Fate / Bonjin survivor   作:墓守幽也

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特異点Fパート前半戦投稿開始。


序章 -燃え盛る街を駆け抜けて-
1:目を覚ましたら地獄絵図とかどうすりゃいいの


 ――気絶から覚めると、そこはあちこちが燃え盛る見知らぬ場所でした。

 

 

 

 

 

 ………いやいやいやいや、なんぞこれ。

 俺がちょっと原因不明の失神してたっぽい間に一体何があったし!?

 

 慌てて自分の体に異常がないか確認する。

 服装は気絶する前と変化ない。

 支給されたカルデアの制服(マスター用の機能が付いているモノではなく緑と黒の二色に白いラインの男性一般職員用である)の上から、外部スタッフと一目で解るように背中に国連のロゴが白抜きで描かれた空色のジャケットを羽織っている。

 この間蔵から発掘したおまもり(・・・・)もちゃんと懐にあるようだ。

 

 自分の名前や年齢、現在地、憶えている限りの直前の状況なども自問自答し、記憶が怪しくなっている等の症状が出ていないか確認する。

 以前読んだ書籍によると、唐突な非常事態に見舞われてパニックになった時など、すぐにでも冷静にならねばならない場面でこう言った対処が有効なのだとか。

 ……ここ最近精神が不安定になるようなことばかりだったので万が一の事態に備えた対策として情報を仕入れておいたのが早速役に立つとは全くもって嬉しくない。

 

 自分自身に特に問題がなさそうなことを確認したところで、改めて周囲を見回す。

 

 

 人影らしきもの――無し。

 

 では動くものは――無し。

 

 周囲の地形――近辺は多少小綺麗だが、10mも進めば瓦礫の山。一面燃える物だらけにも関わらず息苦しさも熱気も非常に薄く、煙も上がっていない。なのに何故か黒煙に覆われた空らしきものが見える。

 

 ここはカルデアか――否。

 

 それは何故か――視界の端に立っている標識(・・)が物証である。

 

 

 ――三角形の、炎の照り返しで判別しづらいがおそらく赤と白の……漢字と平仮名で「止まれ」と記載された交通標識なんぞ南極にはない。

 

 気絶直前の状況と現状を照らし合わせるに……俺はあのまま死んでしまってここは日本の地獄とか、そんな感じじゃなかろうか。秘書官の○灯様いるかなー?

 48人目の彼女生き延びてるかなー友達になりたかったなーいやー残念残念。

 

 

 

 ……解りましたよ現実逃避はここまでにしますよ。

 

 正直レイシフトとか胡散臭えって思っててすいませんでした。

 

 だって「止まれ」からそう遠くないとこに「→冬木(・・)大橋」って文字がある看板立ってんだもん!

 

 つまりここは「特異点F」――日本国九州地方の冬木市で間違いない、んだろうなぁコレ。

 実はものすごく高精度なVRシュミレータを使ったドッキリ企画というセンは……うん、無ぇな。

 もしそうだとしたら爆発とか火災とか非常警報とか人が爆死したり圧死しかけてたりのあの惨状は何だったんだって話だよ。

 

 うーむ、つまりアレか?

 俺は2004年にマジでタイムスリップしてしまったと?

 レイシフトするための専用機器とかに入った覚えないぞ?

 アレ使わないとタイムスリップ中に消滅するとか、タイムスリップした先で存在できないとかなんとか言ってなかったか?

 

 ……………。

 

 と、とりあえず他に誰か人がいないか探そうか。

 

 もう0を振り切ったライフでなんとか頑張るとして現在地についてだが、先の「→冬木大橋」の看板によると街を二分する「未遠川」を挟んで西側の河口に位置する「海浜公園」が今俺がいる場所のようだ。

 冬木市は今俺のいる西側の住宅街と、東側の都市部でキレーに分かれている都市らしい。

 まあ見る限りどっちも廃墟と瓦礫の山と化している訳だが。

 

 とりあえず行動方針としては……まずは広い道路に出られればいいかな。

 「冬木大橋」でも目指すかね。

 

 うー腹痛い。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 突然だが運動ができるって素晴らしいと思う。

 俺も人並み以上に動けるという自負はあったが、やはりがっつり鍛えてるような連中には及ばない。

 

 突然こんなこと言いだして何が言いたいかって?

 うん、つまりだね――

 

 ――もう追っかけるのを止めて逃がしてください。

 

「ぬ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!」

 

 我ながら人間の出すような声じゃねえと思える奇声をあげつつ燃え盛る町をひたすら走る。

 

 後を追っかけてくるのは、剣だの槍だの弓だのを持った動くガイコツ……が、超沢山。

 ウチの先祖の遺した資料の中にこんな感じのいたなぁ。

 そん時は「骨なんか動かして役に立つのか?」とか思いもしたが。

 

 うん、ぶっちゃけ舐めてたわ。

 

 肉が無いおかげか動作が普通に目で捉えられる程度には鈍いからまだギリギリなんとかなってるが数が多すぎる。

 最初に遭遇したのは10体程度だったが、逃げるうちに徐々に増えて今じゃ100はいるように見える……「戦いは数だよ兄貴!」をこんなとこで実感する羽目になろうとは。

 つまるとこ、足を止めたらまず間違いなく袋にされてジ・エンドである。

 そして骨だけのくせに膂力はそれなりのようで、振り下ろされた剣や飛んでくる矢でアスファルトが抉れている。理不尽。

 

 的を絞らせないようにジグザグ走行してるが、足元が瓦礫だらけな上に土地柄も相まって体力がガンガン削られている。

 冬木市って立地が不便すぎやしないか……なんでこんなアップダウンの激しい土地に集落作ろうと思ったんだ昔の人ォォ!

 さっき通過したハーフパイプみたいな場所とか何に使うんだよ!

 傾斜が急どころか最後の方ほとんど壁になってて越えられないかと思ったわ!

 アレのせいで体力殆ど持ってかれて追いつかれそうなんだよ!

 俺は南極くんだりまでSAS○KEしにきたんじゃねええええぇぇぇぇぇぇぇ!

 

 ぁん? ハーフパイプじゃなくて破壊の跡?

 んなこたぁ判っとるわぁ! 必死に考えないようにしてんだよ言わせんな!

 ただの人間が余計な思考に頭飛ばして逃げ切れるような状況じゃないんだよ!

 

 ただ、件の骨共は実家の資料に記載のあった類似のソレに違わず頭の中身は単純にできているらしく、偏差射撃のような先を読んだ行動などはしてこないのが救いである。

 意味不な単語とかあってもとりあえず読んどいて良かった。

 咄嗟に今の逃げ方をする判断ができてなったら物量に潰されて死んでただろう。

 

 

 こんな時だからというか今更と言うか、ふとカルデアに連絡しようかとも考えたがそもそもレイシフトする予定ですらなかったので連絡手段がないことに気づいて逃げながら内心軽く落ち込んだ。

 マスター枠から外した上で予備人員にすらカウントしなかったことに少し感謝したりした覚えもあるが、あれは気のせいであった。そういうことになった。

 結果論でしかないが、あのヒス女の判断のせいで孤立無援である。どうしてくれるんだこの様。

 

 最も通信手段があったところで、あの惨状で連絡がまだ取れるのか、そもそも受け取り手がいるのか、居たとして現状を打開する手段があるのか……etc.

 

 そんな懸念もあるので別に気にしてないさ。ああ、気にしてないとも。

 

 退室前に俺が立ってた場所があの惨状だったのを見るに、すぐそばに陣取ってたヒス女は間違いなく木っ端微塵で今頃あの世だろうしな。

 魔術師って人種がどんだけすごいのかはまだイマイチよく解ってないが、少なくともあの場で生き残るのはまず不可能に近いだろうというのは俺でも判る。マシュちゃんだって息こそあったが死ぬ一歩手前だったしな。

 もういない存在にグチグチ恨み言吐いてもしょうがないのでこの辺で勘弁してやる。

 

 ん? ヒス女って呼称は変えないのかって?

 そうだな、本人が化けて出てきて撤回を要求でもしたら考えてやらんでもない。

 

 

 下らねえことでも考えて気を紛らわせていなければすぐにでも倒れてしまいそうだ。

 ノンストップ全力疾走障害物走は俺にはきつすぎるよ………。

 

 

 と、突然ガイコツ兵たちが動きを止めた。

 

 

 ……何か知らんが願いが届いたぜヒャッハー!

 

 ありがとう神様ぁ!

 

 俺無神論者だけど無事に帰れたらあんたに感謝の祈りを捧げるよ!

 

 多分三分も経てばそんなこと忘れてるだろうけどな!

 

 

 もう世界大戦末期の日本軍の油並みになった残体力、ここで使わずいつ使う――!

 今の身体状況で出せる全速で走り、ガイコツ兵を引き離す。

 

 この時心身共にガタガタだった俺は、ガイコツ兵たちの方から何か人の声のようなものがしていたことに全く気付いていなかった。

 

 ――何故ガイコツ兵たちがいきなり追跡を止めたのか。

 

 命の危機に晒され続けて疲労も溜まった頭では正常にモノを考えることもできていなかった。

 

 そうして俺は、当座の目的地である冬木大橋へとたどり着いた。

 

 

 

 息も絶え絶えの俺は生まれたての子鹿状態の脚を何とか動かしてすぐそこにあった赤いアーチの根元に背中をあずけて座り込み、思わず眼を瞑った。

 

 

 とりあえず命が助かった――そう、気を抜いたのが拙かったのだろうか。

 

 

 

 一息吐いて目を開く。

 

 

 

 次の瞬間俺の視界に映っていたのは、自分の胸めがけて鈍く輝く太い金属棒が飛来する光景だった。

 

 

 やけにゆっくり時間が流れているように感じる。

 

 

 身をよじる時間さえないまま。

 

 

 自分の胸に金属棒が突き立つ様を、俺はただ眺めるしかなかった。

 

 

 




スケルトン関連は完全に捏造設定です。
ちなみにやかましく喚きながらドタバタ走ってる影響で余計に周りの骨を誘引してますが気づいてません。
資料に記載のあった部分で解読できなかった箇所にその辺の記載(周辺環境の感知について)がありました。

「骨以外、というか黒いアレに襲われないのか」という突っ込みに関しても理由はあります。
まあこれは原作も多分同じようなもんだと思いますが。

「ハーフパイプみたいな地形」はマップ画面だと燃えてるように見えますが、
主人公たちが後々横切っているということで普通に通過できるということにしました。
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