ACE COMBAT after story of the demon of the round table   作:F.Y

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闖入者

 1996年 2月5日 0947時 ノルドランド=ウェルヴァキア国境地帯

 

「レーダーで敵機捕捉!」

 

「撃て!」

 

 S-300地対空ミサイルが煙と炎をロケットモーターから吹きながら空へと舞い上がった。勿論、撃ったそばから敵に捕捉される恐れがあるが、致し方がない。

 

「大佐、北に彼我不明機を捕捉しました。どうします?」

 

「レーダー情報は?」

 

「トランスポンダーの信号は発信されていません。レーダー断面積から考えると、C-130かC-17だと考えられます」

 

「そいつから目を離すな。領空に侵入するようならば、撃墜しろ」

 

「わかりました」

 

 1996年 2月5日 0948時 ウェルヴァキア北部上空

 

 くそっ、こんな時に。ノルド貨物航空1132便の機長は苛立たしげにトランスポンダーのスイッチを入れ直した。この機体は、耐用寿命が近く、来月には新型のB747-400Fと入れ替わるようにして退役する予定のオンボロ機であるが、本来ならば今月中にも退役する筈だったのだが、オーシア旅客機工業が注文過多によってB747-400Fの生産が追い付かず、ノルド貨物航空に納入される初号機のデリバリーが遅延していたのだ。

 現在、オーシア旅客機工業は設備投資を行い、遅延している航空機の増産を行うとしているが、現在受注分の納入が開始されるのは今年の6月半ば頃になると見込んでいた。

 

「ハンス、慣性航法装置はどうなっている?」

 

 機長のカール・アンデルセンは副操縦士のハンス・サーシュに訊いた。

 

「少々ずれがあるようです。帰ったら、重整備が必要ですね」

 

 航空機関士のハーコン・ヨンセンは、エンジンの状態を表示するコンソールとにらめっこしていた。昨日の整備では、計器はなんとか正しく表示されていると整備員は請け合ってくれたが、その言葉をどこまで信用してよいのか疑わしいものだ。

 

「くそっ、トランスポンダーの作動が不安定だ。今はどうなっている?」

 

「点いたり消えたりしていますよ。これは、もっと早く整備場送りにすべきだったはずなのですが」

 

「最悪だな。しかも、このすぐ南の空域は戦場ときている。これは目的地までに辿り着くかどうかわからんぞ」

 

 ノルドランドとウェルヴァキアの戦争は、航空機の飛行ルートに大きな影響を及ぼしていた。特にユージア大陸からレクタ、ウスティオ、ゲベートに向かう航空機は、普段はウェルヴァキア上空を通過するルートを通過するのだが、戦争によって飛行する航空機に危険が及ぶとして、ウェルヴァキアの南の海域を大回りするルートを飛行していた。

 

 ノルド貨物航空1132便は自分の位置を他の航空機に知らせることもできず、慣性航法装置の不具合によって正しい飛行経路を把握することも難しい状態のまま、目的地へと飛行を始めた。

 

 1996年 2月5日 0956時 ノルドランド上空

 

「何だ・・・・・これは?」

 

 ノルドランド空軍のE-3B、コールサイン"ホワイトキング"は新たにレーダー画面上に現れた光点を確認した。トランスポンダーの信号が点いたり消えたりしている。

 

 これは厄介なことになりそうだ。民間の航空機が、戦闘中の空域に進入してこようとしている。いち早く国際緊急周波数を使って知らせねばならない。オペレーターの一人が無線機のマイクを手に取り、無線機の周波数のダイヤルを合わせた。

 

 1996年 2月5日 0957時 ノルドランド上空

 

『・・・・・えるか・・・・ら、ノル・・・・・・・・キン・・・・・・。聞こ・・・・・・』

 

 無線から急に聞こえてきた声に、アンデルセンはぎょっとなった。周波数を確認すると、国際緊急周波数だ。

 

「ハンス、出力を上げろ」

 

 サーシュは無線機のダイヤルを回し、電波の出力を上げようとしたが、ちっとも変わる様子は無い。

 

「ダメです。無線機がイカれています」

 

「くそっ、だから前回のフライト後のレポートにちゃんと書いておいたんだ。あの運行管理部の連中は、先週の俺のレポートを読んでいないのか?」

 

 1996年 2月5日 0959時 ノルドランド上空

 

 E-3Bのオペレーターはレーダー画面を眺めながら、まずいな、と思った。ノルド貨物航空1132便は、どんどん飛行コースからずれ、戦闘が行われている空域へと向かって行っている。しかしながら、空軍の戦闘機をこの航空機にエスコートに振り分ける余裕は全く無いに等しい。全ての戦闘機は、領空からウェルヴァキア空軍の戦闘機や攻撃機を追い出すのに精いっぱいの様子であった。

 

 1996年 2月5日 1001時 ノルドランド上空

 

『弾が切れた!ディア1、帰投する!』

 

 JAS-39Cが反転し、基地へと向かって飛び去った。僚機のF-15Eも付いて行く。ウェルヴァキア空軍の戦闘機も燃料や兵装を補給しに向かっているものが確認できる。傭兵部隊のF-15Cが爆発、炎上して落下していき、ウェルヴァキア空軍のSu-24やMiG-23も撃墜される。

 

『畜生!ミサイルだ!どこから!?』

 

 S-300ミサイルが国境越しに飛来し、ノルドランド空軍と傭兵の戦闘機を追撃し始めた。ミサイルがF-16CやMiG-25Mを撃ち落としていく。

 

『ナックル3、ミサイル!ミサイル!』

 

『畜生!ホワイトキング!ミサイルはどこから飛んできた!』

 

『待て・・・・・・これは・・・・・?』

 

『どうした?』

 

『民間の航空機が紛れ込んできた!トランスポンダーの信号も確認できている!しかも、どんどんそっちに向かっているぞ!』

 

『何だって!?』

 

『どうしてそんな奴が近づいてきている!?』

 

『わからん。こっちはその旅客機との交信を試みる!諸君は引き続き、作戦を続行してくれ!』

 

 1996年 2月5日 1004時 ノルドランド上空 AWACSホワイトキング

 

 ノルド貨物航空のB747-400Fは高度を下げながらどんどんウェルヴァキアとの国境沿いの空域へと接近していった。無線機も不具合を起こしているのか、国際緊急周波数で呼び掛けても、全く応じる様子は無い。

 

「聞こえるか、ノルド貨物航空1132便!こちらはノルドランド空軍だ!これより、我々の誘導に従い、この空域から退去せよ!繰り返す!ノルド貨物航空1132便!こちらはノルドランド空軍だ!この空域は危険だ!我々の誘導に従い、離れるんだ!」

 

 オペレーターが何度も呼び掛けたが、雑音が鳴るだけで貨物機からは一切返答が返ってこない。

 

「ノルド貨物航空!我々はノルドランド空軍だ!我々の指示に従い・・・・・・」

 

 その時、貨物機のトランスポンダーの信号の表示がレーダー画面で"unknown"に切り替わった。

 

 1996年 2月5日 1005時 ウェルヴァキア北部

 

 ウェルヴァキア陸軍の地対空ミサイル部隊の隊長である少佐は、突然、民間の信号からunknownの信号に切り替わったレーダーの輝点を訝しんだ。もしかしたら、空挺部隊を乗せたノルドランド空軍の輸送機が、民間機のフリをして接近してきたのかもしれない。

 

「中尉、その機体から目を離すな。私は防空司令部に問い合わせてくる」

 

 少佐はジープに積んだ、大きな携行衛星電話の受話器を手に取り、防空司令部に繋がる13桁の電話番号を押した。

 

「陸軍北部国境第113防空中隊のハビエツキ少佐だ。防空司令部へ緊急の要件がある。繋いでくれ」

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