ACE COMBAT after story of the demon of the round table   作:F.Y

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トライデント・キラー作戦

 1996年 2月15日 0913時 ノルドランド ヨアキムロル基地

 

「それでは、諸君。先日のルムハムヴァ防空基地攻撃作戦にて、諸君を攻撃した兵器についての詳細な情報を手に入れることができた。諸君には、この兵器の排除に向かってもらう」

 

 ロビン・リー少佐がブリーフィングルームに集まった空軍兵や傭兵たちに向き合った。背後のスクリーンには、ウェルヴァキアとノルドランドの地図が表示されている。

 

「あのミサイルは、ベルカが開発した戦闘機搭載用散弾ミサイルを大型化したものだ。ベルカ人は、あれを地上発射型とし、かつ大型化したものをウェルヴァキア陸軍に提供したようだ」

 

 リー少佐がキーボードを操作すると、弾道ミサイルのランチャーのようなものがスクリーンに表示される。

 

「これは、以前、オーシア軍から提供された資料だ。こいつのコードネームは"アイゼン・レーゲン"。傭兵のサイファーによれば、似たようなミサイルを『国境なき世界』という組織が持っていた試作戦闘機。ADFX-02モルガンというベルカ製の試作戦闘機に搭載されていたらしい。但し、それは戦闘機に搭載可能なサイズのため、今回のターゲットは勿論、このミサイルとは、被害半径、破壊力共に比較にならないほど大きいと考えられる」

 

 リー少佐が続ける。

 

「だが、先日のアイゼン・レーゲンの攻撃の状況を分析した結果、あのミサイルのクラスター弾の効果範囲は、地上8000フィート以下という結論が出た。つまり、アイゼン・レーゲンが発射された場合、8000フィート以上の高度域に逃げれば、攻撃を避けられる可能性があるということだ。そのため、射程の長い兵器が必要になるだろう。更に、このミサイルの発射基地の位置も突き止めるとこができた。これを見てくれ」

 

 リー少佐が再びキーボードを操作する。スクリーンにノルドランドとウェルヴァキアの国境地帯の地図が表示された。

 

「早期警戒レーダーが捉えたミサイルの軌跡は、丁度このような感じだ。そして、偵察機による詳細な偵察の結果、ミサイルの発射地点は、ウェルヴァキア北東のクノフフォルヴァ平原にあるという事を突き止めた。これを見てくれ」

 

 スクリーンには、長方形の建物のような施設、対空火器、防空レーダーといったものが幾つも並んでいるウェルヴァキア軍の施設の写真が表示された。そして、道路には、大型ミサイルと思しきものを載せたトレーラーが幾つも並んでいるのがわかる。リー少佐は、レーザーポインターで写真のトレーラーを指し示した。

 

「恐らく、このミサイルが"アイゼン・レーゲン"弾頭を載せたものと考えられる。こんなものを放っておいたら、我が国は更なる脅威に晒されることになるだろう。そして、偵察機の情報から、先日の攻撃でミサイルを撃ったため、今は第二波攻撃の準備をしているものと考えられる。諸君。次の攻撃は何としても阻止せねばならない。そおれが行われる前に、"アイゼン・レーゲン"そのものを破壊せよ。では、出撃!」

 

 1996年 2月15日 1001時 ノルドランド ヨアキムロル基地

 

 戦闘機がエプロンに並び、出撃の準備を整えていた。今回の作戦名は"トライデント・キラー"と名付けられた。"アイゼン・レーゲン"の発射基地に到達するまでは、全ての戦闘機は高度8000フィート以上を維持しながら飛行を続けることになる。そうすると、ウェルヴァキア空軍の早期警戒レーダーに簡単に捕まってしまうが、ノルドランド空軍は、護衛の戦闘機を増やすという苦肉の策に出た。

 だが、ノルドランド空軍パイロットのここ数日の生存率は急激に上がっていた。統計データによれば、最初の10回の出撃を生き延びた戦闘機パイロットの生存率は急激に向上するとも言われている。

 

 サイファーは注文通りの武器が揃っていることを確認した。R-73とR-77が4発ずつ。そして、Kh-59を3発。今回は低空で攻撃地点まで接近。長射程ミサイルでターゲットを片づけるという戦法が採用されることになった。

 

 ノルドランド空軍はDWS-39とAGM-84Eといった長射程の空対地ミサイルを用意していた。傭兵部隊の中にも、タウルスKEPD350やストームシャドウ、AGM-154といったスタンドオフ兵器を戦闘機に搭載させているパイロットも少なくない。ノルドランド空軍の整備兵たちは、クリップボードに挟んだ書類を何度も確認し、どの機体にどの兵器を搭載すべきかということを何度も確認していた。

 

「サイファー。8000フィート以上。間違えないですね」

 

 ジャガーが話しかけてきた。ここにいる傭兵や空軍パイロットは、恐らくはあのような超兵器と対峙したことは殆ど無いだろう。ああいうものを持っているのは、ベルカやオーシア、ユークトバニアくらいのものだ。

 

「ああ。死にたくなければ、それより低く飛ぶなってことだ」

 

「わかりました。それだけわかれば十分です」

 

 ジャガーはそれだけ言うと、自分にアサインされたグリペンに向かい、整備兵と共に機体、搭載された兵装、増槽の状態を念入りに確認し始めた。前の相棒のPJとは偉い違いだ、とサイファーは思った。PJはエクスカリバー破壊作戦以降、自分とピクシーと共に作戦行動をしていたが、作戦中でもよく喋る男だった。

 その反面、ジャガーは殆ど余計なことを話すことは無い。作戦に必要な最低限の情報しか言わない。傭兵たちの中には、無線で私語を続ける連中も少なくない。

 

 パイロットたちは戦闘機に乗り込み、エンジンを始動させ始めた。管制官とマーシャラーの誘導に従い、1機ずつ、順番に列を成して滑走路へと向かう。先ほどまでちらついていた雪が止み、鉛色の雲から青空が顔を覗かせ、雪原に向かって黄金色の日の光が伸びてきた。この辺りの天候は回復し始めたようだ。戦闘機乗りたちには、それが、まるで太陽が自分たちの幸運を祈っているかのように見えた。

 

『マングース隊、滑走路36への進入を許可する。進入後はそのまま待機せよ。ヘッジホッグ隊。指示があるまで誘導路で一旦待機せよ。ブルドッグ隊、ヘッジホッグ隊に続いて誘導路に入り、待機せよ』

 

 基地の管制官の指示で戦闘機が動き始めた。その数、50機以上。他の基地でも同じくらいの数の戦闘機が動いているはずだ。

 

『マングース隊、離陸せよ』

 

「マングース1、テイクオフ」

 

『マングース2、テイクオフ』

 

 Su-35BMとJAS-39Cが轟音を轟かせながら離陸した。すぐさまF-15EとF-16Cが離陸体制に入り、離陸滑走する。民間空港の管制官が見たら眩暈がするような短い間隔で多くの戦闘機が離陸していく。ところが、戦時の戦闘機基地の管制官からしてみたら、こんなのは至って普通の事であり、それに備えた訓練も平時から行っているため大した問題では無かった。

 果たして、この攻撃部隊の中で、何機が生きて帰ってくるのだろうか。だが、みんな、軍に入隊した時から、覚悟はできているとわかっていた。それに、命を削って金を稼いでいる、傭兵連中なんかはちっとも気にかけるようなこともしないだろう。中には、死にギリギリまで近づくことを楽しむために傭兵稼業なんてものをやっている奴もいると、人づてにその管制官は聞いていた。

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