ACE COMBAT after story of the demon of the round table   作:F.Y

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ディオフェッツェ

 1996年 1月4日 0912時 ファート共和国 ディオフェッツェ

 

 サイファーは、今日は空港に戦闘機を置いたまま、ディオフェッツェ市内を散策することにした。持ち物は、財布と時計、そして護身用の拳銃と予備弾倉が2個、ナイフ、傭兵ビザとパスポートと最小限に抑えておいた。

 

 空には鉛色の雲が広がり、今にも雪が降り出しそうだ。サイファーは珍しく、セーターとジーンズ、コート、ニット帽、ブーツという飛行服以外の服を着ている。空港職員に、戦闘機の管理費用を追加で払っておいた。すると、管理人は、サイファーのSu-35BMを、今後一週間程度は、ここでしっかり管理しておいてもいいと言った。

 今、金は十分過ぎる程あるが、そろそろ他の食い扶持を見つけなければならないのは確かだ。その食い扶持を用意してくれているのは、今の所はノルドランド政府だ。だが、遅かれ早かれ、ウェルヴァキアの連中も接近してくるだろう。だが、サイファーは、ベルカ、そして『国境なき世界』の亡霊によって戦争をする力を得たウェルヴァキアに手を貸す気にはなれなかった。

 空港に屯する傭兵たちの噂話に耳を傾けると、ベルカには『灰色の男たち』と呼ばれる秘密結社じみた連中のうち何人かが世界中に逃亡し、何やら良からぬ裏工作や陰謀を張り巡らせているらしい、という話が聞こえてきた。まあ、ベルカの事だ。また、性懲りもなく、なにやらやらかすつもりでいるのは間違いなかろう。

 

 市内の通りは人でごった返し、自動車に混ざって路面電車が車道を行き交っている。これからどうするのかをまだ決めていないので、面倒事だけは避けたかった。やがて、人混みのなか、サイファーは、やや縮れた髪型をした、40歳くらいの髭面の男と肩がぶつかった。

 

「失礼」

 

 サイファーが、その男にすれ違いざまに言った。

 

「・・・・・・・君とは、どこかで会ったかな?」

 

 男が、こちらを見て言った。

 

「だとしたら、覚えているはずですよ」

 

「だな。いや、何となく、一度会ったような気がしてね」

 

「そうですか。しかし、よく見てみると、俺も何となく、あなたを見た事があるような気がしますね」

 

「そうか。じゃあ、きっとどっかでお互いの事を見かけたのかもな。この世界は、広いようで、狭いからな」

 

「ですね。では」

 

「ああ。じゃあな」

 

 サイファーと男は、それぞれ逆の方向へ去っていった。サイファーは、先の男は、ただの市民とは思わなかった。なぜなら、男は、戦闘機乗り独特の目をしていたからだ。今日は、ひとまずはディオフィッツェがどんな街なのか、観光でもしながら歩き回ろう、とサイファーは考えた。

 

 1996年 1月4日 1003時 ファート共和国 ディオフェッツェ

 

 サイファーは通りを歩き続けた。小さな電化製品店に展示されたテレビには、ベルカ戦争の戦犯に対する裁判のニュースが映されていた。ベルカの戦犯の人数は、聞いた話では、裁判に出頭した人間だけで百数十名に登ると言われ、しかし、中には戦犯を逃れるために逃亡したベルカの軍、政府関係者も非常に多いらしい。まあ、自国民を巻き添えにして、7発もの核兵器を使ったような連中だ。間違いなく、その内、少なくない人間が重戦争犯罪人扱いになるだろう。

 

 しかし、壊滅させたテロ組織『国境なき世界』に関わった人間の話が、全く出てこない。それどころか、『国境なき世界』というワードすら、テレビ番組、新聞、ネットニュース、雑誌、書籍といった各種メディアに登場していないのだ。間違いなく、サイファーは連中相手に戦い、核で世界が焼かれるのを防いだにも関わらず、だ。

 もしかしたら、『国境なき世界』の存在自体が、オーシアやウスティオ、ベルカにおいて、高度な機密事項とされているのだろうか。だとしたら、なぜ、隠す必要があるのか。だが、よくよく考えたら、それは自分にとっては、全く関係の無いことだった。

 

 サイファーは、市民が行き交う、街を『表側』から離れ、密売人やチンピラ、娼婦などで溢れかえる『裏側』の方へと歩いていった。戦闘機に関して、必要なものがある。実は、Su-35BMに搭載してる中射程ミサイルが1発、故障してしまっているのだ。たかが1発、されど1発。戦場では、その差が生死を分ける事が多い。暫く怪しげな通りを歩いていると、勘というレーダーが、一つの建物に反応した。サイファーは、その建物の前に立ち、扉をノックした。

 

 暫くすると、小太りの男が出てきた。鋭い目でサイファーを値踏みするように、頭の先から足元まで睨んだ。

 

「何の用だ」

 

「ミサイルを1発、都合してもらいたい。種類はR-77。金は、十分ある」

 

「・・・・・・・なるほど。初見でこの店が何なのか、あっさりと見抜くとなると、あんた只者じゃないな。いいぞ、入れ」

 

 サイファーは、暗くて埃っぽく、カビ臭い店内に通された。中には、なにやら金属やプラスチック、ゴムなどでできたガラクタが並んでいる。

 

「それで、R-77が1発、欲しいとな。確かに、それならうちにあるぜ」

 

「いくらだ」

 

「そうだな・・・・・あれは随分ありふれているから、そこまで高くは無い。そうだな・・・・・88万でどうだ?」

 

 値段としては、相場と言ってもいいだろう。

 

「いいだろう。小切手でいいか?」

 

「いいぞ」

 

 サイファーはカバンからオーシアン・フェデラル・バンク(OFB)の小切手帳を取り出し、金額を記入し、サインした。

 

「あんた、随分金持ちみたいだな。OFBの小切手帳だなんて、そんじょそこらの人間には発行されないはずだ。あそこは、信用調査の厳重さで有名だからな」

 

「そうか?俺は、根無し草みたいな生活を続けているんだぜ。定住もしていないし、国籍もあやふやだからな」

 

「だが・・・・・・相当な金持ちだ。どれ・・・・・・」

 

 男は、パソコンのキーボードを叩き、小切手帳に書かれている番号を入力した。

 

「ほう・・・・・あんた、信用度格付けが物凄く高いな。それも、大富豪並みだ。傭兵で、そんなランクの人間なんて、ほんの一握りだ。俺は、あんた以外には、そんな人間は一度しか見たことがないね」

 

「ほう?」

 

「まあ、俺は商売人だ。商品が売れて、金が手に入れば、客がどんな人間なのかは気にしたりはしない。さて、商談成立だ。機体はどこに置いてある?明日朝には、そこに届けてやる。もし、届かなかったりしたら、この番号にかけてくれ」

 

 闇商店の男は、12桁の電話番号が書かれた紙を手渡した。

 

「もし、予定通りに届かなかったら、全額返金だ。まあ、俺は約束だけは破ったりはせんよ。もし、そんな事をしたら、金どころか命まで持っていくような連中を相手に商売をしているからな」

 

「では、明日の朝に」

 

 サイファーはそう言って、店の扉を開けた。

 

「ああ。必ず届けるからな。安心してくれ」




さて、エースコンバットZEROをプレイした経験があって、勘の良い方ならば、サイファーが市内で偶然出会って、会話をした男の正体が何となく想像が付くと思います。
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