ACE COMBAT after story of the demon of the round table   作:F.Y

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報復作戦

 1996年 2月5日 0811時 ノルドランド ヨアキムロル基地

 

「諸君。緊急事態につき、私が臨時に今回のブリーフィングを行う」

 

 ロビン・リー少佐が集まったノルドランド空軍兵や傭兵たちを前に、状況の説明を開始した。

 

「ウェルヴァキアとの国境地帯付近を偵察中の偵察機を護衛していた編隊が、越境してきた対空ミサイルの攻撃によって撃墜された。我が国政府と軍はウェルヴァキアによる不法な越境攻撃と判断。報復攻撃を行うことにした」

 

 リー少佐がキーボードを操作すると、ノルドランドとウェルヴァキアの国境付近の地図が表示された。

 

「使われたミサイルだが、長射程のユーク製地対空ミサイルSA-10またはエストバキア製の中射程地対空ミサイルHQ-2と考えられる。越境して航空機を撃墜するとなると、そのどちらかが使われた可能性が極めて高い。おまけに、国境を越えて地対空ミサイル攻撃をするとなると、重大な侵略行為だ。向こうは完全に意図的に狙い撃ちしたと見て間違い無いだろう」

 

 少佐は一旦言葉を切った。

 

「今回は敵のミサイルサイトの射程外から長距離攻撃を行う。勿論、それには大変な危険が伴う。そこで・・・・・」

 

 リー少佐が再びキーボードを叩く。

 

「RQ-2無人偵察機を飛ばして、奴らのミサイルサイトをかく乱する。勿論、こっちがミサイルサイトに接近してきたら、奴らの戦闘機も向かってくるだろう。勿論、全て排除せねばならない。だが、あくまでも目標は国境付近にあるミサイルサイトだけだ。それ以上ウェルヴァキア領内に侵入するのは許可できない」

 

「それで。ミサイルは対レーダーミサイルやスタンドオフ兵器か?」

 

「ああ。そういうのを用意してくれ。敵のミサイルの射程外から攻撃することになるからな。勿論、敵の戦闘機が越境してきた場合は全て撃墜しろ。以上。では、諸君、出撃準備にかかってくれ」

 

 1996年 2月5日 0858時 ノルドランド ヨアキムロル基地

 

 サイファーはウェポンローダーに乗せられたKh-59MがSu-35BMのパイロンへ搭載されていくのを見ていた。翼に2発、エアインテーク下に2発。そして、誘導用のデータリンクポッドを胴体真ん中に装着する。

 

 平時であれば、国境沿いを飛んでいる偵察機を国境越しにミサイルを撃って撃ち落とすのは通念上、許される行為では無いが、奴らにとってはお構い無しなのだろう。まあいい。おかげで、こっちとしては奴らをぶっ潰してノルドランド空軍から報酬を受け取る口実を作ってもらえたのだ。それをわざわざ敵の側からやってくれたのは有難いことだ。撃墜された偵察機のパイロットは気の毒なことになったが、今は戦時だ。最終的には、自分の身は自分で守らねばならない。だからサイファーは、しっかりと兵装が機体に搭載され、チャフ・フレアディスペンサーと電子防御装置がしっかり作動するか入念にチェックしていた。

 

 サイファーは、最後に頼りになるのは自分自身だけだ、という信念を持っていた。いくら僚機の援護があったとしても、最終的には自分の身は自分で守るしかない。それには、目に入ってくる敵を残らず叩き潰すのが一番だ。例え損傷を負って戦闘を続けられなくなった機体であっても、放置すればパイロットはその戦闘機を整備隊に再び修理させて出撃し、また自分の命を狙ってくる可能性は十分考えられる。だから、その芽は確実に摘み取らねばならない。それに、そうした方が稼ぎも良くなる。軍はフライトレコーダーに残された撃破数をもとに報酬を算出するからだ。中にはプライドが高く、そういった損傷して戦えなくなった機体を撃つことを避ける者もいた。そいつらは、サイファーがやっているような損傷した機体を完全に破壊する行為を"死体撃ち"と呼んだりもした。

 勿論、サイファーからしてみたら、そんな批判はどこ吹く風だ。そうやって敵に情けをかけた奴が戦場で長生きしているのを見た事が無い。戦場で長く生き残れるのは、敵を完膚無きまでに叩き潰す奴か、戦況の流れを上手く読み取る奴だ。ベルカ戦争で生き残ったパイロットの多くか、そういう奴らだった。

 

 相棒であるジャガーことマグヌス・ハウゲン中尉は、そのサイファーの教えを完全に守っている訳では無かった。だが、それは仕方がないことだった。基本的に一人で戦う傭兵と違い、ハウゲン中尉は軍人だ。連中はチームプレーヤーだ。勿論、サイファー自身は、生き残るためならばチームプレーをすることはやぶさかでは無かったが、それは、自分が生還するために他人を利用しているに過ぎない。

 とは言え、ノルドランドがウェルヴァキアに完全制圧されてしまったら、大きな食い扶持を失うのは自分自身だ。今のところ、ノルドランド以外に旨みのある稼ぎ場は無いので、ノルドランドのために戦うのは理にかなっている。

 おまけに、今、ウェルヴァキアを叩くことは、サイファーが忌み嫌っているベルカを叩くことにも繋がる。結局のところ、サイファーは自分自身のために戦っているのに過ぎない。

 

 ノルドランド空軍の整備員が書類を差し出し、サイファーはその内容がオーダー通りか、実際の機体の仕様と違うところが無いかどうかを確認した。

 

 サイファーは今一度、機体を入念に点検した後、コックピットに座り、APUを始動させ、システムチェックを行った。戦闘機の自己診断システムが、機体に問題点が無いことを知らせてくる。

 

 周囲でも様々な戦闘機のAPUが、続いてエンジンが回転する音が鳴り響いた。だが、1機のF/A-18Dがエンジンを急停止させ、キャノピーを開くのが見えた。パイロットとWSOが機体から降りて、戦闘機の点検を再び行うのが見える。

 その2人はひとしきり機体を点検させた後、かぶりを振って整備員を呼び、何やら話しかけた。やがて、整備員が安全ピンをAIM-9LやAGM-84Eに取り付け始めた。どうやら機体に不調が見つかり、出撃を取り止めたらしい。

 

 賢明な判断だ、とサイファーは心の中でぼやいた。不調の機体で上がった奴は、忽ち敵の餌になるだけだ。戦場で長生きしたければ、時にはそういう選択も必要だ。

 

 管制塔からタキシングの許可が出た。サイファーは一瞬、ブレーキを外してからまたかけた。正常に作動するかどうかのテストだ。問題が無かったので、フランカーをそのまま滑走路に向かわせる。後ろからはジャガーのグリペンも続く。

 サイファーは滑走路の端で戦闘機を停止させ、最終チェックのためにエンジンを空蒸かしさせ、ラダー、エレベーター、フラップを何度か動かした。

 

 離陸許可と共にフランカーのエンジンのアフターバーナーを点火させ、雪がやや舞い散る空へと向かわせた。白い雲の絨毯の所々に青い裂け目が見えている。後ろをちらりと見てみると、他の戦闘機が編隊ごとに固まり、サイファーの後ろからついてくるのが微かに見えた。さあ、狩りの時間だ。

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