俺は、今暮らしている大きな武家屋敷へと足を運んでいた。そこが俺の親戚であり、絶望に染まった俺を救い上げてくれた男の住処であったからだ。その男の家は神条という名の通った武家の血筋だそうだ。部活が終わって帰宅した俺は、着いてすぐにある一室へ向かった。
「爺さん、俺だ。入ってもいいか?」
「…ああ、構わん。入ってこい。」
返事が来たので、俺は入ることにした。
ガラッ
「…ただいま。爺さん。」
「……おかえり、その様子だと、学校で何かあったようじゃな。」
「…やはり分かるのか?」
「ふ、お前さんは顔に出やすい。見れば大体の事は察しが付く。」
「相変わらずアンタは凄いな…。」
「…それで?何があった?」
「ああ、実は…。」
俺は今までの事を話した。部活で男バスに勝負を申し込まれたこと。負ければ女バスは廃部になるという事。そして新しいコーチが来たという事。部員のプライベートな問題に触れてしまって泣いてしまったこと。そのまま帰ってきたこと。それらを話し終えたとき、
「成程な…。それは確かに向こうも横暴だな。それで、お前はそのコーチとやらを信用しているのか?」
「…今のところはまだ判断材料が圧倒的に足りない。それにまだ初日だし、焦らずゆっくり見るさ。」
「…そうか。お前がそういうのなら、それが一番いいのだろう。」
「…それより、アンタの方はどうなんだ。その体、もう長くは保たないんだろう?」
「…ああ、日に日に弱っていくのが感じる。保って後一ヵ月と言った所か…。」
「…そうか。」
「なに、わしの事は心配するな。少なくともわしはまだ生きていられるんだ。その間にお前に残してやれるものは全て用意するつもりだ。」
「…ああ。何から何まで、すまない。…創玄爺さん。」
「…その名はもうお主にくれてやったわ。今のわしはただの老いぼれじゃ。」
「…そうだな。」
「…今はもう寝るといい。また明日、話をしようじゃないか。」
「ああ、分かった。…おやすみ。」
「おやすみ。」
そう言って俺は部屋を出た。・・・やはり、もう長くはないのか。俺は何も恩返しができてないのに、また俺は目の前で恩人を見殺しにするというのか。
「…クソッッッ!!!」ドンッ
分かっているはずなのに、俺にはどうしても割り切れない。どうして俺の大切な人は皆俺の目の前からいなくなり、結果的に俺しか残らないんだ。こんな世界、間違っている。だが、俺にはどうしようもない。俺はただの…
現実から逃げ出した、卑怯者に過ぎないのだから。
いかがでしたか?創玄が日本に来た詳しい理由とかもいずれ話すつもりですので、その時までお待ちください!それではまた次回~。