ACE COMBAT after story of the demon of the round table 作:F.Y
1996年 1月28日 0933時 ノルドランド ソルカセマリルム湾
ウェルヴァキア海軍艦隊の一部が、フィヨルドの奥へと向かっていた。ウェルヴァキア軍指令部は、ここにノルドランド海軍の艦隊基地があると考え、そこを攻撃しようとしていたのだ。
しかし、そこにあったのは1980年代末以後、老朽化で既に稼働していない軍の施設であった。再整備されることも、解体されることも無く、潮風に晒され、錆びた施設はそのまま朽ち果てつつあった。
「艦長。ノルドランド海軍のドクトリンを考えると、この辺りに海軍の艦船ドックがあると考えられます」
ウェルヴァキア海軍駆逐艦"イリネスク"の航海長が報告した。
「ふむ。確かに、ノルドランドはフィヨルドに洞窟を掘って海軍のドックを作っていたな。そこを叩いこうとい言うのか?」
「はい。確かに、ノルドランド海軍のドックは、海に面した天然の洞窟を利用しており、簡単に破壊できるものではありません。しかし、完全な破壊をする必要はありません。復旧に長い時間をかけさせるだけの損傷を与えれば良いのです。奴らの洞窟基地は、造りが特殊で、それなりに大きく損傷させれば、簡単に修復することは難しいはずです。長期的に見た場合は時間稼ぎに過ぎなませんが、短期的には、奴らに比較的大きな損害を与えることにはなります」
艦長は考えた。
「しかし、だ。それには敵の艦隊のど真ん中を突っ走らなければならないのではないか?」
「ソルカセマリルム湾の沿岸部は一見、広く開けているように見えますが、実際には、氷河で削られ、複雑です。ノルドランド海軍は、その地形を利用して、ミサイル艇やコルベットを隠しながらのゲリラ戦に長けています。十分注意する必要があるでしょう。しかし、敵の艦隊は迂回すれば良いのです。確かに、目標地点に辿り着くまでには時間はかかりますが、奴らの防御艦隊を避けるには、そうするしかありません。狭いこの海域で、神出鬼没のコルベットやミサイル艇相手では、巡洋艦や駆逐艦クラスの艦船では自由に動くのは難しいでしょう」
「わかった。そうしよう」
駆逐艦イリネスクの艦長はマイクを手に取った。
「艦長より全水兵に通達。これより本艦は、沿岸部にあると考えられるノルドランド海軍基地への攻撃を行うため、ノルドランド海軍領海内に向かう。敵との交戦が十分考えられる。総員、戦闘体制!繰り返す!総員、戦闘体制!」
駆逐艦の中でサイレントが鳴り響き、水兵たちが慌ただしくそれぞれ自分の持ち場へと奔走した。
1996年 1月28日 0935時 ノルドランド ソルカセマリルム湾
3艘の中型艦船がゆっくりと航行し、海中に何かを一定間隔で投下していった。それは、ロープに重りで繋がれ、海面からやや下の所に係留されている。
「艦長、敷設を完了しました。ここから撤収します」
「ご苦労だった中尉。さて、奴らに見つかる前に逃げ出すとするか。敷設箇所は記録したか?」
「勿論です。こちらを」
中尉は、機雷敷設・掃海艦"ハシグライネン"の艦長である中佐に海図を差し出した。機雷を設置した箇所には赤ペンでマーキングしてある。
「後は、奴らが引っ掛かるのを待つだけだな。ミサイル艇部隊と陸軍の地対艦ミサイル部隊は?」
「既に連絡しておきました。待ち伏せポイントで待機しています」
「まことによろしい。航海長、前進全速。早いところここから逃げ出すとしよう」
哨戒機から、中規模なウェルヴァキア艦隊がここに向かっていたいると連絡を受けた海軍指令部は、機雷を仕掛けて敵を待ち構える作戦に出た。
海軍指令部は、フィヨルドの洞窟にある海軍基地が標的になったと判断し、ウェルヴァキア艦隊に罠を仕掛けることにしたのだ。具体的には、狭いフィヨルドの湾の周囲に機雷を仕掛けて自由を奪い、敵が立ち止まったところでミサイル艇による一斉射撃を行うというものだ。ノルドランド海軍艦隊は、古くからこの手の作戦を研究し、洗練させてきた。
1996年 1月28日 0936時 ノルドランド ソルカセマリルム湾
対艦ミサイルは、あと3発残してある。サイファーは次なる標的を求め、上空を旋回した。2番機の位置には、ジャガーのJAS-39Cがしっかりついてきている。
海面に目を凝らしてみた時、低空を飛ぶ、2つの機影を確認した。すかさずレーダーを照射し、IFFの信号を確認する。反応は無い。
「マングース1より2へ。1時方向の低空に敵機確認。わかるか?」
『ジャガーよりサイファーへ。捉えました。2機ですね。やりますか?』
「ああ。それなりに高速で飛んでいる。十分注意しろ」
『わかりました。標的を追跡します』
サイファーとジャガーは新たに出現した機影を追いかけた。
『ガーディアンよりマングース1へ。どうした?』
「敵の新手を確認した。今のところは2機確認。味方艦隊に接近している」
『了解した。待て・・・・・ああ。こっちのレーダーでも捉えた。マングース隊、そいつらの迎撃を・・・・何だ、これは?』
「ガーディアンどうした?」
『レーダーに新たな敵を捉えた。だが、こいつら、一体どこに隠れてやがった?』
隠れていた?どういう事だ?
『ガーディアンより全戦闘機へ。敵の新手だ。だが、こいつらはいきなり現れた。あっちの基地から飛んできたんじゃない!海上の艦船から離陸したようだ!』
『ヘリじゃないですかね?』ジャガーが言う。
『いや、違う。ヘリにしては速度が速すぎる。こいつらは、戦闘機か攻撃機だ。しかも、敵の艦船から離陸した』
ウェルヴァキアは、空母は持っていないはずだ。だとしたら・・・・・・。
「マングース1よりガーディアンへ。ちょっと確かめたい。新しく出てきた敵機を目視距離で確認してもいいか?」
ややあって返事が来た。
『ガーディアンからマングース1へ。目視での確認を許可する』
『こちらマングース2。サイファー、何か思い当たる節でもあるのですか?』
「ああ。2、3ある。マングース2、援護頼むぞ」
サイファーは操縦棹握り、フランカーを低空へと向かわせた。後ろからはグリペンがついてくる。サイファーはコックピットの多機能ディスプレイを操作し、R-73空対空ミサイルとGsh-30機関砲の安全装置を解除した。