Fate / Bonjin survivor   作:墓守幽也

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序章終わらすのに半年以上かかってるってマジ?(白目)
言い訳させてもらえるならリアルの都合がですね……不定期更新と予防線を張ってあった甲斐があった(自虐)。

序章のプロット自体は半年前からできてたんです……本当なんです信じてください!

あ、実は今回の更新でもまだ序章終わりません。中編その2です。


8:命惜しさに呼び出した助っ人が今にも死にそうなんだがどうすりゃいいの

 アーチャーが最後に放った一撃――「偽・螺旋剣(カラドボルグ)」とか言ったか?――の齎した破壊はすさまじいものだった。

 余波だけにもかかわらず、地面が派手に抉れ、樹木が吹っ飛び、戦場となった洞穴前は燦々たる有様だ。

 

 大きく息を吐き、ふと眼前の様を自然保護団体に訴えたらどうなるかな? などというアホ臭い疑問が浮かんだ。

 ……あの皮肉屋口調の黒い影がブーイングを受けてたじたじになっている様を想像して変な笑いが漏れる。

 そしてようやく実感する。

 

 どうやら、無事に生き残れたようだ。

 

 「マシュ……マシュっ! よく頑張ったね……ありがとう!」

 

 「フォウ! フォウ!」

 

 「先、輩。……フォウさん」

 

 精根尽き果てたといった様子で地べたに座り込むマシュちゃんに、感極まったのか涙目の立花ちゃんがよろけながら抱き着いて頭を撫で回している。横ですり寄ってる白いケモノはまあ置いとこう。二人と一匹の警戒対象の中でおそらく実害が一番少ないのはコイツだからな……。

 

 さて、二度も命を救ってくれた功労者にはひとまず休んでもらって……今後の方針はこっちで決めとこうかね。

 

 「しっかしボロボロだなぁ。どうする? 一旦引き返すか?」

 

 『うーん……どうしようか?』

 

 「進むにしろ戻るにしろ、その前に休憩が必要でしょう。ロマニ、きちんとバイタルチェックはしているの? さっき倒れた時も何も言わなかったけど……立花の顔色、最初に会ったときより大分悪いわよ」

 

 『え!? あ、うん。これはちょっとまずいかな……。唐突なサーヴァント契約に、過酷な実戦の繰り返し、トドメにさっきの令呪……これまで使われてこなかった魔術回路(しんけい)がフル稼働したせいで脳に大きな負担がかかってる、ね』

 

 「オイしっかりしろ医者」

 

 「フォウフォウ!」

 

 そっちはそっちで超が三つ付く位忙しいのはなんとなく理解してるが、お前本業医者だろ……。

 バイタルチェックぐらいはきっちりしてくれぇ。

 なんとなくフォウも咎めているような気がする。 

 

 『う、ごめん立花ちゃん。マシュ、キャンプの用意を。温かくて蜂蜜のたっぷり入ったお茶でも飲んで一休みにしよう』

 

 「……了解しましたドクター。ティータイムには私も賛成です。先輩はどうぞお先に休んでください」

 

 「あはは。大丈夫大丈夫……ちょっとふらふらするけどお茶淹れる位なら――」

 

 「むしろ邪魔だから黙って座ってるべきそうすべき。そういやさっきセイバーも何か動きが鈍って……っておいどうした!? 顔真っ青zy――口から血が出てる!? 毒でも使われたか!?」

 

 冷や汗かきながら引き攣った笑みを浮かべる立花ちゃんを静止して、もう一人体調が悪そうなのがいたなぁと、何となしに振り返ってみれば――立花ちゃんより更に酷い惨状があった。

 

 目は虚ろで青息吐息、口の端から血を一筋垂らし、鞘に仕舞い直した刀を杖代わりに辛うじて震えながら立っているだけのセイバーの姿がそこにあった。

 

 ええええええええナニコレどうなってんだ!?

 

 「ち、違います、よ。なんでもない、ですよマスター。大丈夫です、大丈夫。まだまだ行けますって――」

 

 「どアホ! ちょうどいいから休め! 別にこちとら急いでる訳じゃねえんだから!」

 

 「こ、ふあっ、ちょっと――」

 

 どう見たって大丈夫じゃないのにやせ我慢しているセイバーを引っ掴んで無理矢理横にする。

 地面に直じゃ流石に問題ありそうなので、大きめの石を蹴ってのけた後に制服の上を脱いでセイバーの下に敷き、そしてひざ掛け代わりにジャケットで包んだ。最後に、硬いかもしれんが片足を枕代わりに提供する。

 

 キャスターがニヤニヤしながら見てるが無視だ無視。確かに美人だし気にしてない訳じゃないがそれとこれとは話が別だ。

 

 「お、結局休憩にすんのか? んじゃ俺は決戦前の景気づけにイノシシでも狩ってくるか。精の付くモン食えば回復も早えだろ」

 

 「この特異点にまともな生き物いないんじゃなかったの? というかそもそも肉はやめて肉は。どうせなら果物にしてよね」

 

 キャスターが要らん気を回したのか狩りに行くとか言い出すが所長にすかさずツッコまれる。

 

 そして何を贅沢抜かしとんじゃ、と思いながら所長を見やると懐から何かの包みを出すところだった。

 ……自前で用意してたのか。

 

 

 はて、フルーツ……?

 

 

 なんか一個大事なことを忘れてるような……。

 

 

 「ゲホッ、ゲホッ」

 

 

 ってイカン。こいつの方が先か。

 

 

 :

 

 :

 

 :

 

 「まさか所長がドライフルーツを隠し持っていようとは……改めてその用意周到さに舌を巻きました」

 

 「たまたまです。……頭痛には柑橘系がよく効くのよ。それよりも……」

 

 「?」

 

 「………」

 

 この、言いたいことがあるけど素直に口に出せない感じすごく解るわぁ……所長と俺じゃベクトルが違うが。

 

 そんなこんなでおそらくこの特異点最後となる休息の時間だ。

 全員でマシュちゃんが淹れてくれた蜂蜜入りの紅茶を啜りつつ車座になって一息ついている。

 サーヴァントの二人も、まあないよりはマシとして一緒に茶を飲んでいる。

 

 緑茶だったら俺が淹れたんだが補給物資にはなかった。ちっと残念。

 まあ糖分補給も目的だろうからお茶請けもなしに緑茶淹れてもどうしようもなかろ?ってのはその通りなんだが。

 

 ちなみに、立花ちゃんたち女子勢には所長からなけなしのドライフルーツがおすそ分けされているが俺にはない。

 正確には、俺に渡された分をセイバーにやったからもうない。

 サーヴァントも飲食したモノを魔力に変換してエネルギーにできるため、人間同様活動のために食事の類を摂ることも無駄にならないらしい。

 なので気休めだが、少しでも早く回復してもらおうと食べさせようとしたのだが。

 

 「サーヴァントに食事は必須ではありません。ちゃんと正規の補給手段があるんですから、私はそっちでいいんです。マスターに支給されたんですからマスターが戴いてください」

 

 と、口を頑なに閉ざし頑として食おうとしなかったので、脇をくすぐって無理矢理口をこじ開けて捻じ込んでやった。悶絶してたが知ったことか。

 こっちは全部納得ずくでお前の回復の方が重要と判断したんだから素直に受け取ってほしいもんだ。

 

 キャンプの準備中に俺のバイタルもチェックしてもらったが「疲弊はしているが常識の範囲内」と言われた。

 どうも「魔術回路が既に開いていたかどうか」「サーヴァントとの契約手順」「元々の魔力のキャパ」等が相まって立花ちゃんよりかは疲労しないで済んでいるらしい。

 ちなみに俺も自分の魔力回路がいつ開いていたのかは把握していない……なんかカルデアに来た時からもう開いてた。

 あとはセイバーの維持に必要な魔力消費が地味に少ないのもポイントだな。宝具もまだ発動してないみたいだし。

 

 ……まあ、まだまだ戦えるってのは良いことだよな。「戦わなければ、生き残れない!」ってな。……冗談じゃねえ。

 

 「えっと、お代わりですか? 所長」

 

 「一杯で十分よ! というか、私は紅茶よりコーヒー派だと覚えておきなさい!」

 

 「じゃあ何で補給物資に入ってたのが紅茶だけだったんですかーっと」

 

 「な、それは……って、いえそうじゃなくて。そういう話じゃなくて!………あ゙あ゙ーーっもう!」

 

 所長に睨まれていた(という訳じゃないのは判っているのだが傍目から見てるとどう見ても睨んでんだよなぁ……)立花ちゃんがたまりかねて会話のキャッチボールを仕掛けるが、テンパった所長は避ければいいのに律儀に回答を投げ返してしまったので茶々を入れておく。

 

 「あの、大丈夫ですか?」

 

 「ん゙っん! こ、ここまでの働き振りは及第点です。カルデア所長として、あなたの功績を認めましょう」

 

 「……へ?」

 

 「……何よ、その間抜けな顔は。いくらまぐれだろうと、今カルデアのマスターはあなた一人しかいないのだし。三流だろうが一人前の仕事はできると分かったし、その調子でうまくやっていれば褒めてあげてもいいってこと」

 

 「おお、なんと。立花ちゃんを一人前と認めてくれるとは……こっそり隠してた砂糖菓子でも食べました?」

 

 「ロマニ、無駄口叩いてないで――――」

 

 

 ……さて、あっちはあっちでちゃんと言葉のボールの投げ合いが始まったし、こっちもこっちで言葉のドッジボールせんとな。

 召喚したときはまあいいかとスルーしたが、問題が起きた以上は訊かにゃあなるまい。

 

 

 「で、これどういうことよ。戦闘でなんかあったようには見えなかったんだが?」

 

 「えーっと、ですね……ははは」

 

 茶を飲んで果物を口にしたおかげかは判らないが、大分顔色も戻ってきたセイバーに問いただす。

 

 サーヴァントは基本的に「超凄い幽霊」みたいなもんであるはずだ。

 幽霊が病気にかかろうはずもない。ましてや召喚したばかり。

 魔力の供給が上手くいってないから弱ったとか、攻撃や毒、呪いを喰らったといった外的要因でも無い。

 であれば答えは自ずと絞られる。

 

 

 元より(・・・)そういう存在である(・・・・・・・・・)可能性。

 

 

 つまり召喚した際にセイバーが話すのを拒んだ、彼女の正体に通じる話だろう。

 

 正直な所、他人に話したくないことを無理に話させるのは趣味ではない。

 が、セイバーがそれを明かしてくれないが為にこの先全滅、などという結果になる可能性が僅かでもあるならここでハッキリ聞いておかねばならない。

 

 

 互いにじっと見つめ合うこと数秒。

 

 

 「そ、そんなにじっと見つめないでくださいよ……あ、私があんまり可愛いもんだから見とれちゃいましたかー? アハハハ、ハ……」

 

 

 更にじっと見つめる。

 

 

 「………」

 

 

 セイバーが視線を逸らした。

 

 それでも構わずじっと見つめる。

 

 

 「…………………」

 

 

 じっと、見つめる。

 

 

 「……オーケー。自分の素性については無理に話さなくてもいい。だがせめてこうなった原因周りについてだけでもいいから教えてくれ」

 

 「………わかりました。ご迷惑かけてるのは事実ですし、キリキリ白状しますとも……」

 

 「特に迷惑だとは思ってない。喚んだ時ちゃんと言ったろ……迷惑かけてんのはこっちだろうに」

 

 「で、ですが。私がちゃんとしたサーヴァントならあのアーチャーだって……!」

 

 「ロクに戦えない俺の代わりに戦ってほしいと呼び出して、応えてくれただけでありがたいのにこれ以上何を気にしろってんだ。そんなんで一々文句言う程恩知らずじゃないつもりだぞ?」

 

 むしろ気にしているのはこっちだ。

 セイバーを召喚したときのあの言葉――納得ずくで召喚に応じた、という言葉。

 アレがずっと気にかかっている。

 

 助けを求める声に応えてくれた――()()()()()()()()()()()()()味方になってくれた恩人に、何も返さずに別れることになりはしないか、と。

 

 

 「………そう、ですか。……マスター、こうなった原因についてですが」

 

 妥協点を申し出たこちらに折れたのか、セイバーはぽつぽつと話し出した。

 

 「私、生前不治とされていた病で命を落としまして……これはその結果として付いたスキルのようなモノです。たまにこうして行動不能になったり、敵前で無防備になったりする程度の能力でして……」

 

 「何その要らないスキル!」

 

 「なんだそりゃ。致命的じゃねえか」

 

 「二人とも、あまりからかっちゃダメだよ……」

 

 「生前の死因が弱点になるのはサーヴァントの常だが……スキルとして発現するなんざ相当だな……」

 

 向こうの会話はとっくに終わったのかさっきから聞き耳立てていたが、思わず、と言った感じで叫んだ所長に便乗して、セイバーの反応を見るためにちょっとだけからかってみる。

 病弱だろうが何だろうがセイバーを切り捨てるとか在り得ん話だが、そうなるとこのデメリットとはうまいこと付き合っていかないといけない。

 セイバーがそれを気にしてるのはあからさまだがその程度をキチンと測っておくべきだ。

 そうすれば今後の付き合いでも要らぬ藪を突かなくて済むだろう。

 

 ……と思ったら、セイバーに憐憫の視線を向けていた立花ちゃんから非難声明が届けられた。

 ついでにマシュちゃんもジト目でこっちを見ている。

 挙句ここまでの諸々の会話も聴きに徹していたキャスターですら同情的な声を上げる始末だ。

 

 「うう、私だって好きで付けてるんじゃないですやい……どうせ私はいらない隊士ですよ!」

 

 「いやいてくれないと俺が困るんだが」

 

 「!? ううっ……ま゙ずだぁ」

 

 召喚した直後くらいに内心でこいつをぐいぐい来るタイプと評した覚えがあるが……実は相当にメンタルが脆かったらしい。

 多分いい歳なんだろうに泣きつくんじゃないよ、もう……周りの生暖かい視線が痛いんだよ!

 若干一名「何で徹底的に正体を暴かないんだ!」的なトゲトゲしたのを送って寄越してくるのもいるが。

 

 って、そういえば所長(トゲトゲしたの)に教師役の打診まだしてねぇ……。

 後で頃合い見て切り出そう……。

 

 

 泣くのを止めて眠り始めたセイバーを抱え、起こしてしまわないように横の会話にはあまり口は出さなかった俺はそんなことを考えていたのだが、結局所長と話をする機会は訪れることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『■■■■■■■■■■■―――!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自分はもう死ぬしかないと、命を諦めろと耳元で怒鳴られているかのような狂気を叩きつけてくる咆哮。

 

 

 遠方から響いたその轟音の正体が何かを察する間もなく、視界の端に空へと舞い上がる数本の樹木が見えた。

 

 

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