まあどうでもいい話はここまでにして、本編どうぞ!
金曜日の午後。授業も終わり、紗季たちは部活のために着替えていた。その間に俺は今日の部活用の練習メニューを見直していた。
「…取りあえずはこんなものでいいか。後は昴さんと細かいところを決めないとな。」
「おーいゲッソー!」
「遅くなってごめんなさいね。真帆が遊ばなければもう少し早く来れたんだけど…。」
「別にあたしは遊んで何かないし!」
「分かった分かった。喧嘩するな。それじゃ取り合えず、お前たちは柔軟体操をしておいてくれ。俺はちょっと用事があってな。」
「ん?ゲッソーどっか行くの?」
「ああ、昴さんを迎えに行こうかと思ってな。」
「すばるんを?」
「ああ、一応今日が最終日だし、俺が昴さんに事情を説明してみるよ。」
「そうね。そういう事は創玄に任せておいたほうがよさそう。じゃあ皆、私たちは柔軟体操をしましょうか。」
「オッケー!任せたよ、ゲッソー!」
「ああ、任せておいてくれ。」
今日昴さんを説得できなければ、俺たちの部活はほとんど廃部決定となってしまう。もしそうなれば、俺は退学覚悟で行動しなければならなくなる。そんなことが起きないように、頑張るしかないか…。
「…それにしても、昴さんは一体どこに行ったんだ…?」
今日もこの時間帯に昴さんは来ていると思ったが、まだ来てないのか…?
「…ん?あれは…。」
向こうの方で五人の少年達…もとい男バスの連中が昴さんを拘束して囲んでいた。
「あいつら、何をしているんだ?」
取り合えず行ってみるか…。
昴side
困ったな…。小学生相手に手をだす訳にもいかないし…。
「手紙で忠告はしたはずだぞ。」
「…。」
「何とか言えよ!」
どうするかな…。下手に怪我でもさせちゃ面倒だし…。
「…余裕こきやがって。後で謝っても手遅れだからな。」
「…ふん。どう手遅れになるか楽しみだよ。」
『……』
ふふん。大人の余裕を見せつけてやったぞ。さて、ここからどういう行動に出るかな?
「おいお前ら。こいつにションベンぶっかけるぞ。」
……はい?ちょちょちょちょ、
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
さ、最近の小学生はとんでもないこと考えやがる…!!取り合えず、何とかしないと…。
「待て待て!女バスのコーチなら今日で終わりだ!」
『……』
「マジで?」
「マジで。」
「じゃあ、もう試合の日まであいつらには関わらない?」
「…試合?」
「俺ら男バスとの対抗試合。アンタそのための臨時コーチなんだろ?」
一体何のことだ…?少なくとも、ミホ姉からは何も聞いてないし。
「…本当に何も知らねーのか。」
「なあ。真帆の話だとすごい選手なんだろ?だったら分かってくれるんじゃないか?」
「そうだな。…実は来週の日曜に試合。体育館の割り当てを懸けてるんだ。」
「割り当て?」
「あいつらが勝てば三日ずつのまま。けど俺らが勝てば男バスが毎日使えるようになる。」
「毎日…?じゃあ女バスは…。」
「廃部だ。」
そんな…。
「…なんだそれ。幾らなんでも可哀想だろ。」
「全然かわいそうじゃねえよ!!」
「!?」
な、なんだ?急に態度が…。
「…あのさ。俺たち去年、地区優勝したんだ。でも県大会は一回戦でボロ負け。」
地区優勝!?こいつら結構な実力があるんじゃないか…?
「死ぬほど悔しかったんだ。もっと練習しなきゃって思うくらいに。けどもう場所が余ってなかったんだ。後からできた女バスのせいでさ!」
女バスのせいで…。
「別に真面目にやってるならいいんだ。けどあいつら遊んでるだけじゃねえか!監督も女バスに時間譲ってくれるよう頼んだんだけど、美星が急に女子の味方し始めてさ。だから俺たちも真帆たちに時間と場所譲ってくれるように頼みに行ったらさ、神条の奴が邪魔したんだ!」
ミホ姉…。あのバカ、何勝手に決めてるんだよ…。ってちょっと待って。神条?
「なあ、その神条って、神条創玄の事か?」
「なんだ、アンタあいつの事知ってたのか?それでさ、あいつが俺たちの顧問を口で言い負かしちゃってさ。」
く、口で言い負かしたって…。創玄って、実はすごいんだな。
「とにかく、そういう訳で俺たちは女バスの奴らと試合で決着をつけることにしたんだ。」
「そういう事だったのか…。」
ようやく、真帆たちの行動の意味が分かった気がする。でも俺は…。
「…事情は分かった。でも、さっきも言った通り俺の役割は今日までだ。だからお前たちの試合には関わらないし関われない。」
「…ほんとに、あいつらにはもう関わらないんだな?」
「…ああ。」
「…良かった。」
この子達が何やら嬉しそうに話しているけど、俺は今自分の発言に対して後悔をしていた。
昴side終了
夏陽達が去ってから、俺は呆然としている昴さんの所へ向かった。
「こんにちは、昴さん。」
「....創玄。」
「...その様子だと、あいつらから事情は聞いたようですね。」
「!?...なんでその事を...。」
「この時期に男バスの連中に絡まれているとなると察しはつきます。」
「そっか....。」
「それで、昴さんはどうしますか?」
「どうするって...。」
「俺は女バスの皆を勝たせてあげたい。その為ならどんな汚れ仕事だろうとやってみます。」
「...創玄は凄いね。そこまではっきりと言えるなんて、とても小学生とは思えないよ。」
「...。」
「申し訳ないけど、俺はやっぱりこれ以上コーチをしてあげることは出来ない。」
「...分かりました。だったら、最後にしっかり女バスの皆に挨拶をしてあげてください。」
「うん...。」
「すみませんが、俺は美星先生に用があるので一緒に行くことは出来ません。」
「分かった。俺もけじめをつけてくるよ。」
「はい。それでは失礼します。」
そう言い残し、俺は昴さんを背に職員室へ歩き出した。
「(...やはり、危惧していた事が起きてしまったな。俺じゃもうこれ以上何かをすることはできん。後はあいつらに任せるとしよう。)」
昴side
創玄との会話を終えて、体育館の前に立っている俺は扉を開けることを躊躇していた。
「(やっぱり、まだあの子達のコーチをしてあげるべきなのかな...。)」
いや、このままずるずると引きずる方があの子達に失礼だ。そう思い、扉を開けた。
「あ、長谷川さん!」
智花が俺に気づいて声をかけた。それに反応して皆がこっちに集まっているのを見て、俺は決心が鈍るのを感じた。
「よかった。来てくれた!」
「…。」
「あの、コーチの事なんですけど、できればこの次も――」
これは、きついよ…。
「ごめん、俺には無理だ。」
「え…。」
彼女たち全員の顔が驚愕の色に染まった。
「さっき男バスの子たちから聞いたよ。試合のこと。」
「あ…。」
「俺には君たちを勝たせてやれるような指導は出来ない。今からでも他の方法を考えたほうがいい。」
「そんな…。」
「短い間だったけど、結構楽しかったよ。ありがとう。」
「すばるん!」
真帆が大声で俺を呼んだ。
「他の方法なんてないよ!あたし達にはもう、すばるんしかいないもん!」
「…真帆、ごめん。それに…、男バスの気持ちも分からなくはないんだ。」
「――!!」
真帆の顔に怒りと悲しみの感情が浮かんだ。
「ひどいよ…。」
「…ごめん。」
「長谷川さん!」
扉から出ようとした俺に智花が声をかけた。
「まだちょっと練習できますよね。最終日のコーチ、お願いします。」
振り返った俺の目に映った智花の顔は、何かを吹っ切ろうとしているように見えた。
「…分かった。」
それから重い雰囲気の中、最後の練習をした。
紗季side
練習が終わって長谷川さんが帰った後、皆とこれからの事について皆と話していた。
「終わっちゃったね…。どうしよっか、これから…。」
「……。」
「長谷川さんの作ってくれたメニューで頑張ってみるしかないと思う。」
「ねえ智花ちゃん。試合の延期って、できないのかな…。」
「間違いなく無理。絶対勝てると思ったから試合受けたんでしょ、あのカマキリ教師。」
「おー…。お兄ちゃん、もう来ない?」
「それはどうだろうな。」
ドアの向こうから創玄がこちらへ声をかけた。
「おー。そーげん、どこに行ってたの?」
「ああ、ちょっと美星先生とちょっとした作業をしていたんだ。」
「作業?」
「気にしなくていい。それより、今日の練習はどうだった?」
「…それは。」
皆言いづらそうにしている。私も、ちょっと言いづらいかも…。
「…いや、言わなくてもいい。お前たちの表情で何となく察しはつく。」
「……。」
「それで、昴さんはもう来ないと思うか?」
「来るよ!すばるんは絶対助けに来る!ムカついたけどみーたんが連れてきてくれた奴だから信じることにした!」
「…そうか。」
創玄は安心したように笑った。
「なら、早く帰って体を休めるんだ。俺はもう少し作業が残ってるから後で帰る。」
「さっきも言ってたけど、その作業って何なの?」
「それは、後のお楽しみだ。」
そう言った創玄は邪悪な笑みを浮かべていた…。
如何でしたか?久しぶりなのに短くてすいません‥。次はもう少し早く出せるよう頑張りたいと思います。それでは、また次回~。