本編に載せようとしたけどキャベツまで持たなかったのでこういう形で……
アトリエからギルドがある酒場まで、そうそう距離は無い。普段は近道とかはしないロロナだが、今日はウィズを待たせてある。少しでも時間を削りたい為、近道を利用するのは道理であった。
なのだが、そういう時に限ってイレギュラーと言うモノは発生するのである。
「ヒャッハ-!当たりも当たり! 大当たりだああぁあぁぁぁあああ!!」
ロロナは眩暈がした。
つい最近知り合いになった少年が、女性用下着を振り回して狂喜乱舞するその姿に。
銀髪の少女が泣きながら「いやあああ!パンツ返してェ―!!!」と訴えているから、彼女がその下着の持ち主だということは明白だ。
銀髪の少女の傍らには金髪の女性がいる。友人なのだろう。顔を真っ赤にして怒りで身体が震えているように見えた。
アーランドもだが、ロロナが以前いた世界ではこういった事件や過剰なセクハラ行為は無かった。師匠からはちょっと恥ずかしいボディタッチとかがあったが、こんな公衆の面前でやるようなことではない。
だからか、このような場面でロロナはどんな行動を取ればいいか分からなかった。
とにかく、カズマを止めたい。知り合いが次の日には牢屋。だなんて衝撃的すぎる。
そんな状況を作らない為に、ロロナは強制的にカズマの動きを止めることにしたのだ。
「ふ、不潔ですぅぅぅううぅぅ!!」
幸い、感電の衝撃でカズマの手から離れた女性用下着は黒焦げになることなく、本来の持ち主の元へ戻った。
唖然としている二人の少女を置いて、ロロナは回復薬を置き、酒場へ急ぐ。
通り魔みたいな行動ではあるが、女性の敵を討ったのだ。被害者は感謝こそすれ、恨みなどない。強いて言うならば、お礼を言いたかったのだが、我に返った時にはロロナは既に走り去っていた。
「なんだったんだろ……今の」
「さあ。……それにしても」
金髪の少女の顔が蕩ける。まるで恋する乙女のように。頬を赤らめ、身をよじる姿は、抜群のスタイルと美貌が相まって扇情的だ。
「見たか?クリス!今の雷撃を!! 一瞬であの男を黒焦げにしたのだ!!
くぅ~~っ!!なんと羨ましい事だろう!
あの少女は頼んだら先ほどの雷撃を私にも撃ってくれるだろうか!!」
クリスと呼ばれた少女はその言葉を無視することにした。そんなことしても、『放置プレイ』として受け取り喜ぶのは分かっていた。ただ、黒焦げになった少年に、置き去りにされた回復薬を使うのだった。
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ロロナはあれから振り向くことなく、休むことなく酒場まで走った。
数分もすればたどり着き、息を整えながら入店する。カラン、とベルが鳴るが、冒険者たちの喧騒でそれも掻き消された。
見知った顔を見つけると、ロロナは納品より先にそちらに向かうことにした。
「アクアちゃん!」
水色の女神が振り向いた。
傍らには黒髪、紅目の少女もいる。
「ロロナ?……ってなんで泣きそうになってるのよ!」
私のせいなの!?とうろたえるアクアに、ロロナは大きな声で謝罪した。
「ごめんね、アクアちゃん!
さっき、路地でカズくんを見たんだけど、お、女の子の、下着を……その、振り回してたから…………えっと、思わず『ドナーストーン』投げちゃって!」
顔面蒼白といっていいロロナの体はワナワナと震えていた。やりすぎた!とも思ったのだ。なにせカズマは黒焦げになっていしまっていたのだから。
だからロロナはカズマのパーティーメンバーのアクアに謝罪した。
ロロナの主張は酒場に響き渡り、カズマの行為は周知された。店内にいる女性たちの目が冷えた。めぐみんとアクアはカズマの所業に引いた。
「……えーっと、カズマさんは路地にいるのね?」
「うん。ギルドから出て右手に行った先の路地……。ほんっとーにごめんなさい!笑いながら女の子の下着を振り回していたから、その、怖くって」
やりすぎといったらやりすぎなのだが、ロロナの見た目はめぐみんと変わらないような幼い少女にしか見えない。それに護衛を通してロロナの人となりはある程度は分かっている。ワザとではないってことは一欠けらも疑ってはいない。
何より種族は違えど同性である。スキルを習いに行ったのになぜその状況になっているのかは置いといて、深く反省しているロロナを責める気は無かった。
ただ、ドナーストーンの威力は知らないが、ロロナの爆弾の威力を知っているアクア。場所をロロナから聞きだし、その場に向かうことにした。
「一応薬は置いて行ったんだけど、「あら、じゃあ大丈夫よ」
訂正、シュワシュワを飲み直すことにした。
「良いのですか、アクア?」
「だいじょーぶよめぐみん!ロロナが作った薬って効くんだから!」
幸せそうにシュワシュワを飲むアクアだが、一理あった。
大して面識のないめぐみんでもロロナの薬は折り紙つきだと良く聞く。
惜しむらくは持ち運びが不便なことだろう。衝撃を与えると割れてしまう容器に入ってさえなければ、ロロナが卸す薬は爆売れだ。容器さえどうにかすればよいのだが、コンテナと繋がったバッグを持つロロナはその欠点に気づかない。だから改良することもない。
プリースト達も回復魔法の修練度度を上げたいため、なるべくロロナの薬に頼らないようにしているのだ。
カラン、とベルの音がする。
「ちーっす、ただいまー」
「ほら、やっぱり大丈夫だったじゃない!」
「なんでアクアがドヤるんですか……」
「あわわわわ!さっきはゴメンね、カズくん!」
入店したカズマの姿を見つけ、アクア、めぐみん、ロロナが駆け寄った。
どことなく香ばしい匂いがカズマから漂っているような気がしたロロナは、涙目だ。カズマの身体をペタペタと触り、怪我が残ってないか確認していた。
「大丈夫だよ、ロロナ。置いてってくれた薬で彼は全快したみたいだよ!」
銀髪の少女が笑いながら話しかけた。
「?あれ……?エリスさ「おっと!自己紹介なしだなんて失礼したね!!あたしの名前はクリスだよ!!!」……クリスちゃん?」
訝しんだ表情でロロナはクリスを見つめる。穴が開くように。間近で。
錬金術士にとって、素材の特性を見抜くことは朝飯前である。傷のメイクや髪型の違い等では誤魔化せられないのだ。
「ん~~~やっぱり、エリスさ「ちょ~~~っと来てくれるかな!!」」
強引にロロナを店内の端っこに引っ張った。
「あれ、どうしたんでしょうか?」
「さあね……ところで聞いたわよ、カズマさん!!!」
しゅわしゅわを奢ってもらいたいアクアは、喜色満面な顔でカズマに迫る。
もし断られたりしたら、とりあえずバイト先でその事件を面白おかしく伝える気満々である。バイト先の主な利用客は主婦の方々だ。暇を持て余した主婦たちの伝達は凄まじい。
翌日にはアクセル中に広まることだろう。
結論として、アクアはしゅわしゅわを1本手に入れることが出来た。