Fate / Bonjin survivor   作:墓守幽也

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2:左遷先はSFかよと空笑いしたら実家の先祖はオカルトとかどうなってんだ

 オッスオラ○空! 今日本にいるの!

 

 はぁ……こうでもしないとやってらんねえ。

 

 とりあえず予定通り日本に到着して、実家行ってきました。

 今から南極に向けて出発です。

 南極旅行の例にもれず、南アメリカ飛んで現地からヘリでダイレクトにカルデア入りだってさ。

 

 黒服の怖い人たち(国連関係の人間………ではなく、カルデア方面の職員らしい)に囲まれて飛行機待ちなう。

 

 ここ数日、十分すぎる位に非現実的なことばかり起きていると思っていたが、今回の帰省はそれらすべてを合わせてなお届かん程度には衝撃的だった。

 

 ホントどうしてこうなった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 例の辞令渡されてから一週間経った。

 

 とりあえず渡された資料を読み込むことに日時を費やしてたんだが、まあ出るわ出るわ意味不明の単語が。

 カルデアについての資料だけでも「英霊召喚」だの「レイシフト実験」だの、厨二病かサブカルの設定資料かって位にわけわからんことだらけでいっぱいいっぱいだったっつ-のに。

 魔術協会? 時計塔? アトラス院? 聖堂協会? 魔術士の名家? 過去の事例?……こんなもん一遍に渡されても覚えきれるわきゃねーだろうがぁぁぁぁぁぁあ!

 

 これ帰っても絶対事務局にゃ戻れねえんだろうな……そういうこと(・・・・・・)の対応部署へ強制配属とかになるんだろうなぁ!

 そんな感じで腹を痛めつつやっとこさカルデア関連の資料についてだけでも大体覚えた(意味がワカラン単語や読み切れなかった魔術世界の政治・技術関連のデータについては後日向こうで詳しい奴に説明してもらうことにした)辺りでアメリカを出発する時間がやってきた。

 

 今回の帰省に関してだが国連……というか例の局長の部下の兄ちゃんが同行している。

 顔合わせした時は名前と所属、目的を簡便に話すだけで済ませ、行きの機内――機密保持のためとか言う話で生まれて初めてのスイートクラスだったが――でも話を振られない限りは終始無言を貫いていた。

 ビジュアルが黒服にサングラスだったせいでマ○リックスとかMIBを連想してしまい、こいつら今度は宇宙人とか言い出すんじゃねえだろうな!?などと内心無駄に警戒していた(今でもしている)が、こっちは例の資料と格闘しててそれどころじゃなかったから静かにするよう努めてくれたのは大いに助かったな。

 

 そのまま何事も無く羽田に到着し、そのまま何事も無く兄ちゃんの運転する公用車で一路実家へ。

 ちなみにここまでの旅路で一番大変だったのはあの宝箱をどうやって人目につかないように運搬するかだったが、非日常の塊であるカルデアへの到着前からよもやこれ以上に面倒なことなどもう起きまい…と、この時はまだ思っていた。

 

 国連に就職が決まってから一度会いに来ているので一ヶ月と経たない状態での帰省――しかも怪しい黒服がオマケとしてくっついている状態だったが、我が家族は特に何か言うでもなく暖かく迎えてくれた。

 これは素直に嬉しかった。

 

 我が家は首都圏都市部という立地にはミスマッチな今時非常に珍しい日本家屋であり、瓦葺きの屋根に縁側、畳敷き、そして蔵までくっ付いている。

 物珍しさと広さからか、小さい頃は友人たちがこぞって遊びに来ていた――二階から屋根に出て落ちそうになる奴やら、家の敷地中でかくれんぼしたら蔵に隠れた奴が収蔵品に潰されて出てこれなくなるやら、床下に潜ったら子育てしていた野良猫に顔を引っ掻かれて涙目になる奴やらアクシデントでいっぱいだった――のを、小さい頃のことながらよく覚えている。かつての我が家の敷地内は危険と不思議が溢れる場所であった。

 過去を振り返り、非常識や非日常と言うのは子供の身の回りには多くあるが、大人に育ってから一つ一つを手にとってみれば「ああ、特に何でもないことだったな」と感じるなぁ、などと解ったようなつもりで感傷に浸っていた俺だったが、絶賛非常識非日常に見舞われている身のくせして認識が甘すぎたということを思い知らされるのはそう遠い話ではなかった。

 

 

 

 ――人が空想できる全ての出来事は、起こりうる現実である。

 かつてそんな言葉を残したのは一体どこの誰だったか。

 

 

 

 時間は経過して深夜。時差から目が冴えて寝付けなかった俺は例の考えを実行に移すことにした。

 

 ――自宅の蔵にある物品を宝箱に詰めまくるというアレである。

 

 実は我が家において蔵はあまり稼働していない設備である。

 この蔵を盛大に活用していたのは三代前の曾爺さんの時代までであり、現在蔵の物品は祖父ちゃんが管理してはいるがロクに動かされていないという。

 何でも祖父ちゃんが覚えている限りでは、曾爺さんがどっからか捻出した資金力にモノを言わせて蒐集した色んな物品がジャンルの節操なく大量に収蔵されており、一体何に使うんだこんなものとか、一体いつの代物だと言いたくなるものも大量にあったそうな。

 というか物量が多すぎて全貌の把握すらできていないとぶっちゃけられた時は、こんな身近に魔境があったのかと内心呆れ果てた。

 

 移動させるのが面倒くさい宝箱は到着したときに蔵に安置し(黒服の兄ちゃんは元より家族――特に祖母ちゃん母ちゃんの女性陣――を誘導するのが骨だったが)、管理人である祖父ちゃんと親父ぃにコッソリ相談して蔵にある物品の持ち出し許可も得て準備は万端である。

 カルデアに行ってしまえば追加の物資を手に入れることは難しいと予測されるため、向こうで少しでも使う可能性のある物品はそのまま持って行こうという算段だ(使ってるから持ってっちゃダメな物もリストで貰っているので問題ない)。

 

 かくして実験を開始したわけだが……たこ焼き用のプレート、消火用のホース、スキー板、天体望遠鏡、確かフランスら辺で昔活動してた有名な絵師の絵画(本物かは判らん)、若干錆の浮いた日本刀(かなり放置されてたはずなのに普通に切れた)、干からびたトカゲの尻尾が数本入ったケース、紐閉じの古びた書籍(殆ど判読できない)、桐箱に入った鉄製の鎧兜、大量の瓶の王冠の入った袋、時代も国も問わない古銭を集めたショーケース、何故か中にドイツ語の恋文が仕込まれていた藁人形等々……「なんでこんなもん集めた」と言いたくなるような代物が山のように出てきた。

 

 節操ないラインナップというのは聞いてはいたが、具体的な例などは訊かなかったし何よりそこまで真剣に捉えてはなかったので現実を目の当たりにしてツッコミが止まらなかった。

 

 しかし――

 

(うええ……なんじゃこりゃぁ……)

 

 そんな諸々が可愛く見える位には奇妙な代物を前にして作業の手は完全に止まっていた。

 

 蔵の奥、地下に安置されていた金属製のデカい錠前の付いた和櫃――何故か鍵を探すまでもなく触れるだけで勝手に鍵が開いた――の中から出てきたのは、そこそこ大きい人間の片腕のミイラ、迂闊に触るとポロポロ崩れてしまいそうなおそらく和紙製の大量のお札、その他衣類や装飾品類に数点の革表紙の書物などであった。

 

(わけわかんねえモンばっか出てくると思えばとうとう人間の死体かよ……。ウチの曾爺さん…というかウチの家系って一体ナニしてたんだ?)

 

 最も目を引く腕のミイラを見つつ、由来でも書いてないもんかとあまり期待せずに書物を一冊無造作に手に取る。

 

 

 そして―――

 

 

 

 

 ――所変わって我が家の居間。

 

 既に日付が変わっている。

 座布団に座った俺は、長めの座卓を挟んで対面に座る男――祖父ちゃんの話を聞いていた。

 

 先刻何気なく手に取った一冊の革表紙の本。

 そこに書かれていた事柄が指し示すある疑惑の解消のために、居間で俺を待ち構えていたらしい祖父ちゃんに質問をぶつけたのだ。

 

「――つまり、その、なんだ。ウチの先祖は魔術師………じゃなくて、呪術師だったと?」

 

「ウム。そういうことになるな」

 

 

 ―――マジかよ……。

 

 「左遷先はSF映画みてーなことする施設らしいぜ! ウッソだ―w」と空笑いしてたら実家の先祖はバリバリのオカルト系が生業だったらしいというこの現実。

 

 どういうことだってばよ……。

 

「話を纏めると、ウチの曾爺さんは魔術師としての日常に嫌気がさして親が両方死んだ辺りで研究を止めて、祖父ちゃんが自活できるまで面倒見た後に出奔したと」

 

「ウム」

 

「で、曾爺さんの親が死ぬまでは祖父ちゃんも呪術の教練は受けてて、蔵の中にあったそれ関係の品を仕分けて地下室にしまい込んで封印したと」

 

「ウム」

 

「……で、俺の…………ま、魔力……に、反応して封印がサックリ解けちまったと、そういう感じであってる?」

 

「そうだ」

 

 ……まだ魔力とかいう単語を口に出すことに恥ずかしさを覚えてしまう。

 現代に生きる一般人である俺にとっては「中二病乙www」とか、そんな文字列が頭を過ぎるような世界の言語でしかないからな。今は、まだ。

 あーあー、これからこれに慣れてかなきゃいかんのか……うおお鳥肌立ってきた……。

 

 んで祖父ちゃんの話によれば、曾爺さんは魔術師――もとい呪術師としては歴代随一の天才と評される程の腕前だったらしいが――

 

『は? "根源"? 何言ってんのアホか。そんなもん目指すぐれーなら日々を楽しんで生きることに全力傾けるわ』

 

 ――とこんな感じで、"根源"とやらへ到達するために自分の物から他人の命までありとあらゆるものを利用することに躊躇わないのが普通らしい"魔術師の一門の長"としてはすさまじく向かない人格をしていたそうな。

 

 呪術の習得、研鑽、研究を監視する親がいるうちは養育された義理からおとなしく魔術に関わっていたが、祖父ちゃんのことは極力関わらせようとしなかったという。そして親二人が死に祖父ちゃんも自活できる程度まで育て上げると「後は好きに生きさせてもらうぜヒャッハー!」と家を出てそれ以降全く帰ってこなかったという話だ。

 

「……祖父ちゃんは受け継がなかったんだな」

 

「応。……私の祖父母は典型的な魔術師でなぁ。血族以外は人とも思わず、呪術の研鑽のためなら有象無象など実験材料にしても一向に構わん、むしろ死んで役に立て――とそんなことを頭の内で考えるどころか平気で言い放つ人間だったのよ」

 

「………」

 

「母親は私を産むのと引き換えに無くなってしまってなぁ……私は父に育てられた。おかげさまで、育っていく中でも私の感性は魔術師とはかけ離れた一般人のソレのままだった……変わることなく、普通の人間でい続けられた」

 

「祖父ちゃんはそれがいい、と思ったわけだな。それから曾爺ちゃんも」

 

「ああそうだ。父の遺骸を持ち帰ってくれた友人――魔術師ではないぞ?――の話によれば、習得した呪術を活かしてあちこちで気まぐれに人助けながら旅をしていたらしいなぁ。最期も戦地での救助活動の最中に力尽きて眠るように無くなったらしい。「アナタの父に命を救われたから」とわざわざ届けに日本まで来てくれてなぁ。それまで私は、自分のせいで父が苦しんでいたのではないかと、生き方を縛ってしまっていたのではないかと負い目に思っていたんだが。あの時、対面した父の遺体は微笑んでいてな。「俺の生き様は間違ってなどいなかった」と。「それは素晴らしい物だったのだ」と。「俺は好きなように生きて好きなように死んだ。だから気にするな」と言われた気がしてなぁ。………救われたよ」

 

 俺の曾爺ちゃんは随分とまあ、"面白い"人物だったらしい……できりゃあ生きてる内に会ってみたかったな。

 ……って、アレ?

 今の話一か所気になるところが――

 

「……ん? んじゃ箱に仕舞ってあったあの腕は? てっきり曾爺ちゃんのだと思ってたが、話の流れからするに葬儀はちゃんとやったんだろ?」

 

「……"魔術刻印"というのは知っとるか?」

 

 例の資料ではまだ見た覚えのない単語が出てきた。

 うーん……技術関連資料の方かなぁ?

 

「いや知らん。ただ刻印ってーからには……ああ、なるほどそういうことか。こう、体に刻む研究成果とかそういう感じか? だから片腕だけ燃やさず残したって?」

 

 脳内イメージはハガ○ンの某バッテンさんとそのお兄ちゃんである。

 あんな感じのものが目に見えないように残っているのなら腕だけ残しているのも納得がいく。

 ……呪術から決別を選んだ祖父ちゃんがその選択をしたらしい不自然さを除けば、だが。

 

「そうだ」

 

「どうして? 魔術とは縁を切りたかったんじゃなかったのか?」

 

「………遺言だよ」

 

「……曾爺ちゃんの?」

 

「ああ。『呪術という代物自体が悪しきものとは思わん。実際俺もこの技術に随分と助けられたし、人も助けた。どんな技術も使い方、使い手次第だ。旅をして強くそう実感した。せっかく長年積み重ねた資料も研究成果もあることだし、遺せるだけ残していつか血族に「真剣に学びたい」って輩がいたら学べるようにしとくべきだと思う。だから、俺の遺骸が手元にあったら、魔術刻印の残ってる左腕だけは残して保管しておいてくれ』と。父の部屋を整理していて見つかった遺書に書いてあった」

 

 テッテレーン! 今明かされる衝撃の真実ゥ!

 ……今晩だけで頭の許容量パンクしそうなぐらいの情報量なんだよなぁ。

 

「それと、お前の父は呪術については知らん。父は技術に罪はないと言ったが、私は自分の息子はこんな世界知らん方が良いと思った。だから存在すら教えていない」

 

 で、結果として過去から受け継いじゃった才能と受け継がれなかった情報のせいで、何も知らなかった俺は今現在とっても困っている、と。

 

 はぁ……お腹痛い。

 

 

 その後もいくつか曾爺さんと祖父ちゃんについての話と質問をして、カルデア行き前夜の密会は終わった。

 

 

 

 

 

 

「ところで業務用っぽいたこ焼きプレートとか古銭とか瓶の王冠の山とかのよく解らん品々も呪術関連?」

 

「いや。あれは本当に父の趣味だ。昔はあの蔵は呪術関連の品物ばかりだったんだが、祖父母が死んで以降は本来の使い方をしてやると言わんばかりに色々な代物を集めてきては放り込んでいってなぁ……父が旅に出てからも出先から蔵のどこそこに入れといてくれと荷物が届くのがしょっちゅうだった。お前が見つけてきた藁人形などどうすればいいのかという感じだったなぁ」

 

「……………………」

 

 本当に、面白い男だったようだ。

 

 というかあの人形やっぱり呪術用品ではなかったらしい。

 そりゃそうだよな。呪うにしてもラブレターなんか入れないわな普通。

 

 

 

 

 

 で、現在。

 

 もう搭乗手続きも済んで南アメリカ行きの飛行機を待っている。

 

 そうそう、国連から来たマトリッ○スな兄ちゃんとは空港に着いて別れた。

 散々警戒した割にはあっさりした別れで少々拍子抜けしてしまい、ちゃんと世話になった挨拶ができなかったのは心残りだ。今回の出向が終わったらまた会えないだろうか。

 

 で、兄ちゃんの代わりにカルデアから派遣されたとやら言う男女が三人ぐらい俺にくっ付いている。

 三人ともあの兄ちゃんよりはフランクだが、どこかピリピリしていて一歩踏み込ませない雰囲気があるのは魔術師という人種の性なのだろうか。

 ……今からでも兄ちゃんと変えてくんねえかなぁ。

 気になって資料読むのに集中できねえよ……。

 

 待合ベンチに座り、なるべくリラックスしてコーヒーを啜りつつ手元の資料を読み進める。

 政治関連の資料は予定通り後回しにするが、技術関連についてはそうもいかなくなった。

 

 

 

 昨夜のアレの後、俺は自衛手段として先祖の遺した技術を学ぶことに決めた。

 

 とはいっても、俺は魔術関係の知識はここ一週間で詰め込んだものしか持っていない。

 しかもその詰め込んだ知識にしたってまだまだ触り程度だ。

 できれば残してある資料と同じように誰かに教えてもらうのが一番なんだが、そう都合よくいるかなぁ……師匠になってくれる人。

 魔術師の技術知識って基本門外不出らしいし、関係者なら誰でも解るような単語の意味や内容訊くのとは訳が違うぞ……。

 

 

 

 師匠探しは苦労するだろうが、まあ、全ては到着してから。

 まだカルデアに着いてもいないうちから流石にもうこれ以上は何も起きようはずもないと。

 そんなことをチラとでも考えてしまったのがマズかったのか。

 

 

 

 ―――俺の元に「カルデアでの実験の参加メンバーから外された」という連絡が来たのは飛行機が飛び立つ直前だった。

 

 

 




主人公のご先祖様は従来作で言う間桐家に近いです。

型月世界だと「呪術の系譜を扱う」キャラはそこそこいるんですが、呪術そのものに対して明確にこういうものって説明がないんですね。
なんで、後で出てくる本作の呪術関連の説明は大半こっちで用意したモノになりますので予めご了承下しあ。
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