そこにはいない筈の、見えない何かがそこかしこに蠢いている――
ここ最近各地で発生している器物損壊事件や行方不明事件の裏では、そんな噂がまことしやかに囁かれていた。
己の存在を確固たるものとすべく、不安定な虚像の怪物は、現実のあらゆるものを喰らい己に取り込む。
どこからともなく現れる幻影の如き戦士は、虚像の怪物を炙り出し人知れず打ち倒していく。

これは、そんな不可視の戦場で繰り広げられた戦いの一幕。

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拙者オリジナル仮面ライダー大好き侍!
最近ハーメルンでオリジナルライダーの波が来ててテンション上がってるので、私もなんだか血が騒いできたぜ!
でももう長編書くほどの熱はないぜ……

でも折角熱は再燃したので、短編という形で書いてアイデアを供養しようかなと思い書きました。
もしお時間がありましたら読んでやってください。


仮面ライダーヴィジョン

 うだるような暑さの中で雨が降る、いやにじめじめとした日のことだった。

 街の片隅に打ち捨てられたようにある人気のない廃工場では、ひっきりなしに雨音が辺りに響いていた。

 

 廃工場の一角に、一台のバイクが音もなく止まった。黒のフレームに青白いラインが走っている妙に目立った配色のバイクであるが、人気がない上に悪天候である為、誰かがこのバイクをこの場で目撃しているということはない。

 バイクから降りた青年は、ヘルメットをハンドルにかけ急ぎ足で廃工場の入口へと向かう。入口には雨よけの屋根があり、ひとまずそこで落ち着くが、大雨に晒された身体は既にびしょ濡れだった。

 

 バイクの目立ち具合に反して特徴らしい特徴の無い地味な青年は、ぶはくしょいと珍妙なくしゃみをした後、首から下げている金属製のケースについた水滴を軽く払い、予め身に付けていたであろうインカムで何やら通信を試みる。

 

「繁下さん。空木です。所定のポイントに着きました」

『おう、そっか』

 

 気の無い壮年の男の返事が青年の耳に飛び込んできた。

 何故か右手だけに嵌めている機械的なグローブを引っ張りながら、青年は通信に耳をすます。

 

『いやしかしヤだなあ今日の天気。こういうジメジメした空気ホント嫌いなんだよ。こんな日に外出る奴の気が知れねえわ』

「……それは俺への嫌味と受け取って良いですか」

『ジョーダンだよ怒るな』

 

 わずかに怒気を含んだ威圧の声も、飄々とした調子でかわされる。このやりとりも慣れたものなのか、青年もため息をついてから、目の前に立ち塞がる廃工場のガラス張りの自動ドアを見やった。

 

「で。ここにエイドロンの反応があったんですよね? どこから中に侵入できますかね」

『今、透がいるのは廃工場本社の入口んトコだろ? そこそこデカイ反応があったのはそこじゃなくて、その側にある倉庫の方だな』

 

 青年――空木透(ウツギ・トオル)は、繁下の言葉を聞いて、くるりと身体を半回転させる。大雨の中で掠れた光景の奥には、本社の建物以上に寂れた様相の倉庫が鎮座しているのが見えた。

 目的地である倉庫への移動の際に再びずぶ濡れになることに抵抗があるのか、はたまた別の懸念があるのか、あるいは両方なのか、透の表情は僅かに引きつっていた。

 

「倉庫、意外と大きいですね……」

『おう。中の廃材とか色々喰って成長してる可能性が大いにあり得る』

「反応ってどんなモンでしたっけ」

『そこそこの中型か、ザコが何体か群れてるか、だな。ドライバーで見てみないと正確には分からんな』

「どっちにしたって面倒なヤツじゃないですか。絶対ミラージュの二人と協力する案件でしょこれ」

『あんな邪魔ばっかする奴ら頼りなさんな! 透は出来る子! 頑張れ!』

 

 透は観念した様子で大雨の中を飛び出し、倉庫へと一直線で走り出す。本社の側というだけあって距離的には近いものであったが、こう大雨の中では距離がどうであれ濡れることには変わりないからか、半ばヤケになっている様子だった。

 ここへバイクで来ている時点で既にずぶ濡れである為、その行動も意味を成していないという野暮なツッコミを入れる者は、残念ながらいない。

 

 倉庫の入口へ辿り着いた透は、その錆びついた扉のドアノブに手を伸ばす。当然ながら鍵がかかっているようで、ガチャガチャと音を立てるだけで扉が開く様子はなかった。

 

「開きませんけど」

『けど、反応はここから出てる。連中がどこからか侵入したのは間違いねーぞ』

「雨に濡られながらそれ探せっていうんですか……」

『もう充分ずぶ濡れだろうし、そんなん大差ねえだろ!』

 

 カッカッと笑う繁下の声に僅かに顔を引きつらせながら、しかし抵抗している暇もないので透は雨に打ち付けられながら倉庫の周りをぐるりと移動する。幸いにもそう時間はかからず、倉庫の壁に人一人が入れるような穴が穿たれているのを見つけた。

 中腰になりながら透はその穴を潜り抜ける。倉庫は既に電気は通っていないようで、外も大雨で日中にしては薄暗いこともあり、倉庫の中は非常に暗かった。暗闇に目が慣れるのを待って、透は恐る恐る足を踏み出す。

 人の、生物の気配はない。外の雨音がひっきりなしに響いていることもあって音を頼りにするのは難しく、悪路に足を取られないように慎重に進むしかない。

 何度かずっこけながらも無事に廊下を抜け、奥行きのある広い空間へと辿り着いた。元々はこの空間が倉庫としての役割を最大限に活用していたのだろうが、多くの棚が倒れており、棚に収まっていたであろう小物類の数々が辺りに散らばっている。用途は不明だが工場で用いていたであろう機材と思しきものも見られる。

 

 透はその一室に一歩踏み出そうとして、ふと足が止まる。散乱している数々の物品の一部が不自然に文字通り欠けているのが見られた。木製の棚であれば、倒れた衝撃で割れたのかと説明がつくかもしれないが、立ったままの金属製の棚の端がすっぽりと欠けている。先ほど見つけた機材もしっかり形状は保っているかと思いきや、何やら一部分だけ綺麗に欠けており、内部の配線やらが露出していた。

 透の身体に緊張が走る。バイクに乗っている時から身体に下げていたケースを開け、中に収まっていたものを取り出す。

 

 一見すれば、それはただのデジタル一眼レフカメラだった。黒いフレームに青白いラインが走ったデザインは、先ほど透が乗っていたバイクと同じ配色だ。既にカメラは起動しているようで、 透はファインダーを覗きながらカメラ越しに辺りを見渡す。

 すると、室内の隅で何やら蠢くものが見えた。

 

 ファインダーから目を離し、肉眼でそこを確認する。室内の隅は当然行き止まりとなっており、錆び付いた壁が立ちふさがっているだけで、あとは倉庫の物品が散らばっている様子しか見えない。

 再びカメラを構えてファインダーを覗き込み、改めてその場所を確認する。薄暗くてハッキリとは分からないが、やはり人の形に似た何かが二、三体ほど固まってモゾモゾと動いているのが見えた。

 

「繁下さん、いました。エイドロンが三体です」

 

 間髪入れず、透はカメラのシャッターを切った。

 フラッシュが炊かれ、一瞬だけ倉庫内が照らされる。その後、肉眼では何もなかった場所が焼きつくように色付き、段々と形を成していった。その形はやがて、カメラ越しに見えた蠢く物体の姿となる。

 

『ああ、今画像を確認した。こりゃここにいてから随分経ってんだろうな、こいつらだいぶ成長してやがる。特にその手前の……』

「蜘蛛」

 

 蠢いていた物体は、およそ現実ではいる筈のない怪物の姿を持っていた。何やら生物らしき意匠は持っているものの、その身体はツギハギしたように不恰好なもので、身体の所々は色がなく不完全な印象を受けた。

 シャッターの音を聞いて、中でも人間の身体に近い姿を持った蜘蛛のような怪物が振り返る。他の二体の怪物よりも身体が彩られているそいつは、透の姿を見て気味の悪い呻き声を漏らしながら、ゆっくり近付いてくる。他の二体は特にシャッターの音に気にした様子もなく――気にする暇もないのだろうか――辺りに散らばっている物体を一つ一つ喰らっていた。咀嚼しているようにも見えるが音は響かず、しかし喰らう度に色のない身体の箇所が段々と色付いてくる。

 再びカメラのシャッターを切って、その画像を繁下の方へと送信する。現状まともに動ける怪物は一体だけなのだと、透はその様子を見て判断した。

 

『そいつ一体に時間かけんなよ。他二体が成長する時間を与えんな』

「了解」

 

 透は端的に返すと、首から下げていたケースを放り投げ、構えていたカメラを己の腹部にあてがった。するとカメラの端からバンドが飛び出し、透の腰を一周してカメラの反対側の端へと接続する。一瞬にして、カメラをバックル部としたベルトと化していた。

 

 ヴィジョンドライバー。

 これがこのデジタル一眼レフカメラの本来の名である。

 

 続けて透は、ポケットから名刺サイズほどの何かを摘まみ取った。青白いラインが走った金属製の四角いフレームで覆われており、フレームの内部にはネガフィルムのようなものが収まっている。さながら非常に小さいコンパクトなフォトフレームのようなものである。

 透は右手に身に付けた機械的なグローブを胸の前に持ってきて、その手の甲の辺りに据え付けられたスリットへ先ほどのフレームを挿入する。握りしめていた右手を開くと、グローブで覆われた右掌には青白く“影”の一文字が刻まれていた。

 次いでグローブで覆われた右手で、腰に装着されたヴィジョンドライバーのレンズを覆うように掴む。そのままレンズのフォーカスリングを右に90度回転させた。

 

【Focus・Shadow Flame】

 

 ヴィジョンドライバーから電子音声がアナウンスされる。透がドライバーから手を離した時には、彼の眼前には“影”の一文字がドライバーから投影されていた。青白い文字で虚空に刻まれたそれは、さながら鬼火の如くゆらゆらと揺れている。

 突然宙に現れた文字に怪物は気を取られたようで、ゆっくり歩み寄っていたその足を止める。

 その隙に透は、すかさずドライバーのシャッターを切った。

 

【Insight Shadow!】

「変身」

 

 瞬間、ドライバーのレンズから透の身体を覆うように、青白い光の枠が広がり現れた。先程グローブへと挿入したフレームに似たものであり、側から見ればさながらフォトフレームに収まる青年の写真、といった様相であった。

 透は胸の前で両腕を交差する。次いで左腕を腰へと動かし、グローブを身に付けている右腕を突き出して、掌を虚空に刻まれた文字へと向けた。すると虚空に浮かぶ“影”の文字が、枠に収まる透へと向かい、彼の右掌に刻まれている同じ文字へ重なる。すると、石を投じて揺らいだ水面の如く透の身体がぼやけ始め、別の姿が見え隠れしだした。

 右腕を振り払うと同時に広がっていた枠が一気に収束し、ドライバーのレンズへと収まる。その過程で透の姿は、ぼやけて見えた別の姿がへと文字通り変身していた。

 

 黒いアンダーウェアの上を覆う漆黒のプロテクター。闇夜に溶けて消えてしまいそうなその姿には青白いラインが走っており、薄暗い倉庫内の中でぼんやりと光って見える。

 変身前に右手を覆っていたグローブは、変身により更に堅牢なプロテクターに覆われ、その鋭角的かつ硬質的なプロテクターは右肩まで続き右腕全体を守っている。対する左腕が簡素なプロテクターに覆われていることもあり、左右非対称なシルエットを生み出していた。

 

【消え行くシャドウ!  揺らめくヴィジョン!】

 

 変身シークエンスが無事完了したことでヴィジョンドライバーが認証を終え、鋭く青白い複眼がギラリと輝いた。

 

 これぞ不可視の異形の怪物・エイドロンに立ち向かう幻影の如き戦士。

 仮面ライダーヴィジョン・シャドウフレーム。

 

 透の変身を見て、蜘蛛を模した怪物・スパイダーエイドロンは奇妙な呻き声を上げながら臨戦態勢を取る。ヴィジョンへと変身した透も、既にプロテクターと一体化したグローブを引っ張るような仕草をしながら、スパイダーへと接近した。

 接近に対してスパイダーはカウンターとして右の拳をヴィジョンの顔面目掛けて振りかぶる。しかしすんでの所で身体を逸らしてパンチをかわし、ヴィジョンは逸らした体勢から一気に身体を捻りパンチをスパイダーの腹へと見舞う。鈍い音が響き、形容しがたい声でスパイダーは呻きながら、ヨロヨロと後退した。しかしスパイダー三歩ほど下がったところで、ヴィジョンの虚を突くように一気に駆け出し二発三発と連続でパンチを浴びせようとする。

 だが、その攻撃はヴィジョンへと当たっている筈だというのに手応えがない。ほんの少しヴィジョンの身体にノイズが走っており、スパイダーの拳はその身体を突き抜けて当たっている様子がない。さながら幻影(ヴィジョン)そのものを相手にしているようだった。

 事実ヴィジョンは自身の力によって、残像を残しつつほんの少しだけ身体を逸らすことで、最小限の動きで攻撃をかわしつつ、同時に幻影による幻惑で相手を疲弊させているのだった。

 困惑するスパイダーを尻目にヴィジョンはそのまま詰め寄り、スパイダーの腹へと二発、三発とジャブを浴びせる。スパイダーは攻撃を受けながらも両腕を交差して防御体勢を取るが、構わずヴィジョンは交差された腕を目掛けハイキックを繰り出し、スパイダーの身体を吹っ飛ばした。

 相手が倒れた隙にヴィジョンはすぐさま追撃を仕掛けようと前へと出る。しかし寸での所で彼は足を止めた。

 通常の視界では、薄暗く周囲を視認するのも困難なこの場所。しかしヴィジョンの仮面は周囲の状況を解析し、鮮明な映像として透の視界に示していた。

 

 罠のごとく仕掛けられた無数の糸が、彼の前方に広がっていた。

 

 薄暗いこの状況を利用し、かつ視認されづらい細い糸である。明らかな罠であることは明白であった。スパイダーが吹っ飛んだ際に多少は糸が乱れていたものの、それは相手にとって瑣末なことであるのは理解していた。

 非常に粘着性の強い、拘束用の糸。ヴィジョンの目を通しても気付きづらい程の細さでありながら、トラップとして機能する程のものだ。

 

『あっぶねえなよく気付いたな透! そういや以前同じタイプのエイドロンにしてやられたっけな?』

「前みたいにボコボコにされるのはヤですからね」

 

 ヴィジョンの視界は通信先の繁下にもモニターされているのか、野次を飛ばしている彼に対し安堵の声を漏らしながら、透はドライバーのシャッターを切った。

 ヴィジョンのマスクから映る光景は、ヴィジョンドライバーのレンズから映る光景も共有されている。ドライバーのシャッターを切った瞬間、レンズの先に焦点を合わせていた箇所――即ちスパイダーの後方に、青白い枠が現れた。

 

【Shadow Slide!】

 

 ドライバーの認証と同時に、ヴィジョンの姿が揺らめき、そのまま掻き消えた。

 相手が罠にかかるのを倒れながら待っていたスパイダーは、唐突に姿が消えたヴィジョンを見て動揺したように立ち上がる。スパイダーの視界も薄暗い中でも良好なものを維持しているが、その視界をもってしてもヴィジョンの消え方はあまりに不可解であった。

 警戒し、辺りを見回す。一体どこへ隠れたのか――背後を見やり、姿がないことを確認して再び前方を見る。

 その瞬間、スパイダーの背後から青白い枠が現れ、後から続いてヴィジョンの姿も飛び出してきた。

 

「っらあ!!」

 

 ヴィジョンの声が聞こえ振り返ったスパイダーの顔に、漆黒の拳が飛び込んできた。

 予想もしていなかった所から現れたこともあり、受け身を取る間もなくスパイダーの身体は呆気なく吹っ飛ばされる。

 

 これぞヴィジョンの基本形態・シャドウフレームの力。短時間ではあるが相手の視界から消え、死角からの強襲を狙う固有能力・シャドウスライド。

 幻影(ヴィジョン)の名を体現したこの力での撹乱・奇襲による徒手空拳のスタイルがシャドウフレームの真骨頂である。

 

 吹っ飛ばされたスパイダーよろめきながらも立ち上がり、一度この場から離れようと考えたのか足を踏み出し――何やら自分の身体が動かないことに気付いた。

 大きなダメージは受けたが、四肢に何らかの異常がある訳でもない。何か、見えないものに身体を掴まれているような、そんな感覚。

 

 当然ヴィジョンには、その様子が鮮明に見えている。スパイダーが、自身の仕掛けた罠である糸に拘束されている姿が。

 自ら仕掛けた罠にまともに突っ込んでしまったこともあり、己自身が身動きが取れなくなってしまうという珍妙な事態になってしまった。

 

 あまりに間抜けな光景に、モニター越しで見て爆笑している繁下の声が耳へと殺到するものの、顔面を仮面で覆っている以上は耳を塞ぐこともできず喧しくて仕方ない。

 仮面の下で顔を顰めながらも、透は右手でドライバーのレンズを覆うように掴み、フォーカスリングを元の位置に回転させた後、すぐさま再び右に90度回転させる。

 

【Strike Focus!】

 

 電子音声のアナウンスと同時に、ヴィジョンの全身に走る青白いラインが一際強く輝きだした。青白いラインの光はエネルギーが流動しているように脈打ち、右足へと向かっている。膨大なエネルギーが一箇所に集中していることもあり、バチバチと音を立てながら右足の輝きが増していった。

 右足の輝きが最高潮になったのを確認し、透はドライバーのシャッターを切ると同時に駆け出した。

 

【Zooming Break!】

 

 電子音声が響くや否や、ヴィジョンはすぐさまジャンプし右足蹴りの体勢に入る。飛び蹴りを繰り出すにはまだ少々スパイダーとの距離があり、どう見ても届くかない筈だったが、ヴィジョンの身体が青白く輝くと同時に、さながらカメラの焦点がズームされるかの如く、一気にヴィジョンの蹴りがスパイダーの眼前に迫った。

 

「つぁああああああああ!!」

 

 拘束されているスパイダーが抵抗する間もなく、ヴィジョンの必殺の一撃・ヴィジョンストライクが炸裂する。拘束する糸が一気に引きちぎられ、スパイダーの身体は後方へと吹っ飛び――床を転がる前に、己に受けた膨大なエネルギーを受け、ボンと大きな音を立てながら爆散した。

 爆発跡に名刺程度のサイズの長方形の物体――透が変身に用いた物に似たデバイスである――が音を立てながら転がる。しかしすぐさま、それさえも破裂し粉々に散っていった。同時に、粉々の残骸から何やら光の塊がいくつも浮かび上がり、周囲へと殺到し散らばっていく。倉庫の不自然に一部分だけが欠けていた備品や機械に光が触れると、欠けていた箇所があっという間に元どおりになっていた。

 

「……イデアフレームの破壊を確認。まずは一体ですね」

『よーし後はそんな育ってねえザコ二体だ。こりゃ早めに任務終わりそうだな』

 

 気の抜けた繁下の返事に感化され、ゆったりと力を抜くヴィジョン。丁度自身の背後にあたる部屋の隅で、残り二枚のエイドロンがいることを思い出しゆっくり振り返った。

 

 エイドロンとは、あらゆる事象の力を擬似的に再現するデバイス・イデアフレームが暴走した成れの果て。

 物体や概念といった事象を場所を問わず手軽に再現することを目指し、イデアフレームの研究・開発が進む中で、唯一生物の事象が封じられたそれらが独自の意思を持ち始め、ある時を境に一斉に暴走し各地へ散らばった。

 彼等はエイドロンを名乗り、虚構の存在から現実の存在へと昇華すべく、現実のあらゆる物体を喰らい完全体へと目指していると言われている。

 

 今この場にいる残されたエイドロンも、例外なく生物型。まだ完全体には程遠く色付いていないものであったが、それぞれ蝙蝠と蛇のような意匠を持ったものであることを確認している。

 その内の蛇型のエイドロンが、蝙蝠型のエイドロンを喰らっているのを見た。

 

「なっ……!?」

『おい嘘だろ。同族を喰ってやがるのか!?』

 

 現実のあらゆる物体を喰らい己の実体を得るエイドロン。

 同じ虚構の存在であるエイドロンを喰らうという前例は彼等には聞いたことがなかった。

 音もなく咀嚼していることもあり、気付いた時には既に蛇型のエイドロンが蝙蝠型の方を喰らい終わったところであった。

 蛇型も蝙蝠型も元となった動物に近い姿を持っていたが、蛇型の方はさながら外国で生息しているような大きな個体である。その同胞を食らった怪物――スネークエイドロンの姿にノイズが走り始め、徐々に変化が始まった。

 

 その姿がより肥大化し巨大なものに、かつ背中から蝙蝠にも似た翼が生え始める。所々身体から抜け落ちていた色も、ほぼ全身がツギハギされたように彩られる。色に統一性はないが、この廃工場にある備品や物体を喰らってきたからか、全体的に迷彩色じみた色合いとなっていた。

 

 蝙蝠の翼を持った大蛇。

 まさに合成獣の如き姿へと変容したエイドロンは、大きな口を開けながらヴィジョンへと飛びかかった。

 咄嗟にヴィジョンは真横にあった棚の列へと転がり込んで攻撃をかわす。しかしエイドロンの突撃は周囲の棚をも薙ぎ倒していき、ヴィジョンは倒れた棚の下敷きとなってしまった。ぐえっという情けない悲鳴も、ガタガタ倒れる棚の音に塗り潰される。倉庫自体使われなくなってから長いこと経っていたようで、棚が倒れた衝撃で周囲に埃が舞った。

 

『おいおいおい聞いてないぞ!? 他のエイドロンを喰ってパワーアップなんて出来るのかよ!』

「オペレーターの繁下さんも知らないなんて、よっぽどのことなんですね……」

 

 倒れた棚の群れの中からヨロヨロと立ち上がるヴィジョンは、呻きながらも先ほどの攻撃の主を見据える。さながらキメラエイドロンとも呼べるそいつは、己から新たに生えた翼を広げ、その巨軀に反して軽快に飛んでいた。さながらその様子は竜の如く。

 宙を泳ぐキメラエイドロンに対し、現状徒手空拳以外の攻撃手段を持たないヴィジョンは攻めあぐねていた。飛行手段の持たないヴィジョンにとって、この状況は非常に分が悪い。

 

「屋外に出るか……!?」

 

 いやダメだ、とヴィジョンは首を横に振る。あれほどの大型のエイドロンが外に出てしまったら被害の拡大が懸念される上、何より外でこれ以上何か厄介な物を喰らってしまったら、手のつけられない大物と化してしまう。

 なんとしてもこの倉庫内で倒すしかない。けどどうやって――逡巡するヴィジョンを尻目に、キメラエイドロンは牙をギラつかせながら再び突っ込んできた。アレに食われたらひとたまりもないと、ヴィジョンは咄嗟に飛び退く。しかしキメラエイドロンは一気にぐるりと旋回し、その勢いで振るった己の尾をヴィジョンに打ち付けた。

 リーチを己の身体で埋めたことで不意を打ち、勢い良くヒットしたことでヴィジョンの身体は大きく吹っ飛ぶ。壁に打ち付けられ倒れたヴィジョンの身体は、倒れている棚の群れに隠れた。

 

『透、持ち堪えろ。今ミラージュの連中に応援を要請した』

 

 ゲホゲホとむせ返るヴィジョンの耳に、いつになく真剣味を帯びた繁下の声が届く。

 

『もう少し時間を稼げば応援が来る。なんとかなりそうか?』

「……無茶言いますね」

 

 棚に身を隠しつつ、息も絶え絶えに応えるヴィジョン。

 しかしその声色には、まだ諦めが混じった様子はない。

 

「でも、突破口が少し見えました。彼等が来る前に片付けてみますよ」

『え、は?』

「多少無茶しますけど、勘弁してくださいね」

 

 困惑する繁下を尻目に、ヴィジョンはドライバーのフォーカスレンズの位置を元の位置に回転し、右手に挿入していたフレームを取り出した。

 彼が変身に用いていたそれも、エイドロンの核となるものと同じイデアフレームである。仮面ライダーヴィジョンの――ヴィジョンシステムの根幹として調整されたソレは、安全性が確保されたものであると同時に、暴走しているエイドロンの核であるフレームを破壊できる唯一のデバイスだ。

 次いでドライバーの左腰に設けられた長方形のホルダーを展開する。中にはいくつかのイデアフレームが収納されており、その中の一つを摘み取った。

 変身時に用いたシャドウフレームとは違い、橙色のラインが刻まれたフレームである。ソレを右手のスリットに挿入すると、右掌に橙色の“陽”の字が刻まれた。

 そして変身時と同様に、右手でドライバーのレンズを覆うように掴み、フォーカスリングを右に90度回転させた。

 

【Focus・Haze Flame】

 

 電子音声が鳴り響いたのを聞いてか、キメラエイドロンがその音を頼りに思い切り突っ込んできた。ヴィジョンも当然それを分かっていたのか、飛び退くようにしてその場を離れる。どんがらがっしゃんと音を立て、ヴィジョンが元いた場所はキメラエイドロンの突進によって吹っ飛んでいた。

 体勢を立て直しつつ、眼前にドライバーから投影される“陽”の一文字を確認する。倉庫内の残骸を撒き散らしながら顔を上げたエイドロンはまたもヴィジョンへと顔を向け――そのヴィジョンが、橙色のフレームに囲まれているのを見た。

 

【Insight Haze!】

 

 ヴィジョンは右腕を突き出し、掌を虚空に刻まれた文字へと向ける。“陽”の文字はフレームに収まるヴィジョンへと向かい、右掌に刻まれる同じ文字へと重なった。すると、石を投じて揺らいだ水面の如くヴィジョンの身体がぼやけ始め、同時にヴィジョンの身体を走る水色のラインが橙色に変化した。

 右腕を振り払うと同時に広がっていた枠が一気に収束し、ドライバーのレンズへと収まる。同時に、ヴィジョンの姿が大きく変わった。

 

 黒いアンダーウェアを覆うプロテクターは橙色に染まり、プロテクターの形状も鋭角なものからマッシブな、より防御力に秀でた形状になっていた。右腕を覆うプロテクターもより堅牢な形状へと変化しており、熱を発するかの如くぼんやりと輝いている。

 漆黒のシャープな仮面も橙色の堅牢なアーマーに覆われ、幻影の名の印象を大きく変えた。

 

【赤熱のヘイズ! 斬り断つヴィジョン!】

 

 電子音声のアナウンスと同時に、右掌に浮かぶ“陽”の文字が一際強く輝く。掌から橙色の光の筋が伸び、複雑な幾何学模様を描いた。ヴィジョンがその細長い幾何学模様を掴むと、その光は質量を持った物体へと実体化された。

 橙色の刀身を持った長剣である。

 柄に当たる箇所にカメラのレンズのようなパーツが備えられているその長剣は、非常に強い熱を発しているようで剣身がゆらゆらと揺らいでいた。

 

 仮面ライダーヴィジョン・ヘイズフレーム。

 ヴィジョンシステムの能力拡張による派生形態の一つである。

 

 キメラエイドロンはヴィジョンの姿が変わったことにも意に介さず、牙を剥き出しにしながら突っ込んできた。しかしヴィジョンは回避する素振りもせずに仁王立ちのまま――キメラエイドロンの大きな口がヴィジョンの身体を捉えるその寸前、ヴィジョンはドライバーのシャッターを切っていた。

 

【Heat Haze!】

 

 ガッ! と大きな音を立てながらキメラエイドロンの牙が突き立てられた。

 しかしながらヘイズフレームの装甲は非常に強固なものとなっているようで、その牙の先が装甲に食い込んでいる様子は無い。とはいえその衝撃は大きなものだったのか、ヴィジョンの仮面の奥から透の呻く声が漏れていた。

 装甲に傷一つないとはいえ、キメラエイドロンは牙を離すそぶりも見せない。むしろその強固な装甲すら食い付くさんと、その牙にかける力を更に加えていた。

 

 その瞬間、ヴィジョンの全身から超高温の熱波が放出された。

 

 口内に強烈な熱が当てられ、キメラエイドロンは奇声を上げながらのたうち回る。バタバタと暴れ回る衝撃で周囲の倉庫の備品が倒れ吹っ飛ぶ中、高熱を発し続けるヴィジョンは変わらず仁王立ちのままである。しかし、突如として長剣・ヘイズブレードを構えながら駆け出し、キメラエイドロンに向けて大きく刃を振るった。

 その瞬間は、丁度キメラエイドロンがもんどりうって暴れている中で、背中をヴィジョンの方へと向けていた時である。高温に熱されているヘイズブレードは、キメラエイドロンの背から生えていた蝙蝠の両翼を斬り裂いた。

 

 高熱の刃で斬り裂かれた痛みで、またも大きな奇声を上げるキメラエイドロン。ヴィジョンは二度、三度と袈裟斬りを繰り返し、右足を蹴り上げてキメラエイドロンの身体を大きく吹っ飛ばし、再びヘイズブレードの剣先前方に向け構えた。

 壁に激突したキメラエイドロンは口内と背中へのダメージで未だにのたうち回っており、その身体が倉庫の壁に激突していることもあって、ミシミシと嫌な音を立てながら倉庫が揺れている。壁にも亀裂が入り始め、そろそろこの部屋が崩れ落ちても仕方ない状況になりつつあった。

 当のキメラエイドロンの翼は段々と再生しつつあるようにも見えるが、高熱による切断によって傷口が塞がれているのか、再生は非常にゆっくりなものであり、時間がかかりそうであることをヴィジョンは遠目で確認した。

 

『……透おっ前、そんな無茶しでかしやがって、ヘイズの高熱はそういう用途じゃ』

「まあまあまあ、なんとかうまくいきましたし、お説教は後にしてくださいよ。何せ……」

 

 いててと声を漏らしつつ左手で先程噛まれた箇所を掻きながらも、油断なくキメラエイドロンを見据えるヴィジョン。

 ひょいと、右手で持っていたヘイズブレードを左手に持ち替える。次いで、ヘイズブレードに備えられているカメラのレンズのようなパーツを右掌で覆い、そのフォーカスレンズを右に90度回転させ、すぐさま元の位置へと戻した。

 

「今がシャッターチャンスなんですから」

【Slash Focus!】

 

 またもひょいとヘイズブレードを右手に持ち替え、左手の指先でヘイズブレードの剣身をなぞった。すると、そのなぞった指に沿うように剣身がより強い光と熱を発する。同時にヴィジョンの全身に走る橙色のラインが一際強く輝き出し、再び強烈な高熱が全身から発せられた。

 ヴィジョンの様相に気付いたエイドロンは、己のダメージを堪えながら立ち向かうが、その高熱にあてられ身体が竦んでしまう。何より、ヴィジョンの身体がさながら陽炎の如くゆらゆらと揺れ、まるで相手がそこにいるような現実感が薄い。ヴィジョンが近付いたり遠ざかったり、その輪郭さえも捉えるのが困難なその光景は、さながら陽炎を間近で見ているような――。

 

 ざん、と音が響いた。

 

 いつの間にやらヴィジョンはキメラエイドロンの目の前に立ち、その首を目掛けてヘイズブレードを振り上げていたのだった。

 ヘイズブレードはその首を容易く斬り裂く。キメラエイドロンの首が飛び、首が床に転がる前に、残された身体が必殺の一撃に耐えきれずに大きな音を立てながら爆散した。

 爆発跡にキメラエイドロンのものと思しきイデアフレームが二つ転がる。エイドロンの消滅によりそれらも破裂して粉々に散り、その残骸からこれまでエイドロンが喰らっていたであろう物体が光の塊として解放され、周囲へと殺到し散らばっていった。

 

 これにて一件落着。と終わらせるにしては、予想以上にヴィジョンは疲弊していた。

 エイドロンが同胞を喰らい、あまつさえパワーアップを果たすという予想もしていなかった展開。透がヴィジョンとして戦い始めてから暫く経っていたが、こんなことは初めてであった。

 最後まで気を抜けず、肉体的にも精神的にも疲弊した今回、“組織”に対しても報告することが山積みだ――憂鬱な気持ちで変身を解こうとしたその瞬間。

 

 ミシミシミシ、と嫌な音が響いた。

 パラパラパラ、と天井から埃や破片が散らばり落ちた。

 

「……やべ」

 

 キメラエイドロンが暴れまわったことにより、崩壊の危機にあった古びた倉庫の一室は、先ほどの爆発による衝撃で限界をとうに超えていた。

 

「ちょっと待って生き埋めはかんべ」

 

 ガラガラガラ、と音を立てながら天井が崩れ落ち、疲れ切っていたヴィジョンは成すすべもなく瓦礫の下敷きになってしまった。

 

 

****

 

 

 いつのまにか雨は止み、雲から日差しが覗き込んでいた。

 廃工場の一角に、一台のバイクが音もなく止まった。真っ白なそのバイクに跨っていた青年はヘルメットをハンドルにかけ、口笛を吹きながら廃工場の敷地へと入っていく。青年の右手には、透のものと似た機械的なグローブが身に付けられていた。

 髪を金色に染めているどこか軽薄そうな青年は、軽やかな足取りで歩みを進めていく。やがて青年の前に、一部が倒壊した廃倉庫が現れた。

 一転して、青年の表情に面倒臭そうな色が浮かぶ。

 

「ちょっとハゲ下コラ」

『誰がハゲ下だ捻り潰すぞクソガキ』

 

 青年が身に付けているインカムから、若干キレ気味の繁下の声が聞こえてきた。

 意に介さず、青年はグチグチと続ける。

 

「奇妙なエイドロンに苦戦してるって聞くから加勢しに来たってのに、なんだよこれ。オレ宝探しに来たんじゃないんだけど」

『うるせーボケ! 通信は切断されてるし透がどこに埋まってるか分かりゃしねえんだはよ探せ!!』

「雑用するだなんて聞いてないんだけどな……」

 

 ぶつくさ言いながらも、青年は倒壊した箇所へと近付き、しかし瓦礫をどかすといったことはせずに声を張り上げる。

 

「おーい透クンー」

 

 しかし覇気のない声である。

 やる気あるのかボケコラァ! と繁下の罵声が青年の耳につんざくが、青年は顔をしかめながらも手元にデバイスを用意していた。

 ビデオカメラである。

 ハンディタイプである真っ白なカラーリングのソレを構え、ディスプレイを展開して瓦礫の山をビデオカメラ越しにざっと見やる。展開されているディスプレイはそのままの様子を映し出している訳ではなく、サーモグラフィーとして瓦礫の山の熱分布を示していた。

 ぼんやりサーモグラフィーを通して辺りを見回してみると、瓦礫の山の中で、明らかに真っ赤になっている箇所が一つ見つかった。

 

「うわ、あそこか」

 

 青年は足場の悪い瓦礫の上をひょいひょいと跳ねながら進み、真っ赤に熱源を示す箇所へと辿り着いた。

 幸い、その箇所は他に比べて瓦礫が積み重なっている量が少ない。

 

 この量ならと、青年はその場にしゃがんでから、ようやく大きく声を張り上げた。

 

「おーい! 透クンー!」

 

 さっきと一緒じゃねーか! と繁下の罵声が青年の耳につんざくが、先程とは違って青年の持つビデオカメラのディスプレイが違う画面を示していた。

 ビデオカメラが強引にヴィジョンドライバーに同期・接続し、簡易的な通信回線を開いた。その結果、青年の声がダイレクトに透の耳へと届いたのだった。

 結果、先程と違い今度は明確なリアクションが見受けられた。ぴくり、と瓦礫が僅かに動いたのだ。

 青年は僅かに口角を上げその様子を見た。

 

 瓦礫の下から何か力が加わる。その一点の箇所の瓦礫が盛り上がり、周辺の細かい瓦礫がバラバラと転がっていく。

 そして二拍ほど間を置いて、

 

「うおおおおおおおお!?」

 

 瓦礫を吹っ飛ばしながら、珍妙な声と共にヴィジョンの上半身が生えてきた。

 ぜえぜえ、と肩で息を吸うヴィジョンの様子を見て、青年はニヤリと笑って器用に瓦礫の上に立ち上がる。

 

「やあ透クン。生きてたね」

「桐島さん……! ありがとう、起こしてくれて助かったよ」

 

 桐島と呼ばれた青年はなおも不敵な笑みを浮かべ、ヴィジョンに向けて手を差し伸べる――

 

「あれ」

 

 わけでもなく、その場でくるりと背を向け、軽やかに瓦礫の上を渡りながらヴィジョンから離れていった。

 当然ながら、ヴィジョンは下半身が埋まったままなので動きようがない。

 

「……いやあの、桐島さん? 俺まだ下半身埋まってるんだけど? 助けに来てくれたんじゃ」

「オレ、ハゲ下に透クンを“探せ”〜としか言われてないから」

 

 それに今晩デートで忙しいんだよね〜、とだけ残して、桐島は何やらウキウキした様子でこの場を去っていった。

 そのデートとやらが本当に楽しみだそうで、彼は一度でも振り返ることもなくヴィジョンを放置していった。

 

「……ええええぇ」

 

 この後別の助けが来るまで、ヴィジョンは暫くこの瓦礫の山に生えていることとなった。

 青空が広がり始めた、夏の暑さが身に染みる日のことだった。



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