ACE COMBAT after story of the demon of the round table   作:F.Y

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主要登場人物

ラミ・"サイファー"・ハータイネン・・・傭兵

マグヌス・"ジャガー"・ハウゲン・・・ノルドランド空軍パイロット

ピーター・ダール・・・ノルドランド空軍AWACSオペレーター

ロビン・リー・・・ノルドランド空軍情報将校

ラズヴァン・メリンテ・・・ウェルヴァキア人民評議会最高議長

ダニエル・"ルップ"・イオネスク・・・ウェルヴァキア人パイロット

オットー・マインリヒト・・・ベルカ人技術者


プロローグ 出発

 1996年 1月3日 0912時 ウスティオ共和国 ヴァレー空軍基地

 

 男は雪の降る中、戦闘機を離陸させる準備をしていた。ここには、もう用無しだ。次の戦場が待っている。ウスティオ空軍司令部は、彼を是非とも空軍の正規兵として迎え入れたい、と申し出てきたが、男は断った―――いきなり中佐の階級を拝命するという栄誉を受けると言うのに、だ。

 男は、基地の整備兵たちが用意してくれた機体の周りを歩き、自分の目でも状態をチェックした。これから当面の間は、自分一人でこれをしなければならない。

しかし、だ。行くあてがこれ程早く見つかるとは、思ってもいなかった。なにせ、これだけの戦争が起きた後だ。

 

 これから、東に向かう。たった8、9ヶ月程度しか滞在していなかったのに、この26歳の若者は、まるで、ウスティオは第2の故郷であるかのように感じていた。

 男が戦闘機を飛ばす準備をしている最中、周囲には人垣ができていた。自分自身、後に、ベルカ戦争最高の英雄とされるとまでは、思ってもいなかった。だが、自分に付いた渾名を、彼自身は気に入っており、それを誇りに思っていた。

 『円卓の鬼神』それが彼の渾名だ。彼は目の前に立ちふさがる敵は、全て薙ぎ倒し、例え任務外の目標であっても爆弾を投下し、戦いの中で破損し、戦うことができなくなった敵機も容赦なく撃墜した。

 

 そんな彼の容赦ない戦い方を非難する人間も、少なからず存在した。が、それ以上に、彼の戦果というものは、目覚ましいものがあった。

 だが、そんな称賛も、非難も、彼にとっては、何の意味もなさなかった。傭兵という生き方、戦争という状況で、ひたすら敵を倒すという事にしか、人生の価値を見出だせない人間。

 彼自身、どうしてそうなってしまったのかはわからない。10代の頃から両親とは疎遠になり、戦闘機パイロットになるための訓練を、得体の知れない人間たちと関わる中で始めた。そして、才能を開花させ、20歳の頃には、既に駆け出しの傭兵パイロットとして独立していた。

 傭兵パイロットの寿命は短い。短くて数日。平均したら、3~5年。10年も続けていれば長い方だ。それを考えると、彼は『長生き』した方である。

 

「よお」ウスティオ空軍の整備兵が話しかけてきた。

 

「なあ、やっぱり、あの話、受けてくれないのか?」

 

「悪いが、考えて直す気は無い。俺の他に、教官に向いている奴はいくらでもいる」

 

 ラミ"サイファー"・ハータイネンは、自分よりも10は年上の兵士にそう言い放った。

 

「なあ、寒い場所の方が好きなんだろ?なら、ここだって十分寒いさ」

 

 サイファーは、オーシア大陸の北東に位置する大きな島国、ウェローの出身だ。戦闘機に乗る技術も、そこで身につけたものだ。

 そして、戦闘機パイロットは、サイファーにとって、まさに天職だった。ミサイルや機関砲を撃てば、敵は死に、敵から放たれるミサイルを、サイファーはまるで嘲笑うかのように避けていた。

ただ、唯一、問題だったのは、一緒に飛ぶ相棒に恵まれながら、その相棒は長生きできなかったことだ。最初の相棒、ラリー"ピクシー"・フォルクは、後にテロ組織『国境なき世界』のクーデターに加わり、最後はサイファーと対立。核兵器V2を阻止する作戦の最中、サイファーは自らの手で殺した。

 2番目の相棒、パトリック・ジェームズ"PJ"・ベケットは、同じ作戦でピクシーに殺された。

 

「残念だが、平和になったら、俺はいらない存在だ。だが、戦争は、どんな場所でも起きる。俺を必要としているのは、戦火で住む場所を追われ、家族や友人を無くしながら、尚も侵略者に脅かされている人々だ」

 

 勿論、それは建前だった。サイファーは、もはや、戦闘機に乗って敵を倒す事でしか生きる事ができない人間となっていた。

 

「長生きしろよ。ベルカ戦争の英雄が、の垂れ死んだりしたら、世界中の戦闘機パイロットが悲しむ」

 

「戦闘機パイロットというのは、誰にも知られず、ひっそりといなくなるものさ。勿論、地獄の向こうでな」

 

「それで、行くあてはあるのか?」

 

「ああ。レティオ共和国に傭兵が集まっているという噂を聞いた。そこに行けば、何かしら食い扶持にありつけるだろ」

 

「そんなことしなくても、あんたは十分に金持ちだろ。博打はやらない。酒は程々、女も買わない。他の傭兵とは随分と違う」

 

「老後に困らないようにしているだけさ。まあ、俺にはあるかどうかは怪しいもんだが」

 

「あんたみたいなのは、なかなか死なないものさ。知ってるか?ベルカのエスケープキラーの・・・・・」

 

「シュヴァルツェ隊か」

 

「ああ、そうだ。あの部隊の隊長だが、脱走して生き延びているらしいぜ。今は何やっているのかわからんが、まあ、悪人はなかなか死なないものさ」

 

「だとしたら、俺も同じだな。人を殺しまくったからな」

 

「だが、そのお陰で救われた人間もいた」

 

「ああ。戦争というのは、命のトレードオフさ。誰かが死んだ陰で、誰かが生き残る」

 

「あんたが言うと深いな」

 

 やがて、若い整備兵がサイファーの近くへやって来て、敬礼した。

 

「機体の準備が完了しました。確認をお願いします」

 

「わかった。さて、そろそろお別れだな」

 

 サイファーは、F-15Cから乗り替えた、新しい機体―――Su-35BMへと向かった。この機体は、ベルカ兵器工厰の設備を連合軍が占拠した時に発見された、最新鋭機だ。サイファーは、お金とコネを利用して、この機体を手に入れた。機体には武装が施され、燃料は満タンだ。

 

「それで、やっぱりレティオへ行ってからどうするんだ?」

 

「さあな。傭兵が集まっているということは、どっかの国のリクルーターが引っこ抜きに来ているんだろう」

 

「そうそう。他にも戦争が起きている所はあったな・・・・・確か、ユークトバニアの西、ソトアでは内戦状態だとか言っていたな」

 

「で、片方の勢力にユークが肩入れしている、と」

 

「ああ。戦車、戦闘機、駆逐艦、潜水艦。噂では、オーシアとの冷戦の副産物なんていう物騒なものまで投入されているらしいぜ」

 

「エクスカリバーやXB-Oみたいなのが大量投入されていると思うと、ぞっとするな」

 

「馬鹿言え。あんたの相手じゃないだろ」

 

「それは、オーシア正規軍やサピン正規軍、その他傭兵連中の助けがあったからだ。俺一人の力じゃない。さあ、もう行くぞ」

 

 1996年 1月3日 0934時 ウスティオ共和国 ヴァレー空軍基地

 

 4機のF-16Cが次々と離陸していった。基地のエプロンでは、大勢のウスティオ空軍兵たちが手を降って見送っている。いよいよサイファーが離陸する番だ。Su-35BMをタキシングさせつつ、手を降って応えた。エプロンはあっという間に黒山の人だかりとなり、中には誘導路にまではみ出して見送る者もいた。

 

『ガルム1、いよいよお別れか。感慨深いな』

 

 管制塔から、慣れ親しんだ管制官の声が聞こえてきた。今日でこの声も聞くことはなくなる。サイファーは、滑走路の端で、Su-35BMのエンジンとフラップ、ラダー、エレベーターの調子を確認した。しっかりと整備は行き届き、機体の状態は完璧だ。パイロンには、自衛のための空対空ミサイルと空対地ミサイルが搭載されている。

 

「厄介払いができて、あんたもせいせいしているんじゃないのか?」

 

『おいおい。こっちとしては、これから立て直す空軍の新人パイロットの教官として、是非とも残って欲しかったんだぞ。あんたが鍛え上げれば、ひよっ子共も、あっという間に精強部隊の仲間入りだ』

 

「何言っているんだ。平和になったんだろ。それなら、俺はお役御免だ」

 

『やれやれ。まあ、最後に決めるのはあんただからな。俺たちにとやかく言う権限は、全く無かったからな。それは、空軍司令部から、はっきり言われていたからな』

 

「そういうことだ。じゃあな」

 

『"円卓の鬼神"、離陸を許可する!幸運を!』

 

 Su-35BMがアフターバーナーを炊き、滑走路を走った。機体が地面を離れた瞬間、地上では一斉に大きな歓声が上がった。サイファーは戦闘機の翼を左右に振って、それに応えた。ベルカ戦争最高の英雄は、新天地を目指し、紺色の空の向こうへ消えていった。

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