ACE COMBAT after story of the demon of the round table   作:F.Y

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ウォーターシールド作戦

 1996年 1月28日 0813時 ノルドランド パルダール空軍基地

 

「さて、先日伝えていた通り、ウェルヴァキア南部のヴバルタール海軍港に集結していたウェルヴァキア海軍の艦隊が、北東へと進み始めた。あと数時間で我が国領海へと侵入するものと推測される。無人偵察機RQ-1で探りをいれた所、駆逐艦やフリゲートを中心に、強襲揚陸艦が確認されている。恐らく、護衛の潜水艦もいることだろう」

 

 ロビン・リーがパソコンを操作すると、スクリーンにノルドランド南部の港町、カセマリルム市周辺の地図が映し出された。

 

「敵の狙いは、間違いなくこのカセマリルム市だ。この港を接収すれば、駆逐艦クラスの艦船を停泊、整備させることができる。そうすれば、ノルドランド侵攻の足掛かりになってしまうだろう。それだけは何としても阻止せねばならない。尚、今回は海軍との共同作戦となる。諸君の任務は、敵艦船と航空機の排除だ。敵の哨戒機や戦闘機は、我が海軍の駆逐艦や潜水艦の脅威となる一方、強襲揚陸艦には陸軍の精鋭部隊が搭載されていることは明白だ。カセマリルムを絶対に奪われる訳にはいかない。以上、出撃準備に取りかかってくれ!」

 

 1996年 1月28日 0853時 ノルドランド パルダール空軍基地

 

 サイファーとジャガーは、元々はこの基地の所属では無いが、今日は応援要員としてやってきていた。同じように外部の基地から来た傭兵たちが何人もいる。

 サイファーのSu-35BMには、Kh-31A対艦ミサイルが4発、搭載されていた。自衛用にはR-73が2発とR-77が4発。一方、ジャガーのJAS-39CにはミーティアとIRIS-T、RBS-15対艦ミサイルがそれぞれ2発ずつ搭載されていた。

 

「サイファー、対艦戦闘の経験は・・・・・聞くまでも無さそうですが」

 

「実は、だな。空戦や対地攻撃ほどでは無いんだ。まあ、ベルカから離れるまでは、ずっとF-15Cに乗っていたからな。だが、無誘導爆弾でベルカ海軍の艦船を幾つか沈めた経験はある」

 

 ジャガーは愕然となった。無誘導爆弾で艦船を沈めただって?そんな芸当ができるパイロットが存在したとは。

 

「待って下さい。それは・・・・・・ 」

 

「うん?ああ。水面ギリギリの低空で、駆逐艦のレーダーを避けながら接近。爆撃ポイントで引き起こして爆弾を投下、上昇して逃げるだけだ。1000ポンドや2000ポンド級の爆弾を使えば、巡洋艦程度ならば、かなりの大破を期待できる。狙うのならば、できるだけ、敵艦船の後ろから接近する」

 

「レーザー誘導爆弾とかでは無いのですか!?」

 

「F-15Cにはそんなのは積めないからな。だが、今日は、敵の射程外から撃てる便利な物がある」サイファーは、フランカーに搭載された対艦ミサイルを見上げて言った。

 

 なんて男だ。ジャガーは改めてサイファーの恐ろしいまでの腕前を認識した。サイファーが語ったようなことをすれば、普通ならば、たちまちSAMやCIWSの餌食になってしまうはずだ。

 

「冗談ですよね?」

 

「さあな。ベルカでこれをやったのは、俺と、最初の相棒だけだからな。2番目の相棒は、そこまでの腕では無かったから、無理をせず、遠くから対艦ミサイルを撃っていた。それが一番賢いやり方だ。まあ、対艦ミサイルを積めない機体なのに、無理矢理対艦攻撃をやらされたから、そうせざるを得なかっただけだが」

 

「ですが・・・・・・」

 

「ああ、今日は長い槍があるからな。どうやら、ウスティオでやっていたみたいな、自殺任務をやらされずには済みそうだ。イーグルからこいつに乗り変えて正解だったな」

 

 サイファーはSu-35BMの機体に触れて言った。タンクローリーが機体の側にやってきて、燃料を入れ始めた。

 

 1996年 1月28日 0855時 ウェルヴァキア・ノルドランド領海境界付近

 

 ウェルヴァキア海軍の揚陸艦隊が、ノルドランドのカセマリルムを目指して進んでいた。駆逐艦や巡洋艦、揚陸艦で編成されている。更に、海面の下には潜水艦すら潜んでいた。

 

 ウェルヴァキア海軍は、まずは巡航ミサイルによる対地攻撃を行い、カセマリルムの防御陣地を叩き潰してから、陸軍の揚陸部隊を展開させる計画を立てていた。巡航ミサイルは、巡洋艦と潜水艦が搭載している。

 巡航ミサイルで敵を叩き、相手の防御が弱まった所で、上陸部隊を一気に突撃させ、カセマリルムを占領。ノルドランド侵攻の拠点とする計画だ。

 

 ウェルヴァキア海軍の艦隊司令官、バサラブ・マリネスク大佐は、任務遂行を考えながらも、最近のウェルヴァキアの急速な戦線拡大に疑問を抱いていた。ここ数日で、軍の任務が拡大し、戦力以上の任務を負わされているようにも感じていた。だが、傭兵部隊で増強したノルドランド軍とは、同等程度には渡り合っている。それと、ある噂も耳にした。なんでも、空軍の戦闘機部隊の中に、多数の外国人が混ざっている、という話だ。外国人傭兵だと?そんな人間を雇うだけの資金を、ウェルヴァキアが捻出できたのか?マリネスク大佐は、祖国の経済状況をよく知っていた。外国人傭兵というのは、大抵の場合、高い給料をふっかける連中だ。確かに、これは、ウェルヴァキア人民の生存権をかけた戦いだ。だが、これから必要な資源を奪いに行くというのに、どうやって高給取り共を雇った?

 考えるのは後だ。マリネスク大佐は現実に戻った。そろそろノルドランド領海に入る。恐らく、外周部では、艦隊と哨戒機が警戒に当たっているはずだ。まずは、そいつらから排除せねばならない。

 

 1996年 1月28日 0912時 ノルドランド ソルカセマリルム湾

 

 警戒監視飛行をしている2機のノルドランド海軍のP-3C哨戒機が、水平線の向こうからやってくるウェルヴァキアの艦隊を対水上レーダーで捉えた。

 

「こちらネプチューン1、警戒監視中の部隊へ。ウェルヴァキア海軍のものと思われる艦隊を確認。尚も北上、領海へと接近している」

 

『こちら駆逐艦パルマリム。艦隊にデフコン2を通達する。艦隊司令部にも通報』

 

 ややあって、P-3Cにパルマリムから連絡が入った。

 

『艦隊司令官より通達。信号を確認せよ』

 

「了解。識別信号を確認する」

 

 機長はTACCO士官にESMを使い、識別信号の確認を命じた。

 

「少佐、識別信号を確認しました。ウェルヴァキア海軍です」

 

「司令部へメールを送れ。ウェルヴァキア海軍艦隊を確認。警戒監視を行うとな」

 

 艦隊司令部から返信が来た。内容は、ウェルヴァキア海軍艦隊と確認し、領海に侵入した場合は攻撃を許可するというものだった。

 

「全員、戦闘体制!ミサイル及び魚雷による攻撃準備!」

 

「機長!我が軍のフリゲート艦、バルライネンより入電!敵艦隊から攻撃を受け、大破との報告!」

 

「攻撃を許可する!空軍にも通達!戦闘機部隊の支援要請!」

 

 かくして、2ヵ国による艦隊戦の火蓋が切って落とされた。


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