ACE COMBAT after story of the demon of the round table   作:F.Y

16 / 84
帰還と犠牲

 1996年 1月19日 1431時 ノルドランド共和国 ヨアキムロル空軍基地

 

「・・・・・先程、マングース隊が交戦したウェルヴァキア空軍の部隊だが、ウェルヴァキアのエース級部隊である可能性が高いという結論が出た。現在、マングース隊、クロコダイル隊、スパロー隊のフライトレコーダーを解析中だ。以上だ。それでは、全員、起立!」

 

 ロビン・リー少佐が大声で言うと、パイロットたちが一斉に立ち上がった。

 

「本作戦にて犠牲になった、フィン・スコドウィン中尉、ホルヘ・セパルズ氏、イワン・ゼルフ氏に敬礼!」

 

 戦闘機パイロットというのは、8割方はこのような最期を迎えるものだ。自分の愛機が棺桶の代わりということだ。高齢で、体が空中戦の激しい機動によるGに耐えられず、引退する道を選ぶ奴は非常に幸運だ。特に、戦闘機に乗ることしか能が無い、傭兵にとっては。

 正規の空軍の奴らはまだいい。生き残れば生き残るほど、手柄を立てれば立てるほど、階級が上がり、司令部関係の書類仕事が増え、飛行機に乗る機会が減る。それは、同時に、戦死したり、訓練中の事故で死亡する可能性が、だんだんと減っていくことを意味する。

 

 さて、ウェルヴァキアは、次はどの手を打ってくるだろうか。ベルカが背後でスポンサーをやっているとなると、まだ何かしらの手札を沢山隠し持っているはずだ。

敵側の情報が少ない分、こちらとしても、受け身にならざるを得ないのはあまり納得がいくものでは無かったが、ベルカ戦争に参加し始めた時も、だいたいはこんな感じであった。向こうに主導権を握られ、なかなかこちらのペースで作戦を展開することができないのだ。

 

 1996年 1月19日 1533時 ウェルヴァキア ペルジルタ空軍基地

 

 ダニエル・"ルップ"・イオネスク率いる部隊は、帰還している時に、本来の所属基地では無く、試験部隊が所属するこの基地に向かうよう命じられた。イオネスクは何事か、と管制官に尋ねたが『司令部の命令だ』と言われただけで、詳しい回答は得られなかった。まあ、いい。命令は命令だ。

 

ペルジルタ基地には、若い頃に何度か訪れたことがあった。ここには、かつてはウェルヴァキア空軍のアグレッサー部隊が配置され、若い戦闘機乗りたちを非常に厳しい訓練で徹底的にしごいていた。イオネスク自身、事あるごとに、アグレッサー部隊に送り込まれ、その度に返り討ちに遭ってきた。だが、それがあるからこそ、今の自分がいるようなものである。

 

 イオネスクは不満だった。まだ、マリウス・バセスク大尉の安否を確認していない。Mi-24DとMi-8で編成された救助部隊が派遣されたことは確認したが、それ以来、救助に何かしら進展があったという知らせは受けていなかった。バセスク大尉もそうだが、イオネスクには、もう1つ、気がかりな事があった。

 

 今日、部下を瞬く間に撃墜した、Su-35BMに乗ったパイロット。奴は、間違いなく只者では無い。ノルドランド空軍はオーシアとの関係が強く、その半面、ユークトバニアとは武器を買う程の関係にまでは至っていない。だが、Su系統の戦闘機は、元々はユークトバニア製だ。だとしたら、傭兵だという可能性が非常に高い。

 

 バセスク大尉をも翻弄し、撃墜する程の腕前を持った傭兵。勿論、イオネスク自身、傭兵やノルドランド空軍のパイロットの能力を過小評価している訳では無い。この間のベルカでの戦争で多大な戦果を上げたのは、ウスティオ、サピン、オーシアの正規兵では無く、ウスティオが雇った傭兵だったという話を複数の方面から聞いていた。自分は軍人だ。確かに、軍から俸給は得ているが、それ以上に、ウェルヴァキアの国益を獲得し、その邪魔をする存在を、あらゆる手段を用いて排除する。それが、自分の仕事であり、使命だ。

 

 だが、傭兵は?奴らはまるで風見鶏のように所属を変え、平気で雇い主を裏切ることもある。連中は、生まれた祖国を捨て、世界中を飛び回り、自分たちを雇う奴らが、どんな人間か、どんな国なのかというものを、まるで気にしない。殺しと報酬、力が全て。まるで、無法者ではないか。

 

 そのような、犯罪者スレスレの奴らに、規律と統率が全ての正規軍が翻弄されることに、イオネスクは我慢ならなかった。何故、そんな奴らがのさばり、何の権利があって、ウェルヴァキアの正当な国益を求める戦いを妨害しなければならないのか。食い扶持だけを求める傭兵が。もて余す程の豊富な資源を国内に抱えながら、貧しい他国に施しを与えない、強欲なノルドランドにはぴったりかもしれない存在ではあるが。

 

 そんな事を考えるのは、後回しでも構わないはずだ。まずは、バセスク大尉の安否だ。基地の司令部は、バセスク大尉の捜索を優先的に行ってくれると請け合った。例え、階級が下だとは言え、ウェルヴァキア空軍の英雄の頼みを無下にできる兵士なぞ、それが例え最高司令官クラスの将軍であっても、空軍内部には存在しなかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。