結局、現場主義が一番強いと思うんだ。   作:そこらの雑兵A

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繋ぎの回その2。

次回から破面編に入ります。


幕間 周りから見た春直①

朽木白哉の場合。

 

朽木白哉にとって荒木部春直は、気にも留めない、ただ古くて長く居るだけの死神だった。その出会いは、父である蒼純、祖父である銀嶺と三人で話をしている所を偶然見かけた時だった。

その時から、白哉にとって春直はわずかだが、忌避すべき相手に変わった。

 

なぜ、四大貴族であり、隊長、副隊長を務めている父と祖父に対して気安く話をしているのか。古参である事は知っていた。だが、所詮は第二十席程度。その実力などたかが知れている。そう思っていた。

化け猫こと、四楓院夜一とも親しげに話をしているのも見た。それも拍車をかけて、白哉は春直に対して、不快になっていく。

 

それからしばらくたったある日の事である。

 

ついに卍解を習得。その後も修練を続け、あと数年もすれば祖父に変わり隊長に就任することが決定した翌年。祖父に言われ、とある練兵場へと連れていかれた。そこは、少し特殊な場所で、霊圧を解放しても外へは漏れないように結界が張られている事がわかった。

 

「なぜ、態々このような所へ?」

 

「荒木部二十席を知っておろう?」

 

銀嶺がそう言うと、白哉は顔をわずかに顰めた。それを見て、銀嶺が小さなため息を吐いた。

 

「お前が彼を嫌っておるのは知っておった。なので、今回はわざわざ儂が頭を下げて、この場を設けてもらった。」

 

白哉が目を見開いた。現隊長であり、四大貴族の当主であった祖父が『わざわざ頭を下げた』。それだけで怒りで頭が沸きそうになった。

 

(そうやって熱くなる癖はまだ治っておらぬか。まぁ、これもよい機会じゃろう。)

 

「お待たせしてしまって申し訳ありません。朽木隊長。」

 

その声に振り返る。それと同時に白哉は思わず睨みつけてしまった。

 

「荒木部……春直……。」

 

「……なんで自分はそこまで敵対視されてるのか、よくわからないんですが?」

 

面倒くさそうな顔をしてしまう春直に、銀嶺が笑いながら頭を下げた。

 

「いやいや、済まぬ。どうも、白哉は変に意識が高いせいでな。なので、ここいらで一度鼻を折っていただこうと思いまして。」

 

「さらっと無茶言いますね。」

 

「じゃが、無理ではないのでしょう?」

 

呆れる春直に、銀嶺が微笑み、目を鋭くした。

 

「……できる範囲で頑張らせていただきますよ。」

 

春直がそう言うと、銀嶺は頷き、練兵場を出て行った。

 

「……悪いが手加減はせぬ。殺す気でいかせてもらう。」

 

白哉が斬魄刀を抜き、霊圧を高めた。並の死神ならこれだけで息が詰まるだろう。だが、春直は平然と笑みを浮かべる。

 

「ええ、どうぞ。殺れるなら……ね。」

 

 

 

この一戦がどうなったかは、また別のお話。ただ、それ以降、朽木白夜にとって荒木部春直は、敬するに値する人物となった。それは今でも続いている。

 

 

 

 

 

四楓院夜一の場合。

 

四楓院夜一にとって、荒木部春直は良い先輩であった。いつから親しくなったかは覚えていないが、浦原喜助とならび、いずれ三人で隊長となって尸魂界を守っていくものだと思っていた。

 

だからこそ、残念でならない。

春直が、まだ第三席であった頃の喜助に頼んで作らせた、左腕に着ける手甲。この手甲は、『装着した人物の霊圧を使って、自身の霊圧を抑えつける』という、まったくもってメリットのない装備品だった。

 

「なんでわざわざそんな物をつけるんじゃ。百害あって一利なしじゃぞ。」

 

ある時、夜一が春直に聞いた。すると、春直は笑いながら答えた。

 

「楽して霊圧が抑えられますからね。これで隊長にならなくて済みます。俺、事務嫌いなんで。」

 

呆れた。

 

「そんなもん、適当な部下に押し付ければよいじゃろうに。」

 

「そんな事してたら、いつか後ろから刺されますよ。それに、隊長になったら簡単に現世にいけないじゃないですか。こっちと違って、向こうの方が楽しいですしね。」

 

そう言う春直。その笑みを見ると、無理やり隊長にさせるのが悪く感じてしまった。なので、今の所はあきらめよう。

 

 

 

「なんじゃと!?」

 

現世で春直が行方不明となった。その報告に喜助も驚き、二人で現世に行こうとする程に慌てた。だが、隊長として私情でそう簡単に動くことはできない。

八番隊隊長の春水と十三番隊隊長の十四郎の主導で捜索隊が組まれたが、それでも発見はされなかった。

 

恐らく戦死したのだろう。その噂が出始めたころ、春直は別件で現世に行っていた藍染惣右介副隊長によって発見された。惣右介自身も重傷を負っていたが、虚は無事討伐できたという報告だった。この時、夜一は素直に喜んだ。誰にも見られていない所で、涙を流してしまう程に。

 

 

 

この時、既に賽は投げられてしまっていた。

 

 

 

そして舞台は現在に戻る。再会した時の春直は昔と変わっていなかった。相変わらず自身の力を抑えるための手甲をつけていた。今でも隊長になる気はないのだろう。それを残念に思いながらも、再会できたことをうれしく思う。

初心な所も変わっておらず、ついついからかってしまいたくなる。

 

(相変わらず愛い奴じゃ。)

 

一護たちと現世に戻るまであと数日。もう少しからかってやろうと、春直の霊圧を探して、ゆるりと歩を進める。

数分ほどで一人で歩いている姿を見つけ、後ろから飛び付く。春直の変な叫びが耳に心地よく、夜一は笑みを浮かべていた。

 

 

 

砕蜂の場合。

 

砕蜂にとって、荒木部春直は只々不愉快な相手であった。

自身が尊敬する四楓院夜一と親しげに話し、実力も認められている様だったのが余計に腹立たしい。一時期行方不明になった時、夜一が予想以上に慌てていたのも、不愉快の原因だ。

 

自身が隊長になってからは、パタリと噂を聞かなくなり、いつの間にか頭から消えていた。だが、ここ数日、現世から戻って来てから何やら裏でこそこそ動いていた。どうやら八番隊隊長 京楽春水の命令で色々調べているらしい。

 

(隊長の命令に忠実なのは良い事なのだがな。)

 

かなり古くからいる死神でありながら、いまだに第二十席のままだという事は、実力は大した事ないのだろう。だが、あの京楽春水が現世から呼び戻してまで、何かをさせるという事は、ある意味信頼された関係があるからだろう。

 

だからこそ、不愉快だ。

夜一の友人であったのなら、八番隊ではなく、隠密機動隊か二番隊に所属すべきだ。ある程度の実力があるのなら副隊長に任命してやってもよい。

 

 

 

朽木ルキアの極刑を春水と十三番隊隊長 浮竹十四郎が阻止しようとした時、それを止めようと飛び出した私の前に現れ、鬼道で妨害をする。その鬼道に込められた霊圧の濃度。その鬼道の完成度。

成程、これは侮れないな。

 

「こんなもん、飛び越えりゃ良いだけだろ!」

 

馬鹿が。そんな事をすれば……。

 

「はい、邪魔ぁ!」

 

当然だろう。私だってそうする。形通りというよりは、実戦派なのだろう。立ち振る舞いもしっかりとしており、思ったよりも厄介な相手なのかもしれない。

 

 

 

その後、紆余曲折あり、真の敵が分かった事で旅禍含め、八番隊や十三番隊の隊員達も許された。それから何度か、夜一と一緒に居た所を見たが、顔を真っ赤にしてうろたえているだけだった。あの時とは違い、その締まらない姿。不愉快だった。

 

夜一らが現世に戻って翌日、隊舎を歩いていた砕蜂の所に春直がやってきた。思わず砕蜂は眉をひそめてしまう。

 

「何の用だ、荒木部春直。」

 

「いえ、大した事では無いのですが、緊急時とは言え、副隊長を蹴り飛ばしたうえ、敵対してしまいましたので、そのお詫びというか……。」

 

律儀に頭を下げに来ていた。意味が解らない。

 

「気にするな。アイツには良い薬だ。」

 

「そう言ってもらえてよかったです。あ、大前田副隊長にはもう、油せんべいを渡しておいたので、これどうぞ。四楓院さんに聞いたので、好みに合うとは思いますが、嫌なら捨ててもらっても構わないので。」

 

そういって包み紙を手渡し、去っていった。その背を見送り、包みを開く。

その中には猫型の可愛らしいべっこう飴が入っていた。

 

「……まったく、不愉快な奴だ。」

 

そう言いながらも、頬が緩んでいる事には、気が付かなかった。




VS白哉はまた幕間で。
行方不明時の話は本編で触れます。
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