、気のせいではない。手にしていたはずの無機物はバラバラになって地面に散らばっていく。
男の手に残ったのは黒い星が描かれたチープなグリップだけになった。
「ひ、ひっ……!」
もう自分に出来る事と言ったら無様に背中を見せて逃げる事だけである。彼は銃の残骸を投げ捨てると、よろけながらもその場から一目散に駆け出した。
「はぁ……はぁっ……!」
暗闇をひたすら走り続ける。どれだけの時間が経っただろう? 体力の限界を迎えた頃、彼はようやく目的の場所に辿り着いた。
ほとんど人通りの無い路地裏にポツンと佇む喫茶店。とうの昔に閉店したはずの店の前に立つと、ドアをこじ開け中に入る。そしてカウンターに敷いてあったカーペットを捲った。
「へ、へへ……流石に地下なら……」
床に設置してある地下室の入り口を見て男はホッとしたように笑った。地下に入ると、手探りで探し当てたランタンを灯す。真っ暗な闇がたちまち暖かい光によって包まれた。
「た、助かった……」
いざという時の為に、シェルターを用意しておいて本当に良かった。食料や武器は十分なほど隠してある。後はほとぼりが冷めるまで此処でじっと耐えるしかない。
そして、此処を出た暁には……自分や仲間をこんな目に合わせた野郎を見つけ出して、生まれてきたことを後悔させて―――――
―――――ビシッ!
「あぐっ……!?」
突然、右足に激痛が走った。バランスを崩しその場に倒れこむ。視線を下げると太股からおびただしい量の血が流れ始めていた。
「な、何で……どうして!?」
どれだけ隠れても無駄だった。奴にはこちらが見えている……!
「くっ!」
這うように部屋の隅まで行くと、新しい銃に手を伸ばそうとした。しかし……
―――――バスッ!
「あ……あぁっ……!」
今度はその掌が撃ち抜かれた。自身の体力と戦意が瞬く間に消え失せていく。
その時、天井からガタゴトと物音がし始めた。次いで人の会話も聞こえてくる。
「き、来やがった……!」
男の顔が今まで以上に蒼くなった。そして―――――
「動くなっ、警察だ! 銃を捨てろ!」
ついに警察が地下室の入り口をこじ開けてきた。銃を構えた大勢の警官がぞろぞろと中に入ってくる。
男は瞬く間に捕らえられ、手錠を掛けられた。
◆
「……状況終了」
港区のビルの屋上。
構えたライフルから顔を上げた少年は、インカムに向かってそう報告した。そしてオペレーターと幾つか言葉を交わした後バイポッドを畳み、ライフルをガンケースに仕舞う。
自分の役目は終わった。敵は全員動きを封じたし、連中の使っている
―――――ビュオッ!
「……っくしょん!!」
突然、強風が少年を襲った。その風のあまりの冷たさに、思わずくしゃみをしてしまう。
「ううっ……寒っ! ったく勘弁してくれよなあ……」
3月も下旬になったが、暖かいのは日中だけで日が沈むとまだまだ冷える。臙脂色のブレザーの上にPコートを羽織り、マフラーを巻くと彼は屋上から退散した。
オペレーターと通話し続けていた携帯を開くと、メールが一件届いている。
「あ、ヤベ……」
メールの送り主は付き合いの長い幼馴染だった。
彼女に”今から帰る”と返信を打つと彼は再び歩き出す。
(腹、減ったなー)
そんなことを考えながら歩いている少年の表情は、先程まで人を撃っていたとは思えない程年相応のものだった。
いかがでしたでしょうか?
今まで書いてきたモノと書き方を少し変えてみたので、上手く出来たか不安なのですが・・・(笑)
あらすじやタグにもある通り、この物語の主人公は那須与一の子孫です。そしてヒロインは白雪になります!!
キンちゃんLOVEの彼女をオリ主のヒロインにするのは大変難しいことだと理解していますが、どうにかこうにか頑張って投稿していきますので応援よろしくお願いしますm(__)m
感想や批評などは大歓迎です!
それでは読んでくださってありがとうございました。失礼します。