Fate / Bonjin survivor   作:墓守幽也

9 / 13
序章も中盤戦です。

本当は四周年記念開始に合わせて後半アップするつもりだったんですが……
予想以上に文章量が伸びて間に合わず。
諦めて中盤だけ上げます。


あと今回のタイトルは仕様です。


5:First Order / First Contact

 き、キッツ………。

 

 魔力が枯渇しかけているので、現在鍛錬は中断して教会の中で休憩中である。

 

 あの後もキャスターのスパルタ特訓は熾烈を極めた。

 

 

 宣言通り槍の強化を自前で賄わねばならなくなり。

 

 火炎弾を乱射しつつキャスター本体も殴りかかってくるようになったり。

 

 最後は実戦としてその辺にいたガイコツ兵の集団に正面から喧嘩売らされたり。

 

 

 おかげさまでせいぜい一時間未満程度の短時間の訓練だったにも関わらずその辺の近接型の骨程度なら魔力と体力の続く限り正面から叩き潰せるようになって一安心だが、どう考えてもこっちが求めてた結果以上のモノが身に付いてしまった。

 

 最終目標に設定してたはずのガイコツ兵なんぞ前座のはずのキャスターとの組手と比べりゃゴミ同然だった。

 あまりにもあっけなさ過ぎて自分の頭がおかしくなったのかと思ったわ。

 

 どうも俺の扱える魔力の容量は一般人どころかその辺の魔術師と比較しても結構多いらしく、当初は消費が重すぎないかと危惧していた武器の強化と身体強化を併用しての戦いでも十分耐えうるという結論が出た。今は肉体強化を使いすぎた反動(らしい)で走るのが辛い程度には体がヘロヘロだが。

 キャスターはその辺解っててやらせたようだが……少しぐらい口で説明してくれても良かったと思うの。

 「魔力任せでまだまだ粗削りだが元がド素人にしちゃそこそこ見れるようになった」が最終評って、お前の想定目標は何処にあるんだ……俺の理想はとうに通過しちゃってんだが?

 

 

 で、そこそこ戦える目途が立ったのはいいが魔力を使いすぎたせい(って言われた)で頭がキンキン痛みだしたのでそこで訓練は中断。

 変わって今度はマシュちゃんの特訓が始まるらしいが、俺はとりあえず教会の中に退避させられた。

 

 骨共も黒サーヴァントたちもどうやらわざわざ街外れの教会を壊しに来る理由はなかったと見えて、内装は驚くぐらいには綺麗なままだった。

 外観も特訓中のキャスターの流れ弾がちょっと命中した以外特に壊れてなかったなそういや。

 

 なんでもこの教会は冬木市でも指折りの霊地であり、上にいるだけでも魔力の回復が早まるとか。実際気だるさと頭痛が結構早く引いている気がする。

 あ、霊地というのは霊脈――地面の中を流れている天然の魔力の河、みたいな認識でとりあえずいいらしい――の流れが滞留しやすい場所のことを指している。

 霊脈にしろ霊地にしろ、大規模な魔術を行う時に消費魔力を肩代わりさせる等の魔力的な資源としての運用が可能であり、魔術に関わる稼業であれば最優先で確保し拠点にするべき場所、らしい。要は魔術世界で言う油田みたいなもんだと思う。

 

 ……なんで教会がその真上に立ってんのかと思ったが、まあ多分そういうこと(・・・・・・)なんだろう。

 『聖堂教会』――世界でも指折りの宗教だが魔術関連のネタにも絡んでるらしい。そういや後回しにしてた魔術世界の政治関連の資料の中に「聖堂教会」って文字列があったな。

 魔女狩りとかそういう歴史的背景を見るにどっちかってーと魔術を排斥する側のはずだが、この教会の立地を見るにむしろそっちの技術を利用する部署だか一派だか、ともかくそういう連中もいるってこったろうな。

 無事にカルデアに帰れたら政治関連の資料じっくり読まんとなぁ。

 

 って、そうではなくてだな。

 

 実は今持っている武装、ガイコツ兵産の槍。コレ、三代目なのだ。先代と先々代はキャスターとの特訓の最中砕け散ってしまった。

 まあ、人外との戦闘法(魔術)習い始めたばっかのへっぽこが人外(サーヴァント)と実戦に近い特訓なんぞしてんだから壊れて当然なんだが……この先また戦ってる最中に急に武器が壊れても困る。

 相手がこっちの武器の損傷度合いを把握して攻撃を一旦でも止めてくれる、なんてのは訓練じゃなきゃまずありえんしな。

 

 そんなわけで、そういう場所なら戦闘に使えそうな魔術関連の道具かなんかが一つや二つ、あわよくば丈夫で俺の武器になりそうな物があるんじゃねえかなーと思って中を探索している。

 キャスターに稽古付けてもらうと決めた時は港でランサーの使っていた薙刀っぽいもの(真っ黒だったからよく解らない)でも失敬すれば……と思っていたのだが、サーヴァントが使う武器なんかもサーヴァントの一部であり、基本サーヴァントが消滅する場合は一緒に消滅するということを知っただけの皮算用に終わった。

 

 神様の家を家探しの挙句盗難とか罰当たりもいいとこだろうが、生憎俺は無神論者。命のかかっている場面で手段は選ばない。今回はあくまで訓練だったから助かったのだ。

 ……その直後キャスターに素手のまま一人でガイコツ兵から槍を強奪しに行かされたのは忘れない。相手は基本人外しかいないのに、戦闘初心者の俺が徒手格闘とか自殺行為もいいとこだ。やはり遠距離攻撃手段の確立も必要だな。

 

 

 ということで、特訓が中断になった時に所長にダメ元でアサシンとの戦闘時に使っていた魔術について訊いてみたが流石に教えてくれなかった。

 魔術師の家系は基本的に一子相伝で、継承している魔術の詳細は秘伝が当たり前とのことであんまり期待はしていなかったのだが、俺が求めているのが牽制用の遠距離攻撃手段ということを伝えると代替案として黒い光弾を放つ魔術を見せてくれた。

 

 それは教えてもらって良いものなのか、と思ったがどうやら魔術世界では比較的よく知られているポピュラーな術らしい。

 

 説明がちょっと長めだったので要点だけ掻い摘むが、北欧由来の「ガンド」という簡易的な呪いで、指を指した相手に体調不良等を引き起こさせる原始的な呪術の類、らしい。……本人の説明とは全然違う用途で使ってる、というか使えていたことにはツッコまないでおいた。何故体調不良の呪いが物理的な破壊を起こせる遠距離攻撃になるのか。魔術って頭おかしい。

 

 一応俺も訓練次第で物理的な破壊ができなくもないと言われたので、理屈だけ教えてもらって後で練習することにする。

 ……そういや、カルデアで魔術の教師役探してた時所長は端から除外してたな。ヒス女だったし。

 コイツこんなよくわかんねぇ組織の長に置いとくより「時計塔」とかいうとこにあるっつー魔術の学校で先生でもやらせた方が安定したんじゃねえかなぁ?

 ガンドの理屈の説明とか長い代わりに結構解りやすかったんだが。

 

 もし万が一あの所長が本物だったら後でカルデアに帰れた時教師役になってもらえないか打診しとこーっと。

 きっと今回の失態の隠蔽云々とか変に勘ぐるだろうからそのまま勘違いさせてしまえ。

 

 

 

 なんてことを回想しているうちに教会内をあらかた調べてしまった。

 外から聞こえてくる破壊音が収まってないところを見るにマシュちゃんの特訓はどうやらまだ続いてるようだ。

 詳しくは聞いてないが何やら戦闘に足りないものがあったらしい。多分俺の時より更にスパルタな特訓になっていると思うが頑張ってほしいところだ。

 

 探索の成果は芳しくない。

 割れてない年代物のワインボトルとかなんか剣の柄っぽいものとかはあったが、それ以外に取り立てて目を引くモノはなにもなかった。つーか柄だけって何よ。刃も付けとけよ。なんに使うんだあんなもん。

 

 

 んであと残ってんのは……地下室、だけか。

 

 

 :

 

 :

 

 :

 

 

 これは……どうすればいいんだろうな?

 

 

 

 階段を下りた先にあったモノ。

 

 

 ある種この炎上都市に来てから俺が最も求め、同時に最も忌避したモノ。

 

 

 ただの予測で確証はないが、おそらく外れてはいまい。

 

 

 

 サーヴァントの召喚魔法陣が、俺の前にあった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 ――英霊召喚とは、この星に蓄えられた情報を人類の利益となるカタチに変換すること。

 

 ――過去の遺産を現代の人間が使うのは当然の権利であり、遺産を使って未来を残すのが生き物の義務でもある。

 

 ――アナタが契約したのはそういう、人間以上の存在であるけど人間に仕える道具なの。だからその呼称をサーヴァントというのよ。

 

 

 冬木大橋で黒サーヴァントから命を救われた直後の、所長による立花ちゃんのための勉強会。

 「サーヴァントとはナニ?」と問う立花ちゃんに対して所長が述べた自論がこれだった。

 

 

 ……マシュちゃんの時点で怪しかったが、キャスターや黒サーヴァントを見た今だからハッキリと言える。

 サーヴァントを道具と同列に考え、マスターより下と見るのは致命的だ。

 

 彼らは過去の記憶がある、感情がある、意志がある、言葉も通じるし考える頭も信念もある。……黒サーヴァントはちょっとおかしくなってたがそこはそれ。

 ハッキリ言ってしまうと、その規格外の身体スペック以外普通の人間とほぼ変わらない。

 

 サーヴァントは人類の歴史に功績を遺した英霊本人と言うわけではないらしい。

 しかしそれでも、偉大な「人間の先輩」の現身を下に見て道具扱い、なんて礼儀知らずな真似はとてもじゃないが俺にゃあできっこない。

 向こうだってそんな扱いされりゃ気分が悪かろう。

 

 そしてだからこそ、自分の都合で先達に迷惑をかけることになる(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)だろう英霊召喚は俺の趣味ではない。

 聖杯戦争ではサーヴァント側も聖杯で叶えたい願いがあるから召喚に応じるらしいが、ただ命惜しさに生き残るために一方的に力を借りることになる現状とは事情が違いすぎる。

 

 ――サーヴァントの鉄則でな。自分の時代以外の事情には深く関わらない。あくまで兵器として協力するだけだ。

 

 情報交換の際キャスターもそんなことを言っていたが、要するにサーヴァントというのは基本的に現代を生きる人間が頼るべきではない存在、なのだろう。

 だから俺も召喚可能になってもサーヴァントは極力呼ばないつもりだった。少なくとも大橋で召喚が可能か訊いた時は。

 

 

 だが今は――万全を期すには戦力が足りない。

 

 

 戦う場面を実際に見て、更に訓練とはいえ実際に相対した以上キャスターの実力の程は良く理解しているつもりだ。

 だが理解したからこそ「アレと同格かもしくはそれ以上が3人も残っている」という事実は決して無視できない。

 今回ターゲットになっているのは大聖杯に陣取っているというセイバーただ一人だが、そのセイバーにしたってキャスターの口ぶりからするに「カルデアと組めば必勝」ではなく「今まで勝ち目が皆無だったところにようやく勝ちの目が生まれた」程度のモノと推測される。

 討伐目標一人相手ですらそれなのに、キャスターとほぼ同格と目されるアーチャー、セイバーが散々苦戦させられた上に制御もできていないという爆弾であるバーサーカーとの遭遇の可能性もまだ残っている。

 どちらか片方でもセイバーと同時に戦闘する羽目になれば敗色は濃厚だろう。港で戦った二人とはおそらく質の面で比べ物にならない。

 

 

 そして(俺にとってはこっちの方が問題なのだが)現状キャスターに敵対された場合止められる手段が何も無い。

 

 

 港での情報交換の時と同じことを繰り返すが、キャスターの目的とこっちの目的は近いようで実はまるで重なっていない。今は向いている方向が同じだから付き合えているだけだ。

 そして万が一キャスターを敵に回した場合、マシュちゃんだけで対抗するのはハッキリ言って厳しいと思う。

 マシュちゃんは守勢に特化した能力の様だから全く戦えないということは流石にないだろうが、それでも最終的な勝ち目はまずないと見ていい。

 せいぜい十年ちょっとしか生きていないマシュちゃんと既に一生を終える程の人生経験を持つキャスターでは人間としても戦う者としても年季が違いすぎる。

 

 

 保険となるサーヴァントを呼び出すのなら、本丸突撃前の猶予期間である今しかない。

 「召喚する必要が無い」「召喚できる目途が立たない」ならまだ気にしないでいられたが、必要性があると感じ目途も立っている以上シカトは最早選べない。

 立花ちゃんにまたマスターを任せるという手もあるが、彼女は俺みたいな実は魔術師の家系で―とかいう特殊な背景もない正真正銘マジでただの一般人だ。カルデアからの補助が無い状態で、二人のサーヴァントへの魔力供給というデカい荷物を抱えて果たしてまともに動けるのか大いに疑問が残る。

 つまり、戦力増強を狙うなら今度こそ俺が呼ぶしかない。

 

 召喚したことで、先人の分け御霊に迷惑を被らせるか。

 召喚せず、万が一の事態が来た場合対処できずにあの二人の命が潰える危険を黙認するか。

 

 ……「成功したら自分のせい、失敗しても自分のせい」を掲げてからこういうことは往々にしてあった。

 選択肢が絞られた状況下で、どれを選んでも他人に迷惑をかけてしまうような状況が。

 こういう場合俺が選択するのは、最終的に最も被害の度合いが少ないだろう選択肢になる。

 

 

 つまり――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 適当に拝借したナイフで指先を切って血を数的落とすと、魔法陣が輝き始める。

 

 

 「――畏み畏み願い奉る」

 

 

 外の特訓は一段落着いたようだがまだ続くらしい。

 

 

 「貴殿の身を我が下に」

 

 

 なんで、マロンに表向きの理由を伝えてこっそりサーヴァントの呼び方を教えてもらった。

 

 

 「我が運命を貴殿の剣に」

 

 

 輝きが強まるにつれて、段々と魔法陣から感じられる圧が強くなっていく。このまま倒れ込んでも支えてもらえそうだ、などと思考がよぎる。

 

 

 「聖杯の寄るべに従い、この意、この理に沿うならば応えたまえ」

 

 

 召喚のための詠唱は意味が通ってて大まかに外れてなければそれで大丈夫らしいのでちょっと変えてみる。

 

 

 「誓いを此処に」

 

 

 元のままでも大丈夫とは思ったが、こっちの都合で来てほしいと頼んでいるのだということをはっきりと表明しておきたかった。

 

 

 「我は常世総ての善と成る者」

 

 

 どうせ来るなら納得ずくで来てほしい、そうすれば俺の負い目も少しは軽くなる。

 

 

 「我は常世総ての悪を敷く者」

 

 

 そんな姑息なことを考えながら詠唱を続ける。

 

 

 「貴殿 三大の言霊を纏う七天」

 

 

 あるいは誰も来ない気がしてちょっと不安だが――― 

 

 

 「抑止の輪より来られたし、天秤の守り手よ!」

 

 

 ―――誰かが応えてくれたのなら、感謝しかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「なんだか随分と低姿勢ですねぇ……こんな呼ばれ方したの初めてですよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 詠唱と共に徐々に強くなっていた()と光の奔流が収まった時、そこには一人の人影が立っていた。

 

 

 

 注目に値する点は数あったが、真っ先に俺の目が吸い寄せられたのはとある一点。

 

 

 

 薄く色づいた白い髪……薄暗い地下室を照らす僅かな光の加減か判らないが、俺の目にはそれが綺麗な桜色に見えた。

 

 

 

 「さて、では改めまして……サーヴァント・セイバー。召喚に応じ推参しました。あなたが私のマスターですか?」

 

 

 

 心の臓まで射貫かれるようなまっすぐな視線でこちらを見つめる和装の少女。

 

 

 

 

 

 これが、俺と彼女の出会いだった。

 

 

 

 




はい、というわけで主人公のパートナー鯖はあの人です。
今回どうするか散々悩んだんですが喚ぶことにしました。
他にも二つくらい案があったんですが、もうとっとと参加させちまえとなったので……。
動機が軽くないかとかそういうのは突っ込んでもらっても構いません。
「喚ぶタイミング」と「パートナー誰にするか」はすんごい迷いました……。

ちなみに教会内部にいる間に表でやってたマシュの特訓シーンでウィッカーマンは立花ちゃん狙うついでに教会をぶち壊そうとしました。
主人公知らないうちにマシュちゃんの特訓に利用されてます。

アニメなどで描写のあるオルガマリーの使った魔術にガンドはない(それっぽいのは使ってるけど多分厳密に言うと違う)ですが、ガンドも使えるということにしてしまいます。
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