結局、現場主義が一番強いと思うんだ。   作:そこらの雑兵A

5 / 17
師匠のようなオサレな詠唱とか台詞回しが出来るようになりたいです。


十四郎「お前が……藍染を殺したのか?」

「まったくもう。それで、新しく何かわかった?」

 

「ああ。旅禍の目的。予想通り朽木ルキア救出だな。そういう意味ではこちらと目的が一致している。」

 

春直の答えに、春水が顎に手を当てながら考える。そして表情を厳しくし、もう一つたずねた。

 

「旅禍の中に、隊長格に匹敵する奴はいると思うかい?」

 

「……確実に一人はいた。だが、藍染隊長を殺す必要があると思うか?」

 

「……ないね、罪人の奪還が目的なら。だったら……。」

 

「まぁ、そうだろうな。」

 

内部に敵がいるという事だ。真剣な目で話す二人。普段の様子しか知らない隊員が見たら驚くであろう程、まじめな様子だ。

春直は普段からこんな様子を見せていれば、もう少し人望があっただろうに。

 

「目星は?」

 

「……理由は言えないが、藍染隊長の可能性を考えてたんだけどな。」

 

ジト目で溜息を吐く春直の答えに、春水が僅かに目を鋭くする。そして何かを考え始めた。

 

「だけど殺されてしまった。当てが外れてしまった。」

 

「いや、案外外れてないかもしれないよ。」

 

春水の言葉に、春直が怪訝な顔をする。つまり、藍染の死は偽装?なら、卯ノ花烈も共犯者の可能性が出てくる。春直としては、正直あの人は敵に回したくないが、そうも言ってられない。

 

「……気にしたくないけど、気になるな。脱走していいか?」

 

「いいけど、ボクを巻き込まないでよ。」

 

「そもそも、お前が先に俺を巻き込んだんだろ。」

 

嫌そうな顔をする春水に向ってため息を吐きながら春直が立ち上がった。

 

「これどうする?」

 

春水が牢屋の鍵と、牢屋の外に置いてあった斬魄刀を指さした。

 

「それを俺に渡すと流石にまずいでしょ。自力で出るよ。」

 

「そっか。じゃあこのまま置いとくよ。また何かわかったらよろしく。」

 

そう言って背を向けながら手を振って出て行った。姿が見えなくなり、霊圧がある程度遠ざかったのを確認し、春直は壁に手を付ける。

 

「君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ。」

 

春直の服、髪が僅かに揺れ、壁に触れている手が輝きを放つ。

 

「空の咆哮 大地の悲鳴 塞ぎ閉じ込め虚無と化す。」

 

光が壁へと伝わり、輝く円となる。

 

「焦熱と争乱 海隔てて逆巻き南へと歩を進めよ。」

 

「縛道の二十五 虚音(うつろね)。」

 

輝く円が消え、蜃気楼のように壁が歪んで見えた。

 

「破道の三十一 赤火砲。」

 

春直の手から火球が放たれ、壁を破壊。外への道を作るが音はせず、破片が散らばる微かな音が聞こえるだけだった。

 

(さて、とりあえず……腹減ったな。)

 

回収した斬魄刀を腰に差しながら歩き、考える。

遠くで感じる巨大な霊圧を気にしながら、呑気に歩いているが春直は脱獄者だ。さっさと逃げないと、またろくでもない事に巻き込まれるかもしれないのに。

 

 

 

 

 

「おぬしが鬼事で儂に勝ったことが一度でもあったか?」

 

「……ならば試してみるか?」

 

意識を失っている黒崎一護を肩に担いだ夜一。目を僅かに細め、睨みつけるようにしている白哉。二人が同時に姿を消した。

 

白哉の背後を取る夜一。振り向きざまに白哉の一閃。しかし、その一振りは空を切り、数メートルは離れたであろう位置に夜一が着地する。

 

「その程度の瞬歩で、逃れられると思ったか。」

 

ニヤリと笑みを浮かべていた夜一の背後に立った白哉が再度一閃。今度は確実に切り裂いた。だが、それは一枚の布に姿を変える。思わず白哉が目を見開く。

 

「その程度の瞬歩で、捕らえられると思うたか?」

 

懺罪宮の屋根から見下ろしながら、夜一は肩に担いだ男を三日で強くすると言い放ち、姿を消し去った。

 

「……逃げられちまったな……。」

 

十三番隊隊長 浮竹十四郎が困惑気味に、白哉に声をかけた。白哉が納刀し、ルキアへと歩を進める。

 

「兄……様……。」

 

全身を震わせ、冷や汗を流しながらルキアが白哉を見る。白哉も一切目をそらさず歩を進め、手を伸ばせ触れられるぐらいの距離に来たところで目を伏せた。

 

「済まぬ。」

 

突然の一言。訳がわからず困惑するルキアに、白哉は言葉を続けた。

 

「……中央四十六室と山本総隊長へ、減刑の嘆願書を出したのだが、受け入れられることは無かった。もはや私には……お前を救う事はできん。」

 

白哉の言葉にルキアは目を見開く。そして涙を流した。

 

 

 

ああ……。私は……ちゃんと家族として……愛されていたのか……。

 

 

 

「ありがとうございます……兄様。その思いだけで……私は満足です……。」

 

涙を拭うこともせず、笑みを浮かべながらルキアは意識を失った。先ほどまで周囲を覆っていた濃い霊圧が消え、気が緩んでしまったのだろう。そのルキアを白哉は優しく受け止めた。

 

「済まぬ……。」

 

もう一度謝ってルキアを抱え、十四郎へと近づきルキアを差し出す。

 

「……ああ。後はこっちでやっておくさ。」

 

「礼を言う。」

 

一言だけ残して背を向け、白哉は姿を消した。その背を見送り、十四郎は少し悲しそうな笑みをする。

 

「やれやれ。やっと素直になったかと思えば、とんでもない状況になってしまったな。」

 

「本当、それですよね。」

 

「うぉ!?なんだ荒木部か、驚かすなよ。」

 

十四郎の独り言に返事があり、驚き振り返ると春直が腕を組んで立っていた。面倒くさがっていた割には、自分から面倒に首を突っ込みに来ていた。

 

「すみません。まさかそんなに驚くとは思いませんでした。」

 

「まったく。まあいい、まず一つ確認したいことがある。」

 

表情を鋭くした十四郎が春直を見る。春直もそれを同様に真剣な表情で受け止めた。

 

「お前が……藍染を殺したのか?」

 

「俺が殺せると思うか?」

 

「必要があれば……やるだろう?」

 

「……否定できないな。」

 

春直が視線を逸らしながら答えると、十四郎は目を閉じ、微笑んだ。

 

「正直な奴だな相変わらず。だが、これで安心した。お前は犯人ではない。おーい、仙太郎、清音!」

 

十四郎が声を上げる。パッと二人、姿を現して膝を突いた。春直が感心したように目を見開く。

 

「「お呼びでありますか、隊長!!」」

 

「やっぱり付いて来ていたか。いつからいた?」

 

「『ふぅ、やれやれ物騒だな』からであります、隊長。」

 

「最初っからじゃねぇか。」

 

「ちょっとまて、それがわかるって事は荒木部はいつからいたんだ。というかお前、容疑者として牢に捕らえられたって聞いたぞ。」

 

「あ、すいません。所用を思い出したのでこれで失礼します。」

 

十四郎の突っ込みを受け、ごまかす様に春直は瞬歩で姿を消した。ちなみに春直がここに来たのは、岩鷲が「なんだ?刀身が―――」の時である。間に合ったんだから、岩鷲の事助けてやれよ。

 

 

 

(当面、四楓院さんとあの旅禍の少年、朽木さんは安全だろう。崩玉を取り出すタイミングが処刑される時だとすれば猶予はまだあるが……。)

 

霊圧を抑えながら、駆け足で走る。途中で巡回中の死神達とすれ違うが、脱獄者であるにも関わらず特に何も言われない。顔を知られていない事が功を奏した。若干複雑な心境である。

それはそれとして、春直が足を止め顔を上げた。その視線の先にある四と書かれた建物。

 

 

 

 

 

執務室で書類を書いていた卯ノ花烈が手を止めた。正座のまま扉の方へと向きを変える。

 

「日番谷隊長によって拘置されたあなたが、どのような用ですか?」

 

「少し、聞きたいことがありまして。お話を伺ってもいいでしょうか。」

 

スッと襖をあけ、部屋へと入った春直が正座をする。その春直を見て、珍しく真剣な表情だと思った烈は、優しく微笑んだ。

 

「私が答えられる範囲でよろしければ。」

 

「ありがとうございます。伺いたいのは、藍染隊長の御遺体についてです。あれは、本物でしたか?」

 

「欺くため義骸を使った可能性も踏まえたうえで、あらゆる方面から調べた結果、藍染隊長は逝去されたと判断しました。」

 

目を伏せながら烈が答えた。救護専門である四番隊隊長の烈が言うのだから、それは紛れもない事実だろう。

 

「過ちの可能性は?」

 

その春直の答えに、目を開いた烈の威圧感が急激に高まる。自身の成した仕事を否定されたのだ。怒りが沸くのも当然だろう。並の死神ならば、その圧だけで背筋が凍るどころか、意識を刈り取られたかもしれない。

だが、春直は表情を変える事無く淡々とたずねた。

 

「一切の違和感なく、確実に、その遺体が藍染惣右介だと言い切れますか?」

 

「……違和感はありました。ですが、その違和感が何なのかは、わかりません。」

 

圧が霧散し、烈が首を振った。何かがおかしい。しかし、それが何かはわからない。それが違和感だった。だから言葉には出来なかった。

だが、それだけで十分だ。春直がいつもの様に、少し気の抜けたような笑みへと戻る。

 

「ありがとうございます。その答えだけで、確信が持てました。」

 

「あなたは何を知って、何をしようとしているのですか?」

 

心配そうな顔をする烈。だが、春直は首を振った。

 

「まだ、それは言えません。このごたごたが終わったら、その時は教えますから。」

 

春直がそう言うと、烈はスッと立ち上がり、後ろにあった戸棚から懐に入る程度の小さな箱を取り出して春直に差し出した。首をかしげながらそれを受け取る。開けると中には薬がいくつか入っていた。

 

「疲労回復剤、霊圧補助剤、それと簡易栄養食です。昨日から何も食べてないのでは?」

 

「……お見通しですか。ありがとうございます。」

 

優しく微笑む烈に、春直は頭を下げて部屋を出て行った。廊下を足早に歩く春直とすれ違い、入れ違う様に副隊長 虎徹勇音が部屋に入ってきて首を傾げた。

 

「隊長、今の方は?」

 

「古い友人ですよ。忙しい合間を縫って、話をしに来てくれました。」

 

そう答えたその顔は、優しい笑みを浮かべていた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。