結局、現場主義が一番強いと思うんだ。   作:そこらの雑兵A

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夜一「うむ……どこから話したものか。」

突然空から塀が降ってきた。

 

「ッ!? こっちに殆どいないからわからんけど何年、いや、何百年ぶりか?」

 

春直が表情を厳しくする。どうやらこちらが想定しているより面倒なことになりつつあるようだ。

 

「荒木部二十席。どうやらかなり大事になっているようだね。」

 

たまたま近くにいたのだろうか、藍染惣右介が塀の方に目を向けながらやってきた。春直はあからさまに面倒くさそうな目をしてしまう。

 

「そうですね。それで、藍染隊長はどのような用件で?」

 

「そう邪険にしないでほしいな。君に少し話があってね。」

 

「俺には無いです。」

 

笑顔を向ける惣右介に、バッサリと断りを入れる。すると、惣右介の表情が厳しいものに変わった。

 

「そうかい。それで、これからどう動くつもりだ?」

 

「どう、とは?言葉の意味がわかりませんね。」

 

「……そうか。そう言うなら、僕の方も考えがある。」

 

そう言って踵を返していった。この二人のやり取りを少し離れていた所で十番隊隊長日番谷冬獅郎が見ていることに、春直は気が付かなかった。

 

 

 

 

 

朽木ルキアの報告書を読み、隊舎牢の清掃をしていた山田花太郎七席から話を聞き、十三番隊隊員からも話を聞いた。昔臨時で講師をした時の生徒に、「こんな人いたっけ?」みたいな顔をされた気がするが、気のせいだと思いたい。

それは置いといて、これらから改めて考える。

 

(やはり、おかしい。)

 

どう考えても、死罪はありえない。それどころか、双極を使うという。わざわざ並の(といっても、万全の状態なら上位の席官クラスはあるが)死神一人の処刑に使う程度の物ではない。

 

(全てがわかんねー。)

 

裏があるのだろう。だが、だれが?なんのために?目的が予想できない。座って考えることが苦手な春直は廊下を歩きながら考えていると警鐘が鳴り響いた。驚きながらも、見知った霊圧を探す。すぐに見つけ、瞬歩で移動した。

 

 

 

「隊長!」

 

「荒木部先輩!」

 

春水が部屋の窓から外を見ている所に、春直が駆け込んできた。そこには副隊長 伊勢七緒もおり、突然の警鐘に動揺したのか、呼び方が昔の先輩呼びになっていたが気が付いていないようだ。

 

「例の旅禍ですか。」

 

「だろうねぇ。そっちは何かわかったかい?」

 

対して動揺していない春水が春直にたずねるが、春直は目を伏せながら首を振るだけだった。

 

「なので、今度はあちらさんに直接たずねてみようかと思います。」

 

「虎穴に入らずんば……か。まいったね、どうも。」

 

「ただの虎なら容易いんですがね。猛虎でなければいいんですが。」

 

そう言って苦笑いし、春直は部屋を出ると同時に姿を消した。

 

「……隊長、荒木部二十席にまた何か無茶なことを頼んだんですか?」

 

七緒が目を鋭くしながらたずねるが、春水は下手な口笛を吹きながら部屋を出て行った。七緒もため息をつきながらその背を追っていった。

 

 

 

 

 

(さて、どこから行ったものかの。)

 

黒猫が歩く。旅禍の侵入により慌てふためく死神達は、わざわざ猫一匹を気にするほどの余裕は無いのだろう。塀を飛び降り、道を歩いていても誰も気に留めなかった。

 

(先ずはルキアの場所を特定するところからか。)

 

ピョンと塀を登り、屋根へと飛び移り歩く。

 

突然の殺気。

 

「破道の四 白雷。」

 

一筋の白い閃光が黒猫を貫かんと放たれる。その閃光を僅かに飛んで躱し、その方向に目を向けると一人の青年が隣の屋根に立って、こちらを見下ろしていた。

 

(……ここで此奴に出会ってしまうとはのう。)

 

「やっぱり、ただの猫では無かったようですね。申し訳ないですが、捕縛させてもらいます。」

 

指先を向けていた春直が抜刀する。同時に猫の姿が消えた。

 

「縛道の一 塞!」

 

後ろを振り返りながら指を伸ばし、空中にいる猫の足を縛る。しかし、それは一瞬で解け、猫は何事もない様に降り立った。

 

「(これも外すか。手強いな。)交わり染まるは 『童子丸』。」

 

春直が解号する。手にしていた斬魄刀が一瞬光った。真っ白な鍔と柄。刃はやや薄黒く光る。

 

(……始解の解放。ある程度本気というわけか。これは手強いのう。)

 

「一の型 木杖。」

 

春直の斬魄刀が杖へと変わった。そしてトンッと地面を軽く突く。瓦が砕け、根が伸び、茎となって猫へと絡み付く。

 

「ぬぅ!」

 

完全に捕らえた―——はずだった。猫の姿がぶれて、消える。

消えた猫が少し離れた所に着地し春直を見るが、既に姿は無く背後から声がした。

 

「速いですね。ですが、逃がす訳には行きません。」

 

完全に後ろをとった。だが、春直は目の前の猫ではなく、自身の背後へ杖を突き出す。

 

「!?」

 

まさか動きを読まれるとは思っていなかったのか、驚きながらもかろうじて杖を蹴る様にして空中へと舞う猫。それを追う様に春直も飛び上がった。

 

「縛道の三十。」

 

(いかん!)

 

春直が構えを取る。このままではまずい……。猫が輝き、風が巻き起こった。

 

「んなっ!?!?」

 

突然目の前に現れたのは褐色の美女。しかも全裸。美しく伸びた手足。凛々しい瞳。そして惜しげも無くさらされる胸部。

 

もう一度言おう。全裸である。

 

「もらった!」

 

刹那の隙。その隙に美女は、顔を真っ赤にしている春直の腹部に一撃、続けて頬へも一撃打ち込んだ。

 

「グッ……あなた、は……四楓院……さ、ん。」

 

不意に受けた重い二撃。記憶の中にある見知った顔に、思わず名前をつぶやきながら春直は気を失った。

 

「ふぅ……。危うく捕らえられてしまう所じゃったのう。しかし……此奴は相変わらず女子(おなご)に弱いままとは。」

 

意識を失った春直の顔をその胸で抱きしめながら、夜一は笑みを浮かべていた。そして春直の腕につけられた手甲を見て、表情を暗くする。

 

「……そして、相変わらずこれも付けたままか。まあ、良かろう。ここで出会えたのは好都合じゃ。ちいとばかし、力を貸してもらうとしよう。」

 

意識を失ったままの春直を肩に担ぎ、夜一は姿を消した。

 

 

 

 

 

「ちくわぶっ!?」

 

春直が目を覚まし、体を起こす。キョトンとして軽く周りを見渡すと、見たことのない広い空間だった。

 

(壁もあって、天井もある。でもなぜか明るい。こんなところがあったなんて……。)

 

呆然としながら、近くに感じる懐かしい霊圧。

 

「それで、どうしてこんなことになったのか説明してもらえますよね?四楓院さん。ってうぉい!?」

 

視線を横にするが、慌ててすぐに逆を向いた。一瞬だが、視界に映った姿。かつて二番隊隊長を務めていた死神、四楓院夜一……が全裸で腕を組んで立っていた。

 

「なんじゃ、せっかく久しぶりに会ったのじゃぞ。ちゃんとこっちを見ながら話してほしいもんじゃのう。」

 

「だったら服を着てください!!」

 

顔を真っ赤にしながら叫ぶ春直の姿に、夜一はニヤニヤと笑みを浮かべていたが、すぐに姿を猫に変えた。

 

「ほれ、これで良いじゃろう。まったく、相変わらず初心な奴じゃ。」

 

「四楓院さんは少々オープンになりましたね……。」

 

まだ赤いままの顔で春直が頭をかくが、すぐに表情を厳しくする。

 

「それで、喜助さんと一緒に姿を消していた貴女が戻ってきた理由を聞かせてもらってもよいですか?」

 

「うむ……どこから話したものか。」

 

行儀よく座った黒猫が目を細め、少し俯いた。髭がぴくぴく動いている。かわいい。




鋭い人は、今回でオリ主の由来がわかるかもしれません。
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