ACE COMBAT after story of the demon of the round table 作:F.Y
1996年 2月5日 0932時 ノルドランド上空
『AWACSホワイトキングより離陸した各機へ。任務はあくまでも、国境沿いにあるウェルヴァキアのミサイルサイトの排除だ。やむを得ない場合を除き、ウェルヴァキア領内へ進入するな。繰り返す。やむを得ない場合以外は、ウェルヴァキア領内には入るな』
戦闘機の編隊がウェルヴァキアとの国境付近を目指していた。更に、その編隊に先行している航空機があった。
RQ-2パイオニア無人偵察機。オーシア海軍が開発し、空母や駆逐艦、揚陸艦からも運用することができる。発進は専用のランチャーを使い、回収には短い滑走路があられば着陸させることができる。勿論、空母や強襲揚陸艦の飛行甲板にも着艦可能だ。
無人偵察機の役目は、ミサイルサイトを発見し、データリンクでAWACSや戦闘機に対して、その位置を知らせることだ。
しかし、そう簡単にはいかないだろう。ウェルヴァキア陸軍は、自走式ミサイルランチャーを森の中に設置したシェルターの中に巧みに隠蔽し、撃っては隠すことを繰り返す、いわゆるヒット&アウェイという戦法を使ってくる可能性が高い。無人機にミサイルを搭載できれば良いのだが、そんな技術はまだオーシア空軍やユーク空軍においても、まだ試験運用を始めたばかりの段階だという。
とは言え、ウェルヴァキアはノルドランド領空を射程内に収める程、国境地帯に地対箜ミサイルを配備したのだ。あまつさえ、ノルドランド領空を飛行中の航空機に対して、ミサイルを越境させて攻撃したのだ。戦時とは言え、戦時国際条約に反する行為になりかねない攻撃だ。実際、ノルドランド国民は、この事件がニュースとして報道された時、激しい怒りの声を上げたのだった。
1996年 2月5日 0935時 ノルドランド上空
オーシア連邦のアピート国際空港から飛び立ったノルド貨物航空1132便は、マッハ0.74でノルドランドのカセマリルム・ヘンリム空港を目指し、北東へと進んでいた。このB747-200F貨物機は、オーシアから輸入した乗用車の部品を載せている。まだ目的地までは時間がある。
ウェルヴァキアとの戦争のため、ウェルヴァキア領空の外を大回りして帰還している。ウェルヴァキア陸軍の高射部隊から、ノルドランド空軍機と間違われ、撃墜されるのを避けるためだ。
だが、まだ油断はできない。ノルドランド領空内とは言え、ウェルヴァキアにかなり近い位置でもあるのだ。機長は、この機が、ノルドランド空軍の輸送機に間違えられて、撃たれるのではないかと不安だった。そして、不幸にも、その不安は的中してしまったのであった。
1996年 2月5日 0937時 ウェルヴァキア
「レーダーにて航空機を捕らえました。サイズと速度から考えれば輸送機か哨戒機の可能性があります」
SA-10ことS-300地対空ミサイルのFCSを操作していた少尉が部隊指揮官に報告した。
「IFFには何と出ている」
「民間の識別信号がでています。どうしますか?」
「無視しろ。どうせ哨戒機か輸送機だったとしても、大した脅威では無い」
「わかりました。それでは別の目標を・・・・・・目標発見!数、10!速度0.76!国境に向かってきます!」
「IFFを確認しろ!」
「IFF確認・・・・・応答無し!目標、全てこちらに向かってきます!」
「今一度確認しろ。応答が無ければ攻撃を許可する」
「IFF再度確認・・・・・・やはり反応ありません!」
「攻撃せよ!」
1996年 2月5日 0939時 ウェルヴァキア ノルドランドとの国境付近
SA-10ことS-300地対空ミサイルのランチャーが上を向いた。ウェルヴァキア陸軍の兵士が自走式ランチャーの運転席のドアと窓がしっかり閉まっていることを確認し、レーダーユニットから送られてきたデータの入力を始めた。
「レーダー捜索開始。敵機補足!」
レーダー操作クルーがコンソールを操作し、レーダー画面に映った機体をターゲットに指定した。
「レーダーロック・・・・撃て!」
1996年 2月5日 0939時 ノルドランド上空
RQ-2パイオニアはウェルヴァキアとの国境地帯ギリギリのところを飛び続けた。やがて、そこに向かって地対空ミサイルが飛んできた。無人機はミサイルを躱すような機動性も装備も持ち合わせていないため、簡単に撃墜されていったが、その役割は完璧に果たした。
1996年 2月5日 0939時 ノルドランド上空
『ホワイトキングより作戦中の各機へ。レーダーの発信方向を特定した!地図上に表示させる!』
飛行中の戦闘機の多機能ディスプレイやレーダー画面に一斉にウェルヴァキアが国境地帯に配置した地対空ミサイルの位置情報が表示された。
『ライノ1よりホワイトキングへ。射程内に入り次第攻撃しても良いのか?』
『ライノ1。射程内に入り次第攻撃せよ。ただし、国境は超えるな。繰り返す。ウェルヴァキア領内に入るのは禁止。ノルドランド領内から攻撃せよ』
1996年 2月5日 0943時 ノルドランド上空
あの時も、こんな雪が降る日だったな、とサイファーは攻撃準備をしながら考えていた。ウスティオの傭兵となって、最初の仕事。陥落寸前の基地に配属され、ウスティオにとどめを刺しに来たベルカの爆撃機部隊を追い返すという、最後の砦を務めるような任務だった。だが、この時は幸運にも恵まれた。舐め切って少ない護衛機で突っ込んできた爆撃機部隊。エース級の相棒。
サイファーは兵装選択画面を呼び出し、Kh-59Mを選んだ。この長い射程を持つユークトバニア製の長射程空対地ミサイルは、国境越しの攻撃に適任だ。
レーダーを長距離対地モードに切り替え、標的を捉える。レーダー画面に捉えた標的のデータが表示される。ミサイルがターゲットを捉えたことを知らせる電子音が聞こえてきた。
サイファーはミサイルを2発リリースした。ジャガーが乗る僚機のJAS-39Cも2発のDSW-39を投下し、地上の敵を攻撃する。サイファーはまだKh-59Mを残してあるが、まだどの標的を攻撃するかは決めていない。だが、この2発もすぐに標的を食らうだろう。さて、次のターゲットを探さねばならない。
『AWACSホワイトキングより攻撃部隊へ。ウェルヴァキア領空から高速で接近する標的を発見。迎撃に上がった敵戦闘機と思われる。全機、迎撃態勢を取れ』
どうやら、ウェルヴァキア側も黙っているだけでは無いようだ。だが、そんなことは元より想定済みの展開である。
『カーディナル1よりホワイトキングへ。ぶっ潰してもいいか?』
『ああ。但し、ウェルヴァキア領内には入るな。繰り返す。ノルドランド領内に入ってくる機体だけを攻撃せよ。ウェルヴァキア領内に侵入しての戦闘は禁止する』