青の箱舟   作:トクサン

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始まりのプラント

 

 四人は無事、持ち込んでいたペンライトを目印に第二プラントの先遣隊に回収された。プラントに向けて飛行していたVTOL機は共生派第二プラントに停泊していた箱舟に搭載されていた機体であり、第一プラント襲撃の報を受け先駆けとして飛行していたらしい。二機編成で、一機は無人、もう一機は有人機であった。先遣隊が第一プラントの近場まで迫っていたのは本当に僥倖だった。有人機に回収された四人はそのままVTOLによって第二プラントへと護送され、無人機が第一プラント外周より偵察を続行する流れとなった。

 

 VTOLの中ではクルーやパイロットが「良く頑張った」、「辛かったろう」と良く四人を励ました。四人はまだ子供だ、そんな中で戦争に晒されたという事実が彼らの目には酷い光景に映った様だった。ギル、ミリシア、ユリの三人は壁に取り付けられた簡易椅子に背を預けながら互いに身を寄せ合う。ハイリオは代表してクルーにプラントの事を説明する事となり、その口調は淀みなく、先ほどまで命を失う寸前だったとは思えないほどに冷静だった。

 

 報告は多分に主観の混じったものとなったがクルーは真剣な面持ちでハイリオの話に聞き入った。

 

 目覚めたら家族――大人達が居なくなっていた事、信仰派の無人攻撃機が上空から爆撃を行っていた事、その間共生派の航空迎撃は一切なかった事、信仰派の兵士が街の中に踏み込んでいた事、彼らがどんな武器を使っていたか、どのようにして人を殺したか、そして自分たちがどうやってそこから逃げ出したのか。

 

 それをハイリオは簡潔な言葉で、しかし詳細に説明した。その間ギルはぼうっとVTOLの内装を見ていた。内部は無機質で、機能美という言葉が似合うような気がする。ただエンジン音が五月蠅く、何時間も中にいては耳がおかしくなりそうだとも思った。搭乗していたクルーは三人程で、現在はオートパイロット状態に移行しギル達の傍に寄り添っている。男性が二人、女性が一人、男性のうち一人はハイリオの話をデータにまとめ、もう一人はハイリオの聞き役に徹していた。女性はミリシアとユリ――特にユリの方を懸命に励ましている。四人の中で最も消耗しているのはユリだろう。

「良く頑張った、あとは私たちに任せて欲しい」

 

 クルーはそう言って四人に笑いかけた。子供をあやす為の強がりだ、ギルはそう思ったが口に出すことはなかった。

 

 やがて数時間のフライトを終え、VTOL機は共生派第二プラントへと到着した。メガフロートの一部を離着陸場へと割り当て、誘導に従ってAIがプラントへと着陸する。僅かな衝撃と振動、ガコンと音が鳴り響き、エンジン音が徐々に鳴りを潜めた。

 

 ギル達はその後、慌ててやって来た治安管理官に連れられシヴィリアン・センターに収容された。センターは巨大なホールや会議室、資料館などを併用しており、中には十数人程度ならば宿泊できる施設もあった。一時的な措置だろう、その間女性管理官が何かと四人の世話を焼き、暖かい飲み物や食べ物も支給された。

 

 四人は三日間程、この場所に家族や同郷プラントの市民がやってくるのを待ち続けた。

 

 

「外海周辺の救出を打ち切るらしい、現状第一プラントの生存者はこれだけだ」

 

 ギルはシヴィリアン・センターの給湯室でそんなやりとりを耳にした。偶然廊下を歩いているところに話し声が聞こえ、聞き耳を立てた瞬間衝撃的な言葉が耳に届いた。壁に張り付いてそっと中を覗き込めば、それほど広くない給湯室の流し台で珈琲を入れながら男性二人が会話を行っていた。

 

「そうか……プラント上にはまだ救出対象が残っているだろうに」

「分かっているだろうがプラントに乗り込む訳にはいかない、既に第一プラントは信仰派の占領下にある、たとえ生存者がいたとしても救出は難しい、自力で避難用のボートまで辿り着き外海に逃げ出した『子供たち』――僅か三十一名、これが今回の生存者だ」

「プラントには何百万人って人が住んでいるってのに……たった三十一人か、やるせないな」

 

 救助作業が打ち切られる。そして共生派はプラント奪還作戦を行う様子がない。

 ギルは自身の胸に暗い感情が落ちていくのが分かった。何となく、漠然と『こうなるのではないか』とは考えていた。だから衝撃は思ったほどない――いや、嘘だ。本当は人目も憚らず泣き喚き、暴れたい程の激情を覚えている。それを必死に飲み下し、仮面で顔を偽っているに過ぎない。

 

 ギルは覚束ない足取りで廊下を歩き、四人の寝泊まりする一室に向かった。最初は四人バラバラの部屋だったが、僅かずつ救助者が増えていくにつれ、幼馴染四人は同室となる事となった。無論、スペースをカーテンで区切る等の配慮は行われている。本来は男女別に分けるべきなのだろうが、ギルとハイリオ、ミリシアとユリはこの四人で生活する事を譲らなかった。

 

 部屋に戻ったギルを三人が出迎え、皆がその様子の変化にいち早く気付いた。「ギル?」とハイリオが名を呼び、部屋に入ってきたギルの肩を掴んだ。ギルの顔からは血の気が失せていた。

 

「ハイリオ……」

「ギル、どうした、酷い顔色だぞ」

 

 ミリシアとユリはもベッドから立ち上がり、ギルを囲うようにして心配げな表情を向ける。ギルは三人の顔を見比べ、それからそっと視線をつま先に落とすと、呟く様に言った。

 

「救助が、打ち切られるらしい」

 

 それは四人にとって絶望的な報告だ。もしかしたら、あるいは、そんな希望を抱いていなかったと言えば嘘になる。自分の家族が何もなかった様に帰ってくるのではないかと、そんな幻想を心のどこかで抱いていた。だからそれが木端微塵に砕かれ、夢が醒めた瞬間、皆の胸に鈍い痛みが走った。ハイリオは苦し気に表情を顰め、ミリシアはそっと目を伏せ、ユリはひっと喉を引き攣らせた。

 

「占領されたプラントを奪還する様子もない、多分、もう救出は絶望的だと……今回の生存者は三十一名、此処のセンターに収容されている、僕達だけだ」

「……そうか」

 

 ハイリオが言った、思った以上に暗い声色だった。救助の打ち切り、プラント奪還の目途なし。それはつまり、家族の安否が否寄りである事を示していた。もっと直接的な表現をするならば――ギル達の家族は死んだか、或いはこれから見殺しにされるのだ。耐えきれず、ユリが顔を覆って嗚咽を零した。

 

「……多分、そうなるだろうなって覚悟はしていたつもりだったけれど、いざ聞かされると結構堪えるものね――えぇ、本当に……覚悟はしていたつもりだったのに」

 

 ミリシアが腕を掴みながら呟く、その体は震えている。表向きは何で事のない様に、或いは気丈に振舞おうと決めていた。強い精神性を持つミリシアでさえ思わず涙を流し泣きわめきそうになる程の衝撃。ユリは覚束ない足取りで後ずさると、そのまま顔を覆ってベッドに力なく座り込む。部屋に重い沈黙が落ちる。

 

「――ギル、ミリシア、ユリ」

 

 ハイリオが皆の名を呼んだ。ギルは俯いていた顔を上げ、目の前の人物を見た。

 

「ハイリオ」

「これでもう、退路はなくなった」

 

 声は震えていた。しかし同時に力強く、絶対的な意志を感じさせた。目の前にあるその瞳を見た瞬間、ギルは一も二もなく問うた。

 

「やるんだね?」

「――あぁ」

 

 頷き、ハイリオ三人を見る。ミリシアは視線を返し、ユリは嗚咽を零し俯いたまま。反対の声は上がらなかった。はらりとハイリオの目尻から何かが零れる、彼はそれを指先で拭い、告げた。

 

「ボートで話した通りだ、俺は信仰派の連中に一泡吹かせたい」

「……一泡吹かせるだけで良いのかしら」

「――言葉を選ばなくて良いなら、全員皆殺しにしてやりたいよ」

 

 苦笑と共に漏れたハイリオの本音、誰も笑いなどしなかった。家族を失った、それが現実となった瞬間ギルの胸の中に悲しさとは別の何かが飛来した。それは【使命感】と言い換えても良いだろう。やらなければと思った、他ならぬ自分が、自分達が。

 

 脳裏に過るのは燃え盛るプラント。数日前の事だと言うのに、つい先ほどの事の様に思い出す事が出来る。瞼の裏に焼き付いた光景、恐らく自分は一生あの夜の光景を忘れないだろう。忘れたくても、忘れられない。

 

 啜り泣きが聞こえた。それはユリの声だった。もし本当に事を起こすというのなら唯一反対の立場に回りそうなのは彼女だ。だとしても、もう止まることは出来ない。ギルとハイリオは微かに険しくなった視線を向け、反対にミリシアは慈愛の目をユリに向けた。

 

「ユリ」

「……ミリシア」

 

 ベッドに腰かけ項垂れるユリに対し、ミリシアは膝を着いてその両手を握りしめる。はらはらとユリの目尻から涙が零れた。ミリシアはそんな彼女に対し何かを口にしようとし、一度言葉を呑んだ。そして柔らかな笑みを浮かべ優し気な口調で告げた。

 

「ユリ、貴方は無理をしなくても良い、私達三人に任せても――」

「それは嫌!」

 

 掛けられた言葉にユリは吠えた。涙を流しながら首を左右に振る。声の大きさにミリシアが驚き、思わず身を固くした。嗚咽を零しながらユリは何度も何度も首を振り、強い口調で訴える。その声は切実であった。

 

「……正直、今でも怖い、復讐より私は、皆と一緒に平和に生きていたい――でも、でも皆がどうしてもやるって言うなら、私だけ何もしないなんて嫌!」

 

 ミリシアの握っていた片方の腕を振り解き、乱雑に目元を拭う。指先に伝った涙が弾け、ユリはハイリオに似た眼光を宿して言った。

 

「私も、皆と一緒に戦う」

 

 心配は杞憂だった。ユリは立ち上がり、対面に立つハイリオを睨みつける。

 ややあって、「やれるんだな」とハイリオは問うた。ユリは何も言わなかった、ただ一度だけ頷いた。

 

 ☆

 

「それでハイリオ、具体的にはどうするんだい」

 

 シヴィリアン・センターの一室。四人のベッドが置かれた宿直室にて顔を突き合わせる。ギル、ハイリオ、ミリシア、ユリ。ハイリオはベッドの上で胡坐を掻き、ユリは体育座り、ミリシアは足を揃えた女の子座り、ギルは壁に背を預け足を投げ出していた。四人の意志は一致している、唯一反対の意を抱えていたユリも事ここに至って腹を括った。もう後には引けない。三人の視線を受けたハイリオは何度か頷きつつ口を開いた。

 

「結局俺たちは子供だ、やれる事は限られている、けれど子供だからと言って何も出来ない訳じゃない、少なくとも【同情】は買える」

「同情?」

 

 訝しげにミリシアが問いかければ、ハイリオは「あぁ」と短く肯定した。

 

「俺たちは派閥のトップでもなければ軍人でもない、ただの一般市民で、無力な子供だ、けれどそんな俺達でも活かせる強みがある」

 

 何かわかるか、ハイリオの問いかけにギルは首を横に振った。ハイリオは唇を湿らせると淡々とした口調で告げる。

 

「戦争孤児――俺達は信仰派の攻撃でプラントと家を失い、家族も亡くし、帰る場所も肉親も失った……親身になってくれる奴は少なからず居るだろう、そこが俺たちの他と違うところ、つまり強みだ」

 

 帰る場所を失くし、肉親を失ったことが強み。つまりそれを活かして同情を買えという事か。ギルはハイリオの言う事を理解した。しかし同時に、何故それが戦争を起こす事に繋がるのかが分からなかった。そんなギルの思考を表情から読んだのか、ハイリオは三人を見渡しながらやや口調を緩めた。

 

「まずは足場固めだ、同情を買うのは前準備に過ぎない、例え派閥のトップだろうと抗えないものがある、それは――」

「民意ね」

 

 ミリシアが間を置かずに答える。ハイリオはその言葉に頷いた。

 

「そうだ、この共生派プラントに於いては【多数】が正義、プラント内の人間が戦争を望めば、たとえどれだけ共生派のトップが戦争に反対しようと必ず争いは起こる、話し合いをモットーに掲げていようが知ったことか、人間右の頬を殴られて左の頬を差し出せる奴なんて滅多にいない、憎しみや復讐の感情は絶対に湧き上がる、内部分裂が起ころうと目的さえ果たせれば関係ない――共生派の存続さえも勘定の外だ、此処が食い潰されようと信仰派さえ瓦解すれば俺たちの勝ちだからな」

「……その為に同情を買う?」

「あぁ」

 

 打てば響く様な応え。ハイリオは腹の底からそれが必要だと信じていた。ギルにはハイリオの見ている世界が見えない、元よりアレコレ考えるのは好きではなかった。ハイリオがそう言うのであればそうなのだろう、そんな漠然とした信頼で以って頷く。三人を順に見渡すハイリオは腕を指先で叩きながら言葉を続けた。

 

「分かり易く言おう、俺たちがやる事は至ってシンプルだ――共生派の人間、今回の件を徹底的に広め、信仰派の脅威を宣伝し、如何に第一プラントが悲惨な結末を迎えたか語り、広めるんだ、そして共生派の方針を開戦させる方へと向かわせる」

「……ちっともシンプルに思えないのだけれど」

 

 ミリシアが表情を顰めながら吐き捨てた。ギルも同意だ、ユリも不安げな表情を隠さない。たった四人で国を巻き込み戦争を起こす。その為に必要なのは同情、そして市民の意志。ユリが不安げに問いかける。

 

「それってつまり、デモみたいなものなの……かな?」

「いや、俺達が主導しているという事は絶対にバレてはいけない、あくまで戦争の声を上げるのは【第二プラント】の人間である必要がある、同郷の人間が声を上げるからこそ意味がある、此処では俺たちは同じ所属でも外様同然だからな」

「やる事は分かったよ、じゃあ、手始めに何をすれば良い?」

「そうだな……」

 

 ギルがそう問いかければハイリオは顎に手を当てて暫くの間目を瞑った。そして数秒程何かを吟味するように頷き、告げる。

 

「最初は俺達と同じ避難民――つまり同じプラントの連中、彼らを煽って憎しみや悲しみの感情を掻き立てる、俺たちは【保菌者】(キャリア)だ、そして同郷の連中には意識させずに同じ役割を背負ってもらう、不満や不安を此処にいる人間にぶちまけさせるんだ、その次は俺達の周囲に居る人間……つまり治安管理官やここの職員、そういう連中に俺たちがどれだけ可哀そうで、信仰派の連中がどんな非道な事をしてきたのかを懇切丁寧に教えてやる」

 

 第一プラントが襲撃された事は知っている奴も多いだろうが、それでも実際にどんな光景だったのかを知っている奴は殆どいない、市民に知らしめるんだよ、信仰派にヘイトを集めるんだ。そう口にするハイリオの言葉に三人は頷いた。ハイリオは片手で拳を握り、パンと自身の掌に打ち付ける。その瞳の向こうには既に戦争へと向かう共生派の光景があるのだろうか。ギルには分からない、しかしハイリオの声は熱を帯びていた。

 

「その後は少しずつ、少しずつで良い、信仰派に対する嫌悪感や危機感を表層化できれば儲けものだ、兎に角、色んな組織やモノを巻き込む、事は大きくなれば大きくなる程良い、逆に鎮静化したら最悪だ」

「そう……なら、そういう根回しは私に任せて貰おうかしら」

 

 ミリシアが手を挙げ、そう続けた。三人の視線が彼女に向く、ミリシアは鼻を鳴らすと腕を組みながら言った。

 

「元からそういうのは得意だし、性差を使うみたいで嫌だけれど、同情を誘うなら女の方がやり易いでしょう? 元より話を広めるだけなら四人でやる必要もない、これは私とユリが請け負うわ――良いでしょう、ユリ?」

「う、うん」

 

 ミリシアの言葉に横で俯いていたユリは頷く。ハイリオは小さく「そうか」と呟くと、何度か自身の手の甲を擦った後に言った。

 

「なら、俺は人類派とどうにかコンタクトを取れないかやってみよう、動ける範囲も伝手もないが、情報収集と並行して行えば無駄じゃない筈だ、上手く行けば協力を得られるかもしれない」

「えぇ、お願いするわ」

「……なら、僕は何をすれば?」

 

 ハイリオは情報収集兼人類派とのコンタクト。ユリとミリシアは足場固めと伝染作業。なら自分は何をすれば良いのだろうか。ギルが気まずそうに首を傾げれば、ハイリオは断固とした口調で告げる。

 

「ギルには別に頼みたい事がある」

 

 強い口調だった、予め考えていたのだと確信できる言い方だ。ギルの表情が明るくなり、「本当? なにをすれば良いかな」とハイリオに問いかける。自分だけ手持ち無沙汰にならずに済んだ。そんな歓喜すら滲ませるギルに対しハイリオは言った。

 

「戦える奴を集めてほしい」

「戦える奴?」

「そうだ」

 

 随分大雑把な言い方だと思った。言葉が足りないと思ったのかハイリオはギルに体を向け言葉を続けた。

 

「共生派に軍部は存在しない、治安管理局はあっても外部に向ける力はない、あっても全て無人機だからな、だから『戦える人間』を集めてほしい、義勇兵と言い換えても良いだろう、信仰派に対して銃口を向けられる奴を見つけて欲しいんだ――まぁ、これは少し大げさか、要は必要な時に動ける人間が欲しいんだ、いざ戦争となったら治安管理官をそのまま転用するのか、或いは徴兵するのか、義勇兵を募るのかは知らないが、自分達で動かせる集団がいるというのは大切だ、決して無駄にはならない」

 

 共生派に軍は存在しない。仮に開戦するならば兵士の調達は急務。それがどの様な形になるかは分からないが備えるに越したことはない。上手く行けば内部に潜りこめる。

 

 ギルはその言葉に頷いた。兎に角動ける人間、特に信仰派と敵対出来る連中を集めれば良いのだろう。同情を買ったり、或いは人類派とコンタクトを試みるよりは随分簡単だと思った。少なくともギルの頭で噛み砕いた内容はこうだ。『喧嘩っ早い奴、信仰派を憎んでいる奴、こちらの思想に同調出来る人員を集める』――それなら自分にも出来そうだ。

 

 何なら最悪でも――力尽くで従わせてしまえば良い。

 

 話は決まった、小さく膝を叩いたハイリオは真剣な面持ちで息を吐く。

 

「よし、各々自分の役割は分かったな――なら、早速明日から始めよう」

 

 ハイリオはそう言って手を差し出す。上に向けられた手のひら、それを見たギルが自身の手を伸ばし、ハイリオの手を掴む。仕方なさそうな吐息を零したミリシアがそっとその下に手を伸ばし、慌ててユリがギルの手に自身の手を重ねた。

 四人の手が重なる。これは誓いだ。ギルはハイリオの手を一層強く握りしめた。

 

「もう、戻れないぞ?」

「今更だね、プラントが焼かれた時から腹は決まっていたんだ」

「そうね、ここまで話を聞かせておいて【やっぱりナシ】は駄目」

「……うん、私も、覚悟を決めたから」

 

 ハイリオの言葉に対し各々が異なる反応を見せる。ギルは薄ら笑い、ミリシアは脱力し挑発的、ユリはその瞳を揺らしながら強い意志を抱いた。分水嶺は過ぎた、ならばあとは進むだけ。ハイリオが息を吸いこみ、告げた。

 

「俺たちは信仰派を壊滅させるまで止まらない――成し遂げるぞ、絶対に」

 

 

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