衛宮士郎が大真面目に存在が不真面目なサーヴァントを呼ぶようです   作:融合好き

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久々なので初投稿です。


自己変革:A

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悩み──ですか。それはありますよ。ええ、ありまくりですとも。ふとした拍子に命を拾って、それから実に60年──実質一年にも満たない期間しか活動していない貴女にはイメージがしにくいかもしれませんが、その月日は決して短い期間ではなく、優柔不断だった私の選ぶべき道が決定するくらいには長大な時間だったと言えるでしょう」

 

穏やかな口調で告げる彼に、言葉ほどの苦悩は感じられない。語る内容は、間違いなく彼にとっての一大事であるはずなのに、彼はそれをまるで人ごとのように語る。

 

「ですが──それでも我が心のうちに秘めた悩み事は、いつまでも晴れることはありませんでした。何かを決めるのは、何かを切り捨てるということ。そうなると必然、切り捨てたことに対して後悔や恐怖が付き纏い、それは己を苛む毒になる」

 

例の如く、会話に至ったその経緯はよく覚えていない。加えて今回の場合は、二人きりであったかどうかも怪しい。正しく成長した私が側にいて、彼女に対する嫌味としていったのかもしれないし、単なる気まぐれだったのかもしれない。

 

でも、何かしら心を病む出来事があった。それだけは覚えている。じくじくと積み重なる痛みは、いつまでも降り積もる雪のようで。それを彼は見兼ねたのだろうか。そうであるなら、とても嬉しい。

 

「私はもう迷いません。悩むことはあれど、私は既にこの道を選んだ故に。でも、それでも無念は降り積もるばかりで。私にできることはないのか。私がすべきことはないだろうかと悩んで悩んで悩み抜いて──それで目をつけたのか、貴女も良くご存知のアレというわけです。まあ尤も、これだけ悩んで決めた道も、貴女の姉の妨害によって割とあっさり失敗したんですが」

 

最後の最後で割と笑えない冗談を飄々と言う彼に対し、私は無言で考え続けた。

 

正直、彼の悩みは特殊過ぎて理解し難い。加えて、最終的な結論があまりに人間離れしていて共感もしづらい。

 

否、本来ならば私は、彼の言葉に一定の理解を示すべきなのだろう。何せ私と彼は根本を同じとするもの。意見の対立や相違こそあれど、目指す道、その結論は似通って然りなのだ。なのに私がそう感じるということは、やはり私は誰かの妄想でしかなく、出来損ないの人間なのだろうか。

 

そんな考えが表情に出ていたのか、彼は私の頭に手を乗せて、苦笑しながら優しく告げる。

 

「まあ、アレです。私なんかで良ければいくらでも相談に乗りますよ。私に限らずとも、貴女の姉や友人たち、数多の同僚も話くらいは聞いてくれるはずです。

悩むのです、若人よ。それはきっと、巡り巡って貴女の糧となる。……なんて、私が言えたことじゃありませんけどね」

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

間桐桜は絶望していた。

 

つい昨日、思い人の家に突如として君臨したサーヴァントという名の非常識。英雄なんて大層な肩書きに似合わない色々とアレなガキんちょと食卓を囲んでから約半日。当然の流れとして学校を終えてからその旨をお爺様に報告するしかなかった私は、それから更に半日を隔てた今、明らかに監視用であろうお爺様謹製の刻印虫をよりにもよって女性器に潜ませ、こうして先輩の家の前に立っている。

 

いや、理屈はわかるのだ。理屈は。まさかこんな見るからに不気味……ぶっちゃけ男性器にしか見えない虫を堂々と持ち運ぶわけにはいかないし、服などに安易に仕込んで気づかれては元も子もない。その点、女性器の中であれば気づかれたところでそう簡単に検めることなどできないだろうし、元から仕込まれている虫たちによって幾らでも隠蔽ができる。わかっている。わかってはいるのだ。

 

(でも、これをどうしろと? まさか堂々と取り出すわけにもいきませんし……ひりだせとでも? 座布団に正座して、食卓を囲みながらこんなものを何事もない顔で排泄とかどんな羞恥プレイ?)

 

いけない。どうやら思った以上に動揺、ないし混乱しているらしい。これはあくまで監視用。加えて虫なのだから勝手に動くだろうし、別に敢えて衆人環視の中取り出す必要があるわけでもなし、トイレか何かで取り出して目立たないところに放り捨てればそれで済む話。というか普通に発想が下品である。私は貞操とかそういうアレはお爺様の手で無残に打ち捨てられてしまったが、ヒトとしての良識まで捨てたつもりはない。ただ、それを体現できない自分が嫌いなだけだ。

 

「…………」

 

無言で呼び鈴を鳴らすと、さほどもしないうちにぱたぱたとした足音が聞こえる。

 

先輩とも藤村先生ともまして遠坂先輩とも異なる軽い音。やはりというか当然というか、どうやら昨日のことは夢ではなかったらしい。開け放たれた扉の先にいるのは、昨日ランサーを名乗った問題の少女。1日経っても服装が変わっていないどころか、白い服を着て朝からフレンチトーストを食べていた割にほんの少しの汚れがあるようにも見えない。

 

加えて、お爺様からの情報が正しければ、彼女は昨夜に冬木教会へ向かう一本道にてバーサーカーらしきサーヴァントと派手に戦闘を行ったらしい。まさか先輩がこんな妙に露出度が高いヒラヒラモコモコの奇抜な服と同一の服を保有しているはずもなし、元より疑いようもなかったが、やはり彼女の服はその身体と同様、マナによって編まれていると見て間違いはなさそうである。

 

(──って、確証を深めてどうするの、私……!)

 

間違いであるのが一番なのに、こんなに目敏くて真面目か私。もっと節穴になれ私。むしろ監視用の虫すら誤って紛失するくらい愚かであれ私。姉さんのうっかり癖よ、今だけ私に宿るのだ。血筋的には不思議でもない。遠坂の呪いならばあのお爺様でも納得してくれるはず。

 

「あのー、間桐さん?」

「あ──ああ、ごめんなさい、ランサー……ちゃん。つい、ぼんやりとしてしまって……」

「??? まあ、無理だけはしないでください。昨日も調子が芳しくなかったようですし、ただでさえ朝も早いですので、貧血で倒れた──では士郎さんも心配します」

「朝、早い………そういえば、随分と早起きなんですね、ランサーちゃん」

「え? あー、そうですね。ちょっと昨日は立て込──早めに、寝ましたので」

「…………」

 

あくまで推測の域を出ないが、反応からして実は一睡もしてないなこいつ。

 

サーヴァントは基本的に睡眠を必要としない。無論、元が人間であるために精神的な苦痛がどうのと言ったアレコレはともかく、理論上は魔力さえどうにか確保できていれば一年単位で稼働し続けることも可能なのだ。常人でも慣れれば1日2日の徹夜は成せるため、睡魔もないなら一晩という時間は、立て込んだ──つまり、戦闘で昂ぶった熱を覚まさせるには丁度いい塩梅だったのだろうか?

 

「ああ、立ち話ばかりではあれですし、士郎さんも待ってますので………あれ?」

「……?」

「あれ──ん、ん゛っんん。ぅんん……?」

 

私が改めてこの少女の不審さを感じていると、不意に彼女が会話の途中で視線を外し、しばらく硬直してから咳払いを一つ。目を擦り、目を見開き、そう、まるで、あの時。兄さんが見せた表情。信じられないものを見たとばかりに──

 

反射的に彼女の視線の方向、つまり背後に振り替えると、そこにいたのは見知った顔の人。

 

人懐っこい笑みを浮かべる、虎のような横縞のシャツに、緑色のパーカーといういつもの格好をした茶髪の女性。そして私に笑顔を思い出させてくれた恩人。

 

藤村大河。自称、冬木の美人教師。自惚れるな、と言いたいが、とはいえ本人に言うと調子に乗るからみんな面と向かって言わないだけで、美人であることに誰も意を唱えることはない。

 

そして私が知っていることから、当然、この時代に生きている魔術とはなんの関わりもない人間のはずである。ならば必然、彼女とはなんの関係もないはずなのだが、

 

(でも、この反応は、明らかに……)

 

単純に、彼女の知り合いと容姿が似ていた、というだけかもしれない。何にせよ決めつけるにはまだ早い。良くも悪くも、彼女と藤村先生の関係は「これから」だ。これほどの反応を示す相手、十中八九誤魔化されるにせよ、その対応から何かを掴めるかもしれない。

 

硬直した彼女に、何を言えばいいのか分からない私。必然、二つの木偶に対して困惑した様子で話しかけるのは、意外と気配りもできる冬木の虎……もとい、美人教師である。

 

「えっと、その……いつまでも玄関先にいるわけにもいかないし、とりあえず座って話さない? 私の家じゃないけど」

 

 

 

 

……………………

 

 

……………

 

 

………

 

 

 

 

 

「では改めて自己紹介を。私はランサー。本名ではなく、いわゆるコードネームです。本名は故あって教えられませんが、堅苦しい印象を受けるようでしたらリリィとでもお呼びください。

バルトアンデルスという学術棟に縁がありまして、冬木にはその関係で尋ねました。その際、士郎さんのご尊父であるキリツグさんを尋ね、そこで彼の訃報を知りまして。士郎さんのご厚意から日本に滞在する間は部屋を間借りさせていただいています」

「へ〜。しっかりして……というより随分と日本語が上手ねぇ。ご両親に日本人でもいたの?」

「血統とは無縁ですが、知人に日本人が多数います。遠坂さんともその関係です」

「学術棟──バルトアンデルス。知らない名前だけど、切嗣さんの関係者なら然もありなん、って感じ? 色々と聞きたいことはあるけど、その歳で留学、それも名前すら言えないって相当な事情がありそうだし……あ、でも一つだけ聞かせてくれる?」

「はい。何でしょう?」

「何でランサー? いや、響きが同じだけで槍兵って意味じゃないのかもしれないけど、それにしたって」

「意味は合ってます。また、今この街には私の他に、台所にいるアーチャーさんや葛木教諭の伴侶であるキャスターさん。それ以外にもセイバー、ライダー、アサシン、バーサーカーを名乗る人物が滞在しているはずです。私含めみんな格好付けてそう名乗るような変人ですので、それらしい人物を見かけ次第逃げてください」

「えぇ……?」

 

(…………)

 

移動先、などと気取った言い方をするまでもなく、1分も経たずにそのまま先輩の家の居間にまで辿り着いた私達は、やはり当然のようにこの家に居座っていた遠坂先輩及びアーチャーさんも含めて、何故か最年少であろうランサーちゃんを中心に、彼女たちがここにいる言い訳……弁明、もとい、その理由についてを聞いていた。

 

意外、と言ってはなんだが、やや引き攣った顔で語られるその内容は突っ込みどころ満載なもののそれ故に下手に追及し辛く、加えて切嗣さん云々を除けばおそらく嘘は言ってない。とはいえそれならそれでまた別の疑問が浮かぶわけなのだが、此度においては藤村先生さえ誤魔化せばそれでいいため、意図的に情報を散見させることで誤魔化そうという腹だろう。見掛けによらず小賢しいクソガキである。

 

それよりサラッと驚愕の情報がいくつも出たんですが? 葛木先生の伴侶がキャスターってどういうこと? 葛木先生がマスターだったのはとにかく、どんなに長く見積もっても出会ってから一月経っていないですよね? あの堅物を絵に描いたような人をそんな短期間で堕としたとか地味に凄いですねキャスターさん。あと私のライダーをそんな怪しい組織の一員みたいに言うのやめろ。名誉毀損で訴えるぞ。

 

(──落ち着け私。反応するな、無心でいるんだ……)

 

この家には遠坂先輩がいる。つまり今の会話には、マスターである私を燻り出す目論見もあるかもしれない。既に私に令呪は残されていないけど、何だかんだで甘い兄さんのこと、私を人質にされたら動揺してしまうかもしれない。あと単純に私が拷問に耐える自信が無い。間桐家に出されて一週間も経たず感情を鈍らせた私を見縊るなよ?

 

そんなことを考えていると、遠坂先輩が唐突にランサーちゃんに話しかける。

 

「横からだけど、いいかしら?」

「遠坂さん?」

「今聞くことじゃないのかもしれないけど……バルトアンデルスって、あの(・・)?」

その(・・)、ですね」

「そう……」

「???」

 

(…………?)

 

なんだろう。今の質問は。よく分からないが、聞き流してはいけない気がする。

 

バルトアンデルス。確かその名称は、どこかの神話の……それこそライダーも関わりのあるギリシャ神話の怪物の名前だっただろうか。確かに学術棟ないし変人のサークルとしては物々しい名前であるが、いわゆる厨二病の集いと見ればそれほど引っかかる名前でもない。

 

しかし、他でもない彼女が………この場における唯一と言っていい正統派の魔術師である姉さんが反応を示した。何かあるはずだ。とはいえ、どこまでも無力な私にできることなどなく、強いて言うならお爺様の意見を仰ぐことだけ。ますます自分に嫌気が刺すが、努めて表情に出すまいと堪える。

 

「そう名乗っているのは確かなのだが、変人扱いは勘弁してくれないかね」

「あ、アーチャーさん。ありがとうございます」

「感謝よりも謝罪が欲しいな。昨夜も遅くまで遊び(・・)に付き合わされて辟易してるんだ。君と違い、私はもう若くないのでね。体力よりも気疲れの方が先に出る」

「アンタも言うほど歳食ってないでしょうに……」

 

それから数分ほど談笑をしていると、昨日に引き続き我が物顔で台所を支配していた大男──アーチャーさんがいくつかの食器を伴って現れ、皮肉げな口調とは裏腹に穏やかな顔をして食卓を彩って行く。

 

昨日も思ったが、やけに熟れているというか、些か堂に入り過ぎているような気がする。藤村先生も同様のことを思ったのか、彼に対してその旨を質問をすると、彼は一瞬だけ呆気に取られたような顔をして、妙に硬い口調で答えた。

 

「なんのことはない。昔、執事の真似事をしていた時期があるというだけだ」

「執事! は〜、これまた私には縁の遠い話ねぇ。憧れないって言ったら嘘になるけど、私には士郎がいるからいいかな〜」

「……………………」

 

茶化してそう告げる藤村先生に、アーチャーさんは形容し難い表情を浮かべている。さらっと先輩を所有物扱いしている図々しい女に呆れているのだろうか。それともヤの付く職業のお嬢のくせして庶民ぶってる彼女を見透かしているのか。基本眉間にシワが寄ってるのでいまいち表情が掴みにくいのだが、少なくとも言葉通りに受け取ってはいないだろう。

 

「結果として便利使いしてしまったことは謝罪します。今晩からは私が参加しますので……」

「ふむ。………構わないのかね?」

「モーマンタイです。こう見えて『かくれんぼ』は大の得意なので。むしろ得意にならないと勝負にもならなかったと言いますか、まあとにかくお任せください」

 

僅かに時間を隔て、その一つ前の話題に対して告げるは、どこまでも含みの無い口調で、無邪気に提案する槍兵の少女。藤村先生の手前、最低限の隠蔽こそしているものの、その内容は聞く人が聞けばすぐに思い至るようなもの。

 

──即ち、次なる布石。あるいはターゲットの確認。会話から察するにライダーのことではなさそうだが、それはあくまで今晩の予定というだけで、夜通しはしゃぎ倒すような輩に油断はならない。特に今は、兄さんの指示によりライダーの宝具が学校に設置されている。まさか優秀な魔術師である姉さんが気づかない筈もなし、もはやライダーと彼女たちが戦うのも秒読み段階にあると言えるだろう。

 

(それを知って、私はどうして──)

 

此度の件、私は兄さんにそのことを伝えていない。

 

その義務が無かった、というのはただの言い訳だ。下手をすると命に関わる事柄だというのに、我がことながら意図が透けて見えるようだ。

 

(お爺様は……伝えてはいませんよね、きっと)

 

あの魂まで腐り落ちたお爺様に良心なんて言葉が残されているはずもなく、また彼自身、兄さんのことを道化のように見下している節があるため、たとえ兄さんが破滅への道を辿ろうと、あのひとは一顧だにしないのだろう。そして、

 

(……そして。それは、おそらくは、私も──)

 

黙認は厳密には罪に問われずとも、私には兄さんに対して家族としての作為義務がある。そもそも、ここにサーヴァントがいること、先輩と姉さんが同盟を結んでいることを暴いたのはこの私。会話をする機会なんていくらでもあった。それをお爺様が伝えていないからでは筋が通らない。

 

つまり、結局のところ、私は期待をしてしまっているのだ。自分が楽になりたいがために、その礎として兄を捧げようとしている。加えて、あわよくばお爺様を、とまではいかないあたり最早救いようもない。

 

私は弱い。どうしようもなく脆弱で愚かしい。こんなにも近くにいるのに、今だってやりようによってはこの輪に混ざれるやもしれないのに、その道を選ぶことより、その可能性が潰えるかもしれないことの方が恐ろしい。

 

 

「あら、おいしいわね、桜ちゃん」

「そ、そうですね………はい。本当に、美味しいです」

 

 

助けてほしい。言うべきはたった一言。一秒にすら満たないであろう不満、嘆き。

 

──その嘆きさえ、声を上げねば決して届かないのだとわかっているのに。

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

「(精神的に)死ぬかと思いました……」

「いや、流石に大袈裟じゃないか……?」

 

開口一番、引き攣ったままの笑顔で告げるは我がサーヴァントたるランサーことジャンヌダルクオルタサンタリリィ。

 

場所は学校の屋上。既に本日の講義や時間潰しにと顔を出した弓道部の時間も終了してしばらく経ち、熱心な運動部員が校庭でランニングをしているのが散見される程度。遠坂との約束である最終下校時刻までまだ一時間ほど残されており、時間潰しで選んだのがこの場所だ。

 

そして事ここに至りようやく姿を現したのがランサー。曰く、「マスターの日常を必要以上に侵略する趣味はない」とのこと。配慮は立派だがそれなら霊体化して付いてこないで欲しかった。いや、それについては俺も理解し納得してはいるし、仕方ないと割り切っているからいい。

 

しかし、このセリフはどういうことだろうか。朝の出来事を言っているのは間違いないだろうが、ぶっつけ本番だった割には上手いこと切り抜けていたように思う。最悪、遠坂なりキャスターなりに協力してもらって強引に有耶無耶にする選択肢もあったので、藤ねぇの頭を変に弄るような真似をせずに済んで内心大喜びだったのだが。

 

「動揺して言わなくてもいいことまで言ってしまいました。その分、追及こそ避けられましたが、せっかく用意していたカバーストーリーが無駄に……」

「…………」

 

そんなものまで用意していたのか。相変わらず律儀というか、存在の破天荒さに反して妙に生真面目な少女である。

 

だがまあ、そういうことなら気落ちする理由もわからなくはない。俺だって藤ねぇのためにせっかく用意した夕飯が急用などでおじゃんになったらガックリするだろう。というか数回程度だが似たようなことはあった。だからその気持ちはわかる。

 

しかし、何故彼女は藤ねぇに対してあれほど動揺していたのか。笑顔こそ崩してはいなかったが、表情が軒並み引き攣っていたのは見て取れた。当然だが、藤ねぇこと藤村大河は実家こそやや特殊なものの正真正銘の一般人である。少なくとも何の縁も関わりもないであろう彼女に動揺する要素などないはずなのだが。

 

その旨を指摘すると、彼女は疲れ切った表情で、

 

「私が尋常のサーヴァントではないことはもうご存知でしょう……? そんなサーヴァントが誕生するようなところが、その交友関係が、まさか常識の範囲内にあるとお思いで……?」

「そういえば遠坂も何か気にしてたな……確か、バルトアンデルスだったっけ。あれは適当な名前を出しただけじゃないのか?」

「そういうことにしておいてください……とにかく、まあこの世界には割と頻繁に世界レベルの危機が起きていましてね。何というか言ってしまえば実験室のキメラと同レベルにアレな経緯で生まれた私は、ひょんなことで世界を救って座に登録されたわけです。

そんな場所で生まれたわけですから、当然そこには私の他にもアレなサーヴァントがたくさんいまして。私の世界では魔術世界で人理と呼ばれるものが不安定であったことも影響してか、擬似サーヴァントなどと呼ばれる、それこそキメラと同義の人たちが何人もいました」

 

曰く。

 

かつて彼女が所属していた組織は、人理と呼ばれる人類史の正しき流れを見守るために成立した。しかし、とある者の手によって突如壊された人理──すなわち歪められた歴史を修正するために、レイシフトといういわゆる時間跳躍によって特異点と呼称される歪みに立ち向かってきたらしい。

 

「神代が終わり、西暦を経て、人類は地上で最も栄えた種となりました。我々はこの星の行く末を定め、星に碑文を刻むもの。

人理とは、そんな人類をより長く、より確かに、より強く繁栄させるための理。人類の航海図──」

 

先程までの焦燥は何処へやら。熱に浮かされたように、つらつらと読み聞かせるように彼女は語り出す。

 

それは未来を取り戻す物語。人理を以て人理を滅ぼし、ただ一つの希望を信じて暴走していた獣を討ち倒す人類史の旅路。

 

国も時代もまるで異なる無数の英雄達と共に、どこまでも誠実に、されど必死になって世界を救った一人の少年の物語。

 

「──そんな経緯で、私は………あれ? マスター?」

「────」

 

それは正しく、俺の憧れた──

 

 

 

 

.……………………

 

 

 

………………

 

 

 

…………

 

 

 

 

 

「──い、─みや」

「…………」

 

 

 

「おい、衛宮!」

「──っ!?」

 

至近で叫ばれた呼び声に意識が覚醒する。見れば自分は屋上のフェンスに体重をかけた状態で校庭を眺め、そのまま酩酊してしまったらしい。下を向くと、既に校庭に人影はなく、陽も暮れて辺りが赤く染まる頃。よもや見回りの先生に呼び掛けられたのか、と思い冷や汗と共に慌てて振り返ると、意外な人物がそこには佇んでいた。

 

「し、慎二……? どうして……?」

「はぁ? その台詞は僕がするべきものじゃない? 全くお前は相変わらず鈍いな。気紛れだよ、気紛れ。そろそろ最終下校時刻にもなろうって時にこんなところで黄昏てる馬鹿がいたもんだからわざわざ声を掛けてやったんだよ。むしろ感謝して然るべきさ」

 

そこにいたのは、朝も家まで訪ねてきた桜の兄である間桐家の長男、間桐慎二。目下警戒対象としてランサーが提示し、俺にとっての数少ない友人でもある彼は、特徴的な髪質の黒髪を靡かせながら、校庭から彼のいるドアへと振り向いた俺と対面する。

 

「あ、ああ………悪い」

「そんな簡単に謝るなよばーか。たまには開き直るくらいのことしてもいいんじゃないの? 僕がしたのは単なるお節介さ。お前には当然、それを拒絶する権利だってある。いつも言ってるだろ。ほいほい何でも言うこと聞いてりゃ馬鹿をみるって」

「うっ………」

 

いつものように、憎まれ口ながらも、よくよく聞けば俺を思って発言している彼に言い返すこともできず口を噤む。遠坂は頻繁に彼のことを性格が悪いと評していたが、俺からすれば彼は単に捻くれているだけで、本当は心優しい性格なんだと思っている。

 

現に、今だってこうして、彼は俺を気遣って、わざわざ部活を休んでまで──

 

(………待て。何故、慎二がこんなところに?)

 

一歩、後退る。

 

彼のサボりグセは、部長である美綴も知っての通り。既に部活を退いた俺にさえ苦言を呈するのだ。そもそも彼は俺の数少ない友人だ。彼が部活に出てもいなくても、俺がその存在に気づかないはずはない。

 

女生徒との待ち合わせ? こんな時間に? 有り得ない、とは言い切れないが、それならそれで別のやり方があるだろう。少なくとも、もう日没にもなろうとするこの時間まで学校に残り、その上で俺に話し掛けてくる必要はない。女生徒を優先する彼のことなら尚更。

 

では、何故? 彼は何故、今こんなところにいる? それでは、それではまるで、

 

 

 

「──まあ、何だ? 早く帰った方がいいんじゃないか? 最近は物騒みたいだからね──」

 

 

 

まるで、ここに、この場所に、この学校そのものに、誰もいない学校(・・・・・・・)に、大事な用があるようではないか──

 

 

 

「……………………」

 

(ランサーは………いる。姿を隠しているだけだ。見えないけど、確かに感じる)

 

普段通り、嫌味な笑みを浮かべる彼に怖気を感じて、警戒を露わにする。

 

なるべく隠したつもりだったが、露骨だったのか、彼はそれを目ざとく察して、笑みを更に深くして続けた。

 

「………。その反応………。なぁ、衛宮。お前やっぱり何かやってんだろ」

「…………っ!」

「知ってるぜ。お前が最近、突然遠坂と懇ろになったって話を。まあお前の性格じゃあ懇ろ云々はあいつの自爆だろうけど、逆にお前の性格からして急にあいつに付き従うようになったのはそれ相応の理由がある。そう考えるのが自然さ。もちろん、メインは今も人気のない場所で時間を潰してる遠坂の監視のほう。お前を見つけたのだって、実は単なる偶然なんだぜ?」

「………………」

「だけど、まあ、これは僕にとってそこそこ優先度の高い仕事だった。だって、だってだぜ? そうだ、衛宮。馬鹿みたいにお人好しで、その上すっとろくて見ちゃいられない。僕の知るソレ(・・)とは一片たりとも重ならないお前が、まさかまさか──」

 

 

──まさかお前が、魔術師だったなんてな、衛宮。

 

 

「っ──!」

 

その言葉に、その確信に、彼の口から出てはいけないその単語に、大袈裟なくらい身構える。その一言に、それまでの彼が得体の知れないものに思えて、話し合い云々よりも足が先に出そうになる。

 

だが、先に述べたように、慎二はこの屋上の唯一の出口を塞ぐように立ち尽くしている。一瞬、いっそ飛び降りるか、などと考えてしまったあたり、俺も相当混乱しているんだろう。

 

しかし、慎二は逆にそんな俺の様子を見て拍子抜けしたのか、先程までの圧力はどこへやら、気の抜けた声で意外そうに。

 

「まあ待て衛宮。僕は何もお前を害そうとしているわけじゃない。いや、お前の出方次第ではその可能性があったのは認めるけど、僕だってお前を相手にして無闇に殺そうだのと言うつもりはないさ」

「じゃあ、どうして……」

「当然、意味もなく明かしたわけじゃない。なぁ、衛宮。僕と組まないか?」

「は──?」

 

良い提案だ、とばかりに提示された選択肢に言葉を失う。提案そのものは非常に魅力的なものであるが、今は前提条件が常とは異なる。組むにしても、遠坂の合意がいる。しかし彼はそんな考えを見透かしたように、

 

「どうせお前、たまたまサーヴァントを召喚できたからって遠坂に良いように使われてるんだろ? ならいいじゃないか。僕と組んであいつをコテンパンにしてやろうぜ?」

「遠坂とは、そんなんじゃ──」

「あーあーわかってるさお前の性格は嫌ってほどにね。仁義やら義理人情やらとか言い出すんだろ? だけどサ。お前の前ではいくら良い子ちゃんぶっていても、あいつの本性は根っからの魔術師だ。裏で何をやってるか知れたもんじゃないんだぜ?」

「…………」

 

遮るような弁舌に、思うところがあって黙り込む。琴線に触れたのはやはり「魔術師」という単語のこと。

 

魔術師とは、ひとでなしである──誰もがそう告げ、今や俺の中でも常識となりつつある基本中の基本。人を弄る(・・・・)術を持つ彼らは、その方法を知る彼らには、真の意味で無実を証明することはできない。

 

無論、遠坂だって神秘の秘匿を名目に、軽い記憶操作なら可能な旨を聞いている。そういう点では、彼の懸念も尤もだろう。しかし。

 

「駄目だ。それでも、少なくとも今はまだ、慎二とは組むわけにいかない」

「……そ。……まー、だろうとは思っていたさ。あいつの何処が気に入ったのかは知らないけど、それでも即答できるあたり、お前らしいな、本当に」

 

残念だよ、と続け、一瞬だけ柔らかな表情を見せた彼は、しかし即座にその顔を嗜虐に塗りつぶし、熱に浮かされたように告げる。

 

「つまり、お前は今から僕の敵ってわけだ。………じゃあな、衛宮。お前はどこまでも馬鹿だったけど、嫌いじゃなかったぜ」

 

いつの間にか、彼の隣には扇情的な服装をした長身の女性が立っていた。服装を抜きにしてもどこか妖艶な雰囲気の女性で、バイザーで覆い隠した両目は単に盲目だと思わせない圧力を感じる。

 

手に持つ長い鎖に繋がれた短刀。多少奇抜なデザインなれど、その用途は明白で──

 

「やれ、ライダー」

「御意──」

 

凶刃が迫る。手に持った短剣もそのままに飛び掛かる女性を、サーヴァントの攻撃を、当然、ただの人間でしかないこの俺が躱せるはずもなく。

 

「──っ、」

 

からんからん、という金属音。ぶしゃり、と何かが溢れ出た音が耳に届く。それと同時、反射的に瞑った瞼へ付着する生暖かい感触。恐る恐る開いた目に映るのは、言葉を濁す必要もなく、目眩がするほど多量の血飛沫。

 

肩口から荒々しく切り落とされたライダーと(・・・・)呼ばれた女性の腕(・・・・・・・・)を中心として広がるそれは、俺や慎二から一時的に思考を奪うには十分で。

 

「は──?」

「──ふっ!」

 

続けざまに二閃。もはや刀身の軌跡すら認識できない剣尖が迸り、ライダーの左肩と首元に深い傷を刻む。

 

つい先ほどにも聞いた、短剣が地面に落ちたことによる金属音が鳴り響く。一目で尋常ではないとわかる所業。それを成したのはやはり、女性と同じサーヴァントである、槍兵の肩書きを持つ少女──。

 

しかし、霊体化を解いて姿を現したのであろう彼女は、普段の武装である槍ではなく、何故か両手に二振りの日本刀(・・・)を携えている。俺が思わず声を掛けると、彼女は武器の調子を確かめるように拳をにぎにぎしながら微妙な表情で呟いた。

 

「ら、ランサー……!?」

「──しくじりました。仕留めるつもりだったのに……。………でも。……いえ、言っても仕方ありませんね──っと、せぃやっ!」

 

言い切る前に、今度は慎二に向けて(・・・・・・)彼女は武器を投擲する。器用に下投げで放たれた弾道は彼女の身長を考慮せずとも異様に低く、おそらくその狙いは足。攻撃対象そのものは実に合理的な選択なれど、急所ではなく足を狙った理由は間違っても命を奪うわけにはいかない、という彼女の意思だろうか。

 

「くっ──」

 

いつのまに武器を拾い上げたのか、ギィン、と不快な擦過音を立て、ライダーが放たれた凶刃を弾く。俺には一度しか音を認識できなかったが、地に転がる刀は二振り。先の攻防でランサーがもぎ取った腕付きの短刀と併せて凶器は三。十秒にも満たぬ交錯のうちに、既に屋上は地獄の様相と化していた。

 

「あ………?」

 

場違いにも思える慎二の間の抜けた声。秒単位でこれだけ目紛しく状況が動いたのだ。変化について来れないのも無理はない。

 

だが、ランサーはそんな様子の彼にも容赦する性格ではない。むしろ彼の現状を見て好機だと判断したのか、次いで普段使用している槍を取り出し、殆ど手投げで投擲する。

 

「っ──」

 

見た目に反してそれなりの威力を有していたのか、ライダーは投擲に反応したものの、今度は僅かに軌道を逸らすだけに留まる。

 

扉近くの壁に深々と亀裂を刻む槍は、起こり得た最悪の未来を暗示していて───ここに来てようやく意識を取り戻したのか、慎二は青い顔で叫ぶ。

 

「ばっ───ライダー! 何してるんだこの役立たず! あんな見るからに巫山戯たサーヴァント、お前の敵じゃないだろう!?」

「っ………」

 

話している間にも、ランサーの追撃は止まらない。今度は宙空に無数のチャクラムのような物体を生み出した彼女は、なおも慎二に向かって執拗に攻撃を続ける。

 

多分、それが一番効率が良い、もしくは弱点なのは明白であるからやっているのだとは思うのだが、些か執拗に攻撃をするので慎二に何か含むところでもあるのかと疑ってしまう。なお、後で確認したら特段彼自身に思うところはないとのこと。余計にタチが悪いと感じたのは気のせいじゃないだろう。

 

四方から襲い掛かる四輪の光の輪が、それぞれ慎二の四肢を刈らんと襲い掛かる。それをライダーは短剣とそれに付随している鎖で器用に半数を弾き返すも、数が数のために身を呈して慎二を庇い、更なる傷を負う。

 

しかし、元よりランサーの狙いは慎二ではなくライダー。庇うことで隙が生まれるなら彼女にとっては万々歳であり、更にタチの悪いことにこの少女、ステータス面での敏捷値がなんとあの恐るべきヘラクレスよりも一段階高いのである───!

 

「───三つ首の黒龍よ。世界を喰らい尽くせ」

 

一歩、大きく足を踏み込む。それだけで床が罅割れ、深く陥没する。余すことなく速度に変換された衝撃は、そのまま少女を弾丸へと進化させる。

 

いつか見た黒い焔を纏い、旗を構えて突進する。旗の使い方を小一時間説教したいほど清々しいくらい間違った使用方法ではあるが、かのジャンヌ・ダルクの象徴として語られる旗は、ある意味では正しい使用法としてライダーの中心に突き立てられ、その真言と共に爆発する。

 

「『焼却天理・鏖殺竜(フェルカーモルト・フォイアドラッヘ)』!!」

 

肉を引き裂く嫌な音と、轟々と燃え盛る焔。それすら搔き消すほどの痛々しい女性の悲鳴。あまりに凄惨な光景に身動き一つ出来ずにいると、ランサーは満足気に「制圧完了ですね」と呟き、

 

「さて………」

「ひっ」

 

ぐりん、と彼女は慎二へと向き直る。苛烈な戦闘に反比例するような無邪気な笑顔が得体の知れないものに感じる。慎二も似たような感想を抱いたのか、小さく悲鳴を漏らしたのち、縋るように、

 

「お、脅かすつもりで、殺すつもりじゃ──」

「そうでしょうね。そうでなくては、不意とはいえいきなり片腕は奪えません。あとそもそもライダーさんの運用方法に難があります。私が言えたことじゃないですけど、宝具を展開していて魔力も十分でない彼女に三騎士相手は無謀かと」

 

弁明をピシャリと切り捨てた彼女は、私を侮るのは理解できますが、と非常に反応しづらい言葉を並べながら、なおも怯える慎二へゆっくりと歩を進める。

 

「ぼ、僕を殺すつもりか………!」

「害意を示したのはそちらでは……? それに、ライダーさんもこの程度では死にません。ですが、そうですね」

「ひぃっ」

 

徐々に接近する幼い少女を前にして、慎二は恥も外聞もなく逃亡しようと目論む。が、足を縺れさせたのか尻餅をつき、彼は少女を見上げる体制のまま後退り、壁にぶつかったのと同時、ランサーにまた新しく取り出した旗を突き付けられて、

 

「令呪を引き渡してもらいます。令呪とはサーヴァントを起爆させる爆弾。それを持つには、貴方の引き金はあまりに軽すぎる。拒否するようならこの場で首を貰います。そういった趣味はありませんが、外道一人とこの学園の生徒全員の命……比べる必要ありませんね」

「なっ……!?」

「いいんですよ? 抵抗しても。流石に殺すは言い過ぎましたし心情的にも反するのでやりませんが、それこそ遠坂さんに頼めば呪いの一つや二つくらいはかけられるでしょう。ガンド……そう、ガンドです。アレは本来なら呪いをかけるものらしいので、害意を抱く度に激痛が走る、これくらいなら容易いはずです」

「ふ、ふざけ……っ! ひっ」

 

反論しようとした慎二に反応して、旗の穂先に炎が灯る。この世全ての闇を凝縮したような黒い焔。今もなお彼のサーヴァントであるライダーを縛めるそれを間近で見て、彼も動揺せずにはいられない。

 

「無理ですよね。嫌ですよね? それを貴方は、私のマスターに強いようとしていました。殺す気はなかった──ええ、ええ。わかりました。私は貴方が嫌いです。それで手打ちとします。ですので、後は貴方の悪意が何を生むのか……それを以て、貴方の処遇を決めたいと思います」

 

それだけの理由ありきとは言え、容赦なく慎二を扱き下ろした彼女は、そこでようやく俺へと向き直り、

 

「──では、マスター。そういうことで」

『(成り行きですが、話し合いの機会には丁度良いかと)』

 

「…………は?」

 

さらりと付け足された念話による後半の台詞と、そもそも俺に任せるという考え自体が想定していなくて、俺は間抜けな声で返す。

 

そもそも彼女は慎二のことを嫌っているんじゃなかったのか、とか、遠坂に任せる云々はどうなったんだ、とか、俺が令呪の保持まで許すと言ったらどうするつもりなんだ、などと様々な考えが過ぎるものの、当然、敵の処遇、それも友人の生殺与奪の権利など、俺にはあまりに重すぎて──。

 

結局、俺は言葉を発することも、身動きを取ることさえも、何も、どうすることもできず、異常に気づいた遠坂が駆けつけてくるまでの間、ただ呆然と立ち尽くしていた。






まずはぶん殴って黙らせる。それが聖処女流。


自己変革:A

本来、全盛期で召喚されるサーヴァントであるが、彼女は例外的に「これから先、成長していく」存在として召喚された。
悪を望めば悪に、善を望めば善に。
彼女の未来は明るくはないかもしれない。
それでも望めば聖者の灯火は与えられるのだ。


なお、この作品の彼女は既に覚悟ガンギマリしてるので、このスキルが機能することはない。
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