ACE COMBAT after story of the demon of the round table 作:F.Y
1996年 2月11日 1619時 ウェルヴァキア ルムハムヴァ防空基地
『防空レーダー確認、対レーダーミサイルロック・・・・・発射!』
傭兵部隊のトーネードIDS攻撃機4機から一斉にALARM対レーダーミサイルが発射された。この小隊の役目は、防空レーダーを潰し、敵の対空戦闘能力を奪うことだ。ミサイルはレーダーの電波の発信源を目指して高速で飛行し、鉄骨と電子装置でできた華奢な装置を簡単に破壊した。
『こちらジラフ1、目標破壊確認。帰還する』
トーネードは180度方向転換し、ノルドランドへと帰還していった。対レーダーミサイルを撃ってしまったので、搭載しているのはIRIS-T短射程空対空ミサイルが2発ずつのみ。この編隊の任務は敵の防空レーダーを破壊するのみなので、そのまま敵が来る前に引き返していった。
『ジラフ1、こちらAWACSガーディアンだ。任務ご苦労。おかげで後続部隊の道ができた』
『ここで終わりってのが気に入らんが、命令は命令か』
『いいじゃないか。早めに帰れるんだろ?』
『俺は稼ぎ足りないんだ。もっと任務をくれ』
『こちらジラフ2、右に同じ。次はもっと稼げる任務に投入させてくれ』
『ガーディアンよりジラフへ。それは上層部に掛け合ってみよう』
1996年 2月11日 1623時 ウェルヴァキア
『やってきたな。敵機正面。距離350、4機だ』
防空レーダーを潰され、ウェルヴァキア空軍の戦闘機が迎撃に上がってきたのをAWACSがとらえた。今頃、ルムハムヴァ防空基地では警報が鳴り響き、戦闘機が次々と離陸準備をしているはずだ。
『ガーディアンより攻撃部隊へ。計画通りに進めろ』
『こちらヘッジホッグ1、了解だ。迎撃する』
2機のF-14DからAIM-54フェニックス空対空ミサイルが放たれた。ミサイルは130kmほど飛翔してMiG-23を撃墜した。続いて、僚機も撃ち落とされる。残った2機のフロッガーが散開し、攻撃を避けるために上昇する。
『ヘッジホッグ1より2へ。奴を追うぞ!』
2機のトムキャットがフロッガーを追い始める。かなり距離が詰まってきたので、ヘッジホッグ1はレーダーを近距離交戦モードに切り替えた。HUDの目標指示ボックスが動き、MiG-23MLを追い始めた。敵機は滅茶苦茶に動き回り、追撃から逃れようとするが、エンジン推力の差であっという間に追いつかれ、後ろからサイドワインダーを撃たれた。フロッガーは機体後部を破壊され、火の筋を引きながら地面へと向かって行った。
『ヘッジホッグ1、敵機10時方向!』
続いてMiG-29SMTがこちらに向かって来た。2機だ。
F-14DのWSOがAIM-7Mスパローミサイルを選び、AN/AWG-9レーダーを作動させた。レーダーモードをサーチからトラッキングに切り替える。やがて、スパローのレーダーシーカーがフルクラムを捉えたことを知らせる電子音がコックピットに鳴り響く。
『ヘッジホッグ1、Fox1!』
『ヘッジホッグ2、Fox1!』
2機のF-14Dからスパローが1発ずつ撃ち出された。セミアクティブレーダーホーミングのため、トムキャットはそのまま敵機の追跡を続ける。ミサイルは見事に獲物を撃ち落とした。F-14Dは上昇旋回し、次の獲物を探し始める。
『ガーディアンよりヘッジホッグ隊へ。敵機2機、方位223、高度12000』
『ヘッジホッグ1了解。迎撃する』
『2、迎撃する』
1996年 2月11日 1626時 ウェルヴァキア
傾きかけた太陽を背にサイファーのフランカーとジャガーのグリペンが敵の基地を目指していた。サイファーたちの役目は、後続の攻撃部隊のために、敵の迎撃機を排除することだ。
ブリーフィングに於いて、対地攻撃部隊に振り分けられた傭兵パイロットの一部からはブーイングが噴出していた。この連中は、地べたを這い回る車輌などを破壊することを良しとせず、ドッグファイトで敵戦闘機を撃墜することを好む連中だ。中には、輸送機や爆撃機のような、のろまな機体を撃つのも"面白くない"という理由であまりやりたがらない奴らもいる。
だが、サイファーは敵を破壊できれば、それで構わなかった。それが戦車だろうが、戦闘機だろうが、建物だろうが、目の前の獲物を仕留められれば。
『AWACSガーディアンよりマングース隊へ。敵機正面。4機だ』
「マングース1了解。撃墜する」
『2了解』
『こちらソウ1、俺たちの機体は空中戦が苦手なんだ。排除頼むぞ』
「マングース1よりソウ1へ。死にたくなかったら全力で逃げることだ。自分の身は自分で守れ」
サイファーとジャガーの後ろからは、F-16Aの編隊に守られた4機のA-10AサンダーボルトⅡ攻撃機がやって来ていた。A-10にはAGM-65マーベリック空対地ミサイルとCBU-87クラスター爆弾が満載されている。自衛用のAIM-9Mサイドワインダーミサイルも搭載しているが、あくまでも敵戦闘機が近づいてきた時に牽制のために撃つものであって、積極的に撃墜するためのものではない。そのため、制空権が確保されていない空域で戦うには、戦闘機の護衛は不可欠だ。
『バット1よりソウ1へ。安心しろ。我々が護衛する。それに、"鬼神"が飛び去った後の空域に、敵が残っていただなんて試し、無かっただろ』
そうこう言っている間にサイファーのフランカーが3発のR-77を放ち、3機の敵機を撃墜した。残りの1機はジャガーのグリペンが破壊していた。
『ほら、俺が言った通りだろ?ソウ1よりソウ隊各機、及びバット隊へ。生き残りたかったら、"鬼神"の後ろからついていけばいい』
『バット1了解。あいつの後ろだな』
『バット2了解。鬼神についていく』
『AWACSガーディアンより作戦中の部隊へ。南部の防空施設の破壊を確認。引き続き攻撃せよ』
1996年 2月11日 1632時 ウェルヴァキア ルムハムヴァ防空基地
ルムハムヴァ防空基地では、空襲を知らせるサイレンが鳴り響いた。MiG-29SMTやMiG-23MLのエンジンが回り、タキシングを始める。
『敵機接近!対空迎撃急げ!』
『くそっ!イオネスク大佐の部隊が基地を離れた直後だと!?タイミングが悪すぎる!』
『とにかく、奴らを撃ち落とせ!やるんだ!』
基地の司令官は慌てて地下の司令センターへ向かった。司令部は相当混乱している様子だ。
「防空司令部には連絡したのか!?」
「既に連絡し、回答を待っています!」
「くそっ!レーダーサイトの連中は何をしていたんだ!?ここまで敵機の侵入を許すとは!?」
「将軍!お電話です!」
「防空司令部の奴らか!?貸せ!文句を言ってやる!」
「いえ・・・・防空司令部では無く、戦略攻撃司令部からです」
「戦略攻撃司令部だと!?こんな時に!何を考えているんだ!」
「先方は、どうしても連絡する必要があると言っています」
将軍はやや考えた。
「わかった。話を聞こう」
ややあって、将軍は電話の主の話を聞き、文句を言い返したが、最終的には折れて、新たな命令を出した。
「15分後に迎撃機を下がらせろ」
「何ですって!?お言葉ですが、将軍、そんな事をしたら全滅です!」
「戦略攻撃司令部の連中、何が考えがあるようだ。命令通りにしろ」
「わかりました。15分経ったら、戦闘空域から部隊を離脱させます」
迎撃管制官の中尉は、将軍の命令に首を傾げたものの、命令は命令だ。例え疑問符が付くようなものであったとしても、彼には、その命令に従う以外の選択肢は無かった。