青の箱舟   作:トクサン

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信仰の果て

 四人の行動は素早かった。兎に角信仰派が街を占拠なり完全に破壊する前に逃げ出す必要があった。ミリシアの家にあったリュックやバッグにありったけの食料や道具を詰め入れ、十数分程で準備を整えた。仮にボートに辿り着けたとしても、ここから隣の共生派プラントまではかなりの距離がある。箱舟や航空機での移動ならば一日と経たず向かうことが出来るが、ボートではどれほど時間が掛かるかも分からない。

 

 一行は慎重に家を後にする。未だ頭上には無人攻撃機が空気を震わせ飛び回って、遠くから銃声が鳴り響く。子供たちの姿はない、家の中に引っ込んでいるのか、或いはどこかに逃げ出したのか。四人はなるべく音を立てないように、目立たないように、家の隙間や路地を利用して身を隠しながら進んだ。先頭にはハイリオ、真ん中にミリシアとユリ、そして殿がギルだった。

 

 役立つかどうかは知らないがハイリオの手には物置から引っ張り出してきたバールが握られており、ギルは無手ではあるが頻繁に手を握ったり開いたりを繰り返している。街はその姿を大きく変えていた。遠目にも燃え盛る炎は見えたし、製造プラントの辺りは爆撃で更地になっている。プラント基盤も大きく抉れているだろう、最悪穴が空いているかもしれない。けれどプラントそのものを沈める気はない筈だ、それはハイリオの弁だった。

 

「この通りを直線で突っ切れば緊急避難用のボートがある場所まで直ぐだ」

 

 先頭を歩いていたハイリオが路地に身を隠し、そっと目線を流しながらそう口にする。後続の三人がそっと顔だけ出して表通りを覗き込めば、道路が真っすぐ続く先に炎に照らされた緋色の海が見えた。夜の海は黒い、けれど今だけは幻想的な色に飾られている。ここまでは順調だ、二十分ほどの移動は誰にも悟られていない。けれどどうやら、本番はここからの様だ。

 ギルの目に小銃を持ったまま歩き回る、白い貫頭衣に身を包んだ男の姿が目に入った。

 

「ハイリオ、あれ……」

「あぁ、信仰派の兵士で間違いなさそうだ、見た目は完全に兵士って感じじゃないけれど、僧兵って言うべきか?」

「名前なんて何でも良いわよ、それより、アイツの持っている武器」

 

 ミリシアが指差し、五十メートル程先で此方に背中を向けている男の持つ小銃が揺れ動いた。独特な形状だ、光線銃の様に小型ではない。しかし長物にしては電磁投射機とシルエットが違いすぎる。

 

「光線銃や携帯型電磁投射機(レールガン)には見えないよね……アレは何だろう?」

「旧世代の戦争で使われていた武器だ、火薬で鉛を飛ばすんだよ」

 

 ギルの問いかけに対しハイリオが答えた。「鉛?」とユリが疑問の声を上げ、ハイリオは何度か頷いて見せる。

 

「光線銃とか電磁投射機と比べて構造が簡単なんだ、設備さえあれば大量生産が出来る、資源も、まぁ『カミサマ』って存在がどうにかしているのかもしれないし、アクエリアスでも都合可能な範囲だろう、光線銃を作るよりも余程安価に、素早く配備できる、エネルギーチャージの必要もないしな……ただその代わり反動が強いし、五月蠅い」

「──あの銃声、電磁投射機の音じゃなかったんだ」

 

 乾いた布を叩いたような音だと思った。電磁投射機の発射音とばかり思っていたが、良く考えると後者の音はもう僅かばかり重々しい気がする。尤も、どちらの音もそれほど聞きなれている訳ではないのだけれど。

 

「威力は貧弱だ、けれど人間を殺すなら十分だろうよ」

「どうしよう……?」

 

 ハイリオが難しい表情で黙り込み、ユリが不安げに肩を揺らす。見れば同じような格好をした連中が表通りを闊歩し、等間隔で捜索に当たっていた。道路には倒れ伏したまま動かない子供の姿も見える。地面に染みこむ赤色をギルはなるべく見ないようにした。

 

ミリシアも、ユリも、ハイリオも、その骸の存在に気付きながら直視しようとしない。道中、似たような光景は幾つもあった。けれどそれを真っすぐ見つめられる程、皆の肝は据わっていない。此処から先は万が一を考えるべきだろう、ギルは息を呑み、二度、三度、手を開閉させ握りしめた。

 

「行こう──このまま此処にいても、いつかは見つかる」

 

 ギルが強い口調でそう断言する。ハイリオが振り向きギルを見た。その表情はお世辞にも男らしいとは言えない。不安と焦燥に駆られた人間の顔だ。けれど瞳には強い光が宿っていた、腹は括った。ハイリオはその覚悟を感じ取り、ゆっくりと頷く。

 

「ミリシア、ユリ、ギル、俺の後に続け、けれど一人ずつ、素早く動くんだ、なるべく音を立てずにな」

 

 難しい注文だとは分かっている、けれどやらねばならない事を全員が理解していた。表通りを避け、家の裏手、路地へと進む四人。当然、そこも信仰派の兵士が徘徊している。路地は暗く、物が散乱していたり死体が転がっていたりするが、表通りを突っ走るより余程安全で隠れて移動するには適していた。

 

 まずハイリオが先行し、覗き込むようにして表通りの兵士の動きに注意する。そしてこちらを向いていない事を確認し、角からジェスチャーで進めと指示を出す。基本的にはこれの繰り返しだ。入り組んだ路地を利用して姿を隠し、幾重にも角を曲がり見つからないように動く。全員が全員、呼吸すら止めているのではないかという程静かに、緊張した面持ちで事に当たっていた。たった五分間進むだけで全身が冷や汗に塗れ、緊張で膝が震える。頭上を切り裂き飛ぶ無人戦闘機の音よりも、今は目の前の兵士達の方が何倍も恐ろしく見えた。

 

 そして路地を進むこと二十分、奇跡的に発見されずに済んでいるとギルが考えた瞬間、先行するハイリオが体を硬直させ、素早く身を隠した。後続のミリシアとユリが身を縮こまらせる。ギルは素早く兵士の目がないことを確認し角から飛び出した。ハイリオの隣に身を屈め、小さな声で問いかける。

 

「ハイリオ?」

「……路地はここまでだ、ここから先は表通りしかない、或いは建物の屋根伝いか、しかしどちらもリスクが高い」

 

 苦々しい口調でそう告げるハイリオ。ギルがそっと角から顔を出して表通りを覗き込めば、なるほど確かに。三人の兵士が揃って何かを話しているのが見える。表通りは区画の間際にぶち当たったようで、大きな壁がずっと表通りの片方を塞いでいた。どんな会話をしているかは分からない、口元は布で覆われているが目元は確認出来た。

 

 路地は此処で終わっている、迂回しようにも今まで来た道を戻る必要があるだろう。それにこの周辺の地理に明るいという訳でもない、迷ったら終りだ。屋根伝いはドローンか戦闘機に見つかる確率が高い。ギルはハイリオが何に迷っているのかを悟った。一度、呼吸を整え言った。

 

「ハイリオ──僕はやれるよ」

 

 嘘だ。けれど然も真実であるかのように、ギルは僅かな躊躇も見せず断言した。

 

「ギル、だが……」

「確かに怖いし恐ろしい、抵抗がないと言えば嘘になるね、ましてや相手は信仰派だ、けれど僕は赤の他人の──僕たちのプラントを焼いた連中よりも、ハイリオ達の方が大切なんだ」

 

 ハイリオの腕を掴む。その手は震えていただろう、ハイリオとユリ、ミリシアが心配そうな目で此方を見た。ギルは振り向き、満面の笑みを浮かべてみせた。あまりに場違い、炎に照らされた自分の笑顔はどう見えただろう。三人は痛ましそうな表情で目を伏せるばかりだった。ハイリオが持っていたバールを握りしめ告げる。

 

「ギル、なら俺も……」

「大丈夫、三人くらいなら僕ひとりの方が良い」

 

 ハイリオの言葉を遮ってギルが先頭に立った。沈んだ、唸り声に似た苦悩が耳に届く。大丈夫、やれるさ。僕は──僕は【そういう人間】だ。

 少しして背後から、ハイリオの低い声が届いた。それはギルが望んだ言葉だ。

 

「──頼む」

「任された」

 

 一切の躊躇いなく、気負いなく、頷いた。

 ギルは息を吸う、吐く──そして目に昏い光を湛え、表通りへと飛び出した。

 

 邂逅は一瞬だった、何十メートル先にいる兵士が路地から飛び出すギルを目敏く見つける。三人の内、ひとりが何かを叫んだ。ギルは男たちに向かって駆け出す。その銃口がゆっくりとギルを捉える。子供一人だ、肉薄する前に射殺出来ると思っている。現に連中の瞳は欠片も動揺も見せず、まるで作業の様に引き金に指を掛けていた。ゆっくりと引き絞られるトリガー、それを見つめながらギルは拳を握りこむ。

 

 ──良いかい、ギル、その力は無暗矢鱈と使ってはいけないよ。

 

 幼い頃から繰り返しそう教えられた。これは本来、あってはならない力だから。これを知っているのは幼い頃から共にいた三人、そして家族だけ。皆が皆、ギルの出生に関して薄々勘付いている。それでも何も言わないのは優しさか──ならばそれに報いよう。

 

 自分にしか出来ないことを、たとえそれが忌むべきものだとしても。

 僕は皆が大好きだから。

 

「僕には出来る──僕にしか出来ない」

 

 ギルが自身に言い聞かせるのと、銃声が鳴り響くのは殆ど同時だった。マズルフラッシュと銃声それらが視界と鼓膜を刺激し、背後のハイリオ達が思わず顔を背ける。

 

 兵士たちが幻視したのはズタボロになったギルの姿。鉛弾を体中に受け、ボロボロになった少年の肉体。しかし、そうはならない。

 

 ギルの肉体が弾丸を受ける直前、淡い光の尾を引いた、そう認識した瞬間凄まじい炎が吹き荒れたのだ。それは黄金色の炎──それを身に纏い駆けるギルの肉体を、鉛の弾丸が傷つけることは叶わなかった。まるで己から避ける如く、駆けるギルの体に触れるより早く方向が逸れ、明後日の方向に消える。甲高い音が鳴り響き形の崩れた弾丸が壁に突き刺さった。

 

 それを見た兵士達は驚きの余り硬直し、目を見開いた。

 

 肉薄、滑るように黄金が地面を彩りギルの体が高速で迫る。その速度を前に僅かな硬直はあまりに致命的。小銃で撃ち殺す距離から指先の触れる距離へ。目前へと迫った少年──年齢にしては童顔で、背が小さく、四肢の細い彼に対し兵士たちは茫然と言葉を紡いだ。彼の奮う黄金に、あまりに見覚えがあったから。

 

「貴方様は──」

「──燃えて死ね」

 

 トン、と。

 

 軽く触れる、たったそれだけ。それだけで煌々と燃え盛る黄金の炎が三人の兵士を呑み込み、消える。その後には何も残らない、文字通り灰の一欠けらすら。それはギルの体のみを燃やす事無く周囲を照らし、優しき抱擁で以ってその姿を消した。

 

 殺した──その事実だけが胸に飛来した。虚空を舞う焔。そして中途半端に燃え尽きた靴底が微かに地面に張り付いている。感傷はない、人を殺したという罪の意識も。

 

「終わったよ、ハイリオ」

 

 炎をかき消したギルが振り向き、呟く。その一部始終を見ていたハイリオは頷き、ギルの下へと駆け出した。その背中に続く形で、ミリシアとユリが駆けだす。三人の表情は優れない、それは状況的なものか、それとも友が人殺しの罪を背負ったが故か。

 

「……行こう、さっきの銃声で誰かが来るかもしれない」

「あぁ……あぁ、そうだな」

 

 ハイリオが頷き、ユリとミリシアも同意を見せた。不意にユリがギルの腕を掴み、下から覗き込むように問いかける。その口調は不安に揺れていた。

 

「ギル、その、大丈夫?」

「……問題ないさ」

 

 努めて何でもないようにギルは言う。これは本当だ、何の問題もない、【自分ならば出来る】と確信していた。この力を使ったのは初めてではない、人間に対して使ったのは初めてだが──こうなることは半ば予想出来ていた。これは人の身に余る力だ、であればこそ、人の身で耐えることも叶わない。予想出来ていたからこそ、精神的なダメージも──思っていたよりは酷くない。

 

「戦うって言ったのは僕だ、そしてまだ僕たちは道程にいる、立ち止まっている暇はない」

 

 それに、と言葉を続けようとしたギルがふと顔を上げる。向こう側から誰かが駆けてくる足音が耳に届いた。銃声を聞いて近くの兵士がやって来たのだ。全員の顔色がさっと変わる、ギルがユリの背中を押し、ミリシアが彼女の手を引っ張った。

 

「走れ!」

 

 ギルが叫ぶのと兵士達が路地から出てくるのは同時だった。ミリシアとユリが駆けだし、ハイリオがその背中を庇いながら走る。ギルは兵士と対峙したまま黄金の炎を纏い、それを地面に向けて放った。炎が蛇の如く這いまわり、兵士と自分たちの間に炎壁を設ける。轟と音が鳴り響き、熱風が頬を撫でつけた。

 

 兵士の足は止めた、事実黄金の向こう側に見える兵士は狼狽し恐慌している。しかし咄嗟の判断か、炎越しに無暗矢鱈と小銃を乱射させる兵士もいた。弾丸はその殆どが炎の壁に阻まれ落ちたが、幾つか炎の揺らぎを掻い潜りギル達を襲う。耳を掠る風切り音、こんな無茶苦茶な狙いが当たるとは思わない、しかし弾丸が飛来してくるというのは人間の根源的な恐怖を煽った。

 

 そしてひと際大きな射撃音──それが電磁投射機の放った音だと気付くと同時、咄嗟に黄金の炎を腕に纏う。瞬間、目に見えない巨大な何かが腕を叩いた。 

 

 レールガンの一撃を受けた黄金の炎は揺らぎ展開した炎壁の一部が抉れる。衝撃で大きく後方へと弾かれ、ジンと腕が痺れた。こんな事ならもっと自身の力について学んでおくべきだった、力の使い方がまるで分からない。裂け目から見える、長銃(ナガモノ)を構えた兵士。全員が旧世代の兵器で挑んだ訳ではないらしい。ギルは舌打ちし、何層にも炎壁を撒き散らしながら逃げ出した。

 

 海は直ぐそこだ、直線距離で百メートル程度。ギルは三人の後を追って駆け、時折炎をまき散らしながら目晦ましとした。背後から迫る弾丸は明後日の方向へと逸れていく。それでも電磁投射機だけは警戒した。しかし銃は撃てても追いかける事は出来まい、あの炎の壁を生身で超えるのは不可能だ。

 

 メガフロートの端、海を臨む限界区画。胸程の高さまであるガードレールに守られたそこに辿り着いたギルは荒い息を繰り返すユリとミリシアの姿を一瞥し、同じように胸を上下させるハイリオに問いかけた。

 

「ハイリオ、ボートは!?」

「区画ごとにある筈だ、此処には──あれだ!」

 

 ハイリオが指さした方向、それは海上から僅かに逸れた上部に設置されたボックス。ハイリオはガードレールを飛び越えプラントの斜面を滑り落ちていく。ギルは背後を見て、ユリとミリシアの背中を押した。

 

 「急いで!」と叫ぶと、二人は一瞬息を呑み、それからガードレールを飛び越えた。アスファルト舗装されたメガフロートの外装。そこに取り付けられたボックス、四人は斜面を滑り落ちながらその上に着地する。鉄ではない、半透明で硝子の様だった。プラスチックだろうか、妙に軽そうな材質だと思った。四人の体重が加わったボックスがギシリと軋み、ユリが悲鳴を上げる。

 

「排出用の操作盤──これか!」

 

 ハイリオが横合いに伸びていた緊急排出用レバーを引き、ロックを解除する。途端、三メートル程のボックス下方からボートが排出され、海上に音を立てて降下した。派手な音を立てて海に落下したゴムボート、ハイリオはボックスの上からと下を見下ろし、僅かな躊躇も見せずに飛び降りるとボートの上に着地する。衝撃で波が発生し、頭上を見上げたハイリオは大きく手を拱いた。

 

「ユリ、ミリシア!」

「分かっているわ! ユリッ……!」

「う、うん!」

 

 頷き、二人は一緒にボックスから飛び降りる。ユリは完全に目を瞑って体を縮こまらせる。ミリシアは落下地点を見極め、上手く着地の衝撃を殺した。ひと際大きな音、波が発生し二人は上手くボートへと乗り込む。ギルも三人の後に続き、少しばかり広いボートに四人が転がる。転がったままギルは後部モーターの電源を入れるハイリオに叫んだ。

 

「ハイリオ!」

「今端末で弄っている!」

 

 ボートは良くある汎用タイプのもので、後部にはモーターと自動操縦用の端末が備え付けられていた。ハイリオはその端末と睨み合い、素早く指で画面を叩いた。有線で繋がったタブレット端末を掲げ、ハイリオは重心を低くしながら叫ぶ。

 

「共生派のプラントまで飛ばすぞ、掴まれ!」

 

 叫び、ハイリオがボタンをタップする。瞬間けたたましい唸りを上げたエンジンが回転数を上げ、海水をまき散らしながら急発進した。

 

 速度設定を何にしたんだ、思わずそう叫びかけ、半ば倒れるようにしてボートの縁を掴む。元々十人程度は乗れるスペースがある、四人ではスカスカでユリは転がるようにしてミリシアの胸元にダイブしていた。

 

 凄まじい速度だ、半分浮きあがっているような気もする、しかしそのお陰か、漸く追いついた信仰派の連中が銃撃しようとも掠りもしない。銃声が後方で鳴り響くばかりで海水に小さな柱を量産するに留まっている。

 

「……! プラントが……ッ」

 

 吹き抜ける風、それに目を細めながらハイリオが後方を見て声を震わせる。ギルはボートの上に転がったまま夜空を見た。プラントの方角だけが嫌に明るい。炎がまき散らされ向こうだけ昼間の様だ。

 

 低い唸り声を上げた無人戦闘機がプラントの頭上を駆け、それからひと際大きな火柱と煙が上がった。爆発の音が臓物を跳ね上げ、びりびりと肌を刺激する。爆風は進むボートの風にかき消される。けれどその熱波はここまで伝わりそうだ。ボートの上に這いつくばりながら四人は茫然とかつての故郷を見つめる。火の海に呑まれ、破壊の限りを尽くされたプラントを。

 

「……なんて、酷い」

「………」

 

 ミリシアとユリは言葉を失っている。ハイリオとギルも自身の故郷をまざまざと破壊される光景に心が軋む。そして家族の事も──この光景を見て、未だ無事だと確信出来る筈もない。

 

「お父さん、お母さん……」

 

 ユリが震えた声で呟き、ミリシアが彼女をそっと抱きしめた。

 

「……向こうのプラントに到着したら、色々と情報が手に入るかもしれない、今は兎に角逃げるんだ」

 

 ハイリオは呟きタブレット端末を胸に抱いたままプラントから顔を背けた。しかしギルだけは決してプラントから目を逸らさない。まるで目に焼き付けるように、じっと炎に焼かれ続ける故郷を見続けた。

 

 

 

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