ACE COMBAT after story of the demon of the round table   作:F.Y

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混戦

 1996年 1月19日 1201時 ノルドランド西部

 

 ウェルヴァキア陸軍のT-80UMの125mm砲が火を吹いた。続いて、BMP-3から9M14対戦車ミサイルが発射される。ノルドランド陸軍のM113装甲車が、アルミ合金の車体をあっさりと爆破され、中の陸軍兵士や操縦士ごと火だるまになる。だが、ノルドランド陸軍も反撃に転じ、レオパルト2A4主力戦車やM2A1ブラッドレー歩兵戦闘車の主砲が唸り、ウェルヴァキア陸軍車両を破壊し始めた。

 

「こちらタランチュラ1、航空支援を要請する!」

 

『タランチュラ1、お望みのものは、すぐ来るぞ。上を見ろ!』

 

 無線機に向かって怒鳴っていた隊長が空を見上げると、重低音を響かせながらAH-64Dアパッチ・ロングボウ戦闘ヘリコプターの編隊が通過していった。アパッチの集団は、遥か前方の林の陰でホバリングした後、次々とAGM-114Lヘルファイア対戦車ミサイルを発射した。レーザー誘導されたミサイルが、T-80UMやBMP-2を炎上する鉄屑に変える。だが、それで十分とは言えなかった。

 

『こちらマンティス1、補給に一端戻る』

 

 アパッチは回れ右をすると、先程飛来してきた方向へと戻って行った。しかし、敵陣から一筋の煙が空に向かって延びてきた。地対空ミサイルだ。アパッチの編隊の後方の1機が、テールローターにミサイルを食らい、回転しながら地面に落ちていく。

 

『メーデー!メーデー!メーデー!マンティス4、被弾した!墜落する!』

 

「畜生!」

 

「K小隊を救助に向かわせろ!」

 

「戦闘機部隊はまだか!?」

 

 1996年 1月19日 1206時 ノルドランド西部

 

 最初に援護にやってきたのは、ノルドランド空軍の戦闘機では無く、傭兵部隊が乗る4機のA-10AサンダーボルトⅡ攻撃機だった。このオーシア製の攻撃機は、超音速を出せる訳では無いが、頑丈な装甲と強力な破壊力を持つ30mmアベンジャー機関砲のおかげで、地上部隊の天敵を名乗るほどの機体となった。オーシアは、この攻撃機をユークトバニアとの冷戦期に開発し、主に敵の機甲部隊を壊滅させる目的で配備している。

 この攻撃機はまた、ユージア、エメリア、オーレリアにも輸出され、空軍で配備されている。安価な割には攻撃力に優れ、生存性も高いので傭兵パイロットにも人気がある機体だ。

 

「こちらシャーク隊。敵をレーザーで照射してくれ。一度、上空を通過する。繰り返す。敵味方を区別したい。敵をレーザーで照射せよ」

 

『こちらタランチュラ1、了解した。レーザーで照射する』

 

「こちらシャーク1、確認できない。確かにレーザーで照射したのか?」

 

『何を言っているんだ?確かに照射したぞ』

 

 しかし、A-10の火器管制システム操作画面には、レーザーを捉えたという表示は一切出ていなかった。

 

「こちらシャーク1。爆弾のシーカーがレーザーを捉えられているという表示が出ていない」

 

 それもそのはずだった。地上部隊の歩兵は焦るあまり、雪が激しく降る中で敵戦車部隊の方向にレーザー照射器を向けていたのだ。これでは、いくら照射したところで、レーザー光の反応を上空の攻撃機の誘導爆弾のシーカーが捉えられるはずが無かった。

 

 1996年 1月19日 1211時 ノルドランド西部上空

 

「始まっているな。AWACS、情報を寄越してくれ」サイファーが無線で呼びかけた。

 

『状況は混乱している。どうやら雪で視界が悪くなり、レーザー誘導兵器が使えなくなっているらしい。マングース隊、君らはリザード隊やパイソン隊と共に、後方の敵の予備部隊への攻撃を行ってくれ。前線部隊への攻撃はシャーク隊とグリズリー隊に任せろ』

 

「了解だ。ジャガー、聞いたな?」

 

『2了解。前線が少々不安ですが、仕方ないですね』

 

「だが、後方部隊を叩いておけば、奴らを寸断して包囲撃破できる。やってみる価値はある」

 

『わかっています』

 

『AWACSガーディアンよりシャーク隊とグリズリー隊へ。近接航空支援を開始せよ』

 

 タイフーンFGR.4がブリムストーン空対地ミサイルを放ち、敵戦車を破壊し始めた。雪は少しずつではあるが晴れてきたため、少しだけ待てば近接後方支援を再開できそうな様子であった。その上をF-15EやSu-30SMが通過していく。戦いはまだ始まったばかりだ。

 

 1996年 1月19日 1213時 ノルドランド西部

 

 ウェルヴァキア陸軍部隊は、T-80UM戦車やBMP-3歩兵戦闘車に楔型のフォーメーションを組ませてばく進していた。まずは、西部の都市を占拠し、更には途中で確認した軍の基地を破壊するのが連中の目的だった。

 

 部隊指揮官である少佐は、歩兵戦闘車の車内で無線を聞いていた。どうやら、双方共に戦況は芳しくないようだ。しかし、だ。この季節は非常に雪が積もり、寒さも厳しい。車内は暖房が利いているが、それでも不十分なくらいだ。

 戦車や装甲車の履帯には、スリップ防止用の金属製のスパイクが取り付けている。履帯のゴム製の接地面はツルツルしているため、これが無いと凍った地面の上でまともに戦うことすらできない。

 

 1996年 1月19日 1215時 ノルドランド西部上空

 

『AWACSガーディアンよりマングース隊へ。敵機を確認した。数、4』

 

「マングース1了解。敵を排除する。ジャガー、やるぞ」

 

『2了解。AMRAAMスタンバイ』

 

『ベア1交戦準備完了。中距離空対空ミサイル発射用意完了』

 

 サイファーはレーダーで敵機をロックした。IFFの表示は敵と出ている。

 

「マングース1、Fox1!」

 

『マングース2、Fox1!』

 

『リザード1、Fox1!』

 

 R-77やAMRAAM、ミーティア、AIM-54といった、中距離空対空ミサイルや長距離空対空ミサイルが敵へ向かって飛んでいく。

 

『敵の撃墜を確認。3・・・・・いや、5、全機の撃墜を確認。マングース隊とリザード隊、パイソン隊は引き続き、敵後方へ飛び、地上部隊を攻撃せよ』

 

「マングース1了解。攻撃を続行する。ジャガー」

 

『わかっています、サイファー。任せてください』


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