連れていくのはカドケウスとケーリュケイオン、ロンギヌスとフォルカスの2組だ。
マスター達は無事にそのクエストを達成出来るのだろうか。
オリジナルマスター物とでもいうのですかね。
ちなみにカドケリュとフォルロンギのペアが大好きです。
「ちょっと待って下さい!どうして俺なんですか!?」
マスターは携帯電話に向かって叫んだ。
訳が分からないとはまさにこの事。
あの金のかかる世界への出入りをやめて、ずっと音信不通のままだったのに、いきなり電話でこちらに連絡を取ってきたと思ったら、突如としてクエストの依頼である。
マスターは電話に向かって続けざまに言う。
「俺はもう引退しているんです。ギルドも抜けました。顔すら出していません。もちろんログボも取ってないです。ただマスター登録を消してないだけでもう全然あの世界には行ってないんですよ」
だが、電話の向こう側の相手は淡々とした口調で説得をしてくる。
「は?まだキル姫を従えているかって?いやまぁ、それは確かにまだいますけど……え?カドケウスとケーリュケイオン?そりゃもちろんいますよ。カドケリュと言ったら自分の自慢のキル姫ですから。……え?はぁ。ふむぅ、なるほど……カドケウスとケーリュケイオンによる特殊スキルでしか倒せない敵が現れたと。でも今の奏官達で、あの姉妹をそこまで育ててる奇特な豪の者が今はほとんどいないという事ですか……」
マスターはふぅとため息をついて考えた。
なるほど。
カドケウスとケーリュケイオンを真に心の底から愛する者だけが会得出来る彼女達の協力スキル【知恵の蛇】(※ゲーム内未実装2019年5月)が必要だという事だ。
確かに俺が全盛期の頃(2年前)でもこれを会得させている奏官はほとんどいなかった。
もともとカドケウスとケーリュケイオンは数が少ないキル姫でもあるからだ。
別に人気がない訳ではない。姿形はめっちゃ可愛い。
だが、本来は回復用の杖のキル姫であり、持っている汎用スキルは平凡でピン数の成長率自体も良くないと言ったら、皆あまりこぞって育成はしないだろう。
さらには、秘奥義ともいえるあの特殊スキルを手に入れるには、この姉妹2人をどちらも覚醒させて、さらにお互いの親密度を最大まで上げるという鬼畜育成をせねばならないのだ。
あの当時、そんな荒行みたいな真似事をするのは真のカドケリュ愛好者の俺とあと2~3人くらいなものだったのだ。
マスターは暫く逡巡したのち返答をした。
「まぁ、とりあえずは分かりました。協力しましょう。自分もずいぶんとあの世界にはお世話になりましたからね(十数万単位で)」
マスターは諦めたように肩をすくめてから話を続けた。
「それでどこに行けばよろしいのですか?」
「……という訳だ」
マスターはキッチンのテーブルの向かい側に座る二人に説明を終えた。
紫色のリボンをウサギの耳のようにピョンと立たせた愛らしい少女が目を輝かせながら言い出した。
「わぁいっ!じゃあまた私たちユグドラシルに行けるんだね。ひっさしぶり~。腕がなるね~。ね、お姉ちゃん!」
この立ち上がりながらうでまくりをしている少女がカドケウスだ。
「はしゃがないの。カドケウス」
紺のリボンと黄色い花を髪に飾っている少女が隣の妹をたしなめるように言う。
この知的で落ち着いた口調の美しい少女がケーリュケイオンである。
ケーリュケイオンが探るような視線をマスター向けて言う。
「それで?マスターは良いのかしら。もうあの世界は飽きたような事を言っていたけど」
マスターは頷いた。
「ああ。とりあえずもうそのクエストは承諾した。まぁたまにはいいんじゃないか?別に俺はあの世界が嫌いになった訳じゃないしな」
「それなら私が言うことは何もないわね」
そう言うケーリュケイオンは隣ではしゃぐカドケウスとは対照的に済ました表情であった。
「ねえねえ!マスター!それであと誰か連れていくの?」
カドケウスが身を乗り出してピョンピョン跳ねながら尋ねてくる。
「そうね。私達だけだと少し道中がキツそう。でも、ツーマンセルを組むならあともう2人は連れていくのかしら」
ケーリュケイオンもマスターに探るような目をむける。
「ああ。それはもう声はかけてある」とマスター。
ピンポーン
玄関のチャイムがなった。
「お。噂をすれば、だな」
マスターは玄関に行きドアを開けた。
そこには2人の少女が立っていた。
「召集により参上致しました、マスター」
一人は白い軍服のような衣装をまとう長い黒髪の少女だった。
まず始めに、その切れ長の瞳を持つ美しい容姿の少女がお堅い口調で挨拶をしてきたのだ。
マスターはにこやかに返事をした。
「ああ、今回はよろしく頼むよ。フォルカス」
「はい。お任せ下さい」
フォルカスは微笑んで頼もしげに胸をはる。
そのフォルカスの隣の少女が次に挨拶をしてきた。
「あ、あの、ロンギヌスっ、しょ召集の命により参りましたっ!」
ペコリと頭を下げたのはセミロングで茶色の髪をした化粧気のない少女だった。
だが化粧なんか必要のないほど可愛らしい小柄な少女だ。
「やあ。ロンギ」
マスターはロンギヌスの頭に手を乗せポンポンと撫でる。
ロンギヌスはその手の下で嬉しそうに身をくねらせている。
この何故か構ってやりたくなる雰囲気が彼女の持ち味なのだ。
「さぁ入ってくれ。打ち合わせをしよう」
「「はいっ!」」
マスター達はカドケウスとケーリュケイオン、フォルカスとロンギヌスの組み合わせでツーマンセルを組んだ小隊でユグドラシルへと向かった。
都心にある秘密の駅のホームから出る極秘の汽車で丸一日揺られ、やっとファンキル学園のある街へとたどり着いた。
だが討伐クエストの示す標的がいる場所までは、そこから馬車でゆうに三日かかる所にあった。
マスター達は馬車を借りてその場所に向かう事にした。
旅を始めて2日目。
フォルカスが突然何かを感じ取ったようだ。
「待って!馬を止めて!」
馬車の荷台に乗るフォルカスが御者台で馬を操るカドケウスとケーリュケイオンに向かって叫ぶ。
すぐに二人の姉妹は慌てながらそれぞれ手綱を引き、馬達の歩みを止めた。そしてそっと辺りを見回す。
今いる場所は深い森の街道の途中で、特に何も変わった事はなさそうに見えた。
だが、フォルカスは半腰の姿勢で瞳を閉じたまま、周囲の気配をずっと探っている。
傍らのロンギヌスが急いで皆の武器の用意をし始めた。
馬車の幌の中にいたマスターも、少し顔を出して辺りを窺ってみた。
しかしこのマスターにも特におかしな気配は感じとれなかった。
だがマスターは、あの百戦錬磨のフォルカスが異変を感じたのだから、確かなのだろうと確信していた。
フォルカスが瞳を開けてマスターを見つめて進言してきた。
「いつの間にか敵意のある者に道を塞がれています。なかなか素早いですね。数は4、距離はまだ200mは離れています」
マスターは眉をひそめてフォルカスに返事をする。
「むぅ。それはチトまずいな。異族でも湧いたか」
「いえ……あの気配は全部人間ですね」フォルカスが答える。
「人間?なら盗賊団とかか?」
「さてどうなのでしょう。ですが、相手から強い殺気が感じられるので、とりあえず素人ではなさそうです」
フォルカスはロンギヌスから槍を受け取りながら答えた。
「ありがとうございます。ロンギヌス」
ロンギヌスは微笑みながら頷いていた。
マスターは腕を胸の前で組んで言う。
「ふむ。となるとこれは待ち伏せされたと言うことか。問題は、たまたま襲ったのが俺達なのか、もしくは計画して俺達を狙ったのか……だな」
カドケウスがマスターを若干からかうように言い出した。
「ねえ、マスター。実はどこかで、でっかい恨みを買ってたんじゃないのー?」
ピンクのリボンがふよふよと頭の上で揺れている。
カドケウスの隣にいるケーリュケイオンがさもありなんとばかりに頷いて紫のリボンを揺らしてきた。
「それは確かにあるかもしれないわね。昔のあの引退間際のマスターは、キル姫達を題材にしたエッチな事を色々創作してたから」
二人とも面白がる顔つきで好奇心たっぷりといった表情をしている。
マスターはばつが悪そうに黙るしかなかった。
えぇ……(汗)
まさか、ガチ創作勢から疎まれていたとか…?
まぁ、あり得ない事ではないか。
我慢出来ずにプチえろから18禁にして書いたりしてしまったからな。
……だがもう、それはとうに過ぎた事だ。
マスターは後悔もそこそこに、しばし考えを巡らせると矢継ぎ早に指示を出した。
「とりあえずはこの窮地は脱せねばならん。馬車から出て先制攻撃を仕掛ける。フォルロン組は正面から敵に当たって、カドケリュ組は迂回して左右から補助だ。先制して敵に当たれるからこちらが有利なはずだ」
最初にロンギヌスが元気良く返事をした。
「はいっ!」
「了解しました」フォルカスがそれに続く。
「では行きましょうロンギヌス」
フォルカスがロンギヌスに声をかけて駆け出した。
「うんっ!…あ。マスターもお気を付けて」
ロンギヌスがマスターを心配そうに見つめてフォルカスの後を追った。
「それじゃあ私達も行こうか」
ケーリュケイオンがあまり危機感の感じられない声で言った。
「うん。お姉ちゃん。とりあえず本気出しちゃってもいーんでしょ?いわゆる、倒してしまってもかまわないだろう?で」
カドケウスが杖を振り回しながら、楽しげといった調子で問いかけている。
ケーリュケイオンはマスターのほうをチラリとうかがいながら答えた。
「んー、でも一応殺さない程度にしないとまずいかな」
それを聞いたマスターはコクンと頷いてみせる。
ケーリュケイオンはカドケウスに向かって言った。
「不殺をご所望よ。なるべく最善をつくしましょう。行くわよカドケウス」
「うん。お姉ちゃん。準備はもう万端だよ。ねぇ、あーちゃん」
カドケウスはすでに相棒である蛇のアウルムを呼び出している。
そしてケーリュケイオンとカドケウスは素早い動きで藪のなかに飛び込んで行った。
マスターも少し遅れて部下のキル姫の後を追う。
彼女らの動きはとても素早く後ろ姿を目で追うのがやっとだ。
遠くに4人の武装した兵士の姿が見えてきた。
それは何故こんな森の中にいるのかと言うほどの重装備をした屈強な兵士達である。
その兵士達は近付くロンギヌスとフォルカスを目に入れるやいなや雄叫びを上げて攻撃をしかけてきた。
その兵士達は、まるで探し求めていた獲物が眼前に現れたかのように興奮していた。
その兵士達は全員斧を構えて突進してきた。
槍を持つロンギヌスとフォルカスに合わせたかのようにもとれる。
三竦み的にかなり不利な状況だ。
だが、ロンギヌスとフォルカスは落ち着いたように背を合わせると、兵士達の攻撃をまるで舞を踊るかのように軽やかに避け、お互いの体を触れあわせたまま変幻自在に槍を繰り出し始めた。
マスターでさえ見とれてしまうような動きである。
あれはこの二人でしか出来ないユニゾンである【真槍舞踏】というアタックスキルだった。
以前にこの二人は〈見えない手錠〉という試練を乗り越え、魂の絆を作り上げる事が出来ていたのだ(※「親密度アップのマル秘試練」気まぐレニー著参照)
だが4対2である数での不利と、斧と槍との武器相性の不利、さらには体格や装備による合計四重の不利があるせいで戦いはかなり長引きそうだった。
だが、ロンギヌスとフォルカスの戦いの舞いは常に全力全開で休まる事を知らない。
速度が全く落ちずにまるで無限の体力を持っているかのようだ。
時折斧がロンギヌスの腕やフォルカスの足にかすり、そこから鮮血が飛び散るがそれもまた演出か何かに見える。
だがその出血はすぐに止まり、その傷口もいつの間にか跡形もなく治っていた。
それに彼女らの柔肌に食い込むはずの斧の一撃があったとしても、それは見えない力で弾かれていたのだった。
まるで不思議な力に守られているかのように。
マスターは不利な戦闘状況であるのは承知していたが、一応安心して見守る事が出来た。
ロンギヌスとフォルカスの息のあった動きは敵を寄せ付けないし、その彼女らを補助する後衛からの支援も完璧だったからだ。
そう。カドケウスとケーリュケイオンの回復補助魔法である。
カドケウスとケーリュケイオンが後衛で隠れながら戦況を把握し、ロンギヌスとフォルカスに適切な処置を逐一施している。
それがあればこそロンギヌスとフォルカスも何の憂いもなく全力全開で戦えるのだった。
フォルカスが最後の一人の武器を弾き飛ばし、ロンギヌスがその足を払った。
そして地に倒れたところに二人で追い討ちの脳天割りを叩きつける。
脳震盪を起こした最後の兵士もそれで動かなくなった。
戦闘が終わった。
4人の兵士はそれぞれが縄でくくられ地に伏している。
マスターが目を覚ましていた兵士の顔を覗き込んで尋ねた。
「お前達は何者だ?何故俺達を狙う」
「……」
兵士は無言でにらみ返すのみだ。
らちが明かないと思ったマスターはカドケウスに言った。
「おい。カドケ。こいつやっちゃって良いよ」
「しょうがないなぁ」
と言いつつカドケウスは目を輝かせている。
そしてカドケウスはスキップしながら兵士に近づき笑顔でその顔を覗きこんだ。
兵士は不安げにカドケウスを見返す。
「んじゃ。いくよー、ディボードケインっ!」
カドケウスは一人の兵士に手をかざした。
その手が淡く光った。怪しげな光が兵士の体に放射される。
「う!?」
兵士が悶絶の表情でうめき声をあげ始めた。
「ぐ!く!がっ!やっ!ぐぎゃ!!」
そして身をくねらせ地面を激しくのたうち回った。
「ぐっうう、あはははははははははは!あは!あははは」
それはもう死にそうな感じでの大笑いであった。
これがカドケウスお得意のくすぐり魔法である。
魔法で相手のくすぐったい箇所を探して、そこを絶妙な魔法力でピンポイントに狙い打つ、まるで悪魔のような所業の技であった。
これに耐えうる奴はどこにもいないとまで言わしめた曰く付きのものだ。
「それでは一度止め、カドケウス」マスターが言う。
「ほーい」カドケウスは素直に止めた。
マスターが一歩前に出て兵士に尋ねた。
「もう一度聞こう。お前達は何者だ?」
そのくすぐられた兵士は顔を赤くし息も切れまくっている。
返事もろくに出来そうにない。
「……はあっ、はあっはあっ……」
マスターはカドケウスに向かって言った。
もちろん兵士達に聞こえるように。
「よし。ではあと一時間ばかしやってくれ。今度は全員にな」
「了解~」
カドケウスが明るく返事を返す。
「ま、待ってくれ!!は、話す!全部、話すから」
くすぐられていた兵士が懇願するように叫んでいた。
まぁ確かにアレを一度喰らえば、次はもう死んだほうがマシだと思うようになるらしいからな。
マスターは話を促した。
「で?」
「俺達は〈秘虹彩のバグシードギルド〉の者だ」
「ほう。バグシードの……。ギルドまであるのか。やはり俺達を狙って来たって訳か?」
「そうだ。お前達がユグドラシルに来たって聞いて待ち伏せていたんだ。伝説のカドケリュ使いのお前は俺達にとっては天敵みたいなものだからな」
マスターはむぅと唸って考え込んだ。
〈婢虹彩のバグシード〉
虹彩のマナシードに似た育成用の種であるのは確かなのだが、その効果が禁忌に触れる代物とまで言われている。
それはその種がキル姫の魂に干渉して成長率をバグらせる事が出来るからだった。
バグらせて成長させる事で誰にも倒せない化け物級のキル姫が作れる事があるのだ。かなりの低確率だが。
だがそれは両刃の刃であり、最悪その種を付けたキル姫が成長の過程で変調をきたして死んでしまうことすらあるのだ。
そして過去に一度化け物級のキル姫が産まれた際は、誰も対処出来ずに世界は大混乱に陥ってしまった。
そして過去にそれを唯一解決したのがカドケリュ姉妹という訳である。
彼女らのスキル【知恵の蛇】が変異キル姫の魂のバグを修正する事で何とかなったのだ。
そう。だからこのマスター達はこの森の先にバグらされたキル姫が一人いると聞いてその対処をしに来たのである。
それが今回のクエストの内容だった。
マスター達は倒した兵士達を木にくくりつけてから出発した。
道の途中で何度か同じような襲撃があったものの、キル姫4人のコンビネーションで難なく撃退する事が出来た。
そしてマスター達はある山小屋にたどり着いた。
その山小屋は陰鬱な雰囲気を見にまとっていて何だかとても不気味だ。
マスター達は馬車を降りると隊列を組んで近づいて行った。
その時、小屋の扉が開き、一瞬のうちにピンク色の何かが地を飛ぶように切り込んできた。
「はぁぁぁっ!」
そのピンク色の何かの掛け声が聞こえる。
人だと思ったのもつかの間、物凄い剣撃が降り注ぐ。
だが間一髪ロンギヌスとフォルカスが二人がかりでその剣撃を防いだ。
キ、キキキキキキキキンっっ!!!
その何者かの剣の10連撃を何とか槍で防ぎきることは出来た。
だがその一瞬でロンギヌスとフォルカスは満身創痍になっている。
急いでカドケウスとケーリュケイオンが二人に治癒を施した。
そのピンクの何者かは一瞬のうちに間合いを取っていた。
遠目でマスターは気がついた。
あのキル姫はティル……。
ん?
……ティル……。
ティル何だっけ?
あのピンクのロングストレートヘアーで綺麗な顔立ちながら、何故か影の薄い感じの……。
可哀想な主人公といった雰囲気を醸し出す不憫なキル姫。
だが、この目の前のキル姫〈ティル何とかさん〉の実力はかなりの化け物級だ。
「ロンギヌスっ!フォルカスっ!後衛を守りながら相手を牽制してその動きを止めるんだ!」
マスターが指示を飛ばす。
「「はいっ!」」ロンギヌスとフォルカスが同時に返事を返して槍を構え直す。
「カドケウスとケーリュケイオンっ!お前達は蛇を召還してあのピンクのキル姫、ティル何とかさんのバグを消せっ!」
「さぁて高くつくよー」とケーリュケイオン。
「ちょろいちょろい。楽勝だよねー」とカドケウス。
二人とも軽口を叩く余裕さを見せている。
前衛では激戦が始まった。
ロンギヌスとフォルカスのあの舞うような同時攻撃をティル何とかさんは完全に受けきっている。
数は2対1で、しかも相手の武器は剣でこちらは槍。
だがその有利さがあの戦闘ではみじんも感じられない。
まさにチート級と言っても良いだろう。
だが何とか相手の動きは止める事が出来ている。
あとはカドケウスとケーリュケイオンがうまいことやってくれる事を祈るだけだ。
「いでよ!アウルムっ!ディボードケインっ」
カドケウスが呪文を唱え黄金に輝く蛇を呼び出す。
「さぁ来なさい。ヒュドラ。トリートケイン!」
ケーリュケイオンが呪文を呟き、同じように黄金の蛇を顕現させた。
そして2匹の蛇は姉妹の手から放たれ、空中で絡み合いながら尾を螺旋状に組み合わせ始め、翼を冠する豪華絢爛な杖を形作った。
そしてその杖は光り輝きながら彼女らの元へと下りてきた。
カドケウスとケーリュケイオンは二人でその杖を持ち、同時に言霊を紡ぎ始める。
「知恵の蛇が形作る奇跡の杖よ。この世界の異常な揺らぎを消し元の状態へと還したまえ」
杖が黄金色の強い光を放ち始める。
カドケウスとケーリュケイオンが揃って最後の言霊を口にした。
「「ヘルメスの杖!!!」」
杖から黄金色の光線が激しくほとばしり、そしてその光線がピンク色の剣士の胴体を貫いた。
すると剣士の体から黒い影のような物が追い出されるように滲み出てきた。
そしてそれは空中で四散するように風に溶けていった。
その光線を喰らったティル何とかさんもその場に崩れ落ちた。
気を失ったようだ。
だがその表情は安堵のような表情を浮かべている。
終わったのだ。
マスターは大きなため息をついた。
ロンギヌスとフォルカスもお互いをねぎらいながら健闘を称えあっている。
カドケウスとケーリュケイオンも満足そうだった。
ぷるるるる。
携帯電話がなった。
非通知だ。
マスターはもしかしてと思いながら電話に出た。
「……もしもし?」
受話器からは予想通りの声が聞こえてきた。
やはりあのクエストを依頼してきた者だ。
「はい、はい。ええ。いま無事に終わりましたよ。ミッションコンプリートってトコですね。え?報酬ですか?手渡しは出来ない、ですか?」
なんだかイヤな予感がする。
「いつものトコにちゃんといれておく?」
なんだそれは?
銀行の口座なんて相手に教えてはいないし、そもそも何の交流もない。
電話は一方的に切れてしまった。
マスターは呆気にとられながら自分の携帯電話を眺めていた。
そしてある可能性に気がついた。
いや、まさか、そんな……。
それは止めてくれと半ば願いながら携帯電話であるアプリを立ち上げる。
「~♪~ファントムオブキル♪」
そのアプリは可愛らしい声で出迎えてくれた。
懐かしい。
しかし全然立ち上げてなかったものだから、始まるまで色々とロードの時間がかかる。
そしてやっと最初の待機画面になって、マスターはすぐに画面の右上に目を向けた。
そこの元々10という数字しかなかった石のマークの欄が何故か3010の表示になっている。
マスターは膝から崩れ落ちた。
くらくらする頭でマスターは考えた。
ははは。
3000もの姫石か!
報酬は30万相当って事だな。
やったー。
ガチャるぞー!
って!!
はぁぁぁ、まぁしょうがない。
これを使って完全に引退するまでは楽しもうか。
とりあえず、カドケリュのマルチスキルがホントに実装されるまでは頑張るとしよう。
(終わり)
最後まで読んでくださりありがとうございました。
もうほとんど引退してますが好きなゲームであることは変わりません。
気が向けばまたその内何か書かせてもらいます。
その時はまたよろしくお願いします。
( ̄▽ ̄)ゞ
※推敲が不十分で申し訳なく思います(笑)。
目が疲れました。