ACE COMBAT after story of the demon of the round table 作:F.Y
1996年 1月28日 0938時 ノルドランド ソルカセマリルム湾沖
「バクシム1、発艦急げ」
「バクシム2、バクシム3、バクシム1に続いて発艦せよ」
ウェルヴァキアの巡洋艦"ジリノルスク"の後部甲板からYak-38フォージャーが垂直に発艦した。この巡洋艦の後部には広いVTOLパッドと格納庫があり、Yak-38またはKa-32を最大3機、搭載することができる。武装は45口径76㎜単装速射砲とSS-N-14対潜ミサイルとSA-N-4対空ミサイルだ。
ウェルヴァキア海軍は、このヘリとVTOL機を搭載可能な巡洋艦を多く保有しており、防空、対潜作戦、対艦攻撃をさせている。
Yak-38にはR-60空対空ミサイルとKh-23M空対艦・空対地ミサイル、FAB-500無誘導爆弾、S-5ロケットポッドを搭載可能だ。機体自体は小さく、航続距離も兵装搭載量も限られているが、大型のVTOL搭載型巡洋艦で運用できることもあり、ウェルヴァキア海軍はこの戦闘機を多数配備していた。
『ジリノルスクよりバクシム隊へ。ターゲットは東の敵艦隊。但し、敵戦闘機の上空援護を確認している。十分に警戒せよ』
『ジリノルスクよりドノヴァ隊へ。君たちは敵機を撃墜せよ』
VTOL駆逐艦"ハルノスク"からもYak-38が発艦した。こちらの機体には、増槽とR-60が2つずつ搭載されていた。
『ドノヴァ1了解。ターゲットを撃墜する』
『ジリノルスクよりドノヴァ2、発艦を許可する。ドノヴァ3、ドノヴァ2に続いて発艦せよ』
ジリノルスクの後部甲板で着発艦誘導員が旗を振って合図を送ると、Yak-38が垂直に離陸した。格納庫からは、整備員たちが同じ戦闘機を手押しとトーイングトラクターを利用して飛行甲板へと引き出していく。こちらの機体も増槽とミサイルを搭載し、パイロットは既にコックピットに乗り込んで発艦準備完了と言った様子だ。
整備員がYak-38とトラクターを繋いでいるバーを取り外し、続いて機体のアクセスパネルとハードポイント、フラップ、エレベーターの状態を確認し、ミサイルの安全ピンを全て抜いて掲げ、パイロットに見せた。
パイロットが親指を立てると、整備員が機体から離れ、続いて着発艦誘導員が旗を振ると、Yak-38のエンジンが回転し、耳を聾する強烈な轟音が響き渡った。もし、耳を保護するプロテクターを装着しないまま聞いた場合は、鼓膜に深刻なダメージを引き起こすほどの音だ。
再び着発艦誘導員が旗を振ると、Yak-38は垂直に空中へと浮かび上がり、右側にスライドするように動いてから上昇し、巡洋艦から離れていった。
1996年 1月28日 0940時 ノルドランド ソルカセマリルム湾上空
Yak-38は低空を飛びながら敵艦隊の方向を目指した。レーダー警報装置に注意を向けつつターゲットへと向かっているが、今のところは敵に気づかれた様子は無い。後ろからは、護衛のYak-38が2機、付いてきている。こちらの機体に搭載されているのは空対空未ミサイルと増槽のみで、攻撃編隊に向かってくる敵戦闘機の排除を行うことになっている。
ウェルヴァキアは、このVTOL搭載巡洋艦とYak-38攻撃機を、冷戦が終結するほぼ直前にユークトバニアから手に入れることができた。冷戦期にユークトバニアから兵器を買った国は、エルジア、エストバキア、レサス、ヴェルーサ、ソトアと決して少なくは無い。
ユークトバニアは、冷戦期には、このようなVTOL空母の研究に熱心であったものの、この方式の艦船の採用は、当時、ユーク海軍が求めていた攻撃力には到底及ばず、少数に終わり、デッキランチ・スキージャンプ方式空母を多く採用するという選択をした。おまけに、冷戦の終結により、お荷物となったVTOL母艦とYak-38は退役の憂き目に遭ったのだ。
ところが、冷戦期にユーク陣営側に付いた中小国の海軍関係者の目には、低コストで小型攻撃機を大型・中型艦船から離発着させることができるこの方式は、非常に魅力的なものに映った。それらの国々は、こぞってユークからこのシステムを買った。ユークからしてみたら、必要無かったものが、思わぬ金蔓になり、買い手側から見たら、低価格で大幅な航空戦力の向上を実現可能になる。まさに、両者の間にWin-Winの関係が成り立ったのだ。
そこで、ユークはこのタイプの巡洋艦とYak-38の生産・開発を輸出用兵器として継続させた。現在では、低価格で海軍の航空戦力を大幅に向上させることができると銘打って、広く輸出していた。
また、このタイプ艦船の研究のおかげで、ユークトバニア海軍は恐るべき戦力を持つ艦船を手に入れることになるのであるが、それはまた別の話である。
「バクシム1より各機へ。攻撃目標発見。交戦する」
『ドノヴァ1よりバクシム隊へ。レーダーに反応。敵機だ。我々が対応する』
「バクシム1了解。各機、敵機を警戒せよ」
『バクシム2よりバクシム1へ。我々は攻撃ですか?』
「そうだ。敵戦闘機はドノヴァ隊に任せて、奴らの艦を沈めることに集中しろ。いいな」
『バクシム2、了解。攻撃に集中します』
1996年 1月28日 0943時 ノルドランド ソルカセマリルム湾上空
『ガーディアンから戦闘機部隊へ。敵機が二手に分かれた。マングース隊、高空の敵編隊がそちらに向かっている。十分注意せよ』
来たか。サイファーはR-77を選び、安全装置を解除した。勿論、みすみす敵にシュートチャンスを明け渡すつもりは微塵も無い。敵がR-77の射程内に入った途端、即座に攻撃するつもりでいた。
サイファーはレーダーを作動させ、敵機の追跡を始めた。ミサイルの射程まで、まだ距離がある。
「マングース1より2へ。攻撃準備は?」
『できていますよ。いつでもどうぞ』
「よし。では、俺の合図で攻撃しろ」
『任せて下さい!奴らを海の藻屑にしてやりますよ!』
このジリノルスクというVTOL搭載巡洋艦ですが、海上自衛隊のはるな型やしらね型をそっくりそのまま巨大化させたような艦船という設定です。