Fate / Bonjin survivor   作:墓守幽也

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3:完全に足手まといなんだがどうすりゃいいの

 さて、そんなこんなで4人――っと、そういえば4人だけじゃなかったんだっけか。

 

 何か見た事も聞いた事も無いような、白い体毛の羊とリスと猫と犬をミックスして4で割ってもまだ説明できないような珍妙な生命体がいつの間にか同伴していた。見た目だけでも大概なのに鳴き声がな……フォウだのキュウだの、何なんだマジで。

 そして名前が「フォウ」らしい。……安直すぎねえ? ……何? 名前付けたのマシュちゃん? あ、そう……。

 何か元々カルデアに棲んでたらしく、冬木に来た時から一緒に行動しているらしい。

 ……それはつまりレイシフトしたってことだよな?

 あの爆弾で吹っ飛んだ空間に元からいた……訳はないからわざわざ後から入ってきただと? ただの動物が? 在り得ん。

 ってなわけで警戒対象が更に一つ増えた上にそいつを運搬する役は今俺っていうね。

 俺の貧弱な消化器官を心労で殺したいのかねコイツら。

 

 まあとにかく、四人と一匹で冬木大橋を渡って現在新都エリアを探索中なのだが。

 

 現在都市部を逃走しつつ襲ってきたサーヴァントとの戦闘真っ最中です。

 

 「マシュ後ろっ!」

 

 「シャッ!」

 

 「くうっ!」

 

 向こうが投擲してくる獲物――黒塗りの短剣を盾がガンガン弾く度に、鳴り響く金属音に背筋がゾワッとする。

 相手はたった一人だが……ぶっちゃけ骨の群れに追っかけられた時よりも激しく身の危険を感じている。

 さっき襲われた時奇襲で気絶してたのはある意味では幸運だったかもしれん。

 もしもこの脅威を対抗手段のない(単独行動だった)時に味わっていたら、下手すると今逃げる気すら起きなかったかもわからん。

 それぐらいには一般人()とサーヴァントの間に横たわる格の差(・・・)と言う名の谷は深く、広かった。「コスプレイヤーか!?」などと茶化す余裕すらない。

 

 「所長!」

 

 「喰らいなさいっ!」

 

 「ヌウッ!?」

 

 「マシュ!」

 

 敵サーヴァント――アサシンが姿を晒した瞬間、立花ちゃんの合図でヒス女の指先から幾何学模様を描く光線が多数射出される。

 撒き散らされたそれは多くが躱され、あるいは外れたが、数発が着地際に命中しアサシンがほんの少しだけ体制を崩す。 

 

 「これでっ……どうだっ!」

 

 「フッ!」

 

 「くっ、速い……」

 

 その隙を突こうとマシュちゃんが取って返し振り向きざまに盾を振り抜くも、アサシンはそれをスウェーバックで紙一重で回避し、再び姿を晦ませる。

 チャンスを掴めなかったマシュちゃんは悔し気に唸ると、再びアサシンが仕掛けてくる前にと急いで俺たちの傍に戻ってきた。

 

 マロンに曰く、サーヴァントはクラス毎にデフォルトで付いている特殊能力(スキル)があるそうで、アサシンクラスが保有しているものは「気配遮断」――読んで字のごとく自分の気配を消し周囲に自分の存在を悟られないようにするものということだ。

 流石に肉眼でハッキリ視認できる距離の場合なら大きく効果を減じるし、攻撃態勢に移行すると隠蔽の度合いが下がるという解りやすい傷もある。が、対象をはっきり視認できない距離や環境では存分に力を発揮されてしまう。

 

 つまり、倒壊した高層ビルなどの建造物の残骸が立ち並び、周囲は瓦礫だらけ、トドメにそこかしこで炎が揺らめいている環境などはあちらさんが奇襲するのにうってつけと言うわけだ。

 

 アサシンクラスは「隠密活動」や「戦闘以外の場面での他者の殺害」、「凶器の隠匿」等を行なった逸話の残る英霊が当てはめられるクラスらしい。

 そしてその経歴に違わず、サーヴァント同士の直接戦闘ではなく、そのサーヴァントと契約し共に戦うマスターを狙い抹殺することに特化したクラスという話だ。

 

 そんな相手に対し、足手まといが三人、隠密奇襲が大得意の相手にとって有利な戦場。そして、直接戦闘を得手としない相手にも押される程に圧倒的な戦闘経験の不足。

 マシュちゃんは重すぎるハンデを背負ってなお、俺たちのために戦ってくれている。

 

 

 ああ……腹が痛い……。

 

 

 俺は生きる上で掲げている座右の銘がある。

 「成功したら自分のせい、失敗しても自分のせい」だ。

 

 自分の行いのせいで他人に被害が発生するのが嫌いだ。

 他人の行いのせいで自分が被害を受けるのが嫌いだ。

 

 自分の行いの責任は自分が背負い、他人の行いの責任は他人に帰結するべきだ。

 責任を負えぬ勝手はするな、連帯責任なぞ糞くらえ、道理の通らぬ理不尽はこの世から消えろ。

 

 故に、自分の失敗による被害はなるたけ自分の責任で済む範囲に留めよう。

 故に、他人の失敗による被害は被らないように立ち回ろう。

 

 自分なりの倫理に従い、行動は衝動の赴くままに。

 

 それが、俺が生きる上で守りたいと思っていることだ。

 

 ……まあ、社会という枠組みに属する以上どうしても遵守が無理な時はあるが、そういう時はお腹を痛めつつやり過ごす。

 

 

 そしてこの現状は明らかに俺のせい(・・・・・・・・)、だ。

 

 おそらくマシュちゃんも足手まといが二人――サーヴァントとして活動する上で必要不可欠であるマスターと、先も見た通り多少なり通用する自衛手段のある人間の二人ならどうにか守って立ち回れなくはなかっただろう。

 

 だがそこで俺だ。

 

 ただ一人完全な一般人でしかない俺が足を引っ張っている。

 

 俺一人が被害を被るのはまあ構わない。

 命がかかっているのに構わないってのもおかしな話だが、少なくとも道連れ増やすよりはずっといいと思っている。

 

 だが俺一人のために余計な被害が増えるのは我慢ならない。

 

 ……なまじ戦うための手段を習得できる素養が自分にあると知っているせいで無力感が酷い。

 才能があったところで実際に必要な時に使えないのなら何の意味もない。

 

 「フォウ。キューウ」

 

 「……………」

 

 何か腕の中の小動物に心配されてる気がするが気のせいだろう………。

 

 そうして俺が胸の内にモヤモヤとしたものを溜め込んでいくうちにも、幾度かの奇襲と防衛、反撃と逃走が繰り返された。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「クカカカカッ。ホレ、ドコヲ見テオル。コチラダゾッ!」

 

 「くっ、うっ!」

 

 「ムンッ! ハアッ!」

 

 「ぐっ、ううぅぅぅぅぅっ」

 

 「凌グカ 面白イ! 面白イッ!」

 

 「くっ、『応急手当』!」

 

 「ムダムダァッ! 焼ケ石ニ水ヨッ!」

 

 現在地は未遠川の河口部に位置する港です。

 

 

 必死こいて都市部を抜けたと思ったらそこはコンテナが大量に積まれた貨物用の港。

 どうも襲撃が散発的だと思ったらアサシンの狙いは追い込み漁だった様子で、港には先んじて待機していたらしいもう一体のサーヴァント、更に無数のガイコツ兵の姿が。

 

 徒党を組まれたらマシュちゃん一人では危ういのではという予想は現実のものとなり、正面から制圧を試みる偉丈夫――ランサーのサーヴァントと、交戦の隙を突いて遠距離から立花ちゃんに向けて攻撃を差し込んでくるアサシンにマシュちゃんは防戦一方のようだ。

 2対1でも何とか対応できているのはオツムの方が残念な周囲のガイコツ兵の攻撃が時たま連中にも飛んでいるからだが、ちょっとした足止めレベルの域を出ていない。

 

 「先輩っ!」

 

 「大丈夫、当たってないよ! 前に集中して!」

 

 「フォウ、フォウ!」

 

 「カカカ! サテ、我ラヲ相手ニシテ、イツマデソノ足手マトイヲ守リ切レルカナ?」

 

 「っ、守ります。守り通してみせます!」

 

 更に周囲のガイコツ兵が群がってきたせいで俺とヒス女、マシュちゃんと立花ちゃんで分断され、ヒス女は俺を庇うためにガイコツ兵と一人奮闘してくれていた。

 ……コイツがランサーを目の当たりにして固まったせいでやすやすと分断されたというのはこの際置いとこう。

 サーヴァント二体が狙いを向こうのペアに絞っているのか攻撃が全く飛んでこないのでガイコツ兵の対応に注力できてるから却ってよかったかもしれん。

 

 「くうっ、ちょっと!? おとなしくしてなさい! アナタ戦う手段なんて何も持ってないでしょうが!」

 

 「近づいてくる奴を牽制しますから飛び道具の対応お願いします……いい加減守られっぱなしはどうにも気分が悪い」

 

 「………っ」

 

 ……命の危険はビンビンに感じているが、ヒス女一人に戦わすのは癪だったのでガイコツ兵が取り落とした槍を拾って使わせてもらう。

 弓兵型が大量にいるし単純な力でも負けている以上攻めには出られないが、剣や槍の近接型を寄せない程度ならなんとかこなせる。

 中二病時代に運動も兼ねてY○uTubeで参考動画見つつホームセンターで買ってきた金属製物干し竿振り回してたのが役に立ってます。

 人に当てかけたり物にひっかけたり散々失敗しても続けたかいはあったな……本格的な戦闘は流石に無理があるが、動きが鈍くて軽い骨を牽制する位なら十分だ。……まさかあの黒歴史が有効活用できようとは。

 

 ん? 何で拳法とか剣術じゃなかったのかって?

 そりゃあ、あんた。やってたゲームの影響だよ言わせんな。

 

 そうしてこっちはジリ貧ながらもなんとか凌げていた。が――

 

 「カアッ!」

 

 「『緊急回避』!」

 

 「くっ!」

 

 「カカッタナ――決メルゾ ランサー」

 

 遠距離攻撃に徹していたはずのアサシンの右腕が突如異様に長大になると、ランサーの攻撃を凌いだマシュちゃんに掴みかかった。

 離れていても感じ取れる、これまでのどの攻撃よりも圧倒的な『死』の気配。

 直接相対していた立花ちゃんはそれをより強く感じ取ったのか、迷わずマシュちゃんへ支援を飛ばしその一撃を回避させた。

 ――しかし、アサシンの方が一枚上手だったらしい。

 回避した直後で体制が不安定なマシュちゃんに、先を読んでいたランサーの一撃が襲い掛かった。

 

 「しまっ――」

 

 「ヌウゥゥゥウン! ハアッ!」

 

 「ガッ、あっ!」

 

 「シャッ!」

 

 「ぁ、っ」

 

 踏ん張ることもできずにまともに受けてしまったマシュちゃんは、続く攻撃で盾をあらぬ方向に跳ね上げられ、間隙を縫うようにアサシンの短剣が脚に突き刺さった。

 立花ちゃんの使える支援手段はサーヴァント同士の戦闘でも十分な効果を発揮する代わりに単発だ。一度使うと同じ支援を再度行うまでには時間がかかる。

 回避支援も回復支援も先刻使ってしまった。マシュちゃんは咄嗟に動けない。

 次の一撃を凌ぐ手段は、ない。

 

 「死ネェアアアアアアアアアアッ!」

 

 「コレデシマイダ。柘榴ト散レ」

 

 「マシューーっ!」

 

 

 

 

 

 

 そしてマシュちゃんの頭を狙ってランサーの刃が振り下ろされんとしていた、まさにその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『アンサズ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガイコツ兵に、アサシンに、そしてランサーに、火炎弾と思しき攻撃が山と降り注いだ。

 ご丁寧に、と言ったらいいのかわからないが、それだけ広範囲にばら撒かれたにも関わらず俺たち四人には一発も命中していない。

 ……随分と高精度だ。

 

 「ヌウッ……何奴ッ!」

 

 『何って、見れば判んだろご同輩。なんだ、泥に呑まれちまって目ん玉まで腐ったか?』

 

 そう言って積み上げられたコンテナの上から現れたそれは、肉食の獣を思わせるような野生的な雰囲気の男だった。

 

 しかし、服装は視界に入ってすぐ感じた印象とは真逆に野蛮さの欠片もない。

 木製と思しき杖を翳し、長く伸ばした青い頭髪に紅い双眸。服装も皮革や布系ばかりで、鎧のような重そうなパーツは全く見受けられない。

 コーディネート的に何というか、すごく「魔術師」っぽい感じの男だった。

 そしてすぐさまそれを裏付ける言葉がランサーから放たれる。

 

 「貴様、キャスター! ナゼ漂流者ノ肩を持ツ……!?」

 

 「あん? てめえらよりマシだからに決まってんだろ。それになんだ、見所のあるガキは嫌いじゃない」

 

 アサシンも、ランサーも、そして俺たちも警戒する中、男が――キャスターが、下りてくる。

 先刻この男が放った火炎弾でガイコツ兵、特に弓を使う個体はあらかた一掃されており、その歩みを邪魔立てする者はない。

 ……俺とヒス女は爆撃の被害を免れた近接型に囲まれているが、さっきに比べれば数が減った分まだ対処は楽になった。

 

 そのままキャスターはマシュちゃんの傍に近づくと、指先で中空に何か記号のようなモノを切った。

 見れば、マシュちゃんが脚に負った傷があっという間に癒えていっている。

 先の火炎弾に今の治癒。これがキャスターの――『魔術師』の英霊、か。

 

 「うし、こんなもんでいいだろ。そら構えなお嬢ちゃん。お前さんの腕前は奴に決して劣ってねえ。気張りゃあ番狂わせもあるかもだ」

 

 「は、はい。……頑張ります!」

 

 「あ、あの。マシュを治してくれてありがとう、ございます?」

 

 「おう、大したことじゃねえ。気にすんな。ところで彼女のマスター、お嬢ちゃんかい?」

 

 「う、うん! あたし、藤丸立花!」

 

 「おし。なら、指示はあんたに任せようか。俺はキャスターのサーヴァント。故あってヤツラとは敵対中でね。敵の敵は味方ってわけじゃないが、今は信用してくれていい。未熟な身の上で2対1でも一歩も引かなかったあの譲ちゃんのガッツに免じて、仮契約だがあんたのサーヴァントになってやるよ!」

 

 歯を剥き出しにして笑い、アサシンに杖を向けるキャスター。

 どうも利害が一致しているから手を貸してくれるらしい。

 これで数の上では2対2だが、立ち振る舞いからして戦闘に非常に馴れた様子のキャスターが追加されたのは単純に味方が増えたという以上に大きい変化だ。

 ……キャスターを頭から信じ込んで大丈夫かと少し思わないでもないが、どの道このままじゃ全滅は堅い。何も言わずに賭けるとしよう。

 

 向こうはこれでいいとして、とりあえずこちらは残ったガイコツ兵を片付けよう。

 数は減ったし、遠距離攻撃も追い込まれた当初に比べれば激減している。

 

 あとはヒス女と連携して近距離型を始末するだけだ。

 さっきからやってる通り牽制に徹して火力をヒス女に任せるなり、リーチで勝てる剣型を中心に相手するなり、やりようはある。

 ……いくら抑えてもらってると言ってもサーヴァント二体を全く警戒しないでよくなったかと言うと全然そんなことないだろうし。頑張って手早く終わらせるとしよう。

 

 




主人公は所長の家庭周りの事情なんかはほとんど知りません。
立花ちゃんたちがそれ話してた時単独行動中だったので。
前回の会話からある程度推測はしてますがそれはそれ、これはこれってな具合です。
従って、初っ端から「出向先の組織の長」としての認識しかなくその責任をキチンと果たすことを求めるため、今回出てきた座右の銘も相まってあの内心なわけです。

アサシンの右腕は宝具ではないです。六章でやったアレに近いですね。
自爆ってわけではないですが。
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