ACE COMBAT after story of the demon of the round table   作:F.Y

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アイゼン・レーゲン

 1996年 2月15日 1017時 ウェルヴァキア クノフフォルヴァ平原

 

 巨大な4つの筒を束ねたようなものがベルトコンベアーに乗せられて移動し、高層ビルのようなものの中に運ばれていく。この筒の中身は戦略兵器"アイゼン・レーゲン"だ。

 

 ウェルヴァキア陸軍は、すでにこのミサイルによる第二波攻撃を行うことを決めていた。標的はノルドランド北西部の町、レフス市だ。

 

 "アイゼン・レーゲン"は、ベルカ人技術者からもたらされた情報をもとに作られた兵器だ。これは長射程の弾道ミサイルで、一旦、高空を飛翔してから複数の弾頭を投下。その弾頭は8000フィートの高さで炸裂し、無数の小さなボムレットをばら撒く。その範囲に入った航空機や地上物は全てその爆発の餌食となる。

 ベルカ人技術者の一人は、この弾頭を『散弾ミサイル』とも呼んでいた。まさに、その呼び名がぴったりだ。このミサイルはベルカ戦争当時は開発中で、実戦配備はなされなかった。しかし、この兵器に関わった技術者のうち数名が戦犯から見逃すことと引き換えに、ユークトバニアへ渡ったとされている。ベルカ戦争終結後、多くのベルカ人技術者らがオーシア、ユークトバニア、レサス、エルジア、エストバキアへと渡ったという噂が流れている。

 

 アイゼン・レーゲンのランチャーの弱点の一つが、この巨大さである。そのため、この固定式の施設に設置する他無かった。本来ならば、地上発射式の弾道ミサイルは生存性を高めるため輸送起立発射機(TEL)に搭載したり、地下のミサイルサイロを設置するところだが、このサイズのミサイルを載せられるだけの車両が存在せず、また、ミサイルサイロの技術をベルカ人技術者から得られなかったため、ウェルヴァキア軍は固定式ランチャーで妥協したのだ。

 

 1996年 2月15日 1019時 ウェルヴァキア クノフフォルヴァ平原

 

『AWACSガーディアンより攻撃部隊へ。情報が正しければ、間もなく"アイゼン・レーゲン"の発射地点近くに到達する』

 

 ノルドランド空軍と傭兵部隊の航空機は、全て8000フィート以上の高度を保ちながら飛行している。勿論、そんな事をしていたら敵のレーダーに捕まってしまうが、敵の戦闘機であればある程度は追い払うことができるが、"アイゼン・レーゲン"に関してはそのようなことはできない。

 

『AWACSガーディアンより攻撃部隊へ。敵機接近。方位、193。高度13000、数、8。マッハ1.0で接近中』

 

 果たして、味方戦闘機が飛んでいる時に、ウェルヴァキア軍は"アイゼン・レーゲン"を撃ってくるだろうか。だが、ウェルヴァキア空軍戦闘機は8000フィートより下に飛ばないよう指示されているはずだ。

 それに、"アイゼン・レーゲン"の発射施設の防護に傭兵部隊を使っている可能性もある。正規の空軍パイロットや戦闘機は貴重だが、傭兵ならばいくらでも替えが利く。そうであれば、迎撃に向かう戦闘機部隊の損害に構わず、ウェルヴァキア軍は"アイゼン・レーゲン"を撃ってくる可能性があるのだ。

 

『AWACSガーディアンより戦闘機部隊へ!弾道ミサイル1発接近!"アイゼン・レーゲン"だ!全機、高度8000フィート以上へ退避せよ!』

 

 戦闘機が一斉に上昇を開始した。急いで8000フィート以上の高さを目指す。

 

「着弾まで30秒!・・・・・20秒・・・・・・10秒・・・5、4、3、2、1、着弾!」

 

 空で大きな爆発が一度起きた後、無数の小さな爆発が連続して発生した。もし、AWACSからの警告に従わなかったら、戦闘機部隊は全滅していただろう。

 

『おい・・・・今の見たか?』

 

『何て爆発だ。あんなのに巻き込まれたら終わりだな』

 

 散弾ミサイルの効果は空中のみに止まらなかった。弾頭からばら蒔かれたボムレットの幾つかは空中で爆発せず、地上に落下してから爆発する。

 

『ガーディアン、発射地点は特定できたか?早いところあれを潰さないと、こっちはおしまいだ!』

 

『分析中だ。それよりも、敵機が向かって来ている』

 

『畜生が!』

 

『また"アイゼン・レーゲン"が発射された!目標は・・・・・ノルドランド領内だと!?更に2発の弾道ミサイルの発射を確認!君らを狙っている!』

 

『高度上げろ!急げ!』

 

 1996年 2月15日 1022時 ウェルヴァキア クノフフォルヴァ平原

 

『敵機接近。方位、176。4機だ』

 

 傭兵部隊の2機のF-15Cに搭載されているAN/APG-63レーダーが迎撃機の姿を捉えた。レーダー画面がMiG-23とMiG-29を捉えたことを知らせる。あわせて4機だ。

 

『レーダーロック・・・・・Fox1!』

 

 2機のF-15CはAMRAAMを1発ずつリリースした。ミサイルは真っすぐ飛び、フロッガーを撃墜する。しかし、F-15Cのコックピットの中でミサイルアラートが鳴り響いた。MiG-29SがR-27R1を発射したのだ。セミアクティブホーミングミサイルが猛スピードで接近してくる。

 

『ミサイルアラート!ブレイク!ブレイク!』

 

 F-15はチャフとフレアをばら撒きながら低空に向かい、ミサイルを避けようとした。しかし、ミサイルはどんどん接近し、追いついてくる。だが、その時、"アイゼン・レーゲン"の弾頭が炸裂した。頭上からクラスター爆弾の雨が戦闘機に降り注ぎ、F-15Cは一瞬のうちに粉々になった。イーグルを追いかけていたウェルヴァキア空軍のMiG-29Sも同じ運命を辿った。

 

 1996年 2月15日 1023時 ウェルヴァキア クノフフォルヴァ平原

 

「敵機接近!」

 

「ミサイル装填急げ!」

 

 "アイゼン・レーゲン"の発射施設では巨大な台車に乗せられたミサイルユニットがVLSに向かって移動していた。VLSの側面の扉が開き、新たなミサイルがベルトコンベアーで装填される。

 

「装填急げ!」

 

 この施設は巨大なSバンドレーダーとIバンドレーダー、Kuバンドレーダーと射撃管制施設、ミサイルランチャーから成り立っている。周囲には9K37地対空ミサイル、2K12地対空ミサイル、ZSU-23-4対空機関砲、2K22ツングースカ自走防空システムが設置されている。

 

「レーダーで敵機補足・・・・・・ミサイルせっき・・・・・!」

 

 防空部隊の兵士がそこまで言いかけた時、2つの防空レーダーが突然爆発し、炎上した。鉄骨が地面に幾つも落下してきて6人の兵士がそれの下敷きになる。

 

「畜生!」

 

「ミサイル装填完了!」

 

「早く撃て!奴らを皆殺しにしろ!」

 

「発射!」

 

 地上に設置されたVLSの蓋が開き、凄まじい炎と煙が上に向かって噴出されたかと思うと、"アイゼン・レーゲン"が再び空へと撃ち出された。

 

 1996年 2月15日 1024時 ウェルヴァキア クノフフォルヴァ平原

 

『注意!"アイゼン・レーゲン"からミサイルの発射を確認!全機、高度8000フィート以上に退避しろ!繰り返す!高度8000フィート以上に退避せよ!』

 

 くそっ!奴ら、どれだけのミサイルを用意してやがる!サイファーはSu-35BMのスロットルレバーを押し、アフターバーナーに点火させて操縦桿を引いた。 HUDの高度計に注意を向け、8000フィート以上の高度に達するまで上昇を続ける。サイファーは安全策を取り、10000フィートまで機体を上昇させた。ちらりと後ろを見ると、ジャガーが乗るグリペンがしっかり後ろから付いてきているのを確認した。他の傭兵やノルドランド空軍の兵士が乗る戦闘機の姿も多く確認できる。

 

『着弾まで10秒・・・・・・着弾!』

 

 遥か下で見覚えのある連続した爆発が発生する。常人ならば、こんなところから早いところおさらばしたいと思う所だが、サイファーは違った。あの"アイゼン・レーゲン"とやらを、何としても自分の手で破壊し、莫大な報酬を得る。そして、どうやってあれを片づければ良いのだろうか。あの攻撃に隙ができる瞬間は無いものか。今、この傭兵の頭を支配していたのは、その事だけであった。そして、ヘルメットのHMDと酸素マスクの下で、サイファーの表情は、獲物を狙う猟犬のそれへと変わった。

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