メイドの日なのにメイド作品がぜんっぜん投稿されないから自分で書きました(怒)

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メイドの日

 総資産300兆円。

 鉄道・銀行・自動車。その他様々な分野で国を牽引。抱えている子会社はゆうに1,000を超え、国を代表する財閥のひとつとして数えられている。

 その大財閥の本家本流。三友グループ総帥の次男として生を受けた僕は正真正銘の令息だ。

 

 兄がいるため跡継ぎなどのしがらみもなく、しかし大財閥総帥の息子としての振る舞いや期待を日常の一挙手一投足に求められる環境に辟易とした僕は、中学卒業と同時にこじんまりとした別邸をもらい本家から出た。

 

 気の合う20名ばかりの使用人を連れて過ごした高校三年間。

 外では相変わらず肩書き相応の立場を求められたけど、安らげる環境が出来たというのは大きくそれなりに楽しい高校生活を送れたと思う。

 無事に大学入試も終わり、この春から大学生だ。

 

 一見順風満帆。

 だがひとつ僕の頭を悩ませることがある。

 それは──。

 

「はあ、もう19にもなろうというのにひとりで起きる事も出来ないのですか。それとも私の仕事を増やすためにわざとやっているのですか? 情けない上に人格まで歪んでしまっているとは、救いようのないご主人様ですね。本来なら自立心のない甘ちゃんなご主人様など放っておくのですが、本日はご主人様も私も1限があり余裕もあまりないので仕方なく起こして差し上げます。感謝してください」

「……待って、分かった、起きてる、起きてるから手に持ったそれを離すんだ」

「3秒だけ待って差し上げます。いちっ!」

「2と3はっ!?」

「あら、おはようございますご主人様。いつもそのぐらいきびきびと行動していただけると嬉しいのですが。それに殿方が細かい事を気にするのは女々しいですよ」

 

 ゴム製の中々に殺意の高いミニハンマー(お手製)を数秒前まで僕の頭があった枕の上に振り下ろしたメイド。

 ぼふん、と間抜けな音を立てたがアレがどれ程の威力を産み出す目覚まし兵器なのかは既に経験済み。

 何を隠そう、彼女こそ僕の頭を悩ませる原因その人である。

 

「あのさ、いつも言ってるけどその言動はどうなの……?」

「おや、シーツに世界地図を作ってお母様に叱られると私に泣きついてきたご主人様が言うようになりましたね。いいでしょう、受けて立ちましょう」

「何年前の話!? あれは忘れてよっ!?」

「この様に映像媒体でも記録しております。こちらは8回目の粗相の時のものです」

「なんであるの!? 初耳なんだけど!!? ちょっとそれ渡して!!」

「おっと。朝から婦女暴行未遂とは……これだから童貞は。通報してほしいのですか? 寝起きに私と会えて嬉しいのは分かりますががっつきすぎて気持ち悪いですよご主人様。だから家柄が良いくせにモテないのです。それに時間に余裕はあまりないと申し上げたはずですがもう忘れてしまったのですか? 本当にダメダメですねご主人様」

「理不尽っ!」

 

 彼女は僕の母の秘書を勤めている女性を親に持つ。

 同い年だから、と幼少の頃からの付き合い。

 最初はもっと硬くて距離があったけど、いつのまにか今のようになっていた。

 当時の僕は大人たちの重圧や監視されるような生活に心が擦り切れていて、それを一番近くで見ていた彼女に自分がしっかりしなければ、と思わせてしまったのだと思う。

 いやそれがなんでこうなるかは僕にもわからないのだけれど。そりゃ明け透けな彼女の接し方に救われた部分もあるけどさ。

 

 言ってしまえば、僕はいろんな意味で彼女に頭が上がらないのである。

 

「此方にタオルとお湯を張った洗面器がありますから早くお顔を洗って歯を磨いてください。汚い汗と埃にまみれたまま外に出るなどお家の恥です。只でさえお兄様に任せきりのクソ野郎なのですからせめて身嗜みぐらいは整えてもらわないと」

「そこまで言っちゃう!?」

「事実でしょう?」

「言い返せないのが辛いっ!」

 

 こうして僕が自由にさせてもらっているのは、ひとえに兄が血筋に勝るとも劣らない傑物だったのが大きい。

 才に愛された兄が跡継ぎとしてのキャリアを邁進していなければ僕の人生も大きく変わっていた事だろう。

 僕も見合うだけの男になろうと頑張ってるんだけどなあ……いかんせん兄に比べると見劣りしてしてまうのは否めない。努力あるのみである。

 

 身嗜みを整えて軽く朝食を取れば、専属のドライバーさんが運転してくれる車に乗って大学である。

 僕としては電車通学でもいいんだけど、以前そう言えば僕の身に何かがあると多方面に迷惑をかけることになる、と全力で止められた。

 

「朝から視姦に精が出ますねご主人様。発情期に差し掛かった猿のような制約を持て余す童貞の隣に座る私はいつ理性を失った飢えた狼に襲われるのかと気が気ではありません。通報しようかしら」

「いや全部違うから。普通の通学もしてみたいなって窓を見てただけだから。通報はやめて」

「っ。みだりに淑女に触れるとはさすが変態ですねご主人様。童貞が移るので離してください」

「童貞は病気じゃないから」

 

 スマホを取り出した彼女の手をやんわりと握る。

 途端にぷいっと顔を背けた隣に座る彼女はメイド服──ではなく、春先らしいゆったりめの私服だ。

 高校の頃は制服だったけれど、大学では特に服装の規定がないのでメイド服で行くと宣言した彼女を止めたのは懐かしい。

 美人だからたださえ人目をひくのに、さらにメイド服なんて着ると浮いてしまうことも含めて人目をひくなんてレベルじゃない。

 ……それに、メイド服を着た彼女はあまり有象無象の男に見せたくないし。

 

「はははっ。坊っちゃまたちも毎日飽きませんなあ」

「坊っちゃまはもうやめてよ……」

「いやはや失礼。私は坊っちゃまが生まれる前からお家に使えておりますゆえ」

「せめて名前で呼んでくださいっ」

「はははっ」

 

 これ絶対やめないな。

 その後も終始生返事をするドライバーさんにお礼を言って、大学前で降りる。

 気持ちのいい朝日が昇っていた。

 

「今日何限までだっけ?」

「2限で終わりです。そんな事も忘れてしまうとは鳥以下の脳しか持っていないのですね……可哀想なご主人様。大丈夫ですよ、私がいますのでご主人様は何も気にせず千切ったパンをつついていてください」

「言葉と表情の不一致っ!」

 

 慰めるような口調。されど路傍のゴミを見つめる冷たい眼差しで僕を見るという器用な彼女。

 まだ3回目の講義なのだからと弁明しつつ教室へ向かう。

 同じ学部で同じ講義を取っているので基本僕と彼女は一緒だ。というよりは、僕のお目付役を彼女が兼ねている。

 国の重鎮のご子息ご令嬢が集まる大学でも、流石に部外者が校内に在中するのは難しいからだ。

 

「あ、2限終わりって事は今日は?」

「ありますよ。私の手荷物を見ればわかるでしょう? 観察力に欠ける──」

「そっか、よかった。楽しみだ」

「っ。……それはずるいです」

 

 数時間先のことを想像して思わず顔が綻ぶ。

 いつもの辛辣な言葉が飛んでくるかと思ったけど、ぷいっと顔を背けた彼女はそのまま口を噤んでしまった。

 

 え、どしたの急に。

 頭の中に疑問符が浮かぶが、これは彼女の癖のようなものでつまりはいつもの事だった。特に気にする事でもない。

 

 何はともあれ、いつものように彼女と並んで座りつつ、早くお昼にならないかなと頭の片隅で思考を遊ばせながら講義を受けるのだった。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 彼女のメイド歴は10年を超える。

 十二分にベテランさんの域であり、メイドとしての仕事は惚れ惚れするくらいに完璧にこなしてみせる。

 

 とまあ、何が言いたいかというと彼女は料理が上手かった。

 

「うまっうまっ」

「当然でしょう。味覚だけは正常なようで安心したわ」

 

 お弁当(楽しみ)をがっつくように食べる僕を見てどこか誇らしげに鼻を鳴らす彼女。

 まだ少し肌寒いので保温されたあったかいスープが嬉しい。

 

 このお弁当の習慣は高校の頃から引き継がれたものだ。

 当初は別邸のコックさんたちが出来立てのものを持ってくると意気込んでいたけど、流石に恥ずかしいし遠慮させてもらった。

 昨晩の残り物を少し頂いて自分でお弁当箱に詰めて持っていく予定が、気がつけば彼女が作ってくれるようになっていた。

 最初は遠慮したものの自分の分のついでと強引に押し切られてしまえば何も言う事が出来ず。

 こうやって有り難く頂いている。それにしても美味しい。

 

「ここに居たのか」

「あっ! 三友くん!」

 

 昼食を終え、彼女の毒舌を聞きながら淹れてくれたお茶を飲んでいると声をかけられた。

 片方の男性は高校の頃からの友人だが、もう一方の女性は初めて見る。

 会話を中断され僕以外には分からないほど若干むすっとしている彼女を尻目に自己紹介を兼ねて話せば、どうやら友人になりたいとのとひとつお願いがあるとの事。

 

「で、こっちはノートか」

「いやー悪いな、先週休んじまって」

「親御さんとか大丈夫なのか?」

「末っ子だから余裕。でも必修を落とすと分からないかな。明日返すわ!」

 

 呑気に笑う友人にノートを渡せば、会話が終わるのを待っていた女性が僕の隣へ腰掛けた。

 えっ近い。

 

「三友くん、来週の校友会であるダンスの相手が見つからなくってさ。三友くんってダンスが上手って聞いたから、よければ私と踊ってほしいなあって」

「踊れるっていっても本当に基本ができるだけだよ」

「十分だよ! 私も本格的に踊れるわけじゃないしね。……どうかな?」

 

 服の袖をつまみ自信なさげに震える瞳で見上げられるとついつい承諾してしまいそうになるけど、うーん。

 もともと校友会に参加するつもりはなかったから相手はいないし、その日に予定もないのでその点では問題ないけど……まあ無理かなあ。

 内心で結論を出し断ろうと口を開いた瞬間、今まで一歩引いて様子を見ていた彼女が僕の腕を掴む。

 

「お話の最中恐れ入りますがご主人様、お迎えが到着するようですので急ぎご支度を」

「えっ、もうそんな時間……本当だって痛い痛い!? 力つよっ!?」

「あっ待って三友くん! お返事だけでもっ!」

「……ごめん! その日は先約があるんだ!」

「そ、そんな……がくっ」

 

 僕の言葉に項垂れるその様子に嘘をついた申し訳なさが胸をつつくも、ずんずんと前を歩く彼女の背中を見てしょうがないかと嘆息した。

 

 

 ☆☆☆

 

 

「くぅ……! うまくいけば次期主席で起業もしてるうえにあの三友グループの次男と関係を持てたのに……! 次こそは……!」

 

「……お前、知らなかったのか?」

 

「へ? 何を?」

 

「いや、だって主人と従者の関係でもあいつら──」

 

 

 ☆☆☆

 

 

「おや、特に何もやられていないのにもうおやすみになれるのですかご主人様。いえ、別に何も思ってませんよ、ええ。棘などありませんとも。英雄色を好むともいいますが、総帥様やお兄様と比べて木っ端なご主人様がちょっと女性に近寄られただけで鼻を伸ばす限界童貞野郎で虫酸が走るなど考えていませんよ、ええ。あの女性もご主人様の情けないお姿を知らぬばかりに見た目に騙されていてると哀れんでいたぐらいですもの」

「いやごめんて」

 

 夜、1日の終わり。

 あれから機嫌を損ねたのか3割増しぐらいで攻撃力の高くなった彼女の毒舌に苦笑を漏らす。

 就寝のための準備を終わらせさあ寝るかと椅子から腰を上げれば、タイミングよく部屋へとやって来た彼女。

 その手には2つのカップがあり淹れたてであろう紅茶がゆらゆらと湯気を見せる。

 多分、まだ僕が仕事をしていると思ったのだろう。その気遣いに胸が温かくなった。

 

「だいたいたったあれだけのことでだらし無く顔が緩んでしまうのが信じられません。ああ、ああ、どうして私のご主人様はこんなにも情けないのでしょうか。お兄様はあれほどの傑物だというのに本当に血が繋がっているのか不思議でなりまきゃあっ!?」

 

 カップを寝台のそばの机に置いた彼女がいつものように流暢に喋るのを遮るように、その手を引いて優しくベッドに押し倒した。

 ちょこんと頭に乗っていたホワイトブリムが傾く。

 

「い、いきなり何をするのですか。か弱い女性にかような行い、許されませんよご主人様。童貞ですからそんな事もわからないのですか? 通報するので手を離してください」

「直ぐに断らなかったのは悪かった。でも最初から断るつもりだったよ」

「そんな事はいいですから早く手を離しひゃうっ!?」

 

 つつ、と彼女の首筋に優しく指を這わせれば、びくっと身を縮こまらせた彼女の口から驚きとも悲鳴ともつかない声が漏れた。

 ああ、だめだよそんな反応をしては。僕が僕を抑えられなくなってしまう。

 クラシックなメイド服の上から身体をなぞって朱くなった頰に触れれば熱いくらいの体温を指先に伝える。

 いつもの強気で自信に満ち溢れた彼女は何処かへ行ってしまって、今僕の腕に閉じ込められいるのは上気した頰に熱っぽい潤んだ瞳で身体を小さくするひとりの女の子だった。

 

 日本を代表する大財閥の次男として生を受け、父や兄に劣るものの勉学や企業経営も軌道に乗りうまく行っている。

 一見順風満帆に見える僕にはあるひとつの悩みがある。

 それは──。

 

「それに、今朝も言ったけど恋人にその言動はどうなの?」

「っ、別にいいでしょう。それよりこうやって力で敵わない女性を無理やり押し倒して満足ですか。早く離してください」

「それに僕は童貞じゃない。君もよく知ってるだろう?」

「んっ……ちゅ、ぁは、んぅ……っ、待って、私まだお風呂にはいってないっ、んぅ、ちゅ、ぷはっ」

「いいよ、そっちの方が興奮する」

「変態んぅ、ちゅ、私がよくないですからっ、んぅっ、ちゅ、あぅ」

 

 唇を触れ合わせるだけのバードキス。

 それから、弱々しい抵抗を見せる彼女の唇を破るように舌を絡ませれば、健気に甘い舌が蠢いて脳が痺れた。

 鳴り響くリップノイズが耳を犯す麻薬となり甘い痺れが全身に広がっていく。

 

 玉の汗を浮かべた彼女の身体から陶酔するほどの女のにおいがして、たまらず抱きしめれば胸元で服と下着で包まれてなお存在を主張していた乳房が潰れるように形を変える。

 荒い息継ぎに紛れた黄色い悲鳴が理性を溶かしていく。

 

 観念したように熱い吐息を零した彼女は、ぷいっと顔を隠すようにそっぽを向いた。

 好奇心を抑えられず背けた顔を捕まえるように唇を落とせば、拒絶の声を上げながらも情欲の朱色に染まる彼女の身体が喜びに震え、もっと、というように頭と背中に彼女の手が回る。

 

 チュッと再び離れた顔と顔。

 ホワイトブリムの下には色香がにおい立つうっとりとした女の顔があった。

 

「……優しく、ね?」

 

 艶やかな声が柔らかな唇から紡がれ……気がつけば、また唇を重ねて。

 

 そして、僕の手は何度か脱がせた事のあるクラシックなきっちりとしたメイド服の背中へと伸びていき──。

 

 深く愛を確かめ合う男女の声は日付を跨いでも続いた。

 

 

 ☆☆☆

 

 

「ケダモノ」

「えっと……」

「ヘンタイ」

「その……」

「強姦魔」

「それは違くないっ!?」

「違いません。私はやめてといったのに無理やり犯したのですよこれがどういうことか分かっていますかご主人様。私のメイド服も汚して信じられません。何を考えているんですかああ、ああ、こんな性欲に頭を支配された野蛮人が身近にいると思うとか弱い女性である私は身の安全を考えて通報してしまいそうです」

「すみませんでした」

 

 昨夜……というよりも数時間前。

 お互い一糸まとわぬまま抱きしめ合うように眠った僕らは柔らかな朝日に包まれるようにして目覚め、そして僕は全裸で正座をしていた。

 シーツで身体を隠した彼女は扇情的だが、ここでそういった視線を向けたり、自分だって盛り上がってたじゃん……などと言おうものならどうなるか既に経験済みである。

 まあムラっときて流された僕が全面的に悪いので素直に謝るのである。

 

「はあ……身体がべとべとです。シャワーを浴びないと……お弁当……は今日は無理ですね……はあ、コックさんたちにまたあの生暖かい目で見られる……」

「……あのさ」

 

 ぶつぶつとこれからの事を考え始めた彼女の思考に割り込むように声を上げれば、顔を上げた彼女と視線が交わる。

 神に引っかかるようにして辛うじて頭に乗っているホワイトブリムが何だかおかしくて小さく吹き出すと、むっと彼女の目が少しつり上がったので軽く咳払い。

 

「今はまだ無理だけどさ……いつか、親父や兄さんを頼らなくても今以上の生活が出来るように頑張る。だからさ、そのときは……んむ」

 

 ぴとっと唇に触れた彼女の人差し指により言葉が途切れる。

 胸元まで持ち上げてシーツを掴んでいた手にきゅっと力が篭り陽炎のようにしわが生まれた。

 

「……期待せずに待ってますね、ダメダメご主人様」

 

 そうして、普段の毒舌メイドからは想像も出来ない花ひらくような笑顔を向ける彼女に。

 

(あっ好き)

 

 絶対幸せにするぞ、なんて思いながら彼女を抱きしめる。

 始まりの朝日が見守る中、人生最高とも言える瞬間を堪能していた。

 





メイドさん作品増えて(怒)(怒)(怒)

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